上 下
10 / 21

パソコン

しおりを挟む
「透花ー!お待たせー!」

タタタとこちらに駆け寄ってくるのは、もちろん和真だ。
透花は手を上げて答えた。

「なになに?急に電気屋行きたいなんて。
トレカでも買うの?」

「うん、だったら良かったな…」

透花は緊張していた。今、自分の持っているバッグには20万という大金が入っている。

「え?違うんだ?じゃゲーム機?」

「パソコン…」

ぼそり、と透花が呟くと和真も驚いたような表情になった。
そして真剣な顔で言う。

「そりゃでかい買い物だね」

「俺もこれから車とか家とか買うのかな?」

「あー、買うかもねぇー」

二人はそんなことを言い合いながらエレベーターに乗り込んだ。

「で、なんで急にパソコンよ?」

「透がエッチなゲーム貸してくれて…」

「お前のねーちゃん、本当インパクトあるよな。俺にもやらせて欲しい」

「いいけど、パソコンの使い方教えて?」

「え?姫華さんに聞いたら?」

「え?」

「ん?」

エレベーターの扉が開いた。
二人は慌てて店内に足を踏み出した。

「透花はさ、せっかく姫華さんが好きになったんだからぐいぐいいかないと」

「そ、そうなのかな…」

「お客様、なにをお探しでしょうか?」

✢✢✢

「買っちゃった!」

数十分もしないうちに透花は新品のパソコンを持っていた。自分で思っていたよりすんなり買えて驚いた。他に外付けのHDDなんかも袋に入っている。

「よし、とりあえずどこか喫茶店に入って、姫華さんの予定を聞こう!」

「え…本気なの?」

「行くぞ!透花!」

和真がずんずん歩いていってしまうので、透花は後ろから慌てて追い掛けた。

「はい、メール打つ!どうせ今日会うんだろ?」

それにぎくり、としてしまう透花だ。
今日の夕方、ぴゅあーずへ仕事の書類を提出しに行くことになっている。
和真に散々急かされながら、透花は姫華になんとかメールを送信した。
ピコン、とすぐにメールが返ってくる。
もちろん、姫華からだ。

『今日からパソコンの勉強をしましょう♡』

とある。画面を隣から覗き込んでいた和真にがっと勢い良く肩を掴まれた。

「よかったな!姫華さん、やっぱ優しーわ!」

「う、うん。和真、ありがとな」

「お礼はメイドさんとの合コンで頼む」

「無理なこと言うな。エッチなゲームで我慢してくれ」

「お、じゃあせっかくだし取りに行くか!」

「うん」

二人は透花のアパートに戻った。
透の貸してくれたゲームの何本かを和真に貸してやる。

「お前のねーちゃんの趣味、なかなかいかついな」

「はは。和真だってそれ選んでるんだし、同じ穴のムジナじゃん」

「かー!そうだな!」

二人は笑い合った。

「じゃ、透花。無理すんなよ!」

「ん」

二人はお互いの拳をぶつけ合った。
しおりを挟む

処理中です...