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第ニ章 瞳の中のスナイパー
keep going the time
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「なあ、まだ俺と仕事組む気ない?」
そう斬り込むのは、帯原カケル26歳、斬り込まれそっぽを向いているのは、塩田ミツヒデ27歳。
「いい加減人殺すの辞めて俺と仕事組めよ、お前1人で抹殺業なんて今時はやんないぜ」
「人殺しとか言うな!ビジネスだろうが…殺し屋も」
そう、塩田ミツヒデは敏腕の殺し屋。殺し屋一家に産まれ育ったのだから彼にとって殺しはビジネスなのだ。依頼され始末し報酬を頂く。これが彼の生き方そのものなのだ。その腕を見込んで帯原はミツヒデを自分の組織に入れようと必死に勧誘しているのだった。その帯原も又大きな組織を束ねる一番隊の隊長。闇の世界では通称死神と恐れられている。隊を束ねるといっても、帯原自身今まで誰かと仕事を組むような事はせず一匹狼のように1人で仕事を片づけてきたのだが、帯原を拾い育てた兄の様な存在でもある総大将に自分の隊を作るよう命じられ今は自分と組める相方探しに奮闘しているのだ。ミツヒデとは昔何度か仕事を組んだ事もあり、帯原の中では唯一気心が知れた仲なのだ。おまけに腕も一流ときたら帯原が諦める訳もなく、何度振られても勧誘し続けている。
「オビ、ほんとお前しつこいな」
「あれ~、俺の事今オビって呼んだか~
ちょっとは仲良くなれたんじゃないの~ミツヒデっ」
「うるせーよ、お前の上司か主か知らねーけどお前の事オビオビ言うから移ったんだよ」
「今まで主(あるじ)しか俺の事オビって呼ばなかったから何か新鮮?みたいな(笑)」
「はぁ~?!何言ってんだ…考えといてやるよ、ほんとうぜーっ」
「マジかよ!!いい返事待ってるぜっ」
「考えとくって言っただけだからな!期待すんなよ、じゃあ俺仕事あるから行くわ」
「あー、仕事ね…怖い怖い」
「お前に言われたくないわ!死神くん」
殺し屋が向かう所はただ1つ標的を撃ち抜ける場所だ。
「あー…こんな風に逃げ出して来ちゃったけど、やっぱ行く所もないし…又今夜もこの公園で野宿か…お腹すいた…お風呂入りたいな…」
真っ昼間の公園でうなだれベンチに座っているのは美少女と見間違えられるほど綺麗なビジュアルの青年。どうやら訳ありで、ある組織から逃げ出して来たらしいその青年の名は白石リオン21歳。彼には普通の人にはない能力がそなわっており、その能力はこれまでの仕事には欠かす事の出来ない特別なものだった。彼には人が出す殺気を瞬時に感じ取るというもの。強い殺気は普通の人間にも感じる事があるという。しかし彼の感じる殺気はどんなに小さな殺気でもどの方向から発せられ何処に向けられているのかもわかってしまう。最近では人間の恐怖心なども感じるようになっていた。そして今まさに居てはいけない場所に彼は居る。ミツヒデの狩場だ。しかしリオンは気付いていないようだ。ただ1人の男が幼い娘を連れて公園で遊んでいる様子を羨ましげに見つめている。そしてもう一人その様子を見つめている人物が居た。ミツヒデだ。同じく公園のベンチに座り珈琲を飲みながら新聞を広げている。リオンはその男の視線の先が新聞ではなく、又幼い娘にでもなく、父親 ただ1人に向けられている事に気付いた。しかし、その男から殺気の1つも感じ取る事は出来ずリオンは気のせいかと自分の強すぎる感知能力のせいだと思い直し目をそらそうとした瞬間、男の右手がかすかに動いた…と同時に娘と遊んでいた父親がバタリと音をたて倒れたのだ。リオンはすぐに駆け寄ろうと足を踏み込みかけとっさに思い直した。
今あそこに行ってはいけない!俺が見ていた事に気づかれるかもしれない、あの男はヤバイ、殺気を放つ事なく人を殺した!プロの殺し屋それもかなり腕のいい…ここから離れなくては !
泣き叫ぶ幼い娘の声がリオンの耳にこびりつきはなれない。
さっきの男…まだ若そうに見えた。でも一流の殺し屋、あんな幼い娘の前で父親を…
許せない…奴を探し出して…探し出してどうしよう…とりあえず近隣を探してみてから考えよう。
リオンの目に映ったのは7階建てのビルの3階にある帯原探偵事務所の看板だった。
「人相を言えば探す協力くらいはしてくれるかな…行ってみるくらいはいいか…」
リオンは思い切って探偵事務所のドアをノックした。
「どうぞ、開いてるよ」
リオンは恐る恐るドアを開け体から血の気が引いていくのを感じた。ドアの向こうにはさっきの殺し屋と探偵らしい男が話しているのだ。
「えーっと…何か捜し物とか?浮気調査頼みに来たようには見えないけど…」
そう声をかけたのは勿論探偵事務所のオビだ。探偵事務所といってもそれは見せかけで本業は闇の仕事としておこう。
そしてリオンに視線を送るもう一人の男はミツヒデだ。ミツヒデはリオンの顔をじっと見つめている。
どうしよう…あの男何でジロジロ見てんの?!もしかして殺し屋の仕事見てたのバレてる?!ここから出なきゃ…
「あの…すいません、階間違えてしまったみたいで…失礼しましたっ!」
リオンは慌てて部屋を出て行った。
落ち着け、落ち着け、もう大丈夫だよな…とりあえず何処か店に入って落ち着こう
リオンが部屋を飛び出し辿り着いたのは事務所から少し離れたドーナツ屋だった。
「あの、珈琲ホットで、あと…これと」
「この店はやっぱりこのドーナツがオススメだけど…ねえ、お姉さん」
何で…!!!こいつがここに??!!
「君、珈琲こぼれてるよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です!…それより何で貴方がここに…?!」
「あー…俺もこの店のドーナツ好きなんだわ、それより君時間ある?暇?暇だよね?ドーナツ食べてるし、ちょっと俺と付き合ってくれない?今から、ドーナツ食べてからでいいからさ」
リオンがひと息つく間もなく目の前にミツヒデが現れた。リオンは顔をひきつらせながらも平気なふりを装い空いているテーブルに向かって歩きだした。
「ねえ、君、俺の話聞いてる?」
「聞いてません」
「聞いてませんって…聞こえてるじゃん」
「何なんです!?俺に何か用ですか?」
「暇だろ?付き合って」
「…付き合ってって…何処にです?!」
絶対この人気付いてる…俺が見てた事、きっと殺すつもりだよな…人気の無い所に連れてって…
「なあ、聞いてる?さっきから何かぼーっとして、何か考え事?俺仕事終わって今から暇でさ、付き合ってくんない?」
そうだよな今人1人殺して仕事終わらせたんだよな、後は見た奴を殺すだけだよなこの俺を…いいさ付き合ってやるよ、俺だって殺気を感じられなくたって腕には自信あるんだ!勝負してやる!
「良いですよ、俺も暇してたとこなんで何処でもお付き合いしますよ」
「マジで?!じゃあ、映画見に行かない?」
「映画?!」
そうか…映画始まって暗くなったら殺るつもり…ベタだね…
「良いですよ、何処でも付き合うって言ったし、何見るんです?」
「それは見てのお楽しみ…」
そう言うとミツヒデは珈琲を飲み干した。
「そろそろ出ようか、映画の時間もあるし」
ミツヒデはレシートを手に取りレジの方へ歩きだした。
「自分の分は自分で払います!」
「いいから、今日は俺が誘ったんだ、全部俺が払うよ、映画代もな」
何考えてるのか全然読めない…それにやっぱりこの人からは殺気が全く感じられない
「えっ!これみるんですか?ホラー…?」
「ホラーだけど苦手かな?あっ、そうだ名前まだ聞いてなかった、俺は塩田ミツヒデ。君は?」
「白石リオン…です」
殺す相手の名前聞くのも殺し屋のルールとか…?
「へー、リオンか可愛い名前じゃん、リオンって呼んでいいかな?俺の事はミツヒデでいいからさ」
「ミツヒデ…さん」
「さんは要らないけど、まだ慣れないならさん付けでもいいけど、慣れたら禁止な」
慣れるまでに殺す気だろーが…
リオンはミツヒデがいつ仕掛けてくるのかとその事で頭がいっぱいだった。
「いい席空いてたな、俺飲み物買ってくるから座って待ってて」
「あっ…はい」
何?デートかよ!いやいや…油断させといて殺るつもりだろうけど、そうはいかない!でも何か調子狂う、これも作戦のうちか…?
「隣、良いですか?」
リオンに声をかけてきたのは見知らぬ男だった。
「こっちなら空いてますよ、どうぞ」
男はリオンの右隣の席に座り話かけてくる
「映画1人で見に来たの?誰か連れ居る?」
「一応…今飲み物買いに行ってます。多分もう少ししたら帰ってきますけど」
「そうなんだ、残念…」
そう言うと男はリオンの手を触り始めた。
「あ、あの…そういうの辞めてもらえませんか?」
「あー、ごめんね、あんまり綺麗な手だったからついね、でも男と2人で映画とか見にくるって…好きなんじゃないの?こういう事されんの」
殺気!!!
リオンは背後にこれまで感じた事のない強い殺気を感じ、それと同時に酷い寒気を感じた。
「リオン、こっち座れよ、俺がその席座るから、ほらっ、コーラ買ってきたぞ」
ミツヒデ…さん…何?!かばってくれた?!今の殺気はあの男に向けた殺気…何で今から殺す奴かばうんだこの人…
「どうしたリオン、何か顔色悪くないか?」
「ごめん、ちょっと御手洗い行ってくる」
「やっぱり気分悪いのか?ついて行ってやろうか?」
「いい!1人で平気だから、大丈夫…映画始まる前には戻るから」
そう言うとリオンは御手洗いの方へと足早に去って行った。しばらくするとリオンに言い寄っていた男も席を立って行った。
何で?何なんだよあの人!何考えてんのか全然わかんない!もうこのまま逃げようかな…
「ねえ、大丈夫?君リオンっていうんだ、可愛い名前だね、その容姿にピッタリだ凄く良いよね君…そそるんだけど…俺とここから出て2人っきりにならない?」
「はあ?何で俺があんたと?」
「もっと楽しい所行こうよ」
「嫌だね!誰があんたなんかに…」
「まあ、そう言わないで」
男はリオンの手首を掴み奥の個室に連れ込むと片手でリオンの両手の自由を奪い服の下に空いた片手を忍ばせてきた。
「辞めろ!」
ここで俺がこの男倒しちゃったらミツヒデさんに俺の正体ばれちゃいそうだし…でもこのままこんな奴に犯されるなんてマジで嫌っ!
「綺麗な肌してんなー、もっと触らせろよ!誰も来ないから脱いじゃえよ!ほらっ!」
又殺気!!!ミツヒデ?!
「急に大人しくなって観念したか?気持ちよくしてやるよ!」
「そこまでにしとけよ、そんなに死にたいの?お前殺してやってもいいけど楽には死なせない、リオンにこんな汚い手で触ったんだ、楽に死ねると思うなよ!」
「な、何だよお前こいつの連れ…脅しかよ!」
「脅しかどうか試してみるか?まずはリオンを触ったそっちの手」
ミツヒデは素手で男の手を掴んだ。その瞬間バキバキっと骨の砕ける鈍い音がした。男は大きな声をあげ膝から崩れ落ちた。
「次はリオンの服を脱がそうとした手だ」
ミツヒデは男のもう片方の手を掴んだ。そしてその瞬間又バキバキっと骨の砕ける鈍い音がした。男は気を失って倒れ込んだ。
「リオン、大丈夫か?!」
いつのまにかミツヒデから発せられる殺気は消えていた。
「大丈夫です…有難う、助けてくれて」
「映画見れなかったな…じゃあ、予定変更するか」
「予定変更?まだ何処かに行くんですか?」
「俺の部屋来る?DVD借りて部屋でみようぜ」
「ミツヒデさんの部屋で…?!」
「そう、俺の部屋、付き合ってくれるんだろ?」
「何でそこまで俺に頼むんです?」
「付き合うって約束だらろ?」
「わかりました…付き合います、助けてくれたし…」
「よしっ、そうと決まったらレンタル屋でDVD借りて酒は家にあるから、つまみでも買って帰るか、リオン人混み苦手っぽいしな何か顔色悪いし部屋で見る方が落ち着くだろ?」
「そ、そうですね…」
そうだった…ミツヒデさんに連れて来られたけど俺人混み昔っから苦手だったよな…この感知能力のせいで、色んな人の気が頭の中に流れ込んでくるみたいでよっちゃうんだよな…
「リオン、どうかしたか?」
「いえ…何でもないです、それより何借りるんです?やっぱりホラーとか?」
「リオン、やっぱりホラー怖いんだろ」
「怖くないですっ」
ミツヒデとリオンはコンビニの袋いっぱいのつまみとDVDを持ってミツヒデのマンションの前に立った
「ここ、俺のマンション」
「凄く大きいマンションですね…家賃高そう…」
「家賃っていうか少し前に買ったんだ、買った方が家賃払うより安い気がしてな、リオンが初めての客だ」
「えっ!いいんですか?初めての客が俺で…彼女とかじゃなくて…」
「いいの、いいの、彼女とか今特定の奴居ないから」
「そうなんですか…ちょっと意外…」
「ん?何か言ったか?」
「いえ…別に…」
「ほら、入れよ」
「お邪魔します…うわっ!広っ!」
「だろ?結構良い部屋だろ?俺も気に入ってんだよな、特にバスルーム広いんだ、リオン先に風呂入って来いよ、お湯溜めてやるから、バスタブもでかいからゆっくり浸かれるぞ」
「お風呂?!でも着替えとかないし…DVD見終わったら帰らないと…」
「えっ!門限とかあんの?」
「そういう理由じゃないけど…」
「それなら問題ないじゃん、泊まってけよ、着替えは俺の貸すから」
「でも…」
「良いだろ?その方がゆっくり出来るし、今お湯溜めてくる、荷物置いてバスルーム来いよ」
「えー…」
ミツヒデはリオンをバスルームに案内しバスタブにお湯を溜め始めた。
「着替え用意しとくから入ってろよ」
あー何かミツヒデさんに言われるまま部屋まで入っちゃってお風呂まで…何で殺そうとしてる奴にこんな親切なんだ?て言うかなにのこのこ付いてきてんだ俺は…殺されるって思ってんのにあの人と居ると遂忘れそうになるんだよな…ミツヒデさんが殺し屋だって事も昼間人1人殺した事も…何でだろ…本当変な感じ…
リオンはミツヒデに対し妙な安心感をいだき始めている自分に驚きながらも服を脱ぎ始めた。
「リオン、着替え…」
ミツヒデはリオンが脱ぎ始めている事に気づき、さっと目をそらした。
「悪い…まだ入ってなかったんだな…着替え此処に置いとくから」
ミツヒデは慌ててバスルームから出て行った。
「あ、有難うございます…」
リオンはミツヒデの慌てようを不思議に思いながら首をかしげる。
「あー2日ぶりのお風呂だ~気持ち良い、もうこの後殺されてもミツヒデさんの事恨めない~」
リオンは広々としたバスタブに浸かりながら今日の出来事を振り返り目を閉じた。
ミツヒデさん…あんな出会いじゃなかったら友達になれそうなくらい良い人なのに…
何で殺し屋なんだろ…
やばかった…リオン本当に男か?!綺麗すぎるだろ、オッパイなかったよな…やっぱ男男なのにもろタイプ!あの綺麗な顔も声も上半身しか見てないけど…華奢な体も…すげー良い…
ミツヒデはオビの事務所に入って来たリオンに一目惚れしてしまったのだ。リオンが事務所を出て行ってからすぐにリオンの後を追いかけ何とか1日付き合って貰う事に成功した。リオンが男に襲われた事はラッキーな事とは言えないが、その事がきっかけとなりマンションに連れて来れた事はミツヒデにとって結果的にラッキーな事になったのだ。
リオンきっと引くだろうな…男に好きだとか言われたら…でも俺は絶対諦めねえ!諦められねえ…こんな気持ち初めてだよな…俺だって今まで色んな女と付き合ってきたけど…こんな必死になんのってやっぱ初めてだな、男にこんな感情湧き上がるとか…
「ミツヒデさん、お風呂有難うございました、それと着替えなんですけど…下のズボン大きすぎて…上のシャツだけ貸してもらいました」
「………可愛い………」
「ん?ミツヒデさん何か言いました?」
「いやっ…何でもない!俺も風呂入ってくるわ、適当にくつろいどけよ…」
「はい、じゃあ、ソファに座って待ってますね」
「おう、じゃあ行ってくる」
ミツヒデはリオンの可愛いすぎる格好に興奮している自分を抑えながらバスルームの方へ急ぎ足で歩いて行った。
「何だよ!あの格好…俺に何の試練だ!俺の理性は保てるのか?エロ可愛いすぎだろ!」
「何かさっきからミツヒデさんの様子おかしいよな…」
リオンはミツヒデに借りた大きめのシャツの袖を3つほどまくり、ソファに座った。
「やっぱりズボン履かないと足がスウスウする…女の子ってこんな感じなのかな…」
ミツヒデのシャツはリオンにはかなり大きめで立っているとシャツの裾が膝の少し下まできてしまう。ソファに座ると膝が少し見えて普段スカートなど履く機会のないリオンはこの時初めて女の子の気分を味わったのだ。
「スカートって大変なんだな…」
この2日公園のベンチで寝ていたリオンは流石に疲れがでたとみえて、肌触りの良いソファに座ると急に眠気におそわれ、そのまま横になり眠り始めてしまった。
「リオン、待たせたな…って…寝てる…?」
リオンはスヤスヤと気持ち良さそうに寝息をたて眠りこんでいる。ミツヒデはその無防備なリオンの寝姿にゴクリとつばを飲む。
続く
そう斬り込むのは、帯原カケル26歳、斬り込まれそっぽを向いているのは、塩田ミツヒデ27歳。
「いい加減人殺すの辞めて俺と仕事組めよ、お前1人で抹殺業なんて今時はやんないぜ」
「人殺しとか言うな!ビジネスだろうが…殺し屋も」
そう、塩田ミツヒデは敏腕の殺し屋。殺し屋一家に産まれ育ったのだから彼にとって殺しはビジネスなのだ。依頼され始末し報酬を頂く。これが彼の生き方そのものなのだ。その腕を見込んで帯原はミツヒデを自分の組織に入れようと必死に勧誘しているのだった。その帯原も又大きな組織を束ねる一番隊の隊長。闇の世界では通称死神と恐れられている。隊を束ねるといっても、帯原自身今まで誰かと仕事を組むような事はせず一匹狼のように1人で仕事を片づけてきたのだが、帯原を拾い育てた兄の様な存在でもある総大将に自分の隊を作るよう命じられ今は自分と組める相方探しに奮闘しているのだ。ミツヒデとは昔何度か仕事を組んだ事もあり、帯原の中では唯一気心が知れた仲なのだ。おまけに腕も一流ときたら帯原が諦める訳もなく、何度振られても勧誘し続けている。
「オビ、ほんとお前しつこいな」
「あれ~、俺の事今オビって呼んだか~
ちょっとは仲良くなれたんじゃないの~ミツヒデっ」
「うるせーよ、お前の上司か主か知らねーけどお前の事オビオビ言うから移ったんだよ」
「今まで主(あるじ)しか俺の事オビって呼ばなかったから何か新鮮?みたいな(笑)」
「はぁ~?!何言ってんだ…考えといてやるよ、ほんとうぜーっ」
「マジかよ!!いい返事待ってるぜっ」
「考えとくって言っただけだからな!期待すんなよ、じゃあ俺仕事あるから行くわ」
「あー、仕事ね…怖い怖い」
「お前に言われたくないわ!死神くん」
殺し屋が向かう所はただ1つ標的を撃ち抜ける場所だ。
「あー…こんな風に逃げ出して来ちゃったけど、やっぱ行く所もないし…又今夜もこの公園で野宿か…お腹すいた…お風呂入りたいな…」
真っ昼間の公園でうなだれベンチに座っているのは美少女と見間違えられるほど綺麗なビジュアルの青年。どうやら訳ありで、ある組織から逃げ出して来たらしいその青年の名は白石リオン21歳。彼には普通の人にはない能力がそなわっており、その能力はこれまでの仕事には欠かす事の出来ない特別なものだった。彼には人が出す殺気を瞬時に感じ取るというもの。強い殺気は普通の人間にも感じる事があるという。しかし彼の感じる殺気はどんなに小さな殺気でもどの方向から発せられ何処に向けられているのかもわかってしまう。最近では人間の恐怖心なども感じるようになっていた。そして今まさに居てはいけない場所に彼は居る。ミツヒデの狩場だ。しかしリオンは気付いていないようだ。ただ1人の男が幼い娘を連れて公園で遊んでいる様子を羨ましげに見つめている。そしてもう一人その様子を見つめている人物が居た。ミツヒデだ。同じく公園のベンチに座り珈琲を飲みながら新聞を広げている。リオンはその男の視線の先が新聞ではなく、又幼い娘にでもなく、父親 ただ1人に向けられている事に気付いた。しかし、その男から殺気の1つも感じ取る事は出来ずリオンは気のせいかと自分の強すぎる感知能力のせいだと思い直し目をそらそうとした瞬間、男の右手がかすかに動いた…と同時に娘と遊んでいた父親がバタリと音をたて倒れたのだ。リオンはすぐに駆け寄ろうと足を踏み込みかけとっさに思い直した。
今あそこに行ってはいけない!俺が見ていた事に気づかれるかもしれない、あの男はヤバイ、殺気を放つ事なく人を殺した!プロの殺し屋それもかなり腕のいい…ここから離れなくては !
泣き叫ぶ幼い娘の声がリオンの耳にこびりつきはなれない。
さっきの男…まだ若そうに見えた。でも一流の殺し屋、あんな幼い娘の前で父親を…
許せない…奴を探し出して…探し出してどうしよう…とりあえず近隣を探してみてから考えよう。
リオンの目に映ったのは7階建てのビルの3階にある帯原探偵事務所の看板だった。
「人相を言えば探す協力くらいはしてくれるかな…行ってみるくらいはいいか…」
リオンは思い切って探偵事務所のドアをノックした。
「どうぞ、開いてるよ」
リオンは恐る恐るドアを開け体から血の気が引いていくのを感じた。ドアの向こうにはさっきの殺し屋と探偵らしい男が話しているのだ。
「えーっと…何か捜し物とか?浮気調査頼みに来たようには見えないけど…」
そう声をかけたのは勿論探偵事務所のオビだ。探偵事務所といってもそれは見せかけで本業は闇の仕事としておこう。
そしてリオンに視線を送るもう一人の男はミツヒデだ。ミツヒデはリオンの顔をじっと見つめている。
どうしよう…あの男何でジロジロ見てんの?!もしかして殺し屋の仕事見てたのバレてる?!ここから出なきゃ…
「あの…すいません、階間違えてしまったみたいで…失礼しましたっ!」
リオンは慌てて部屋を出て行った。
落ち着け、落ち着け、もう大丈夫だよな…とりあえず何処か店に入って落ち着こう
リオンが部屋を飛び出し辿り着いたのは事務所から少し離れたドーナツ屋だった。
「あの、珈琲ホットで、あと…これと」
「この店はやっぱりこのドーナツがオススメだけど…ねえ、お姉さん」
何で…!!!こいつがここに??!!
「君、珈琲こぼれてるよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です!…それより何で貴方がここに…?!」
「あー…俺もこの店のドーナツ好きなんだわ、それより君時間ある?暇?暇だよね?ドーナツ食べてるし、ちょっと俺と付き合ってくれない?今から、ドーナツ食べてからでいいからさ」
リオンがひと息つく間もなく目の前にミツヒデが現れた。リオンは顔をひきつらせながらも平気なふりを装い空いているテーブルに向かって歩きだした。
「ねえ、君、俺の話聞いてる?」
「聞いてません」
「聞いてませんって…聞こえてるじゃん」
「何なんです!?俺に何か用ですか?」
「暇だろ?付き合って」
「…付き合ってって…何処にです?!」
絶対この人気付いてる…俺が見てた事、きっと殺すつもりだよな…人気の無い所に連れてって…
「なあ、聞いてる?さっきから何かぼーっとして、何か考え事?俺仕事終わって今から暇でさ、付き合ってくんない?」
そうだよな今人1人殺して仕事終わらせたんだよな、後は見た奴を殺すだけだよなこの俺を…いいさ付き合ってやるよ、俺だって殺気を感じられなくたって腕には自信あるんだ!勝負してやる!
「良いですよ、俺も暇してたとこなんで何処でもお付き合いしますよ」
「マジで?!じゃあ、映画見に行かない?」
「映画?!」
そうか…映画始まって暗くなったら殺るつもり…ベタだね…
「良いですよ、何処でも付き合うって言ったし、何見るんです?」
「それは見てのお楽しみ…」
そう言うとミツヒデは珈琲を飲み干した。
「そろそろ出ようか、映画の時間もあるし」
ミツヒデはレシートを手に取りレジの方へ歩きだした。
「自分の分は自分で払います!」
「いいから、今日は俺が誘ったんだ、全部俺が払うよ、映画代もな」
何考えてるのか全然読めない…それにやっぱりこの人からは殺気が全く感じられない
「えっ!これみるんですか?ホラー…?」
「ホラーだけど苦手かな?あっ、そうだ名前まだ聞いてなかった、俺は塩田ミツヒデ。君は?」
「白石リオン…です」
殺す相手の名前聞くのも殺し屋のルールとか…?
「へー、リオンか可愛い名前じゃん、リオンって呼んでいいかな?俺の事はミツヒデでいいからさ」
「ミツヒデ…さん」
「さんは要らないけど、まだ慣れないならさん付けでもいいけど、慣れたら禁止な」
慣れるまでに殺す気だろーが…
リオンはミツヒデがいつ仕掛けてくるのかとその事で頭がいっぱいだった。
「いい席空いてたな、俺飲み物買ってくるから座って待ってて」
「あっ…はい」
何?デートかよ!いやいや…油断させといて殺るつもりだろうけど、そうはいかない!でも何か調子狂う、これも作戦のうちか…?
「隣、良いですか?」
リオンに声をかけてきたのは見知らぬ男だった。
「こっちなら空いてますよ、どうぞ」
男はリオンの右隣の席に座り話かけてくる
「映画1人で見に来たの?誰か連れ居る?」
「一応…今飲み物買いに行ってます。多分もう少ししたら帰ってきますけど」
「そうなんだ、残念…」
そう言うと男はリオンの手を触り始めた。
「あ、あの…そういうの辞めてもらえませんか?」
「あー、ごめんね、あんまり綺麗な手だったからついね、でも男と2人で映画とか見にくるって…好きなんじゃないの?こういう事されんの」
殺気!!!
リオンは背後にこれまで感じた事のない強い殺気を感じ、それと同時に酷い寒気を感じた。
「リオン、こっち座れよ、俺がその席座るから、ほらっ、コーラ買ってきたぞ」
ミツヒデ…さん…何?!かばってくれた?!今の殺気はあの男に向けた殺気…何で今から殺す奴かばうんだこの人…
「どうしたリオン、何か顔色悪くないか?」
「ごめん、ちょっと御手洗い行ってくる」
「やっぱり気分悪いのか?ついて行ってやろうか?」
「いい!1人で平気だから、大丈夫…映画始まる前には戻るから」
そう言うとリオンは御手洗いの方へと足早に去って行った。しばらくするとリオンに言い寄っていた男も席を立って行った。
何で?何なんだよあの人!何考えてんのか全然わかんない!もうこのまま逃げようかな…
「ねえ、大丈夫?君リオンっていうんだ、可愛い名前だね、その容姿にピッタリだ凄く良いよね君…そそるんだけど…俺とここから出て2人っきりにならない?」
「はあ?何で俺があんたと?」
「もっと楽しい所行こうよ」
「嫌だね!誰があんたなんかに…」
「まあ、そう言わないで」
男はリオンの手首を掴み奥の個室に連れ込むと片手でリオンの両手の自由を奪い服の下に空いた片手を忍ばせてきた。
「辞めろ!」
ここで俺がこの男倒しちゃったらミツヒデさんに俺の正体ばれちゃいそうだし…でもこのままこんな奴に犯されるなんてマジで嫌っ!
「綺麗な肌してんなー、もっと触らせろよ!誰も来ないから脱いじゃえよ!ほらっ!」
又殺気!!!ミツヒデ?!
「急に大人しくなって観念したか?気持ちよくしてやるよ!」
「そこまでにしとけよ、そんなに死にたいの?お前殺してやってもいいけど楽には死なせない、リオンにこんな汚い手で触ったんだ、楽に死ねると思うなよ!」
「な、何だよお前こいつの連れ…脅しかよ!」
「脅しかどうか試してみるか?まずはリオンを触ったそっちの手」
ミツヒデは素手で男の手を掴んだ。その瞬間バキバキっと骨の砕ける鈍い音がした。男は大きな声をあげ膝から崩れ落ちた。
「次はリオンの服を脱がそうとした手だ」
ミツヒデは男のもう片方の手を掴んだ。そしてその瞬間又バキバキっと骨の砕ける鈍い音がした。男は気を失って倒れ込んだ。
「リオン、大丈夫か?!」
いつのまにかミツヒデから発せられる殺気は消えていた。
「大丈夫です…有難う、助けてくれて」
「映画見れなかったな…じゃあ、予定変更するか」
「予定変更?まだ何処かに行くんですか?」
「俺の部屋来る?DVD借りて部屋でみようぜ」
「ミツヒデさんの部屋で…?!」
「そう、俺の部屋、付き合ってくれるんだろ?」
「何でそこまで俺に頼むんです?」
「付き合うって約束だらろ?」
「わかりました…付き合います、助けてくれたし…」
「よしっ、そうと決まったらレンタル屋でDVD借りて酒は家にあるから、つまみでも買って帰るか、リオン人混み苦手っぽいしな何か顔色悪いし部屋で見る方が落ち着くだろ?」
「そ、そうですね…」
そうだった…ミツヒデさんに連れて来られたけど俺人混み昔っから苦手だったよな…この感知能力のせいで、色んな人の気が頭の中に流れ込んでくるみたいでよっちゃうんだよな…
「リオン、どうかしたか?」
「いえ…何でもないです、それより何借りるんです?やっぱりホラーとか?」
「リオン、やっぱりホラー怖いんだろ」
「怖くないですっ」
ミツヒデとリオンはコンビニの袋いっぱいのつまみとDVDを持ってミツヒデのマンションの前に立った
「ここ、俺のマンション」
「凄く大きいマンションですね…家賃高そう…」
「家賃っていうか少し前に買ったんだ、買った方が家賃払うより安い気がしてな、リオンが初めての客だ」
「えっ!いいんですか?初めての客が俺で…彼女とかじゃなくて…」
「いいの、いいの、彼女とか今特定の奴居ないから」
「そうなんですか…ちょっと意外…」
「ん?何か言ったか?」
「いえ…別に…」
「ほら、入れよ」
「お邪魔します…うわっ!広っ!」
「だろ?結構良い部屋だろ?俺も気に入ってんだよな、特にバスルーム広いんだ、リオン先に風呂入って来いよ、お湯溜めてやるから、バスタブもでかいからゆっくり浸かれるぞ」
「お風呂?!でも着替えとかないし…DVD見終わったら帰らないと…」
「えっ!門限とかあんの?」
「そういう理由じゃないけど…」
「それなら問題ないじゃん、泊まってけよ、着替えは俺の貸すから」
「でも…」
「良いだろ?その方がゆっくり出来るし、今お湯溜めてくる、荷物置いてバスルーム来いよ」
「えー…」
ミツヒデはリオンをバスルームに案内しバスタブにお湯を溜め始めた。
「着替え用意しとくから入ってろよ」
あー何かミツヒデさんに言われるまま部屋まで入っちゃってお風呂まで…何で殺そうとしてる奴にこんな親切なんだ?て言うかなにのこのこ付いてきてんだ俺は…殺されるって思ってんのにあの人と居ると遂忘れそうになるんだよな…ミツヒデさんが殺し屋だって事も昼間人1人殺した事も…何でだろ…本当変な感じ…
リオンはミツヒデに対し妙な安心感をいだき始めている自分に驚きながらも服を脱ぎ始めた。
「リオン、着替え…」
ミツヒデはリオンが脱ぎ始めている事に気づき、さっと目をそらした。
「悪い…まだ入ってなかったんだな…着替え此処に置いとくから」
ミツヒデは慌ててバスルームから出て行った。
「あ、有難うございます…」
リオンはミツヒデの慌てようを不思議に思いながら首をかしげる。
「あー2日ぶりのお風呂だ~気持ち良い、もうこの後殺されてもミツヒデさんの事恨めない~」
リオンは広々としたバスタブに浸かりながら今日の出来事を振り返り目を閉じた。
ミツヒデさん…あんな出会いじゃなかったら友達になれそうなくらい良い人なのに…
何で殺し屋なんだろ…
やばかった…リオン本当に男か?!綺麗すぎるだろ、オッパイなかったよな…やっぱ男男なのにもろタイプ!あの綺麗な顔も声も上半身しか見てないけど…華奢な体も…すげー良い…
ミツヒデはオビの事務所に入って来たリオンに一目惚れしてしまったのだ。リオンが事務所を出て行ってからすぐにリオンの後を追いかけ何とか1日付き合って貰う事に成功した。リオンが男に襲われた事はラッキーな事とは言えないが、その事がきっかけとなりマンションに連れて来れた事はミツヒデにとって結果的にラッキーな事になったのだ。
リオンきっと引くだろうな…男に好きだとか言われたら…でも俺は絶対諦めねえ!諦められねえ…こんな気持ち初めてだよな…俺だって今まで色んな女と付き合ってきたけど…こんな必死になんのってやっぱ初めてだな、男にこんな感情湧き上がるとか…
「ミツヒデさん、お風呂有難うございました、それと着替えなんですけど…下のズボン大きすぎて…上のシャツだけ貸してもらいました」
「………可愛い………」
「ん?ミツヒデさん何か言いました?」
「いやっ…何でもない!俺も風呂入ってくるわ、適当にくつろいどけよ…」
「はい、じゃあ、ソファに座って待ってますね」
「おう、じゃあ行ってくる」
ミツヒデはリオンの可愛いすぎる格好に興奮している自分を抑えながらバスルームの方へ急ぎ足で歩いて行った。
「何だよ!あの格好…俺に何の試練だ!俺の理性は保てるのか?エロ可愛いすぎだろ!」
「何かさっきからミツヒデさんの様子おかしいよな…」
リオンはミツヒデに借りた大きめのシャツの袖を3つほどまくり、ソファに座った。
「やっぱりズボン履かないと足がスウスウする…女の子ってこんな感じなのかな…」
ミツヒデのシャツはリオンにはかなり大きめで立っているとシャツの裾が膝の少し下まできてしまう。ソファに座ると膝が少し見えて普段スカートなど履く機会のないリオンはこの時初めて女の子の気分を味わったのだ。
「スカートって大変なんだな…」
この2日公園のベンチで寝ていたリオンは流石に疲れがでたとみえて、肌触りの良いソファに座ると急に眠気におそわれ、そのまま横になり眠り始めてしまった。
「リオン、待たせたな…って…寝てる…?」
リオンはスヤスヤと気持ち良さそうに寝息をたて眠りこんでいる。ミツヒデはその無防備なリオンの寝姿にゴクリとつばを飲む。
続く
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