伝説は白き竜と共に再び訪れる (旧題 ドラグーン～黒と白の幻の竜と古の勇者たち～）

12.噂の白竜使い（sideリリア）

「今回の試験、かなり移動するでしょうね。」

教官室で、教師の1人が何枚かの希望調査書を見ながら呟いた。

竜を持つことによって、1年生は、実技が得意な生徒と苦手な生徒に分かれる。

何人かの教師がその言葉に賛同するように意見した。

そのとき、その会話をすり抜けて一言誰かが言った、

「クラスＤにいる……アセナでしたっけ？どうなるんでしょうね。」

「あぁ、白竜使いの。」

教師の間で話題のアセナちゃんは、クラスSも可能な程の能力がある。

試験一週間前になって、ようやく自由競技で使う魔法を決めたみたいだった。

「彼女、クラスCの希望者の中には、いないみたいですよ。」

クラスCの希望者が書いてある紙数枚の中にアセナちゃんの名前がないため、クラスCの試験官は呟くように言った。

「クラスBにもです。てっきりCだとばかり……」

「え？僕はBだと……それじゃ、Aですかね。」

AにもBにもその名前はない。

彼女はある日突然言った。

クラスSに行きたい、と。

上を目指そうとしなかった彼女は、自らそう告げた。

前に一度、上級魔法をしたことがある。

上級魔法と知らずに。

キルアは、上に行くことを望んでいたと思う。

でも、彼女は違った。

何が彼女を変えたのだろう。

分からない。

でも_____

「クラスSよ。」

クラスSの希望用紙に書かせた。

クラスSの試験内容を練習した。

「え？」

彼女はあの空を飛ぼうとしている。

何の冗談か、と教師たちは笑う。

始め私が、有り得ない、と思ったように。

しかし、今はその笑いを笑ってしまう。

私は笑って、次の試験がクラスSの試験だと告げる。

驚いたり。

笑ったり。

そんな教師たちは、顔を強張らせた。

アセナちゃんの描く魔法は凄いの。

並みのドラゴーネには描けない。

誰が見ても分かるくらい、凄いの。

アセナちゃんは。

いつか。

きっと。

ドラグーンになるだろう。

それは、予想じゃない。

確信だ。

アセナちゃんの試験が始まる。

みんなの驚く顔が目に浮かんだ。