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四十話
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「アイシュよ。ここに来てよかったのか?何かあったか?」
夜、妖精の谷に訪れたアタシ達を、ルイーダ様はものすごく心配してくれた。家で何かあったのだろうときっと思ってくれている。まずはそこから話しておかないと。
「ルイーダ様、あの」
アタシはお母様の病気のことと余命宣告を受けていることを話した。何度も泣きそうになったけどなんとか堪えた。
「そうか、カレンがの」
「月泉でなんとか治せない?」
藁にも縋る思いでアタシはルイーダ様に尋ねた。
「ワシは医師じゃないからはっきりとは言えぬが、カレンの状態がとても悪いことは分かる」
「そうだよね」
ラセルカちゃんのお母様はまだクッキーを焼いたり家のことが出来ていた。ここ数日、お母様が突然痛みで苦しみだすところを何度か見ている。お母様はアタシに対してとても優しくなった。もともとはそういう人だったんだよ、とお父様がそっと言っていた。お金は人を変えてしまう。傲慢になる。
「アイシュ、死からは誰も逃れられん。ワシもそうじゃ。皆、いずれは死ぬ。気休めかもしれんが、これをやろう」
ルイーダ様がくれた物、それは真っ赤でつやつやな実だった。
「痛み止めじゃ。カレンに食べさせなさい。少しでも残りの日を楽しめるように」
「ありがとうございます」
アタシは泣きたくなった。でも、泣いても解決しない。それくらいならお母様と沢山お話したり一緒に笑い合いたい。
「アイシュ、もうホテルに戻りなさい。明日も観光があるのじゃろ?」
「はい」
アタシはルイーダ様に手を振ってベルとホテルに戻った。
ホテル内はとても暖かい。
「アイシュ、もう寝ようか」
「うん」
着替えてベッドに潜り込む。フカフカで暖かくてアタシはすぐ眠ってしまった。
気が付くと明るい。
「アイシュ、おはよう」
「ん、ベル。おはよ」
アタシは体を伸ばした。よく眠ったなぁ。机の上には昨日もらった木の実が置いてある。
「お母様、食べてくれるかな?」
「これどんな味なんだろうな?」
確かにそれは気になる。アタシは愛用の折りたたみナイフを取り出して皮を慎重に剥いた。
皮の中も真っ赤だ。一口大にカットしてみる。
一口頬張ったら甘酸っぱかった。
体がなんだかぽかぽかしてくる。
「ん、酸っぱいな」
ベルも一口食べて呟いた。
「アイシュ?」
コンコン、とドアをノックされたので返事をした。お母様だ。今なら食べてもらえる。
「お母様、これ食べてみて?」
「二人共、その実はどこで?」
「ルイーダ様がくれたの」
お母様はハッと息を呑んで、そうなのと小さく呟いた。
「ルイーダ様には本当に失礼なことばかりしてしまったわね。私は思い上がっていた。本当に愚かだったわ」
「お母様、食べてみて」
お母様が実を口に入れる。
「懐かしい味ね。初めてルイーダ様にお会いした時に頂いたわ。まだ私が幼い頃の話よ」
「そうだったんだ」
「アイシュ」
お母様がアタシを抱き寄せる。お母様はいい匂いがする。
「私の可愛い天使さん」
お母様が歌うように言って笑った。
夜、妖精の谷に訪れたアタシ達を、ルイーダ様はものすごく心配してくれた。家で何かあったのだろうときっと思ってくれている。まずはそこから話しておかないと。
「ルイーダ様、あの」
アタシはお母様の病気のことと余命宣告を受けていることを話した。何度も泣きそうになったけどなんとか堪えた。
「そうか、カレンがの」
「月泉でなんとか治せない?」
藁にも縋る思いでアタシはルイーダ様に尋ねた。
「ワシは医師じゃないからはっきりとは言えぬが、カレンの状態がとても悪いことは分かる」
「そうだよね」
ラセルカちゃんのお母様はまだクッキーを焼いたり家のことが出来ていた。ここ数日、お母様が突然痛みで苦しみだすところを何度か見ている。お母様はアタシに対してとても優しくなった。もともとはそういう人だったんだよ、とお父様がそっと言っていた。お金は人を変えてしまう。傲慢になる。
「アイシュ、死からは誰も逃れられん。ワシもそうじゃ。皆、いずれは死ぬ。気休めかもしれんが、これをやろう」
ルイーダ様がくれた物、それは真っ赤でつやつやな実だった。
「痛み止めじゃ。カレンに食べさせなさい。少しでも残りの日を楽しめるように」
「ありがとうございます」
アタシは泣きたくなった。でも、泣いても解決しない。それくらいならお母様と沢山お話したり一緒に笑い合いたい。
「アイシュ、もうホテルに戻りなさい。明日も観光があるのじゃろ?」
「はい」
アタシはルイーダ様に手を振ってベルとホテルに戻った。
ホテル内はとても暖かい。
「アイシュ、もう寝ようか」
「うん」
着替えてベッドに潜り込む。フカフカで暖かくてアタシはすぐ眠ってしまった。
気が付くと明るい。
「アイシュ、おはよう」
「ん、ベル。おはよ」
アタシは体を伸ばした。よく眠ったなぁ。机の上には昨日もらった木の実が置いてある。
「お母様、食べてくれるかな?」
「これどんな味なんだろうな?」
確かにそれは気になる。アタシは愛用の折りたたみナイフを取り出して皮を慎重に剥いた。
皮の中も真っ赤だ。一口大にカットしてみる。
一口頬張ったら甘酸っぱかった。
体がなんだかぽかぽかしてくる。
「ん、酸っぱいな」
ベルも一口食べて呟いた。
「アイシュ?」
コンコン、とドアをノックされたので返事をした。お母様だ。今なら食べてもらえる。
「お母様、これ食べてみて?」
「二人共、その実はどこで?」
「ルイーダ様がくれたの」
お母様はハッと息を呑んで、そうなのと小さく呟いた。
「ルイーダ様には本当に失礼なことばかりしてしまったわね。私は思い上がっていた。本当に愚かだったわ」
「お母様、食べてみて」
お母様が実を口に入れる。
「懐かしい味ね。初めてルイーダ様にお会いした時に頂いたわ。まだ私が幼い頃の話よ」
「そうだったんだ」
「アイシュ」
お母様がアタシを抱き寄せる。お母様はいい匂いがする。
「私の可愛い天使さん」
お母様が歌うように言って笑った。
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