僕の死亡日記

はやしかわともえ

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十話・死亡日記

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「詩史…ちょっといいか?」

夜、自室で課題をしていたらドアを開けた兄さんに声を掛けられた。ちょうど教科書を見ても分からない問題があって、聞きたかったところだった。

「あれ?」

兄さんが部屋に入ってきて声を上げる。どうしたのかと思って、僕も振り返った。獅子王がベッドに座って僕の漫画を読んでいる。全然気付かなかった。

「し、獅子王?」

「主人、やっと俺に気付いてくれたか!」

獅子王がにかっと笑う。僕が放置したみたいで決まりが悪い。僕が困って兄さんを見ると、兄さんも肩をすくめた。

「あの、獅子王ってもしかして」

兄さんがおずおずと獅子王に声を掛ける。

「鵺を討伐するならこの獅子王にお任せだ!」

「詩史、本当にこいつ」

僕は頷いた。

「この子は本当の獅子王だよ。僕と一緒に鵺と戦ってくれた」

「お前たちに見せたいものがある」

兄さんだって勉強で忙しいだろうに。兄さんが出した物、それは例の死亡日記だった。
あの時に体験した怖い思いが再燃する。ここに持ってきていたんだ。

「日記に新しいページが増えているんだ」

「え?」

兄さんの言葉に僕は鳥肌が立った。兄さんが死亡日記のページを捲る。

「七月十日 獅子王がおれのもとにやってきてくれた。これでぬえをたおせる」

兄さんが音読する。確かにこんなページはなかった。最後のページにはこの日記の書き手が恐怖のあまり自害する所で終わっていたはずだ。つまり、過去が変わったことになる。獅子王の存在を僕たちが見つけたからだろうか?それに、鵺にやられっぱなしなのは癪に触るよな。あいつはおばあちゃんを死なせた張本人で、清おじさんを操った酷いやつだ。

「獅子王、お前がいれば鵺を本当に倒せるのか?」

兄さんの言葉に獅子王は笑った。

「当たり前だ!実際に討伐出来たから俺は博物館にいるだろう?」

その通りだ。獅子王が姿勢を正す。

「今回は鵺を完全に葬るため、俺に協力して欲しい。もう蘇らせないように、犠牲者を出さないように。前の主人も戦った。そして、鵺を追い払った。今の主人にもきっとそれが出来る。いや、やつを地獄に追いやれる」

「うん、獅子王。一緒に頑張ろう」

僕たちは手を重ねた。獅子王は本当に華奢だ。あの美しい刀剣のままだ。獅子王が眠たいと言って小さくなって眠り始めてしまった。どうやら自在に体のサイズを操れるらしい。便利だな。
僕が兄さんに問題について尋ねるとすらすらと解説してくれる。

「詩史、無理はするなよ」

僕の頭に優しく手を置いた兄さんに僕は笑った。

「兄さんもね」

また僕たちは鵺と戦わなきゃいけない。でも僕には兄さんも獅子王もいる。きっと大丈夫。僕にだってやり遂げられるさ。絶対に死んだりしない。
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