人気ミステリー作家に口説かれています!

はやしかわともえ

文字の大きさ
15 / 41
2

期末試験

しおりを挟む
(緊張する…)

俺は今、講義室の前にいる。
今日から一週間、期末試験だ。これが終われば長い夏休みに入る。
でも、瑠馬先生のゼミは休み中もあるから気は抜けない。
(どうやら研究というものに休みはないようだ)
ガッツリ課題のレポートも出ている。
やれやれ、夏休みもなんだか忙しそうだな。

周りの生徒もテキストや授業で取ったノートを改めて見直したり、こちらにも緊張が伝わってくる。

(皆緊張してるのは一緒か)

俺は一度深呼吸をした。
今回の試験に向けて、俺はかなり勉強したつもりだ。

だってそうじゃなきゃ瑠馬先生を始め、講義をしてくれた先生方を裏切ることになってしまう。
分からない問題や疑問にはしっかり答えてくれる先生達だ。
俺がちゃんと理解できているか、ここで試すんだ。

(頑張ろ)


時間が来て試験は始まった。


✣✣✣

「ぐぁー!試験疲れたー!」

「俺も疲れたよ」

瑠馬先生の研究室に向かおうとしていたら裕太が来たので一緒に行くことにした。

「あ、そうだ」

俺は背中に背負っていたリュックを下ろして中からあるものを取り出した。

「はい、遅くなったけど、誕生日プレゼント」

「わー!うまかぼーじゃん!!
やべ!チョコレートもある!贅沢!ありがとうなー!」

「いえいえ」

裕太に渡したのは駄菓子の大袋だ。
ディスカウントショップで山盛りに積まれて売られているやつである。

「妹さん、なんかしてくれたのか?」

裕太が照れたように笑う。
こりゃあなにかあったな。

「それがさ、いきなり二人で出かけようって言われて、映画を見たんだ。俺が前に見たいって言ってたやつでさ」

「なんか妹っていいな。家は姉ちゃんだから」

「え?いいじゃん、お姉さん」

裕太は何も分っていない。
俺は姉ちゃんの顔を思い出した。
優しい時もあるけど、大抵怒られている気がするぞ。

「失礼しまーす」

いつの間にか研究室に着いていた。

「やぁやぁ、二人共!
試験お疲れ様だね!」

瑠馬先生はコーヒーを飲んでいたようだ。仕事が一段落付いたのかな?

「先生もお疲れ様です!」

裕太が元気に返事している。

「うん、元気そうで何よりだよ。そうそう、二人に夏休みのゼミ日程を渡しておくね」

「ありがとうございます」

瑠馬先生がプリントを渡してくれた。俺達は各自それを眺める。

(思っていたよりゼミの日程は少ないな…でも)

研究は夏休み中に完了するように動くという内容が書かれている。
つまり。

「各々で手分けして調べなきゃってことですか?」

「さすがたっくん、よく分かってるね。君達にはいろは唄の基本を押さえてほしいんだよ」

「わー、拓哉。よろしくな!」

「うん、こちらこそ」

俺達は拳をぶつけ合った。
基本であればそう難しい話じゃない。

「うんうん、仲が良くて何よりだよ。そうだ、コーヒー飲むかい?」

「あ!俺、次の時限試験なんでそろそろ行かないと!失礼します!!」

あ、と言う間に裕太は走って行ってしまった。

「ふむ。裕太くんは言語専攻だったね。たっくんは?」

「俺は午後からです」

瑠馬先生が目を輝かせた。
こんな時は何かある。

「たっくんに相談なんだけど、夏休み、一緒に旅行に行かないかい?
取材で行きたい場所があるんだ」

「一緒に行っていいんですか?」

「うん」

瑠馬先生に耳元で囁かれる。

「きっと楽しいよ」

それにどきりとした。
瑠馬先生はやっぱりかっこいい。

「たっくん、僕は君が好きだ。
だから無理はしないでね」

「はい。気を付けます」

俺は研究室を後にして学習室に向かった。今日はいつもより生徒の数が多い。俺は隅の席に座った。
午後の試験も頑張るぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...