ゲーマー白雪姫は今日も最強です。

はやしかわともえ

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3・白雪姫、出会う

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「雪、お前、アイスティーでいいのか?」

「うん。宵はどうするの?」

 今、雪は宵と夜の映画館に来ている。一緒にレイトショーを観に来たのだ。ずっと観たかった作品で、いよいよ今日観られると雪はものすごく楽しみにしていた。

「あの…」

 トントンと肩を叩かれ、雪は振り返った。相手は可愛らしい人である。その人は何かを差し出してきた。

「チケット落としましたよ」

「わ、本当だ!すみません、ありがとうございます」

 雪は慌ててその人からチケットを受け取った。

「あの…」

「はい?」

 雪が相手をまじまじと見つめると、やっぱりとその人は呟いた。

「あの、プロゲーマーの本条雪さんですよね?」

「え、あ、そうです!」

 ぱああと相手の顔が輝く。

「あの、握手してください」

「え?あ、はい」

 雪が差し出された手を握り返すと、きゅと更に握られた。

「ありがとうございます」

「あ、そんな、ドウモ…」

「翼さん、こんなとこにいた」

 熊のような男性がやって来て、雪は固まった。宵もでかいがそれを遥かに凌ぐ。

「あ、ごめんね、大地君。じゃあ」

 翼と呼ばれたその人は頭を下げて行ってしまう。

「雪、どうした?」

「やばい人に会っちゃった…かも?」

「なんだ?」

 とりあえずシアターに入ろうと宵に促され、雪は従った。座席に収まるが、先程から心臓の鼓動が煩い。

「一体、誰に会ったんだ?」

「さっきの人、イラストレーターの沢村翼さん…だったかも」

「え…」

 宵もぽかんとしている。

「とりあえずアイスティーを飲め。俺もウーロン茶を飲むから」

 どうやら宵は宵で混乱しているらしい。二人は飲み物を一口飲んだ。二人揃って息をつく。先に口を開いたのは宵だ。

「沢村翼ってあれこれキャラクターデザインしてるよな?」

「うん、今俺がハマってるロイヤルソードもそう」

「そうか…まあとりあえず映画に集中しよう。せっかく楽しみにしてたんだから」

「宵の言う通りだよ」

 しばらくすると映画の予告が流れ出した。映画自体はとても楽しめて満足だったが、先程のことを思い返すと、翼のサインが欲しかったと思ってしまう。まだ本人と確認出来たわけではないが、雪の勘はこんな時、当たるのだ。

「翼さんの創るキャラクターはかっこいいよな」

 帰りの車の中で唐突に宵が言った。彼なりに気遣ってくれているのだと雪も気が付く。

「そう、とにかくモーションにこだわっててかっこいいよね」

 雪は何気なくスマートフォンの画面を見た。誰かからSNSのダイレクトメッセージが届いている。開いてみると、翼本人からだった。

「はぁ?え?はぁ??」

「どうした?雪?」

「翼さんからメッセージ来てる。俺フォローしてたけど、されてたのは気付かなかった」

「あー、まあお前のフォロワーも随分いるからしょうがないよ」

 で、なんだって?と宵に促されて、雪はメッセージを読み上げた。

「動画いつも見てます。ロイヤルソードのガチャ配信見ました。雪さんにプレイしてもらえて嬉しいです…だって」

「すげえな。雪、良かったじゃないか」

「返事したほうが良いよね?」

「そりゃそうだろうな」

 雪は何度も文章を打ち直してなんとか送信した。

「宵、送れた。ありがとう」

「いや。お前、今日泊まってくんだろ?軽く飲もうぜ」

「うん」

宵と久しぶりに飲めるのが嬉しくて、雪は笑った。
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