せっかく転生したので思いきってブランド起業してみました!

はやしかわともえ

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強くてニューゲーム!

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「まぁ笑ったわ」

「なんて可愛らしい子なんだ」

僕が気が付くと、沢山の笑顔に囲まれていた。ここはどこなんだろう、と一瞬怖くなったけど両手を挙げるくらいしか出来ない。どうやら僕はまだ赤ちゃんで、眼の前にいる人たちは両親らしい。僕が腕を上げて声を上げると喜んでくれる。

「レリー、あなたも来なさい」

レリーと呼ばれたのはまだ小さな男の子だった。どうやら彼は僕の兄らしい。金髪の髪を後ろで結った綺麗な子だ。彼は僕の顔をじっと見つめて、わぁと笑った。

「母様たちと同じ色の目をしているね。早く一緒に遊びたいなぁ」

ん?と僕は思った。母様たち、という言葉が引っ掛かったのだ。先程見た母様と父様の瞳はそれぞれ違う色をしていた。もしかして僕って。

「オッドアイなんて珍しいわよね。きっと神様が愛してくれてるのね」

「レリーも立派な兄として振る舞うんだぞ」

「もちろんです!僕の妹、マオレイは僕が守ります!」

僕はマオレイという名をもらったらしい。さて、これからどうなるんだろう?



僕、篠崎あやめはパッとしない女の子だった。周りからはブスだとか暗いから近寄るなとか、散々なことを言われて育った。ある日、何かがプツンと切れて、僕は自分の腕をカッターで切った。そこから記憶がない、ということは死んでしまったということなのだろう。今から冷静に考えれば、死ぬ前に色々出来ただろうと思う。僕には僕なりの夢があったし、それを頑張って叶えることだって出来たはずだ。人は追い詰められてしまうと、判断が鈍るという、いい例だ。

に、してもだよ?

「マオ!可愛い。大きくなったら僕と結婚しようね!」

僕は5歳になっている。レリー兄様の求婚に始めはびっくりしたけれど、段々慣れてきたな。

「兄様、兄妹は結婚できないよ」

まだ僕は5歳だ。どうしても舌足らずになるけれど、しっかり意思はある。レリー兄様は固まった。そして半分泣きそうになりながら言う。

「そうなの?」

「大丈夫だよ。レリー兄様はかっこいいし、すぐ相手が見つかるから」

「…」

レリー兄様が明らかにしょんぼりしている。僕はレリー兄様に駆け寄って言った。

「大丈夫。僕はずっとレリー兄様の妹だよ」

「マオ!」

ぎゅううとレリー兄様に抱き締められる。

「レリー、そろそろお勉強の時間よ」

母様がやって来て言う。僕の家は特別裕福な家だった。だって父様は伯爵だしね。前世を思うと大分差があるなぁと苦笑するしかない。

「マオレイ、庭のお花にお水をあげてきて頂戴」

「はい、母様」

僕は言われた通り、鉄製のじょうろに水を汲んで庭の花に水をやり始めた。どうやらこの世界、科学やインフラは発達しているのに、随分古風な暮らしをしている。ほのぼのファンタジーと言ったら伝わるだろうか。
もちろん魔法だって使えるし、ギルドや冒険者という概念もある。ダンジョンだってあるのだ。
でも生憎、僕は戦いを好まない。なら何がしたいかと言うと、【自分のお店を持ちたい】ということだ。前世から漠然と、僕はこんなことを思っていた。でも自分に自信がなくて、周りには言えていなかった。だけど、もう繰り返さない。夢は叶えるためにあるのだから。
やり直しの機会をこうしてもらえたのは、チャンス以外の他でもない。僕は書斎にある本を読み漁って、簡単な魔法を自力でひとつ習得していた。
どんな魔法か、と言われるとそんなにすごいものじゃない。それは【作る】魔法だった。
でもゼロからなにかを作れるわけじゃない。ちゃんと材料が必要なのだ。しかも僕にはこれ以外の魔法を扱えないらしかった。でも、僕にはこれだけで十分だった。何かを作れればお店で売り物に出来る。でも何を作ろうと僕の思考はそこでストップしてしまっていた。

 ある日のこと、僕はお気に入りのお人形の髪の毛をブラシで梳いていた。茶髪でそばかすのあるその子を僕はとても可愛がっていた。でも服に綻びが出来てしまっている。母様に直してもらおうと思った瞬間、僕は閃いていた。

【自分で直せるかもしれない】と。
服があるのだから、材料はある。胸がドキドキした。本当に出来るかどうか分からなかったからだ。僕は息を吐いた。まずは落ち着かないと。

「ユース」

お人形に手を翳してそう唱えると、光がキラキラと溢れだして、元通りの服が出来ていた。しかも新品同然になっている。

「出来た!」

僕は嬉しくてお人形を抱き締めた。

「マオ!何かあったの?」

レリー兄様がやって来て尋ねてくる。僕は人形を差し出した。

「あれ?随分綺麗になったね?」

兄様になら本当のことを話してもいいと僕は判断していた。

「マオの魔法で?なら、服を作れるってこと?」

ん?と僕は首を傾げた。

「だって材料があればなんでも作れるんだろ?将来、店が持てるんじゃないかな?」

その通りだ。レリー兄様、天才。

「それに僕があちこちに宣伝して回ればいいんじゃないかな?」

「本当?」

「マオの為ならそれくらいやるよ」

僕はレリー兄様に抱き着いていた。
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