俺のカワイイ先生

はやしかわともえ

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おみやげ2

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午前中の施術が終わり、休憩時間になった俺たちは監視カメラの本体であるパソコンの画面の前にいた。
正しくはセンセは俺の後ろから覗きこんでいる。

「いんたーねっとってすごいな!
カメラの映像も見られるなんて」

「.....」

どこから説明したものか見当がつかなかったので、俺は黙ってマウスをクリックした。
センセの機械音痴は奇跡的なやつなので、正直俺の手には負えない。

画面にカメラの映像が映る。
時間を確認して巻き戻しをかけた。

「「あ」」

そこに映っていたのは、男性だった。
映像が遠くて顔までははっきりわからないが、黒いスーツを着ていることはわかる。
これが誰だか、俺たちにはすぐにわかった。

「銀次じゃないか」

センセはぽつり、と呟く。
謎は深まるばかりだ。

銀次さん、というのは、昨日お土産をくれた木下さんの部下だ。
木下さんは裏社会のドンなのだが、センセの整体の腕をとても買ってくれて常連さんになってくれたのだ。
銀次さんはその時に一緒についてきた。
木下さんの右腕だ。

「ますますわからないんだが?」

「銀次さんに聞きに行こうか?」

んー、とセンセは悩んでいる。
本当にカワイイなこの人は。

「先生!!」

誰かが駆け込んでくる。

「銀次!!」

そう、銀次さんだった。
今日は二回目の来院のはずだ。

「親父が!親父がいないんだ!!」

「木下さんが!?」

銀次さんは呼吸を整えて、俺たちに詳しく話し始めた。

「さっき、このメモを見つけて」

どうやら、木下さんは朝散歩に出かけたきり帰ってきてないようだ。
携帯を持たない主義の人で連絡も取れないのだと言う。
メモには「先生に頼んだ」とだけ書いてある。
なんのこっちゃ?
先生はメモを隅々までじっくり観察した。
俺も見たけれど特に変わった様子はない。

「なぁ、銀次。今日お土産をここに置いていっただろう?」

銀次さんは頷く。

「あぁ、親父に頼まれたんだ。
先生たちに見つかるなよってな」

「木下さんがそんなことを?」

センセは首をかしげる。

「それって、木下さんは始めからおみやげを2つ買っていたことになるよね?」

「だよな」

んー、とセンセは考えて、ぽん、と手を打った。

「思ったんだが」

なんだろう?と思っていると、センセはお土産の箱を2つ持ってきた。

「このお土産、消費期限が違うんだよな」

「本当だ」

1つは2017.10.1なのに、もうひとつは2017.09.30になっている。

「お土産を買った日にちが違うと思うんだ」

センセはそう言って先ほどのメモをぴら、と出して裏返した。

「これ、そのときのレシートじゃないか?」

「センセ、天才なの?」

メモに使われていたレシートには一点だけ買ったことが印字されている。
確かに買った日が違うかもしれない。
レシートには薄く道の駅の名前が書いてある。

「例えば、行きに立ち寄って買って、そのあと帰りに買ったとかな。
泊まりだったらできるだろ?」

「でも、親父はどこにいるんだ?」

センセは笑った。

「銀次、木下さんは何をしにここに行ったんだ?」

銀次さんはおどおどと答える。

「おかみさんの墓参りだ」

センセはしばらく考えて答えた。

「ここからは俺の推測だが」

センセはまた笑った。
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