イケメン猫様ズに溺愛されています

はやしかわともえ

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「イケメン猫様ズに溺愛されています」



それはある雨の日の早朝だった。俺、佐倉翔也は青いレインコートを着てフードをすっぽりかぶっている。今日は兄さんと一緒に町内のごみ当番の見回りに来ていた。ごみ当番は、ほとんど立っているだけだ。地域の人に挨拶をしたり、時折、ゴミを沢山持っていて、大変そうな人のお手伝いをする。
俺は兄さんと一緒にマンションで暮らしている。兄さんはプロのカメラマンだ。今日もこれから出張らしい。町内で兄さんは大人気だ。優しくてかっこいいもんな。一方で俺は地味な大学生だ。家事はほとんど全部俺がやっている。兄さんの方が家事も上手いけど、俺にできることはちゃんとやりたい。
ああ、お腹空いた。家に帰ろうとしたら段ボール箱が道端に不自然に置かれていた。ゴミかな?と思って近づく。ゴミ捨て場を間違えたのかも。

「翔也?どうした?」

兄さんが声を掛けて来る。俺は段ボールの蓋を開けて固まってしまった。子猫が二匹、こちらを見上げながら鳴いている。
くりっとしたつぶらな目が可愛い。子猫とは言っても生まれたばかりではない。見たところ少し大きいようだった。一匹が黒猫でもう一匹はきじとらだ。
ウチはペットを飼っていいことになっているマンションだ。兄さんを見上げるとしょうがないなと笑われた。
段ボール箱を抱えて、家に戻る。
猫たちはずっとにゃあにゃあ鳴いている。可愛いけどこの子たちには何を食べさせたらいいんだろう?そもそもお腹空いているのかな?動物なんて飼ったことがないし、これから飼えるかもわからない。もし飼えないなら、ちゃんと育ててくれる人を探さないとな。

「翔也、俺もう仕事に行くな?悪いけどあとは頼む。なるべく早く帰ってくるから」

兄さんは本当に忙しい。俺は手を振って兄さんを見送った。

「お腹空いたんだけど」

「え?」

振り返ると俺と同じくらいの年の猫耳の男の人が椅子に座っている。え?どちらさまですか?

「俺も減っている」

はい?こちらにも?二人共、モデルかってくらい顔が整っているな。それを見てどきどきするのは俺がゲイだから?ここで何が起きているのかさっぱり分からない。二人とも猫耳が付いているってことはさっきの子猫たち?嘘だろ?人間の姿になったっていうのか?そんな不思議なことが起きるなんて俺は夢でも見ているのかもしれない。思わず頬をつねったら痛かった。やばい、現実だ。

「主人、これからもよろしくにゃ」

そう、きじとらに言われてにやりと笑われる。分からないことはとりあえず置いておいて、飯の用意をしよう。俺だって腹減ってるし。二人には適当にツナ缶を出した。一人二つずつだ。

「主人、マヨネーズ」

「俺は醤油がいいな」

おいおい、猫なのに調味料いるのかよ。渋々マヨネーズと醤油を冷蔵庫から取り出した。

「ありがと!」

「ありがとう」

にぱっと二人に明るい笑顔でお礼を言われて俺は困った。やっぱり現実なのか、これ。

「主人の名前ってしょうや?」

「うん」

「じゃあ僕たちにも名前を付けてしょうやが呼んでよ」

え?この子たち、名前ないんだ?生まれてから結構経ってそうなのに。その事実に愕然とした。人間に不慣れなわけでもなさそうだし。

「僕らはペットショップの売れ残りだからねえ」

「行き遅れたな」

ふふと黒猫が笑う。

「兄さん、笑い事じゃないでしょ」

きじとらが不服そうに声を上げた。そうか、捨てられたんだ。
時々ニュースでも多頭飼育がどうのってやるけど、こんなに身近なことだとは思っていなかった。
俺は二人に言った。自然と声が出ていた。

「きじとらのお前がマオで、黒猫がレオ」

「え、それもしかして、僕たちの名前?」

ぱああとマオが顔を輝かせる。

「そうだよ、だからいい子にしててね」

「しょうや大好きー!」

マオに抱き着かれて顔をぺろぺろされた。愛情表現は猫なんだな。
レオに抱き寄せられる。レオは体が大きかった。

「マオ、お前は人間の作法を知らなすぎる。人間はこうだ」

レオに唇を奪われていた。レオ、君も間違ってるけどね?イケメンとキスするのは恥ずかしいけど相手は子猫だ。ノーカンだよな。

「兄さんばっかりずるい!僕もしょうやにぎゅってする!」

俺が大学に出掛けるまでずっとこんな調子だった。やれやれ。













講義を終えた俺は家に帰って来ている。マオとレオは猫の姿だった。二人が寄って来て俺の足に体を摺りつけて来る。

「レオ、マオ、いい子にしてた?」

二人が人間の姿になる。マオがぎゅううと俺に抱き着いてきた。マオはとびきり甘えん坊さんみたいだ。

「しょうや、一緒に遊んで。僕たち、ちゃんといい子にしてたよ」

「抜かりなくやったはずだ」

二人の言葉に、俺はホッとした。まさか捨て猫が人間の姿になれるなんてなあ。誰も想像できないだろう。大学の帰り道、俺は猫用のミルクやフードを買って来ている。人間の姿の二人は人間の食事でも問題ないみたいだけど一応だ。
そんな時だった。玄関から音がする。兄さんが帰って来たんだ。

「翔也?お友達か?」

ニコニコしながら兄さんが言う。だったら良かったんだけどね。
俺は兄さんに信じてもらえないかもと前置きして兄さんに事情を話した。

「そんなことが・・・」

兄さんは俺に最高に甘い。俺の言う事は大抵信じてくれる。

「レオにマオだったな。俺は翔也の兄だ。悟っていう」

「さとる、よろしくね。でもしょうやは僕のだよ」

急に何を言い出すんだ、マオは。俺は慌てた。兄さんの目に剣呑な光が宿る。
兄さんは俺をめちゃくちゃ好きでいてくれている。嬉しいけど相手は子猫だしさすがに本気にしないよね?

「翔也はお前みたいな子猫には渡さない」

「に、兄さん、マオは小さいから分かってないだけで」

「ちゃんとわかってるもん」

ぎゅむっとマオが俺に抱き着いて来る。

「俺だって翔也が好きだ」

わああ、レオまで何言ってんの?兄さんはため息をついた。

「決めるのは翔也だ」

兄さんの言葉に二人はその通りだと頷いたのである。

***
俺は夕飯を作っていた。レオとマオはなんだかんだ言いつつも、もともとは猫のせいか兄さんにもすっかり懐いている。ねずみのおもちゃで遊んでもらって嬉しそうだ。
さっきまでの険悪なムードには耐え切れそうになかったからホッとしている。
今日はビーフシチューだ。ことこと煮込んでいる。

「兄さん、もうすぐ夕飯だからね。レオ、マオ、ご飯だよ」

俺は器にミルクを入れて床の上に置いた。二人が飛ぶように駆けてくる。
こういうとこだけ見れば可愛い子猫なんだけどな。
俺はビーフシチューを器に盛りつけた。うん、美味しくできたはずだ。

「お、美味そうだな」

兄さんが嬉しそうに言ってくれて俺も嬉しい。二人でいただきますをして食べ始める。
スライスしたバゲットにビーフシチューをつけて食べるとまた美味い。
猫ズも夢中になってご飯を食べている。
ちょっと平和になったかな?
そう思っていたのも束の間、マオが人間の姿になる。

「しょうや、それなあに?」

テーブルにマオが身を乗り出してきた。
マオが気になっていたのはビーフシチューだ。
お肉が入っていたからだろう。

「ちょっと食べる?」

「食べる!人間の食べ物美味しいもん」

「俺も欲しい」

ビーフシチューを猫に食べさせるなんて本当ならいけないんだけど、今のマオとレオは人間だし、大丈夫だろう。

「うんまあい」

「美味いな」

二人はぺろりと平らげた。
そして猫の姿に戻る。ごろりとお腹をこちらに向けて眠り始めた。
ふかふかしていそうだ。猫吸い出来るかな?

「マイペースな奴らだな」

兄さんが呆れたように言う。まあ猫だからなあ。









「しょうや、どこにいくの?」

ある日の夕方、スーパーに買い物に行こうとしていたら、マオが声を掛けて来た。
レオもやってくる。

「僕もしょうやのお手伝いする!」

「俺も」

俺は心配だった。

「途中で猫の姿にならないように二人共気を付けてね」

「大丈夫だよ!」

「気を付ける」

こうして三人で外を歩いて買い物に行くことになるとは。商店街を歩くと、マオとレオはかなり人目を惹いた。まあそうだよな、二人共、そこら辺のアイドルよりはるかに顔いいし。

「ねえいろいろあるね」

マオが目をキラキラさせながら言った。そうか、商店街が珍しいんだな。お店には看板猫もいるところもあるけれど大抵の猫にとっては無縁の場所だもんな。

「なにをするの?」

「お買い物だよ。今日はとんかつだからね」

「ええ、ナニソレ美味しいの?」

「美味しいよ」

俺はさすがに笑ってしまった。マオは本当に無邪気な子だな。

「翔也が作るんだから美味いに決まっている」

「なにさレオってば」

むううとマオがレオに膨れている。ごめん、可愛い。俺はもう笑いをこらえきれなかった。

「しょうや、笑いすぎだからね!」

ぷんぷんとマオが怒っているのも可愛い。

「ああ、おかしい。マオ、コロッケ食べる?」

「美味しいの?」

お肉屋さんで揚げたてのコロッケを二つ買って二人に渡す。

「あちち、これがコロッケ?」

「二人共ここにいてね」

俺は店に入って豚のロース肉を四枚スライスしてもらった。
店から出るとレオはいるけどマオの姿がない。

「レオ!マオは?」

「あ」

大変だ。どこに行ったの?マオ!俺はあちこちを探した。まだそこまで遠いところには行っていないはずだ。どうする?ああ、俺の馬鹿。マオはまだ子猫だぞ。そばに連れていればなんでもなかったのに。

とにかく探さないと。ただあてはない。そうだ、マオならなにかに気を惹かれたのかも。
だとしたら。俺は近くのおもちゃ屋を覗いた。自動ドアがあくと中から賑やかなゲームの電子音がするのだ。

「あ、しょうや!これやりたい」

「マオ!」

マオの笑顔が霞んで見えない。良かった。俺はマオを抱きしめた。

「駄目じゃない。離れちゃ。心配したよ」

「あ、ごめんなさい」

「翔也、すまない。俺も迂闊だった」

俺はしばらく泣いてしまった。マオもレオも困っている。

「しょうや、僕を嫌いになる?」

おろおろと問われて俺は首を横に振った。

「そんなわけないでしょ。でも帰ったらお手伝いしてもらうからね」

「しょうやのお手伝い!する!」

あれ?罰のつもりだったのに喜んでいるな。それは想定外だった。

つづく



外伝「お兄ちゃんと一緒」

それはある日のことだった。俺は兄さん、レオ、マオと年末の大掃除をしている。
レオとマオがうちに来て、もう半年ほどが経過している。
二人がうちにきてすごく賑やかになったし家のお手伝いもしてくれるから随分助かっている。二人とも、猫の姿では徐々に大きくなってきているもんな。大人の猫になったらまた変わるんだろうか。

「マオ、すごいね。ピカピカだよ」

「しょうやのために頑張ったよ。褒めて」

マオが無邪気に言って笑う。うん、いい子なんだけど、すぐ俺を独り占めしたいとか言うから兄さんの機嫌がめちゃくちゃ悪くなるんだよな
兄さん、マオはまだ子供だよ。見た目は大人だけど。
レオもぴくりと耳をこちらに向けてマオの声をしっかり聞いている。
この二人は俺が好きらしい。飼い主だからっていうだけの愛情じゃないらしいのだ。
俺はそれを知って驚いたけど、兄さんはそれを察していたらしい。
つまるところ気が付いていなかったのは俺だけだったのだ。

「お、アルバムだ」

兄さんが古いアルバムを取り出す。俺たちの両親は俺たちが幼い時に離婚した。
親権は母さんが持っていたけど母さんは病気で俺たちを育てられなかった。じゃあなんで父さんと暮らさなかったかというと、父さんが俺たち兄弟に悪影響を及ぼすという判断がなされたからだ。祖母や祖父たちがそれを必死に訴えてくれたらしい。
俺たちは母方の祖父、祖母と共に暮らした。母さんは今でも病院にいる。父さんは行方知れずだそうだ。
俺たちが住んでいた家はすでに取り壊されている。その前に二人で必要なものを持ち出した。このアルバムもそのうちの一つだ。家族のわずかな思い出。
兄さんがアルバムを開く。

「お、翔也が小さい時の写真だ」

「さとる、僕も見たい」

マオが兄さんの隣からアルバムを覗き込んでいる。

「わあ、しょうやにも子猫の時代があったんだねえ」

マオの言葉に兄さんが笑った。マオはやっぱり子供だ。言う事が可愛らしい。

「翔也は子猫じゃないぞ。子どもだ」

「こども?人間は小さい時こどもなんだ」

ああと兄さんが頷いてマオの頭を撫でる。

「翔也が小さかった時、よく一人で眠れないって言って一緒に寝たよな」

「うん、そうだったね。なんか恥ずかしいな」

マオがむううと頬を膨らませる。

「僕もしょうやと一緒に寝るもん」

「それはやめておいた方がいいぞ。マオ」

マオが首を傾げた。

「翔也は寝相が猛烈に悪いからな。足で蹴りを入れられるぞ」

「ちょ、兄さん」

「僕、やっぱりやめとく」

俺たちは笑ってしまった。

「蹴られなければ問題ない」

レオまで俺と一緒に寝ようとしている。

「お前、一度寝たらなかなか起きないじゃないか」

「・・・・」

兄さんの言葉にレオも返事が出来なかった。兄さん最強すぎる。

「よし、今日はこの辺りにしておこうな。松前漬け浸かったかな?」

兄さんが手を洗って冷蔵庫のドアをを開けている。マオとレオは猫の姿になってソファの上で丸くなった。お昼寝かな?

年末がこんなに楽しいなんて。
俺は兄さんと一緒におせちの準備をするのだった。

おわり























「にい」

ある日の夜、マオがさっきからずっと悲し気に鳴いている。どうしたんだろうと思って、俺は居間に向かった。
もう秋口で随分涼しくなっている。もうすぐハロウィンがくると街は浮かれている。最近になってハロウィンがますます特別視されるようになってきたなあ。うちでも兄さんがかぼちゃのプリンを作ってくれると張り切っていた。俺もかぼちゃの煮込みをつくろうかな。

「マオ」

マオを抱き上げて膝の上に乗せるとマオはまた鳴いた。悲しいのかな。優しく頭を撫でたらマオの瞳からぽろりと涙がこぼれて来た。

「マオ、どうしたの?」

マオは俺と話したくないらしい。でも俺にしがみついてきたから完全に拒絶されているわけではない。俺はそれにホッとしていた。

「マオ・・」

「翔也」

声を掛けてきたのはレオだった。

「レオは大丈夫?」

レオが俺の隣に座る。

「俺はあまり気にしていない」

「なにがあったか説明してもらっていい?」

俺の言葉にレオはしばらく考えだした。

「多分ペットショップのことだと思う。これくらいの時期に飼い主が決まりそうだったんだ」

「それはレオも一緒?」

「ああ。俺たちにもそれが最後のチャンスだってなんとなく分かってた」

その話は新しい子猫が入ってきて立ち消えになったらしい。
そんなのあんまりだ。レオが言うにはマオはそれを思い出して毎年鳴くらしい。
悲しい記憶ってなかなか消えてくれないもんな。

「翔也がいて、マオが沢山笑うようになって俺は嬉しい」

レオに隣からぎゅっと抱き寄せられる。膝の上にはマオはしょぼくれて寝転んだままだ。俺はマオの頭を撫でた。ほわほわして癒される。

「翔也はマオが好きか?」

レオに至近距離で見つめられる。レオはすごく冷静な子だった。マオのお兄さんだからかもしれないけど。

「マオは大事な家族だよ。もちろんレオも」

「しょうや、本当?」

ぽむと何かが弾ける音がしてマオが人間の姿になる。

「しょうや、僕を捨てない?」

ひしとマオに抱き着かれて俺はマオの頭を撫でた。

「捨てるわけないでしょ」

「しょうや、ずっと一緒?」

「うん、ずっと一緒だよ」

「しょうや大好き!」

マオもレオも俺は大好きだ。
もちろん兄さんだって。みんな、ずっとずっと大好きだよ。

おわり




「猫ズとデート」

前編

「わああ!しょうや、僕これ行く!」

ある日のことだった。マオと二人でテレビを観ていたら、かっこいい映像のCMが流れて来た。これ某有名アニメ作品の激情版じゃないか。マオが普段からよく観ているやつだ。

「いいよ。兄さんは今週出張で忙しいみたいだし、三人で行こうか」

「やったああ」

レオがてててとやってきてソファに飛び乗った。

「何の話だ?」

レオが人間の姿になる。
最近レオもマオもネコから人間の姿になるのによどみがない。変身がすごくスムーズになってきてる気がするな。そして人間の姿でいるのが便利みたいだ。そりゃあそうだよね。

「レオも映画行くよね?」

「?映画?」

マオがふふんと自慢そうに胸を反らせた。

「映画はすごいんだよ。みんなで観るんだから」

「あ?みんなで観るのは普段と一緒だろ」

マオはううううとやり込められている。いつも思うけどマオは少しドジというか抜けているというか。そこが可愛いんだけどね。

「とにかくしょうやとデートするんだからね!!!」

「3人じゃないか」

あ、またマオが震えている。

「レオがいじめるー!!!」

うわあああとマオが泣き出して宥めるのがめちゃくちゃ大変だった。
子育てってこういうことなんだ。俺の親は除外だけど、世界の親御さん大変お疲れ様です。

***

「今日のご飯はなに?」

「んー?マオはまぐろ味のカリカリじゃいや?」

「かりかり好きだけど、しょうやがちゃんと食べてるか、チェックするのも彼氏の役目だよ」

本当に自信満々だなあ。俺は思わず笑ってしまった。

「マオは優しい彼氏だね」

そう言って頭を撫でたらマオは得意げだ。可愛い。
さて俺は自分用にオムライスでも作ろうかな。
チキンライスを炒めて。
卵を割ってと。

「ふわあああ、たまごとろとろ」

マオが目をキラキラさせている。
これでさっき炒めたチキンライスをくるんでと。

「二人共ご飯にしようね」

俺は専用の皿にかりかりを盛った。その上からマグロの舐めるおやつを少し入れる。マオもレオも猫の姿になって皿に顔を突っ込んで食べ始めた。

「美味しい?」

「にい」

マオとレオがこちらを見上げて来る。俺もオムライスを食べ始めた。
映画を見に行くなら先に席の予約をしておこうか。
ご飯を食べて片付けた。二人が手伝ってくれた。すっかり恒例になっている。

「しょうや!」

ソファに座っていたら隣から抱き着かれて俺はマオの頭を撫でた。レオも俺の隣に座る。すっかりこれも定位置になっているなあ。

「ねえねえ、しょうや。映画ってどこで観るの?僕達も観られるよね?」

「映画館だよ。猫の姿から戻らないように気を付けてね」

「はあーい」

「マオの観ているアニメ、面白いもんな」

レオがぽつりとこぼす。どうやらしっかり観ていたらしいな。

「ね!レオもそう思うでしょ!」

マオは得意げだ。今日も平和だなあ。
スマートフォンで映画館のチケットを買う。

「レオ、マオ、明日映画館に行こうね」

マオがぱっと顔を輝かせる。レオも嬉しそうだ。

「しょうや、大好き」

「ありがとうな、翔也」

明日はトラブルがないように気を付けなくちゃな。

つづく




「猫ズとデート」

後編


「ふああああ、ここが映画館」

駅チカにある巨大ショッピングモールの中にある映画館に俺たちは来ている。
中に入るなりマオが目をキラキラさせている。

「あ!」

マオが今日見る映画のパネルを見つけて、そろそろと近寄る。

「しょうや、これ写真撮って」

「いいよ。レオも並んで」

「ああ」

二人の写真を撮るとマオが写真を見に来た。

「わあ、これが人間のいう推し活なんだあ」

「そうだね」

「しょうやも撮ろう!」

もうすぐ映画が始まるから先に飲み物を買わないとな。俺は売店の列に並んだ。マオとレオもキョロキョロしながらついてくる。

「しょうや、ここでどうするの?」

「飲み物とポップコーンも食べるよね?」

「ポップ?ナニソレ?」

マオが首を傾げている。俺はポップコーンの機械を指さした。

「あれだよ」

「なんかポンポンしてるねえ」

「甘い匂いがするな」

「本当だあ」

すんすんとマオが匂いを嗅いでいる。二人共可愛いな。

「飲み物どうする?」

「僕、メロンソーダ!」

「コーク」

二人とも、人間の姿の時は人間が食べる食べ物が食べられるらしい。
ずっと飲んでみたいってせがまれていたからこうやって飲ませてあげられてよかった。

「間もなく入場が始まります。お客様は受付までお越しください」

あ、もうアナウンスが流れている。

「二人共、中にいくよー」

「はーい」

マオとレオがついてくるのを確認して俺たちは席に座った。マオは座席の多さに驚いていた。そんなことをしているうちに予告が流れ出す。二人共夢中で観ていた。
いよいよ本編が始まる。大きな爆発音にマオは度々びくっとなっていた。映画館の音響はすさまじいからな。この作品はアニメといっても大人でも楽しめるものだ。お客さんもいろいろな年齢層がいた。話はクライマックスへ向けてどんどん盛り上がる。
うん、これすごく面白いな。あっという間に本編は終わりを告げた。マオもレオも映画を観るのに必死であまり飲み物を飲んでいなかった。

「ふわあ、面白かった」

「ああ」

マオとレオはふうと息を吐いた。

「あ、ジュース、飲んでなかった」

「俺もだ。ポップコーンも食べてない」

ぐぎゅるるるとお腹が鳴る音がする。マオが顔を赤くした。もうお昼だ。お腹もすくよね。

「どこかに座って食べようか」

確かこのショッピングモールには休憩スペースがあったはずだ。俺たちはそこに向かった。
休憩スペースに向かうと、そこはすでに満席に近かった。

「これがメロンソーダっていうのなんだ」

マオがストローでこきゅこきゅジュースを飲んでいる。レオはキャラメルポップコーンをわしづかみで食べている。気に入ったのかな?

「美味しい?二人共?」

「「美味い」」

ふたり揃って言ってくれて嬉しかった。

「映画もね、すごく面白かったの」

マオが目をキラキラさせながら言う。レオもうんうんと頷いている。今日は来てよかったなあ。ポップコーンを食べたら二人は余計お腹が空いたらしい。
それからショッピングモール内のフードコートに向かった。

「わああ、商店街みたい。いっぱいお店がある」

ショッピングモールに来るのは俺も久しぶりだ。
マオがラーメンを食べたがったからその店で注文した。
平日でも結構混むんだなあ。注文したものが出来たらしい。俺とレオで取りにいった。

「わあ、ラーメン」

「熱いから気を付けて食べてね」

二人共見よう見まねで、箸を持っている。

「こう?」

「そうだよ」

マオに箸の持ち方を教えている間にレオは箸の持ち方をマスターしたらしい。
ずるるとラーメンを食べ始めている。マオにじいっと見つめられて、レオは困惑したようだ。

「なんだ?」

「なんでもない」

ぷいっとマオがレオから顔を背ける。なんとなく気持ちはわかるなあ。俺も子供の頃に兄さんがなんでも上手に出来るのを見て拗ねていた頃があったから。

「よいしょっと」

マオが危なっかしい箸遣いで麺を掴んですすっている。

「わあ、美味しい!」

「よかった」

しばらくみんなでずるずるやった。ラーメンってなんでこんなに美味しいんだろう。
餃子も頼んだから三人で分けた。

「これも美味しい!」

「今度うちでも作ろうか」

「え?これ作れるの?」

「うん。意外と美味しいよ」

これ、猫とする会話じゃないな。でも俺たちの所に二人が来てくれてすごく幸せだ。
マオもレオもお腹いっぱいになったらしい。よかった。

「ご馳走様でした」

食器を返却して俺たちはショッピングモールの食品売り場に向かった。今日の夕飯、どうしようかな。

「しょうや、僕、もっと餃子食べたいなあ」

その手があったか。俺は餃子の材料を買った。他に冷凍食品やペット用品も買う。三人いると沢山買えていいな。
帰りの電車でマオがニコニコしている。

「餃子楽しみ」

「ああ、美味かったな」

「そうだよね」

猫ズの会話はほんわかしている。
周りの人は二人のイケメンぶりに驚くみたいだ。

「しょうや、いっぱい作ろうね!」

マオが俺に笑い掛けて来る。今日も猫様ズ、最高だった。


おわり




「猫様ズ・マオといちゃいちゃ」

「ね、しょうや!今日は二人きりだね。いちゃいちゃしよ」

朝、急にマオがやってきて言った。今日はレオが健診で一日病院にいる。夕方に帰ってくる予定だ。マオはニコニコしながら俺を見つめて来る。えーと、いちゃいちゃって具体的に何をするんだろう??

俺が困っているとマオが俺に抱き着いてきた。

「しょうやと遊ぶんだ」

それいつもと変わらないのでは?と思ったけどマオの機嫌を損ねるといろいろ面倒だ。

「ねえしょうや、チューしていい?」

急な展開ですね、お兄さん。俺の表情を見てマオは失敗したと思ったらしい。

「だ、だってレオもチューしたよ?」

確かにその通りだ。でもあれはキスのカウントに入ってない気がする。

「しょうやはだれが好きなの?」

「そんなの分からないよ。だってみんな大事だもの」

「しょうやは優しいんだ。じゃあしょうやは皆のもの?」

マオが首を傾げながら聞いてくる。

「俺にそこまで権限はないよ」

マオはふんすと鼻息を荒くした。

「じゃあしょうやを手に入れるために僕、頑張るんだもん」

「え?」

「僕、もっと大人の男になって、はーどぼいるどになって、しょうやが僕を好きって思ってくれるようにするんだ」

ハードボイルドという単語に俺は噴き出しそうになったけど堪えた。マオがハードボイルドになった姿を思うとおかしくてしょうがないんだけど。
でも本人は一生懸命だ。可愛いな。

「じゃあマオがハードボイルドになるまで俺は待てばいい?」

「それは駄目!ずっと一緒にいるもん!」
マオが慌てたように言う。こういうところ本当に可愛いんだよなあ。

「今のままでマオは十分魅力的だよ」

「え?」

マオがぽかん、としている。

「本当?僕、ハードボイルドかな?」

マオに誤解させてしまったな。

「えーと今のマオはハードボイルドというより可愛い感じだよ。でもそんなマオが俺は好きだからね」

「えええ!可愛い男って嫌われるんじゃないの?」

それはどこ情報なんだろう。

「さとるがスマートフォン貸してくれた時掲示板で見たよ」

なんの掲示板を見たんだろう?マオはネットサーフィンが出来るんだな。

「とりあえずマオはマオのままでいいんだよ。俺を好きでいてくれてありがとうね」

そう言って笑ったらマオに唇を奪われていた。

「しょうや、ずっと好きでいるからね。レオとさとるには負けないんだ」

「マオ・・・」

ここまでくるといじらしいな。俺からするとマオは子供みたいなものだ。

「マオはこれからもっと大人になるよ。その時にまだ俺を好きでいてくれたら、また告白してくれる?」

「うん!するよ!」

マオが今日も可愛い。


おわり
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