44 / 85
最後の希望
しおりを挟む
拘束を解かれたヒメリは病院に運ばれ、すぐに全身に及ぶ精密検査を受けた。医師に体に異常はないと言われた。だが、ヒメリは目を覚まさない。
クロードは藁をも縋る思いで病院からマスブチに電話を掛けた。
マスブチに事情を話すと、都心にいる実験チームを病院に向かわせると言ってくれた。
ヒメリを目覚めさせたい。クロードの心はそれでいっぱいだった。
「クロー、ヒメリさんの状態は?」
ロイと子供たちがやって来る。
クロードは首を横に振った。それを見てオリオが泣き出した。スバルが震える手でオリオがを抱きしめている。
「スバル、オリオ。まだ諦めるな。ヒメリは必ず目を覚ます。ヒメリは強い、そうだろ?」
クロードの言葉に二人は頷いた。
クロードは、マスブチのことをロイに話した。
彼が指揮する実験チームがここへ向かっていることも。ロイは驚いていた。それはそうだろう、マスブチは医学界では著名な人物として知られている。
確かに怪しげな研究もするが、結果的にそれがうまく行っている。彼の技術、知識は確かなのだ。
病院内は仄暗かった。長椅子に腰掛け、実験チームが着くのを待つ。ヒメリの容態が急変したりしないか、クロードはそれが怖かった。
オリオは待ちくたびれて眠っている。スバルもまた眠たそうだった。襲撃があったのは夜だ。二人共よく眠れていないのだろう。
「クロードさん、お待たせしました!」
バタバタと数人の若い男女がやってくる。彼らが実験チームのメンバーらしい。
「来てくれてありがとう」
「いいえ。我々としてもデータが欲しいのです。ヒメリさんを今の状態から回復できるかもわからないですし」
「とにかくやってみてくれないか?」
クロードの言葉に彼らは頷いた。医師の協力のもと、先程採取したヒメリの血液の成分を見ている。
「ヒメリさんはほとんど仮死状態に近い状態です。デスカットをかなり濃厚にしたものを注入されたのでしょう」
「じゃあヒメリは?」
クロードの頭の中を薬物依存という言葉が過る。ヒメリはデスカットに取り憑かれてしまったのかと。
「いいえ、ほとんどマスブチ先生の研究なのですが、デスカットの成分を分解して体の外に排出する薬を作ったのです。これなら薬物依存にならずに済みます」
マスブチの偉大さが改めて分かる。
「ですが、臨床試験がまだ完璧ではなくて。ただ、ヒメリさんのこの状態を見る限り、薬を投与したほうが良さそうですね。クロードさん、どうされますか?」
クロードは考えていた。安全かどうか分からない薬を愛する人に打つ。
だが、ヒメリの命は一刻を争う。
それならば選択肢は一つだ。
「薬を打ってほしい」
「分かりました。すぐ用意します」
実験チームのメンバーが医師と共に準備を始めた。てっきり注射だと勝手に思っていたが、点滴だった。しかもかなりの容量である。
「クロードさん、全て注入するまで、5時間以上かかります。お子さんたちには大変かと」
オリオとスバルはすっかり寝入ってしまっている。
「クロー、子供たちは署で休めばいい。仮眠室があるからな」
ロイの申し出がありがたかった。
「ありがとう、ロイ」
「お前が悪さをしなくなってよかったよ」
ロイの言葉に少し気恥ずかしくなったが、クロードは頷いた。ヒメリが早く目を覚ますといい。いつもは信じていない神にも今日ばかりは願ってしまう。ヒメリを助けてくれと。
クロードは藁をも縋る思いで病院からマスブチに電話を掛けた。
マスブチに事情を話すと、都心にいる実験チームを病院に向かわせると言ってくれた。
ヒメリを目覚めさせたい。クロードの心はそれでいっぱいだった。
「クロー、ヒメリさんの状態は?」
ロイと子供たちがやって来る。
クロードは首を横に振った。それを見てオリオが泣き出した。スバルが震える手でオリオがを抱きしめている。
「スバル、オリオ。まだ諦めるな。ヒメリは必ず目を覚ます。ヒメリは強い、そうだろ?」
クロードの言葉に二人は頷いた。
クロードは、マスブチのことをロイに話した。
彼が指揮する実験チームがここへ向かっていることも。ロイは驚いていた。それはそうだろう、マスブチは医学界では著名な人物として知られている。
確かに怪しげな研究もするが、結果的にそれがうまく行っている。彼の技術、知識は確かなのだ。
病院内は仄暗かった。長椅子に腰掛け、実験チームが着くのを待つ。ヒメリの容態が急変したりしないか、クロードはそれが怖かった。
オリオは待ちくたびれて眠っている。スバルもまた眠たそうだった。襲撃があったのは夜だ。二人共よく眠れていないのだろう。
「クロードさん、お待たせしました!」
バタバタと数人の若い男女がやってくる。彼らが実験チームのメンバーらしい。
「来てくれてありがとう」
「いいえ。我々としてもデータが欲しいのです。ヒメリさんを今の状態から回復できるかもわからないですし」
「とにかくやってみてくれないか?」
クロードの言葉に彼らは頷いた。医師の協力のもと、先程採取したヒメリの血液の成分を見ている。
「ヒメリさんはほとんど仮死状態に近い状態です。デスカットをかなり濃厚にしたものを注入されたのでしょう」
「じゃあヒメリは?」
クロードの頭の中を薬物依存という言葉が過る。ヒメリはデスカットに取り憑かれてしまったのかと。
「いいえ、ほとんどマスブチ先生の研究なのですが、デスカットの成分を分解して体の外に排出する薬を作ったのです。これなら薬物依存にならずに済みます」
マスブチの偉大さが改めて分かる。
「ですが、臨床試験がまだ完璧ではなくて。ただ、ヒメリさんのこの状態を見る限り、薬を投与したほうが良さそうですね。クロードさん、どうされますか?」
クロードは考えていた。安全かどうか分からない薬を愛する人に打つ。
だが、ヒメリの命は一刻を争う。
それならば選択肢は一つだ。
「薬を打ってほしい」
「分かりました。すぐ用意します」
実験チームのメンバーが医師と共に準備を始めた。てっきり注射だと勝手に思っていたが、点滴だった。しかもかなりの容量である。
「クロードさん、全て注入するまで、5時間以上かかります。お子さんたちには大変かと」
オリオとスバルはすっかり寝入ってしまっている。
「クロー、子供たちは署で休めばいい。仮眠室があるからな」
ロイの申し出がありがたかった。
「ありがとう、ロイ」
「お前が悪さをしなくなってよかったよ」
ロイの言葉に少し気恥ずかしくなったが、クロードは頷いた。ヒメリが早く目を覚ますといい。いつもは信じていない神にも今日ばかりは願ってしまう。ヒメリを助けてくれと。
0
あなたにおすすめの小説
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。
キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、
ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。
国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚――
だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。
顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。
過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、
気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。
「それでも俺は、あなたがいいんです」
だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。
切なさとすれ違い、
それでも惹かれ合う二人の、
優しくて不器用な恋の物語。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる