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準備

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「ツイです!!!!」
「あ。す、すみません、め、メアトです」
煩い人の急な自己紹介に戸惑いながらもメアトは丁寧なお辞儀と自己紹介で返答した。
「ツイです!!!!」
「なんで二回言ったんだよ」
満面の笑みを浮かべメアトに握手を求めるツイの姿を見るに余程嬉しいんだろう。
見える人が増えて良かったな、と俺はその煩い喜びを微笑ましく思った。
「わあああああ」
メアトがその手を取ると更に目を輝かせ、容赦なくブンブン腕を振るう。
喜びの表現過多で人を傷つけるぞ(物理)。
「まあ、そこら辺にしておいて、なんでメアトがツイの事を見えてるんだ?」
「ああ、確かにそうですねー」
ツイはうーんと考えてからメアトの方を見た。
「メアトさんはえっと、武器なんですっけ?」
「は、はい、一応呪いの装備という事に、なっています」
「そうですねえ……、うーん。わかりませんっ!!」
「今の質問の意図は何!?」
「正直な所、認識可能なのはシオさん以外いない、としか伝えられていないので、それ以上の理由は分かりかねます」
結局全部謎のまま、か。
「え、えと……お話について、いけない、のですが……」
「ん、ああ」
困惑気味のメアトの様子を愛くるしく思いつつ、丁寧な説明をツイにさせた。「私ッ!!」
序に二人の自己紹介も終え、ライビット達の元へともう一度戻ってきた。
彼らの目にはまだ闘志が宿っている。やる気は満々と捉えて良いんだろうか。
「ありがとう」
その言葉にライビット達は優しく頷いた。

「ははは、努力をしている様だな」

では、と意気込む俺たちの前に堂々たる立ち姿で音も無く現れたのは巨大な兎、ライビット達の長だった。
「お陰様でな」
俺は自然と苦虫を潰したような顔をしてしまった。
「ははは、よく顔と声に出るのう」
「で、今日は何の用だ?」
「……戦うか?」
俺がそう警戒しながら一つ聞くと長は真剣な面持ちでそう提案をする。
「……」
俺は少し考えて――――戦闘態勢を取った。

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