夕夏と4人のプリンセス~不思議な贈り物~

はやしかわともえ

文字の大きさ
43 / 52
SS

夕夏とキラキラドレス

しおりを挟む
私はもうすぐ、中学三年生になる。
一般的には受験の年だけど、それは私とはあまり関係ない。

何故なら、私の通うロザンヌ学院は大学までエスカレーター式の学校だからだ。
けれど年度初めには、実力テストが毎年行なわれるから、勉強を疎かにできない。

しかも、平日には毎日課題もたっぷり出るから、私達には工夫が要る。

土日に遊びに行きたいなら尚更だ。
私達、生徒はそんな工夫をお互い教え合いながらなんとか学校に通っている。

「夕夏、ここなんだけど分かる?」

私達は放課後、少しだけ教室に残って自分の苦手な課題をみんなで協力して済ませる。
そうするだけでも大分助かる。
これが工夫のうちの一つだ。

私はどちらかと言えば文系の課題が得意だ
。クラスメイトに聞かれたらなるべく答えられるように普段から気を付けて勉強している。工夫二つ目だ。

聞かれたのは文法の使いみちについての問題だった。


「ありがとー!夕夏!助かる!」

「夕夏!私にも教えて!」

はじめはなかなか馴染めなかったこの学校にもようやく溶け込む事が出来た気がする。よかった。

「夕夏、お前。また文章題で躓いてるんだろう?」

その通りだったので、私は頷いた。
数学や理科は本当に苦手で困ってしまう。
文章題も文章は分かるのに、いざ式にするとなると混乱するのだ。

「ここ、前にも教えたぞ」

じろっと彼に睨まれる。クラスで一番頭が良くて、学年で一番かっこいいと人気な彼だ。
お家もすごくお金持ちらしい。
私はどうすればいいかわからなくて、うつむいた。

「夕夏、ちゃんと見てろよ」

「うん」

彼が一転して優しく声を掛けてくれた。
少しホッとする。

「ここが…こうで」

よかった。今日も無事宿題を終えることが出来そうだ。
私は彼の説明を頑張って理解することに努めた。

✣✣✣

「夕夏ちゃんいいなー!いつもヒイロくんに勉強教えてもらってない?」


ヒイロというのはさっきの彼の名前だ。
私は困って曖昧に笑った。
ヒイロくんとはただの友達だ。変に目立ちたくない。

「ヒイロくんは優しいよね」

「うん!本当にそう!」

よかった。無事に話題のすり替えができた。ヒイロくんが優しいのは事実だし大丈夫だよね。

「夕夏」

名前を呼ばれた方を見るとウル様だった。
どうやら迎えに来てくれたらしい。
私は同級生たちに手を振ってウル様に駆け寄った。

「ウル様!!」

「夕夏、お帰り。今日はレストランで夕飯を食べようか」

「わぁ!嬉しい!」

私は助手席に座ってシートベルトをしめた。

「ん?」

ウル様がスマホを見ている。
もしかして急なお仕事かな?
不安に思っていたら、ウル様は黙ってスマホを私の膝に置いた。

「夕夏、見てご覧」

そう言いながらウル様は車を走らせ始めた。
私は言われた通り、スマホの画面を見た。
メール画面だ。
送り主はナミネ姫だった。

「ウル!!夕夏ちゃんの進級祝いがしたい!!」

そう書いてある。というかそれだけだった。

「進級祝い?」

私の言葉にウル様が唸る。

「ナミネのことだ。きっと派手にやるんだろうね」

「進級祝いなんて今までしてもらったことないよ」

「夕夏、これからはしようね」

ウル様が笑った。
嬉しいなぁ。
もうすぐ終業式だ。
そうしたら二週間ほどのお休みに入る。
楽しみだな。

✣✣✣

「夕夏、どれが良いかな?」

私はすごく困っていた。
目の前には可愛らしいドレスが沢山並んでいる。
ウル様が言うにはパーティのためのドレスをここで選ぶのだそうだ。
リゼとロゼも一緒にいた。
こんなキラキラした可愛いドレスを私が着てもいいのかな?

「ゆうかさま、これは?
ゆうかさまのポシェットと同じ色だよ!」

リゼが見せてくれたのはピンク色のミニドレスだった。
可愛い。でも…。

「夕夏、着てみるといいよ。試着室もあるんだし」

「でも…」

ウル様が私の頭を撫でてくれる。

「大丈夫、きっと似合うから」

「お着替えお手伝いします」

ロゼがにっこり笑って言う。

「わかった、試着してみるね」

私は渋々、ロゼと試着室に入って着替え始めた。
ドレスとは言っても、よく物語に出てくるような体を締めつける下着は着なくていいようだった。あれは本当に苦しそうだし、なくてホッとする。

ロゼに背中のボタンを留めてもらう。

「夕夏様、よくお似合いですよ」

改めて鏡を見ると、思っていたより変じゃなくてホッとした。
本当に綺麗なドレスだな。

「ロゼ、できたかな?」

外からウル様の声がする。
ロゼは笑って、試着室のカーテンを開けた。

「夕夏、とても可愛いよ」

「ゆうかさま、お姫様だね!」

「ありがとう…」

恥ずかしくなってうつむいて答えたら、ウル様にそっと頬を撫でられた。

「夕夏、写真を撮ってもいいかな?」

「え?」

ウル様が困ったようにスマホを掲げる。

「ナミネにうっかり夕夏のドレスを選びに行くと言ったら、見せろとうるさくてね」


さっきから何か鳴ってるなとは思っていたけれど、ナミネ姫のメール通知だったんだ。

「一枚ならいいよ」

「助かるよ、夕夏」

ウル様がホッとしたように言う。
たじたじってやつだ。
ナミネ姫は本当に可愛い人だな。
ううん、ウル様も可愛い。

「可愛く撮ってね」

写真に残るならなるべく綺麗に撮ってほしくて私はそう言った。
ウル様が真剣な表情になる。

無事写真も撮ることができて、私達はお家に帰った。

②へ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

転生した女性騎士は隣国の王太子に愛される!?

恋愛
仕事帰りの夜道で交通事故で死亡。転生先で家族に愛されながらも武術を極めながら育って行った。ある日突然の出会いから隣国の王太子に見染められ、溺愛されることに……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...