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12・小さな年上
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漫研の部室に行くと、珍しいことに心海一人だけだった。部室はしん、と静まり返っている。
(誰もいないのかな?)
部室内の電気を点けようとして、心海は違和感に気が付いた。何かがいる。
「誰?」
いつの間にか雨が降り雷が鳴っている。部室内を雷がピシャリと鳴らす。そこにいたのは小さな人だった。心海の肩くらいまでの身長の彼は心海を見てニイイと笑った。薄紫の長い髪の毛を結って肩に流したその人は恐ろしい程美しい。
心海は怖くなり後ずさったが、逃げるという判断すら出来なかった。
「君が心海?エイタがいつも君の話をしているよ。可愛いね。今日は話があって来たんだ。お茶もお菓子もあるから、まぁゆっくりしていってくれたまえ」
心海は混乱していたが、素直に従うことにした。相手は瑛太のことを知っている、そう思ったからだ。
「僕はスイケ。エイタのいとこだよ。意外に見えるかもしれないけれど、僕は君より年上だ。王国で教師を務めている」
急なことに心海はついていけなかった。彼が年上であることも仰天なのに、王国という聞き慣れないワードまであっさり出てくる。
「えっと、スイケさんは外国の人なんですか?」
「厳密には違うけど、そのようなものだと思って欲しい」
スイケの言葉に心海は疑問を感じる。正直なところ、分からないことばかりだ。
「でね、リツのことなんだけど」
何故律の名前が出てくるのだろう、と心海は焦った。
「りっくんのことを知っているんですか?」
震える声で尋ねたら、スイケに落ち着いてと頭を撫でられていた。スイケが基本的に優しい人であることは間違いない。
「リツはある事故でこの世界に流れ着いたんだ。
向こうの世界にあるあの子の因果を解かなくては」
「え…どういうこと?何かの漫画の話ですか?」
スイケがにっこり笑う。
「現実の話だよ。この世界以外にも沢山の世界が存在しているんだ」
「…つまり、多次元世界ってこと?」
「そうだよ。架空のものと思われがちだが、それは現実なんだ」
「りっくんはどうなるの?」
「リツを向こうの世界に連れて行く必要がある」
「でも大学だってあるのに」
「君たちには長い夏休みがある。違うかな?異次元も悪くないよ。心海、君にも一緒に来て欲しい」
「…行きます。絶対に行きます!」
「スイケ!!何をやってるんだ!」
やって来たのは瑛太だ。心海は急にホッとした。
「おや、人払いの術をかいくぐってくるなんて、エイタもなかなかやるようになったね」
「僕だって成長してるさ。ここちゃん、大丈夫?」
「瑛太くん、りっくんは異次元の人なの?もしかして君もそうなの?」
心海の瞳から涙が溢れてくる。怖くて怖くてたまらなかった。瑛太が心海を抱きしめる。
「大丈夫だよ。因果を解けば律くんはこの世界で暮らせる。まさか彼がこの世界に来ているなんて」
「りっくんはこのことを知っている?」
「いや、多分忘れてしまっている。彼の父親は伯爵なんだ。今まで気が付かなかったなんて僕も平和ボケしていたよ」
「エイタ、君はまだまだだなぁ」
「うるさいよ」
とりあえず落ち着いて、と瑛太に言われて心海は頷いた。
「大丈夫、まだ夏休みまで時間があるから、律くんにも説明出来る。きっと彼の中でも変化が起きているんじゃないかな」
「俺はどうすればいい?」
「ここちゃん、大丈夫。律くんと変わらずに生活をすればいいんだ」
「分かった」
やっと涙が止まってくれた。
「あ、遊園地、僕も行くからね!」
スイケの申し出に瑛太はため息を吐いた。
(誰もいないのかな?)
部室内の電気を点けようとして、心海は違和感に気が付いた。何かがいる。
「誰?」
いつの間にか雨が降り雷が鳴っている。部室内を雷がピシャリと鳴らす。そこにいたのは小さな人だった。心海の肩くらいまでの身長の彼は心海を見てニイイと笑った。薄紫の長い髪の毛を結って肩に流したその人は恐ろしい程美しい。
心海は怖くなり後ずさったが、逃げるという判断すら出来なかった。
「君が心海?エイタがいつも君の話をしているよ。可愛いね。今日は話があって来たんだ。お茶もお菓子もあるから、まぁゆっくりしていってくれたまえ」
心海は混乱していたが、素直に従うことにした。相手は瑛太のことを知っている、そう思ったからだ。
「僕はスイケ。エイタのいとこだよ。意外に見えるかもしれないけれど、僕は君より年上だ。王国で教師を務めている」
急なことに心海はついていけなかった。彼が年上であることも仰天なのに、王国という聞き慣れないワードまであっさり出てくる。
「えっと、スイケさんは外国の人なんですか?」
「厳密には違うけど、そのようなものだと思って欲しい」
スイケの言葉に心海は疑問を感じる。正直なところ、分からないことばかりだ。
「でね、リツのことなんだけど」
何故律の名前が出てくるのだろう、と心海は焦った。
「りっくんのことを知っているんですか?」
震える声で尋ねたら、スイケに落ち着いてと頭を撫でられていた。スイケが基本的に優しい人であることは間違いない。
「リツはある事故でこの世界に流れ着いたんだ。
向こうの世界にあるあの子の因果を解かなくては」
「え…どういうこと?何かの漫画の話ですか?」
スイケがにっこり笑う。
「現実の話だよ。この世界以外にも沢山の世界が存在しているんだ」
「…つまり、多次元世界ってこと?」
「そうだよ。架空のものと思われがちだが、それは現実なんだ」
「りっくんはどうなるの?」
「リツを向こうの世界に連れて行く必要がある」
「でも大学だってあるのに」
「君たちには長い夏休みがある。違うかな?異次元も悪くないよ。心海、君にも一緒に来て欲しい」
「…行きます。絶対に行きます!」
「スイケ!!何をやってるんだ!」
やって来たのは瑛太だ。心海は急にホッとした。
「おや、人払いの術をかいくぐってくるなんて、エイタもなかなかやるようになったね」
「僕だって成長してるさ。ここちゃん、大丈夫?」
「瑛太くん、りっくんは異次元の人なの?もしかして君もそうなの?」
心海の瞳から涙が溢れてくる。怖くて怖くてたまらなかった。瑛太が心海を抱きしめる。
「大丈夫だよ。因果を解けば律くんはこの世界で暮らせる。まさか彼がこの世界に来ているなんて」
「りっくんはこのことを知っている?」
「いや、多分忘れてしまっている。彼の父親は伯爵なんだ。今まで気が付かなかったなんて僕も平和ボケしていたよ」
「エイタ、君はまだまだだなぁ」
「うるさいよ」
とりあえず落ち着いて、と瑛太に言われて心海は頷いた。
「大丈夫、まだ夏休みまで時間があるから、律くんにも説明出来る。きっと彼の中でも変化が起きているんじゃないかな」
「俺はどうすればいい?」
「ここちゃん、大丈夫。律くんと変わらずに生活をすればいいんだ」
「分かった」
やっと涙が止まってくれた。
「あ、遊園地、僕も行くからね!」
スイケの申し出に瑛太はため息を吐いた。
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