兄が届けてくれたのは

くすのき伶

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ハルさん、何か視えました?

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それからしばらくの時間が経った。

「タカさん、起きて」

呼びかけに反応しないので、ハルはタカの肩をさする。

するとタカが目を覚ました。

「あ、タカさん。おはようございます」

「えっ、ああ……」

タカがゆっくりと瞬きをして、寝たまま腕をあげる。

んーっと背伸びするタカを見て、ハルが笑う。

「タカさんも、寝るんですね」

「ええっ、なにそれ。寝ますよ」

タカはふふっと笑ってハルを見た。

その目は少し、とろんとしていた。

「僕まで寝てしまいました。ハルさんって体からマイナスイオンでも出てるんですか?」

「あははは!いやいやっ」

タカは毛布の上で、ハルはベッドの上で、互いに笑い合った。

「ハルさん、今何時ですか?」

「20時です」

「えっ!そんなに」

「はい。僕、一度夕方頃に起きたんですけど、また眠っちゃいました」

「ああ、そっか。ハルさんを寝かせて、この部屋運んだんですけど」

「おかげで体が痛くなることはなかったです。ありがとうございます」

「いやいや、こちこそ毛布ありがとう」

「あ、いえ」

その後、急にタカが吹き出して爆笑する。

「ていうか、あははは!僕たち、爆睡しすぎ」

「そうですね。ふふっ」

「ハルさんの体、大丈夫ですかね。熱出したり、今回は気を失ったり」

「あはは、キャパオーバーしてるだけです。今だけですよきっと。それにもう回復してます」

「気を失うって相当のことですよ。体、こたえてるでしょ?ちょっと休憩した方がいいかもしれませんね」

「あ、いや、進めましょう。このままのペースで。タカさんだって、せっかく進めましょうって意欲的に言ってくれたのに。僕も同じ気持ちなんです。いま僕の体がガタきているのは、どれも初めてのことで慣れてないから。それだけですよ」

「ああ……まあ、やる気にはなってますけど無理強いはしたくないし」

「CD」

「え?」

「CD聞いて、また記憶を刺激すれば何か変わるかも」

「ああ、そうですね」

「はい」

ハルがふふふっと笑いだす。

「えっ、どうしたの?」

「人生で気絶することなんて、初めてで笑っちゃいます」

「ですね。滅多に経験することじゃないですね」

「はい」

「あ……そうだ……ハルさん」

「はい」

「急に何か、ふっと視えることって最近ありました?」

「急に視えること……」

「はい」

「なければ大丈夫で……」

「あっ」

「えっ、何かありました?」

「サエさん……だと思います」

「サエちゃん?」

「はい」

「前にタカさんが僕に見せてくれてた、過去の映像というか」

「僕とヒロ、サエちゃんの思い出かな」

「はい。それでそのあと、僕がサエさんと会いたいってタカさんにお願いしたじゃないですか」

「はい」

「タカさんに連絡する前に、耳にあのピアノの音が聞こえて、そのあと目の奥で女性が……たぶんサエさんが視えたような気がして。それでタカさんに頼んだんです」

「え……あ、そうだったんですね」

「はい。目の奥で、視点を固定して視たら、そのあとも一瞬視えて。なんだかサエさんに会えって言われている気がして」

「……」

「なんとなくですけど」

「ハルさん」

「はい」

「他に何か視えました?」

「え?」

「お兄さんとか」

「あ、いえ、それは」

「……そうですか」

タカは、ハルに聞こえないくらいの小さなため息をついた。

「視えたら、教えてください」

「あ、はい」

タカはゆっくりと目を閉じて、そして体を起こした。


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