俺のカワイイ先生

はやしかわともえ

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スノードーム

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木下さんのおみやげ騒動から早2ヶ月。
あのあとセンセに性的な意味で襲いかかった俺は、びっくりしたセンセにぶん殴られて玉砕した。
腕っぷし強すぎるだろ、センセ。
とりあえずセンセとの関係はあまり変わっていない。
切ない。
朝ごはんを食べながらセンセはテレビを見ている。
もうすぐクリスマスなわけで、今度こそは!と計画をひそかに立てているんですよ。
ひひひ。

「紗輝くん、スノードームってなんだ?」

「え?」

ぱぁぁ、と顔を輝かせながらセンセは尋ねてくる。
あぁ、テレビでやってるのか。
えーっと、なんて説明すれば?
ちょうど、スノードームが映ったので俺は指をさして示した。

「あれですよ。ドームをひっくり返すと雪が降ってるみたいな」  

「きれいだな!」

センセカワイー。
ん?スノードームって意外と高いな。
値段を聞いて驚いた。
万って??

「意外とするんだな」

センセも驚いている。

「あ、センセ、早く食べて準備しないと」

「そうだな!」

納豆ご飯をあわててかきこんで味噌汁で流し込む。

「片付けしとくんで」

「ありがとう、ごちそうさま!」

今日センセは研修に行かなくてはいけないらしい。
電車なんか滅多に乗らない人なので、何度も乗り換えについて確認された。
ついていきたいけど、俺は部外者だからなー。

「紗輝くん、留守を頼む。
いってきます!」

「行ってらっしゃい」

手を振られたので振り返した。
今の新婚っぽかった。
あぁ、そうだった。片付けしたりしないと。
俺は食器を片付け始めた。

掃除をしたりして暇を潰すことにした俺は、風呂場にいた。
今日センセが入るときまでにぴかぴかにしよ。
ピンポーン、とインターホンが鳴る。
誰だろ?

手を洗って慌てて出た。

「どうも!郵便局です!」

「あ、どうも」 

「橘紗輝様にお届け物です」

俺に?
サインをして荷物を受け取った。
なんだろう?
包みは白い包装紙にくるまれている。
送り主を見たら常連さんだった。
佐伯さんというおばさんだ。
でもなんで俺に?
はてな、と思いながら包装紙を破いて中身を出してみる。
すると、スノードームと手紙が入っていた。
手紙を読んでみる。
そこにはこう書いてあった。

「先生に渡してください。
お礼です。
直接渡すのは恥ずかしいので、紗輝くんにお願いします」

お礼?なんだろう?
なにかしてあげたんだ。
ちょっともやもやするけど。
帰ってきたら渡すか。
スノードーム欲しがってたし喜ぶよね。
俺は試しにスノードームをひっくり返してから置いた。キラキラと雪がドーム内を舞っている。
本当にきれいだなぁー。

あ、掃除をしていたんだった。
戻らないと。
鼻唄を歌いながら浴槽をスポンジで擦る。
カビも今日は全部退治する。

そんなこんなで夜、センセが帰ってきた。

「ただいま!」

「電車大丈夫だった?」

それがな、とセンセは照れ笑いをする。

「逆方向に乗ってしまった。
すぐ気がついたけどな」

危ないなぁ、この人。

「ん?」

センセがスノードームに気付いた。

「これなんだ?」

「あぁ、佐伯さんからセンセにお礼だって」

センセは考えて、あぁ、と頷いた。

「なにがあったの?」

俺の言葉にセンセは笑う。

「一昨日、クリスマスプレゼントを届けたんだ」

どうゆうことだろう?

「な、紗輝くん、お腹すいたし、なにか作って食べないか?
今日はワインを飲みたくなったから買ってきたんだ」 

センセはボトルの入った袋を俺に見せた。

「さっきのこと話してくれるんだよね?」

「肴になるかは保証できないぞ」

冷蔵庫を開けてつまみになりそうなものを探す。
チーズがあった。
あと適当に野菜炒めでも作ろう。
そう考えて俺は調理を始めた。

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