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一章・素朴チャーハン

カルマは空腹だった

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「カルマ、ご飯よ!」

毎朝、母さんが階下から僕にこう声をかけてくれる。
僕はそれに寝ぼけながらもなんとかベッドから起き上がる。ぐっと体を伸ばす。うん、今日も僕は元気だ。
よし、今日も沢山ご飯を食べるぞ!
なんていったって、僕はご飯を食べるのが大好きなんだ。僕のアビリティはいつだって食いしん坊なんだろうからね。

「おはよう、母さん。父さんは?」

食卓につくと、いつも難しい顔で新聞を読んでいる父さんがいなかった。
母さんが指を差す。そこにあったのはテレビで
、ちょうど父さんが映し出されていた。

「今日はお父さん、審査員長だって張り切ってたでしょう?もう、カルマったら」

そうだった。つい朝ゴハンのことで頭がいっぱいで忘れていた。
僕の住む国、日本食大国にはあらゆる国のあらゆるメニューがほとんどすべて混在している。
とにかく国民は食に貪欲で、動画サイト「りょー厨ぶ」で新しいレシピを見たり、生配信を見ながら、インフルエンサーの人と一緒に料理を作って楽しむなんて日常茶飯事だ。僕も学校で、調理師の資格をついこの間取った。本当なら一人前を目指すために、すぐにでもどこかの店に就職をするべきなんだけど。僕には今の所、1件も内定はない。500件はエントリーしたのにおかしいな。

「ほら、早く食べちゃって。
お父さん、カルマが応援に来てくれるって喜んでたわよ」

「うん」

僕は母さんが出してくれたおかずたちを見て、つい唾をごくんと飲み込んでしまった。
ホカホカのご飯で握った色とりどりのおにぎり、具がたっぷり入ったアツアツの味噌汁。
分厚い玉子焼きやソーセージまである。
母さんは料理がとにかく上手い。そりゃそうだよな。
この国を取り仕切っている料理人組織のトップの妻なんだから。
つまり僕はサラブレッドってやつのはずなんだけど。おかしいなー、内定がないのは、なにかの手違いかな?

「頂きます」

手を合わせて、僕はご飯を食べ始めた。まずは小さめなサイズのおにぎりにかぶりつく。
味付きの昆布って、なんでこんなに白米に合うんだろう。っていうか、昆布を白米と一緒に食べるっていう発明をした人に国民栄誉賞をあげたい。ううん、もう送り付ける。

「カルマって本当に美味しそうに食べるわよね」

「だって、美味しいもん」

飲み込んでそう答えたら、母さんが嬉しそうに笑ってくれた。僕も自分の作った料理で誰かを幸せにできたらどれだけいいだろう。

僕は朝ゴハンを完食した。わぁ、お腹いっぱい。これで昼まで安心してダッシュ出来そうだ。
着替えてカバンを持つ。弁当は絶対に忘れない。これがあるから頑張れる。

「行ってきます!」

「気を付けてね!」

父さんはフードフェスティバルの会場にいる。
今日から三日間、街の中央にある広場でフェスティバルは開催される。僕もこのフェスティバルで色々お手伝いを頼まれてるし頑張るぞ!
僕は広場に向かって走り出した。
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