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逆襲
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ヒメリがペテルギウスに拐われた日の深夜、山の麓にユキたちはいた。ただ月明かりだけが彼らを照らしている。風が吹くと少し寒いくらいだった。もう秋だ。もうすぐ、過酷な冬が迫ってきている。
ここにはペテルギウスの手から逃れてきた蜘蛛たちの巣がある。蜘蛛たちはずっと静かに反逆の時を待っていた。彼らはまだ小さく、力も弱い。だが素早かった。
「ぱぱ、みんな怒ってる。でも人間にはいい人もいる。だから」
ユキは頭上にいる巨大な蜘蛛を見上げた。彼はユキの父親であり、蜘蛛の王だ。今回のことに、彼は怒り狂っている。蜘蛛たちの中で唯一ユキだけが冷静だった。彼女だけが人間とヒメリたちと触れ合ったことがあるからだ。
「だから悪いやつだけ排除しよう」
「ぐぎゅるる」
王は怒りの中、思い出していた。自分を受け入れ、優しく手当てしてくれたヒメリたちのことを。彼らを助けると約束した以上、一族の王として守らないわけにはいかない。
「ぎゅるる」
「そう、発端はデスカット。あれを人間に使わせるのをやめさせなきゃいけない。そしてユキたちはペテルギウスを止める」
ユキがハッと息を呑んだ。
「他の蜘蛛から連絡。ヒメリが危ない」
「ぎゅる」
「ぱぱ、助けに行ってくれるの?」
「ぎゅお!」
ユキは笑った。
「そうだよね。ヒメリは命の恩人。助けないわけにはいかないよね」
ユキが王の背中に乗る。王は糸を吐きながら跳んだ。
「ぎゅる」
「ぱぱ、ここからヒメリのいる場所が遠いの。急げる?」
王が咆哮を上げスピードを速める。ユキは嬉しそうに笑った。
✣✣✣
ヒメリは両手両足を拘束された状態で寝かされていた。着ていた服を脱がされて検査着のようなものを着せられている。自分がこれからどうなるのか分からない。恐怖だったが、ヒメリはそれを見せないよう心掛けた。蜘蛛たちはずっとガサゴソと動き回っている。ユキは今どうしているだろう。
「我はずっと待っていた。あの憎きクロードに復讐するのを!!」
ふははははとペテルギウスはおかしそうに笑う。彼はもう人間ではない。
「クロードさんがお前に何をしたんだ?」
「あいつは我から首席の座を奪ったんだ!あの程度の分際で!!」
ヒメリは呆れて何も返せなかった。だが、ペテルギウスはそれを畏怖したのだと勘違いしたらしい。楽しそうに話を始める。
「我は名家の出身なのである!他の者とは出来が違うのだ!だが王子、君は選ばれし者である!我と共に来るがいい!」
ヒメリはゾッとした。ペテルギウスが注射器を構えていたからである。デスカットだ、と咄嗟に思った。自分がどうなるのかという恐怖が過る。
「嫌だ!やめろ!!」
ヒメリはついに耐え切れず、悲鳴を上げた。
だが拘束されて動けない。
注射針が容赦なく左腕の肌に刺さる。
「ふぁ…!!」
薬が入った瞬間、あたりが暗闇になった。これはデスカットではないのだろうか。
ヒメリは辺りを見回そうとした。
だが身体が全く動かせない。そして何も聞こえなかった。
動かなくなったヒメリを見てペテルギウスは盛大に笑った。
「我が完全になるために!わはははは!!クロード、我はお前から大事なもの全てを奪い取るぞ!!絶対にだ!!」
ここにはペテルギウスの手から逃れてきた蜘蛛たちの巣がある。蜘蛛たちはずっと静かに反逆の時を待っていた。彼らはまだ小さく、力も弱い。だが素早かった。
「ぱぱ、みんな怒ってる。でも人間にはいい人もいる。だから」
ユキは頭上にいる巨大な蜘蛛を見上げた。彼はユキの父親であり、蜘蛛の王だ。今回のことに、彼は怒り狂っている。蜘蛛たちの中で唯一ユキだけが冷静だった。彼女だけが人間とヒメリたちと触れ合ったことがあるからだ。
「だから悪いやつだけ排除しよう」
「ぐぎゅるる」
王は怒りの中、思い出していた。自分を受け入れ、優しく手当てしてくれたヒメリたちのことを。彼らを助けると約束した以上、一族の王として守らないわけにはいかない。
「ぎゅるる」
「そう、発端はデスカット。あれを人間に使わせるのをやめさせなきゃいけない。そしてユキたちはペテルギウスを止める」
ユキがハッと息を呑んだ。
「他の蜘蛛から連絡。ヒメリが危ない」
「ぎゅる」
「ぱぱ、助けに行ってくれるの?」
「ぎゅお!」
ユキは笑った。
「そうだよね。ヒメリは命の恩人。助けないわけにはいかないよね」
ユキが王の背中に乗る。王は糸を吐きながら跳んだ。
「ぎゅる」
「ぱぱ、ここからヒメリのいる場所が遠いの。急げる?」
王が咆哮を上げスピードを速める。ユキは嬉しそうに笑った。
✣✣✣
ヒメリは両手両足を拘束された状態で寝かされていた。着ていた服を脱がされて検査着のようなものを着せられている。自分がこれからどうなるのか分からない。恐怖だったが、ヒメリはそれを見せないよう心掛けた。蜘蛛たちはずっとガサゴソと動き回っている。ユキは今どうしているだろう。
「我はずっと待っていた。あの憎きクロードに復讐するのを!!」
ふははははとペテルギウスはおかしそうに笑う。彼はもう人間ではない。
「クロードさんがお前に何をしたんだ?」
「あいつは我から首席の座を奪ったんだ!あの程度の分際で!!」
ヒメリは呆れて何も返せなかった。だが、ペテルギウスはそれを畏怖したのだと勘違いしたらしい。楽しそうに話を始める。
「我は名家の出身なのである!他の者とは出来が違うのだ!だが王子、君は選ばれし者である!我と共に来るがいい!」
ヒメリはゾッとした。ペテルギウスが注射器を構えていたからである。デスカットだ、と咄嗟に思った。自分がどうなるのかという恐怖が過る。
「嫌だ!やめろ!!」
ヒメリはついに耐え切れず、悲鳴を上げた。
だが拘束されて動けない。
注射針が容赦なく左腕の肌に刺さる。
「ふぁ…!!」
薬が入った瞬間、あたりが暗闇になった。これはデスカットではないのだろうか。
ヒメリは辺りを見回そうとした。
だが身体が全く動かせない。そして何も聞こえなかった。
動かなくなったヒメリを見てペテルギウスは盛大に笑った。
「我が完全になるために!わはははは!!クロード、我はお前から大事なもの全てを奪い取るぞ!!絶対にだ!!」
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