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第一章 神社の主
明晰夢〜めいせきむ〜
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私は毎朝午前5時に起床し朝ご飯を食べず熱いブラックの珈琲を飲み眠い目を無理矢理こじ開け、6時前に家を出る。3時間という短い時間で仕事を終え家に帰ると、まず執筆中の小説に目を通す。そして昨日の続きから又執筆を始める。お昼を過ぎた頃ようやく、お腹が空いていることに気がついて冷蔵庫をあさり残っている食材で昼食を作り1人で食べる。食べ終わると急激に眠気がやってきて1時間ほどベッドで仮眠をとる。あっと言う間に1時間が過ぎ私は再び執筆の為机に向かう。そして夜ご飯をコンビニのおにぎりで軽く済ませ、切のいいところまで執筆し、私の1日が終る。この生活パターンを始めてもう2年だ。私の書いた小説は誰に読まれる訳でもなく、いつか誰かの目にとまればと、少しの期待を抱いてこんな事を2年も続けているのだ。いい加減そんな夢は諦めて彼氏でも作る事を考えればいいのに…とそんな気持ちが時折
胸を締め付ける。しかし、物語を書き始めるとそんな寂しい感情は初めからなかったかのように心が安らぐのだ。だから描くことを辞めずにいるのだろう。
職場の行き帰りの道で少しおくばった所に昔からあるような格式高い神社が時折目にはいる。立ち寄りたい気持ちはあるのだが帰って早く原稿をチェックし、続きを書きたい気持ちがいつも勝ってしまい立ち寄る事を断念してきたが、この日はどうしてもその神社に入ってみたくなったのだ、多分自分自身行き詰まりを感じていたのだろう神聖な空気を体いっぱい吸い込んで気持ちを一新したいと心と体が神社へとむかわせた。
中に一歩足を踏み入れてみるとそこはまるで外の世界とは空気の流れも冷たさも違っていた。思いっきり空気を吸い込むと体の中に綺麗に浄化されたエネルギーのようなものが入ってくるのがわかる。
「これは凄い!凄く気持ちいいー!」
私はこれがパワースポットってやつか!などとうかれながらスマホで写真を撮り始めた。そこへ、1人の青年が現れた。
「何をされてるんですか?」
青年は神主のような格好をしていた。私は慌てて写真を撮るのを辞め神主に平謝りに謝った。
「すいません!綺麗な神社だったので遂、竹林なんかもあって凄く綺麗な感じだったもので…本当に申し訳ありません…」
「いえ、私は怒っている訳ではないんです。熱心に何かされてたのでお声をかけただけですよ、気になさらぬように」
神主は私にそう言うと境内の方へ歩いて行ってしまった。
綺麗な神主さん…女の人みたい…
神主さんってもっとお年をめした方がされるものだと思っていた私はその若く綺麗な姿に少し違和感を感じながら神社をあとにした。
そして数日が経ったある日の事、私に転機が訪れた。職場が今月いっぱいで失くなってしまうという事が朝の朝礼で知らされた少し前から経営が思わしくないという噂は耳に入っていたのだが、こんな急展開になろうとは思いもしなかったのだ。実の所、私は両親の残した遺産を受け継ぎ働かなくても食うに困る事はないのだ。しかし昔から人付き合いの悪い私にとって職場だけが唯一誰かと繋がりを持てる場所になっていた。職場に親しい友人が居たわけではないが、顔を合わせ挨拶し仕事の話をする。ただそれだけの事でも私にとっては大切で意味のある事だった。27歳彼氏無し独身の私はこの日孤独を迎えた。私は職場の帰り道又あの神社に行こうと歩き始めた。車が1台やっと通れるかと思うくらいの少し細い道を渡った所に神社へと続くさらに細い道がある。横断歩道も信号もない道は歩きなれた私でさえヒヤリとする瞬間がある。急なカーブがあり見通しが悪い為だ。この日私は少し考え事をしていた為か注意をおこたってしまった。道を半分まで渡った所で車に気付き私は体が固まってしまった。避けることも出来ず跳ねられると思った瞬間車の急ブレーキの音がした。私はその場に倒れ込んだ。
どれくらい時間が経ったのか、太陽は沈み辺りは暗くなっていた。結構な時間気を失っていたようだ。倒れた時に腕をすりむいた以外目立った傷もなく、不思議と痛みも感じられなかった。車を運転していた人はすでにその場にはおらず逃げてしまったようだ。
何てついてない…命が助かっただけでもよしとするしかないのか…と、私は道を渡りきり神社へと続く細い道の前で足をとめたそして再び神社の方へ歩き始めた。
夜の神社ってちょっと不気味…でも神聖な空気は昼間より強い気がする…
「やっぱりここは気持ち良い…」
私は独り言を言いながら夜の神社を散策していた。
「今晩は、又会いましたね」
そこへ、この間の綺麗な神主が現れた。
「こ、今晩は」
「腕から血が出ているようですが…大丈夫ですか?」
「ええ…大した事はないんです…それよりすいません…暗くなってから神社に来たりして…」
「構いませんよ、ここには何時来てもいいのですから」
「有難うございます…あの神主様ですよね?この神社の」
「神主……私は貴方の言う神主ではありません」
「…?神主様じゃない…?あのでもその格好は…それに前もこの神社に居ましたよね?!」
「私はずっと居ますこの場所に…ここは私を祀っている神社ですので」
「貴方を祀っている…?!」
「私は弥彦と申します、貴方が産まれるよりだいぶと前から神として祀られここに居るのです」
「神様?!」
「そのようですね…元々はこの神社も小さなお社でした。お社の中で私はずっと多くの人間を見て来ました、その昔この土地は日照り続きで干からび農作物が育たず人々は飢えに苦しんでいた。人々は小さなお社に雨を降らせて欲しいと必死に祈り続けた私はその人間たちの強い想いによって弱っていた力を取り戻し雨を降らせる事が出来たのです。それからというもの、人々はお社に農作物をお供えし土地の繁栄を祈りお社をここまで大きくしてくれた。私は人の子が可愛い、だからこの土地と人の子を守る為ずっとここに居る。」
私は目と耳を疑わずにには居られなかったこの人が神様だとして…何で私に見えるんだ?!私には元々霊感とか妖怪が見えるとかそんな力は無かったはず…そもそもこの人は本当の事言ってる…?!
「何故私に見えるのか?と思っているのだろう?私も長くここに居るが人の子と言葉を交わすのは初めての事だよ、この前ここで会った時も君には私の姿や声が聞こえていたようだったが、今の君はこの前と様子が少し違う様だ」
「違う…?」
「いや…何でもない…それよりその傷痛まないのかい?私が治してあげるから腕を出しなさい」
弥彦は私の腕に手をかざすと不思議な事に腕の傷が綺麗になくなってしまった。私はその時この人は本当の事を言っているんだとようやく確信を持つ事が出来た。
胸を締め付ける。しかし、物語を書き始めるとそんな寂しい感情は初めからなかったかのように心が安らぐのだ。だから描くことを辞めずにいるのだろう。
職場の行き帰りの道で少しおくばった所に昔からあるような格式高い神社が時折目にはいる。立ち寄りたい気持ちはあるのだが帰って早く原稿をチェックし、続きを書きたい気持ちがいつも勝ってしまい立ち寄る事を断念してきたが、この日はどうしてもその神社に入ってみたくなったのだ、多分自分自身行き詰まりを感じていたのだろう神聖な空気を体いっぱい吸い込んで気持ちを一新したいと心と体が神社へとむかわせた。
中に一歩足を踏み入れてみるとそこはまるで外の世界とは空気の流れも冷たさも違っていた。思いっきり空気を吸い込むと体の中に綺麗に浄化されたエネルギーのようなものが入ってくるのがわかる。
「これは凄い!凄く気持ちいいー!」
私はこれがパワースポットってやつか!などとうかれながらスマホで写真を撮り始めた。そこへ、1人の青年が現れた。
「何をされてるんですか?」
青年は神主のような格好をしていた。私は慌てて写真を撮るのを辞め神主に平謝りに謝った。
「すいません!綺麗な神社だったので遂、竹林なんかもあって凄く綺麗な感じだったもので…本当に申し訳ありません…」
「いえ、私は怒っている訳ではないんです。熱心に何かされてたのでお声をかけただけですよ、気になさらぬように」
神主は私にそう言うと境内の方へ歩いて行ってしまった。
綺麗な神主さん…女の人みたい…
神主さんってもっとお年をめした方がされるものだと思っていた私はその若く綺麗な姿に少し違和感を感じながら神社をあとにした。
そして数日が経ったある日の事、私に転機が訪れた。職場が今月いっぱいで失くなってしまうという事が朝の朝礼で知らされた少し前から経営が思わしくないという噂は耳に入っていたのだが、こんな急展開になろうとは思いもしなかったのだ。実の所、私は両親の残した遺産を受け継ぎ働かなくても食うに困る事はないのだ。しかし昔から人付き合いの悪い私にとって職場だけが唯一誰かと繋がりを持てる場所になっていた。職場に親しい友人が居たわけではないが、顔を合わせ挨拶し仕事の話をする。ただそれだけの事でも私にとっては大切で意味のある事だった。27歳彼氏無し独身の私はこの日孤独を迎えた。私は職場の帰り道又あの神社に行こうと歩き始めた。車が1台やっと通れるかと思うくらいの少し細い道を渡った所に神社へと続くさらに細い道がある。横断歩道も信号もない道は歩きなれた私でさえヒヤリとする瞬間がある。急なカーブがあり見通しが悪い為だ。この日私は少し考え事をしていた為か注意をおこたってしまった。道を半分まで渡った所で車に気付き私は体が固まってしまった。避けることも出来ず跳ねられると思った瞬間車の急ブレーキの音がした。私はその場に倒れ込んだ。
どれくらい時間が経ったのか、太陽は沈み辺りは暗くなっていた。結構な時間気を失っていたようだ。倒れた時に腕をすりむいた以外目立った傷もなく、不思議と痛みも感じられなかった。車を運転していた人はすでにその場にはおらず逃げてしまったようだ。
何てついてない…命が助かっただけでもよしとするしかないのか…と、私は道を渡りきり神社へと続く細い道の前で足をとめたそして再び神社の方へ歩き始めた。
夜の神社ってちょっと不気味…でも神聖な空気は昼間より強い気がする…
「やっぱりここは気持ち良い…」
私は独り言を言いながら夜の神社を散策していた。
「今晩は、又会いましたね」
そこへ、この間の綺麗な神主が現れた。
「こ、今晩は」
「腕から血が出ているようですが…大丈夫ですか?」
「ええ…大した事はないんです…それよりすいません…暗くなってから神社に来たりして…」
「構いませんよ、ここには何時来てもいいのですから」
「有難うございます…あの神主様ですよね?この神社の」
「神主……私は貴方の言う神主ではありません」
「…?神主様じゃない…?あのでもその格好は…それに前もこの神社に居ましたよね?!」
「私はずっと居ますこの場所に…ここは私を祀っている神社ですので」
「貴方を祀っている…?!」
「私は弥彦と申します、貴方が産まれるよりだいぶと前から神として祀られここに居るのです」
「神様?!」
「そのようですね…元々はこの神社も小さなお社でした。お社の中で私はずっと多くの人間を見て来ました、その昔この土地は日照り続きで干からび農作物が育たず人々は飢えに苦しんでいた。人々は小さなお社に雨を降らせて欲しいと必死に祈り続けた私はその人間たちの強い想いによって弱っていた力を取り戻し雨を降らせる事が出来たのです。それからというもの、人々はお社に農作物をお供えし土地の繁栄を祈りお社をここまで大きくしてくれた。私は人の子が可愛い、だからこの土地と人の子を守る為ずっとここに居る。」
私は目と耳を疑わずにには居られなかったこの人が神様だとして…何で私に見えるんだ?!私には元々霊感とか妖怪が見えるとかそんな力は無かったはず…そもそもこの人は本当の事言ってる…?!
「何故私に見えるのか?と思っているのだろう?私も長くここに居るが人の子と言葉を交わすのは初めての事だよ、この前ここで会った時も君には私の姿や声が聞こえていたようだったが、今の君はこの前と様子が少し違う様だ」
「違う…?」
「いや…何でもない…それよりその傷痛まないのかい?私が治してあげるから腕を出しなさい」
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