陰キャ(♂)ですが伯爵令嬢やってます!

はやしかわともえ

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ねむねむシャオリィと羽音

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シャオリィは海に来ている。シャオリィの住むこの国、フランレシアは海に面した小さな国だ。もうすぐ夏が来る。この時期になると毎年シャオリィの家、レボン家は近くの別邸へ2週間ほど小旅行に出かける。シャオリィはパラソルの下で椅子に寝そべって休んでいた。この暑さにすっかり参ってしまっている。

「リィ、体調は大丈夫か?」

兄であるリクに尋ねられ、シャオリィは頷いた。

「大丈夫だよ。母様がレモネードを作ってくれたの」

シャオリィが笑顔で答えると兄もホッとしたようだ。泳いでくると行ってしまった。シャオリィは起き上がって、レモネードを一口飲んだ。ほのかな酸味が口の中で爽やかに弾ける。

「シャオリィ、殿下も来てくださるんでしょう?」

隣にいた母親に問われて、シャオリィはそういえばと思い出していた。

「シリウスさまは今、公務に行かれてるから忙しいと思う」

「あら、そうなの?残念ね」

シャオリィはこの旅行のことをシリウスに伝えていた。シリウスもはじめは一緒に来るつもりでいたらしい。だが急に仕事が入ったと電話が来たのだった。シャオリィは一瞬寂しい気持ちになったが兄たちが楽しそうに遊んでいるのを見て、気持ちを切り替えた。せっかく楽しい旅行に来ているのだ。楽しまなくてはもったいない。

「母様、ちょっと歩いてきていい?」

「あんまり離れないでね」

「約束する」

シャオリィは日傘を差して砂浜に沿って続いている歩道を歩いている。

「シャオリィ、1人かい」

シャオリィは足を止めた。目の前にいたのは魔女だ。

「魔女様?なんで」

「この間は邪魔が入って君の願いを聞けなかったからね。僕に叶えて欲しい願いがあるんだろう?」

「魔女様…俺…」

シャオリィは魔女に近付いた。またブブブと耳障りな羽音がする。

「チッ、またか。シャオリィ、伏せるんだ」

シャオリィは言われた通り伏せた。巨大なイナゴが無数に飛んでくる。魔女は自分とシャオリィの周りにバリアを張った。

「この虫は?」

「どうも僕のことを恨んでいる輩がいるようだね
。全く、面倒くさい」

魔女が腕を振ると空から光の矢が降り注ぎ虫たちを消滅させる。ふう、と魔女は息を吐いた。虫たちを全滅させたようだ。

「魔女様、守ってくださってありがとうございます。あの、俺…」

シャオリィはずっと思っていたことを言った。

「俺、この病気とずっと付き合っていきます」

「シャオリィ…」

魔女はじっとシャオリィを見つめて笑った。

「僕の力にはいつでも頼ってくれていいんだよ」

「ありがとうございます。魔女様もお気を付けて」

シャオリィが気が付くと、シリウスがいた。彼に抱えられている。どうやらまた自分は意識を失っていたらしい。

「シャオリィ、大丈夫か?」

「シリウスさま?お仕事は?」

シリウスがシャオリィを抱き上げて歩き出す。 

「ずっとお前と離れてろってか?」

「そんなこと…」

シャオリィは嬉しくなって、シリウスの首に抱き着いた。

「あのね、シリウスさま?」

「ん?」

「俺、魔女様に会えたよ」

「願いは叶えてもらえたのか?」

「俺、あげられるもの、何も持っていないもの」

そうか、とシリウスが笑った。

(あの虫はどこから来たのかな)

魔女を恨んでいると言っていたなとシャオリィは思い出していた。

「シリウスさま、魔女様は恨まれるようなことをしているの?」

シャオリィが先ほどあったことを説明すると、シリウスが唸った。

「願いが叶っても結果に納得出来なければ恨むかもな」

「そんな…」

「魔女はどうもお前が好きみたいだな」

シリウスが寂しそうに呟いたので、シャオリィは慌てた。

「シリウスさまが一番だよ?」

「シャオリィ、愛してるよ」

うん、とシャオリィは頷いた。
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