棺に花を添えて

はやしかわともえ

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偽者と姫

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僕たちは警察署にいる。あの後、警部さんに話があるからと呼ばれたからだった。そう、セスさんの言った通り「月」はすでになくて、美術館に飾られていたのも偽物だったらしい。誰も気が付かないのだから贋作も十分すごいと思う。

「いやー、まさかあれだけしか見ていないのに偽物だと分かるなんて大したもんだ」

警部さんが褒めてくれたのでちょっと嬉しい。僕が褒められたわけじゃないけれど。警部さんが僕たちに向かって顔を寄せる。

「「月」を盗んだのは朱猫あかねこだ」

朱猫さんというのは誰なんだろう?僕が首を傾げたら、警部さんが頷く。

「これはトップシークレットなんだがね、朱猫は希少な絵の修復とコレクトをしている団体なんだ。ただし、それは表側の話でね」

僕はごくり、と唾を飲み込んだ。

「朱猫には天才的な怪盗がいるんだよ。我々では正直に言ってついていけない。「月」を盗んだ怪盗はまるで影のようなんだ。確かにいるはずなんだが、朱猫はその存在を真っ向から否定している」

僕はだんだん怖くなってきた。そんな人離れしたような人を相手になんて出来そうもない。

「朱猫はまた他の貴重な絵画も盗むつもりだ。頼む、我々に力を貸してほしい」

警部さんに頭を下げられてしまった。僕はユミル団長をそっと窺った。なにか考えている?しばらくして団長が口を開く。

「絵画の件は協力しましょう。ですが、ナーシャは同行させられません。相手は強い。私が守りきれる保証がなくなりました」

きっぱりとユミル団長が言い切る。僕がまだ子供だから。悲しくなったけど、ユミル団長は僕を心配してくれているんだ。

「それと…」

ユミル団長が不敵に笑う。

「あの予告状は本物ですね?実際に盗まれた際に送られてきた?」

警部さんが固まって、頷いた。

「我々だけでは予告状の謎が解けず」

「今度からは騎士団に連絡を。お力になれるかもしれませんから」  

「助かります」

ユミル団長と警部さんがかっちりと握手している。なんだか平和な光景だ。帰ろう、とユミル団長に言われて、僕たちは宿舎に戻った。


「あのチップはなんだったのかな?」

お風呂から出た僕は濡れた髪の毛をタオルで拭いている。

(あれは警察も予想していなかった証拠だと思う。ユミルくんが見つけていなければ今頃も)

セスさんがふぅむ、と唸りながら言った。

(とりあえずリヴァくんにお茶を淹れてもらおう。僕はアップルティーがいいな)

「僕もアップルティーがいい」

(なら早く行こう)



「ナーちゃん、お茶飲む?」

キッチンに向かうと、リヴァさんが片付けをしていた。騎士の人たちが使った食器やらなんやらを片付けるのはなかなか大変なお仕事だ。

「あの、お手伝いします」

「ナーちゃん、疲れてない?今日は大変だったでしょ?」

「警察署に行ったのはドキドキしましたけど、疲れてないです」

「ナーちゃん、意外と肝据わってるね」

「あの、お茶ならアップルティーが飲みたいです。お片付けしたら淹れてくれませんか?」

図々しかったかな?と思いながら言ったら、リヴァさんが笑う。

「もちろんいいよ。セスも好きだったな」

リヴァさんの表情が一瞬翳った。

「あの、セスさんって…?」

僕はあたかも知らないように振る舞うことにした。まさか僕にセスさん本人が宿っているとは言いにくい。

「あぁ、俺の好きだった人。もう亡くなっているんだけどね」

「どんな人だったんですか?」

リヴァさんがそうだなあと呟いた。

「誰に対しても素直な人だったよ。彼女は月姫を宿す器として生まれてきてね」

「その月姫様は?」

「あぁ、今も魔界で託宣をしているんじゃないかな。彼女の仕事は魔界を治めることだし」

「セスさんの肉体は生きているんですか?」

リヴァさんが困ったような顔をした。

「どうなんだろう。セスは棺の中で眠っていたよ。さ、昔話はおしまい。アップルティー淹れるね」

僕はしまったと後悔していた。

「リヴァさん、辛いことお話させちゃってごめんなさい」

「大丈夫だよ。ナーちゃんはなんだかセスに似ているしね」

「僕が?」

僕は驚いてしまった。リヴァさんに座っているように言われて、僕は大人しく従った。リヴァさんの作るアップルティーは生のリンゴを使う。
その中にたっぷりハチミツを入れるのだ。
甘くてすごく美味しい。

「はい、どうぞ」

「頂きます」

僕はお茶を飲み始めた。温かくて甘い。これを飲むと体が暖まって眠りモードに切り替わる。
最後の一口を飲み干して、僕は息を吐いた。

「ナーちゃん、美味しかった?」

「すごく」

僕はマグカップを洗った。自分で使った食器は基本的に自分で洗うのがここのルールだ。歯を磨いて布団に入ったらすぐ眠っていた。



「むうう」

こんな唸り声で僕は気が付いた。また真っ白な世界に僕は居る。声のした方に向かって歩き出すと、セスさんを見つけた。どうやら、また僕は夢の中にいるらしい。

「セスさん!」

僕が駆け寄るとセスさんが顔を上げた。

「ナーシャもここに来れるのだねっ!失念していたよ!」

「何かあったの?」

「あぁ、朱猫からの予告状を見ていた」

「え?どうやって?」

セスさんが得意げに笑ってみせる。

「僕は現実のものをここで復元するのが得意なんだよ!にしても、まさかこの絵を盗みに来るとはね」

僕はセスさんの傍に近付いて、隣から予告状を覗き込んだ。読み上げてみる。

「月明かりが陰る日、姫君を頂く」

これだけじゃなんのことだかさっぱり分からない。

「うむ、ナーシャは分からないようだね。無理もない、絵画は一朝一夕に分かるようになるものじゃないからね!」

セスさんがどこから取り出したのか、星が先端に付いた細い棒を持っている。そしていつの間にかあるホワイトボード。
僕はその前に体育座りをした。

「この予告状には「月姫」というタイトルの絵を盗むことが示唆されている!」

月姫、つまりセスさんの肉体に宿っている人。

「それ、セスさんだよね?」

一応尋ねてみたら、セスさんは腕を組んで考え出した。

「僕かと言われると怪しいね!この通り僕は死んでしまっている」

「じゃあその月姫のモデルって」

うん、とセスさんが頷いた。

「多分だが、現役の月姫がモデルだろうねっ!」

僕は不思議だなぁと思っていた。

「なんで月にこだわるんだろう?たまたまかな?」

セスさんがハッとする。

「そうだよ!ナーシャ!奴は月の描かれた作品をいつも狙う!だが、理由は分からないな。何か月に対して執着するものがあるのだろうね」

明日、そのことを警部さんたちに伝えることを決めて、僕は眠ることにした。この真っ白な空間にふかふかのベッドがあるのは驚きだけど、寝転ぶと居心地がいいのは間違いない。

「ナーシャ、おやすみ」

「セスさん、おやすみなさい」

僕は眠っていた。



次の日になっている。騎士団の人たちがバタバタしていた。何かあったんだろうか。僕は怖くなって、自室にいることにした。
ベッドの上で蹲っていたら、部屋のドアを叩く音がする。

「ナーシャ、入るよ」

声からしてユミル団長だ。振り返るとやっぱりそうだった。僕は恐る恐る尋ねた。

「何かあったんですか?」

「朱猫が動いたらしい。厳密には朱猫に所属する怪盗がね。匿名で「月」をオークションに出品したんだ。もちろん警察も動いたが、足取りは掴めなかった」

「じゃあ、絵が戻ってきたの?」

「あぁ。一応ね。ただし傷が付けられていた。元の状態に戻すまで時間がかかるらしい」

「そんな…」

「複雑なことにその修復も朱猫が行っているんだ。絵は無事だろうが手元にはまだ返ってきていない」

なんだろう。それ、すごくモヤモヤする。

「朱猫を捕まえるわけにはいかないの?」

「証拠がないからね」

そうだった。警察は確固たる証拠がないと動けない。僕はなんだかどっと疲れてしまった。

「ナーシャ、騎士団は朱猫の動きを探っている。彼らの尻尾を掴むために」

「そしたら捕まえられる?」

「いや、分からない」

でも諦めない、とユミル団長は言った。騎士団の人たちを僕も信じている。

「あ、そうだ」

僕はユミル団長に、怪盗が月に関する作品を狙っていると話した。予告状のこともだ。

「確かにその通りだ。ナーシャ、よく気がついたね。セス姫にも礼を告げてほしい」

「はい」

✢✢✢

(ナーシャ)

僕はハッとした。まだ辺りは暗い。誰も起きていないのか宿舎も静かだ。セスさんが僕を呼んでいる。

「どうしたの?」

(案内しよう)

案内?と思ったけど、僕は従うことにした。パジャマから服に着替える。

(ユミルくんに見つかるのは本意じゃない。窓から出よう)

「うん。でもどこに行くの?」

セスさんがにやっと笑った。

(もちろん魔界さっ。「月姫」の絵があるからね)

「でも、ユミル団長に言わないで行くの?」

僕は不安だった。

(君に会いたがっている)

「え?」

(気にしなくていい。僕がその時は責任を取ろう。大丈夫、悪いようにはしないからさっ!)

セスさんは笑うと八重歯が見えるんだな、と思いながら僕は窓から外へ出た。
靴がいつの間にか部屋にあったので僕としては不気味だった。宿舎の庭から外に出る。すると道がずっと続いていた。僕は深く息を吸った。なんだかすっとして、気持ちがいい。

(こっちだよ、ナーシャ)

セスさんが示したのは宿舎の厩舎にいた馬だ。え?馬?と僕が固まる間も与えず、セスさんが急かしてくる。

(早くしなければ見つかるよ)

「わ、分かった」

セスさんがこの子にしようと示した馬に僕は跨っていた。鞍が付いていたのが幸いだ。

「お願い、魔界に行きたいの」

「ブル…」

(頼むよ)

馬がゆっくり走り出す。僕は慌ててセスさんに尋ねた。

「こっちで合ってるの?」

(あぁ、問題ないよ!)

全速力の馬は本当に速い。僕は振り落とされないようにしがみついているのが精一杯だった。日はいつの間にか昇って明るくなっている。

(見えた)

セスさんが示したのは急に暗くなっている場所だった。

(魔界は常に夜だからねっ)

そうなんだ、と思う間に僕たちは魔界に入っている。魔界というからには恐ろしい場所を想像していたけれど、それは杞憂だった。普通に人(魔族だ)が道を歩いているし、お店だってある。

(美術館はこっちだよ)

セスさんの案内の通りに馬は走ってくれた。あれ?と僕は思った。そこが美術館なのは、間違いない。でも僕たちが向かったのは所謂裏口だった。作品を搬入する時に使う場所だろう。かなり広い。セスさんは少し慌てているようだった。どうしたんだろう?

「ありがとう」

馬の手綱を近くの木に結んで、僕は馬の顔を撫でた。さぁ、行こう。

(ナーシャ、急いで!走るよ!!)

「うん」

僕は裏口に飛び込んでいた。煙が辺りを覆っている。僕は驚いたけど、なんとか走り抜けた。そばにあった階段を駆け上がる。
そこは倉庫になっていた。絵がきちんと収納されている。

ふと見ると月明かりが窓から射し込んでいた。さっきまで月は雲に隠れていたはずだ。確か、予告状にも書いてあった。黒い服を着た誰かが立ち尽くしている。
なんだろう、この人、見覚えがある気がする。

(月姫、君が朱猫の怪盗だったんだね)

セスさんの言葉に僕はびっくりしてしまった。月姫が怪盗?その人は振り返る。眼差しはそのままセスさんに重なった。

「月姫様、なんで?」

「…」

彼女は答えてくれなかった。僕をただじっと見つめている。

「突入!」

男の人たちが一斉に倉庫に入ってきた。多分刑事さんだろう。

「またな…」

月姫様は窓から落ちていった。刑事さんたちが慌てて窓際に詰め寄っている。

「君は?何故こんな所に?」

「え、えーと、月姫様に呼ばれたんです」

嘘は言ってないよね。セスさんもそうだそうだと頷いている。

「月姫様に?もしかして、占ってもらったのかい?」

あれ、刑事さんたちは怪盗朱猫が月姫様だって知らないんだ。言ったほうがいいのかな?

(いや、それはユミル君にだけ伝えることにしよう。月姫の様子がおかしかったのは間違いない)

僕は分かったと心の中で応えた。

「君、お名前は?どこから来たのかな?」

「な、ナーシャです。えと、騎士団の宿舎から」

「なんだって?!」

✢✢✢

「誠に申し訳ありません」

僕は困って俯いていることしか出来なかった。さっきからユミル団長がずっと刑事さんたちに謝っている。

「いや、でもお陰で絵は無事だったんですから」

刑事さんの一人がそう言うと、そうそうと周りの刑事さんが頷く。

「子供にさせていいことではありません。私の監督不行き届きです」

「まぁまぁ団長さん、そんなに固くならなくても」

「…」

「ごめんなさい、ユミル団長」

僕は謝った。

「刑事さんたちもごめんなさい」

ユミル団長に頭を撫でられる。優しい手つきだったからほっとした。ユミル団長はもう帰らなくてはいけないと立ち上がった。刑事さんたちもほっとしたらしい。引き留めなかった。

「おいで、ナーシャ」

ユミル団長に手を握られる。僕は言わなくてはいけないと前に誰かに教わったことを思い出していた。

「お世話になりました」

ぺこん、と頭を下げる。ユミル団長も頭を下げた。

✢✢✢

「セス、私は君に話している」

車を運転しながらユミル団長は言った。セスさんは静かに聞いている。僕は助手席で固まっていた。

「ナーシャに危ないことをさせないでくれ。この子はまだ子供だ」

(ユミル君や、大人があの場にいたら朱猫は確実に絵を持っていった)

「いいじゃないか、それでも」

ユミル団長にはセスさんの声が聞こえるらしい。
不思議だな。

(あの絵はただの絵ではない)

「なに?」

ユミル団長の声が鋭くなる。僕は怖くなってきて震えていた。

(ユミルくん、ナーシャが怖がる。そんなにツンケンしなくてもいいだろう?)

「ナーシャ、すまない。君に怒っているわけじゃないんだ」

「セスさんのことを怒るなら僕のことも怒って。行動したのは僕だよ?」

「…ナーシャ、君って子は」

ユミル団長が困ったようにため息をつく。

「セス姫、あの絵はいったいなんなんだ?そんなに重要なものなのか?」

(鍵といえば分かるかな?)

ユミル団長は分かったらしい。それきり黙ってしまった。

「鍵ってなんの鍵なの?」

僕としては知りたい気持ちが強い。

(杖が地下に安置されているんだ)

「杖?魔法使いの?」

(あぁ、神から賜ったとても貴重な杖だ。僕はあれがお気に入りでね)

どうやら元々セスさんのものだったらしい。

「月姫様が使っているやつ?」

(いや、選ばれた者しか使えない特殊な杖だよ)

「すごい…セスさんは魔法が使えたんだね」

セスさんが笑う。

(そこそこにね)

「その杖が月姫の手に渡るとまずいのか?」

ユミル団長がすかさず聞いてくる。

(あぁ、困るよ。魔界の墓場が動き始める)

墓場?僕はユミル団長を見つめた。ユミル団長がぎり、と歯を食いしばる。

「墓場にいる連中は厄介だからな」

(僕が思うに、奴らは月姫の傘下にあるのだと思う。彼らを統治出来るほどの魔力量を思えば、月姫以外に考えられないよっ)

「セス姫、ナーシャを一人で動かさないと約束してくれ。まだこの子は小さい」

(あぁ!善処するよっ!)

車に乗って帰ってきてみると、僕は随分遠くまで来てしまっていたようだ。刑事さんが驚くのも当たり前だ。

「あの…ユミル団長。本当にごめんなさい」

もう一度謝ったら、団長は僕の頭を撫でてくれた。宿舎の食堂に入ると、騎士さんたちが食事を摂っている。いつもの光景だ。僕もすごくお腹が空いている。いい匂い、今日のメニューは、なんだろう?


「ナーちゃん!!」

ガチャンと何かが割れる音がした。いつの間にか僕は抱き締められている。

「良かった、ナーちゃん。急にいなくならないでよ!」

抱き締めてきたのはリヴァさんだと気が付いて、僕は顔を上げた。

「ごめんなさい」

「良かった、ナーちゃんが無事で」

リヴァさんにこんなに心配をかけてしまった。申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。

「ナーシャ!無事だったか!!」

「良かった」

ノエルさんとソーマさんもやって来た。

「ごめんなさい…」

僕はだんだん悲しくなってきた。情けなさからくる悲しみだ。

「泣かなくていいんだよ、ナーちゃん」

「そうじゃよ、無事だったのなら何より」

「そうだ」

僕はなにか思い出しそうになった。こうして僕を抱き締めながら優しい言葉を掛けてくれた人が確かにいたのだ。誰なんだろう、分からない。考えていたら僕のお腹の音が鳴った。

「ナーちゃん、お腹空いてるよね。ごめんね、気が付かなくて」

「うむ、ナーシャは食べ盛りじゃからな」

ふふ、とノエルさんが微笑む。ソーマさんもうん、と頷いた。その後すぐに、ほかほかのご飯が食べられたのだった。


✢✢✢

「どういうつもりだ?デスアン」

月姫にナイフを突き付けている大男。月姫は全く動揺していない。デスアンと呼ばれた大男はにやりと笑った。

「月姫様とこうして、交渉してるんですよ。あっしら墓場の連中は血を求めてるんでさぁ」

「お前らは私の支配下に置いてやっているだけだ。対等などと勘違いされたら困る」

「勘違い?どちらが勘違いなんでしょうな?」

「何?」

デスアンは丸く膨れた顔をくしゃりと歪めて笑った。

「月姫様には守りたい者がいるようですな」

「!!」

「どうやら図星のようす。さて、取引ですが」

月姫は歯を食いしばった。

「分かった。お前たちの言う通りにする。だが、あの子に手を出さないと約束してもらうぞ」

デスアンはにちゃりと笑みを零した。
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