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妃殿下の正体
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僕は城のそばにある温室に来ている。ここで生花を作っているのだ。僕は香水作りをしようとずっと考えていたけど、なかなか出来ずにいた。
何故なら、ここ数年の売り上げが安定しなかったからである。レイチェルのお陰で凌いだようなものだ。税金なんかも引かれて、更にそこから値上がった材料費を引いたら僕の稼ぎなんかほとんど残らなかった。でもブランドの名前に傷をつけるわけにはいかない。僕は今まで積んできた貯金に手を付けた。そこからしばらく、苦しかったけど僕はなんとか乗り切った。それから少しずつ稼ぎが増えてきた。
そこで僕は決めた。もう迷っている場合じゃない、ずっとやりたかった香水作りに着手しようと。端末で調べてみたところ、香水は無水エタノールと精油を混ぜることで作れるらしい。無水エタノールなら近くの薬局に安価で売っているから、問題は精油だ。僕の魔法なら精油も多分作れる。でも原料の花をどうするかと考えた挙げ句、近くの花農家さんに声を掛けてみたのだ。
僕は休みを利用して今ここにいる。
「わぁ、いい香り」
「まさかローズキャットの社長さんがこんなに小さいお嬢さんだとは思わなんだよ」
「えへへ」
僕はぽり、と頬を掻いた。農家さんが作っている花は約30種ほど。色々説明を聞いて、僕はその中から3種に花を絞った。
香りが華やかなバラ、ほんのり香るカスミ、そして印象的な香りのチューリップだ。この花たちから原料を取る。僕は温室の一角を買い取った。瓶を3つ置いて、僕は花たちに向かってこう唱えた。出来るかな。
「ユース」
この魔法が僕のイメージに沿って働くことに僕は最近気が付いていた。柔らかいタオル地で部屋着用のラフなパーカーを作ろうとしていたのに、その時の僕は城の掃除のことで頭がいっぱいだった。そのせいか、雑巾が量産されてしまったのである。城にはいくらでも雑巾がいるからと買い取ってもらえたけれど、しばらくこの失敗を引きずった。
この魔法にはとにかく、集中力とイメージする力が必須だ。
キラキラと花たちが輝き出す。そして瓶には花のエキスがなみなみと注がれていた。
よし、成功だ。あとは配合を考えて調整すればいい。僕は花農家さんにお礼を言ってホクホクしながら城に帰った。レイチェルの部屋のドアを僕はノックしてみた。返事がないのは毎度のことなので気にせず中に入る。
「レイチェルー、ただいまって、わぁ!!」
いきなり現れたのは国王陛下だった。僕は慌てて跪いた。
「も、申し訳ありません」
「あの子はもういない。自分の世界に帰った」
え、どういうこと?レイチェルが異世界の人?確かに浮世離れした雰囲気はあった。
「マオレイといったか。お前に頼みがある。あの子にこれを」
僕がそれを受け取ると綺麗な石だった。磨いてアクセサリーにしたらレイチェルが喜びそうだ。でもレイチェルの帰った世界に僕は行けないと思うんだけど。でも陛下の必死そうな雰囲気に僕は断れそうもなかった。
「分かりました。どこかでレイチェルに会えたら」
僕がそう言うと国王が嗚咽を漏らし始める。レイチェルが心の支えだったんだ、仕方ない。
僕は国王の背中を見送った。
何故なら、ここ数年の売り上げが安定しなかったからである。レイチェルのお陰で凌いだようなものだ。税金なんかも引かれて、更にそこから値上がった材料費を引いたら僕の稼ぎなんかほとんど残らなかった。でもブランドの名前に傷をつけるわけにはいかない。僕は今まで積んできた貯金に手を付けた。そこからしばらく、苦しかったけど僕はなんとか乗り切った。それから少しずつ稼ぎが増えてきた。
そこで僕は決めた。もう迷っている場合じゃない、ずっとやりたかった香水作りに着手しようと。端末で調べてみたところ、香水は無水エタノールと精油を混ぜることで作れるらしい。無水エタノールなら近くの薬局に安価で売っているから、問題は精油だ。僕の魔法なら精油も多分作れる。でも原料の花をどうするかと考えた挙げ句、近くの花農家さんに声を掛けてみたのだ。
僕は休みを利用して今ここにいる。
「わぁ、いい香り」
「まさかローズキャットの社長さんがこんなに小さいお嬢さんだとは思わなんだよ」
「えへへ」
僕はぽり、と頬を掻いた。農家さんが作っている花は約30種ほど。色々説明を聞いて、僕はその中から3種に花を絞った。
香りが華やかなバラ、ほんのり香るカスミ、そして印象的な香りのチューリップだ。この花たちから原料を取る。僕は温室の一角を買い取った。瓶を3つ置いて、僕は花たちに向かってこう唱えた。出来るかな。
「ユース」
この魔法が僕のイメージに沿って働くことに僕は最近気が付いていた。柔らかいタオル地で部屋着用のラフなパーカーを作ろうとしていたのに、その時の僕は城の掃除のことで頭がいっぱいだった。そのせいか、雑巾が量産されてしまったのである。城にはいくらでも雑巾がいるからと買い取ってもらえたけれど、しばらくこの失敗を引きずった。
この魔法にはとにかく、集中力とイメージする力が必須だ。
キラキラと花たちが輝き出す。そして瓶には花のエキスがなみなみと注がれていた。
よし、成功だ。あとは配合を考えて調整すればいい。僕は花農家さんにお礼を言ってホクホクしながら城に帰った。レイチェルの部屋のドアを僕はノックしてみた。返事がないのは毎度のことなので気にせず中に入る。
「レイチェルー、ただいまって、わぁ!!」
いきなり現れたのは国王陛下だった。僕は慌てて跪いた。
「も、申し訳ありません」
「あの子はもういない。自分の世界に帰った」
え、どういうこと?レイチェルが異世界の人?確かに浮世離れした雰囲気はあった。
「マオレイといったか。お前に頼みがある。あの子にこれを」
僕がそれを受け取ると綺麗な石だった。磨いてアクセサリーにしたらレイチェルが喜びそうだ。でもレイチェルの帰った世界に僕は行けないと思うんだけど。でも陛下の必死そうな雰囲気に僕は断れそうもなかった。
「分かりました。どこかでレイチェルに会えたら」
僕がそう言うと国王が嗚咽を漏らし始める。レイチェルが心の支えだったんだ、仕方ない。
僕は国王の背中を見送った。
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