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おはようございます

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「おはようございます!シオさん!」
ん……?馬鹿みたいに大きい声が耳に響いてくるなぁ。あれ?いつの間に眠ったっけ?昼から記憶ないし、……そう思うと随分寝ていたのか?
「ふわぁ……」
大きなあくびをしながら俺は体を起こす。朝だ、それと、ツイだ。メアトも俺の横でぐっすり眠っている。え?何この自然のベッド……、トト〇?温かみ感じるわぁ。
あれ?俺どうしたんだっけ。ああ、そうか、戦って負けたのか……。
「シオさんシオさん!」
「なんだよ、随分と上機嫌だな」
「そりゃあもう!シオさんが目覚めてくれましたからね!!」
目が覚めても覚めなくても耳元でキンキンと煩い奴だな。
「よいしょっと。どれくらい寝てた?」
「丁度お昼なんで丸っと一日ですね!」
「うわっ、一日無駄にしたのか。……こうしちゃいられないな」
ゆっくりと立ち上がり周囲を見渡すが、長が見当たらない。俺の周りをライビット達が囲って心休める姿を見るに近くに居そうなんだが。
「どうかしました?」
「いや、長は?」
「ああ、長さんなら二階層の前に」
「やる気満々かよ、よし、戦ってくる」
「そんなカラオケ行ってくるみたいなラフな感じで言われても困りますよ」
「まあ、なんでも良いけど、早くしないと救えなくなるからな」
「ん……」
「お、良いところに」
むくりと眠そうに起き上がるのは小動物の様な可愛さを持ったメアトだ。ツイとは似て非なる存在だな。
「おはようございます……シオ……」
うとうとと眠そうにしながらも頑張って起きようとしてる、ナニコレ癒し。
「おはよう、早速でごめんけど二階層向かうよ」
「はひぃ」
そう言い手を出すと、随分と弱い力で俺の手を握った。大丈夫?寝起きで頭働いてないんじゃないの?
「で?二階層の前ってどこ?まずここどこ?」
「ここはライビットさん達の巣ですね」
「何あの兎、俺の事殺すんじゃないのかよ」
「シオさんだって優しいのは知ってるでしょう?」
「まあ、な」
ツイの案内に付いて道を歩いていると十分程で見覚えのある変態の背中が見えた、格好どうにかなんないんか。
「よく来たな」
俺は歓迎されていないのだろう。随分と低い声で長からの挨拶を貰ったからな。
一瞬の挨拶を済ませると長はゆっくり振り返る。
なんだ早速か?
俺は気を引き締め戦闘態勢を不慣れにも作る。
「さあ、行くぞ」
「ああ、来い」
「違う。お前が来るんだ?」
「え?先手を俺から?」
「「……何言ってんの?」」
会話がマジで繋がらなかったんだけど。
「いや、戦うんでしょ?」
「は?馬鹿?」
え?普通の悪口なんだけど。
「違うのか?」
「我が二階層に連れてってやる」
「え?あんなに嫌がってたじゃん」
「ああ。お前が死ぬのは心苦しいぞ。だから我が貴殿をそうならない様守ってやる」
「ん?話が読めないよ?」
「付いていってやると言っておるのだ。お前が一人で特攻したところで命を落とすだけだ。しかし我がいればそうなる事もないだろう」
「え?止めてたんじゃないの?ってかあんた門番でしょ?」
「うっさいわ」
ええー。
「まあ、付いてきてくれるのはありがたいけど」
「うむ」
「本当にか?」
「ああ」
「俺のやること否定派なんじゃないのかよ」
「貴様のやろうとしていること自体は尊敬している。命を落とす危険性があるから止めたまで!命を落としてまでやる事ではないからな。それが我の考えだ。だが貴様の主張もあるだろう。だから我は折衷案を考えた。我は我の意思で貴殿を守る事を決めたのだ。死なせはせんぞ。そしてお前も喜びを手に入れるのだ。お前はお前の我は我の意思を、だ!!」
「ふっ」
あんま何言ってるか分かんないや。
……でも。
「よろしく頼むよ」
「うむ!行こうぞ!」
長がそうしたいのならそうするのが一番なんだろう。俺を守ってくれて喜びまでくれるというのなら否定する理由はどこにもないよな。
「そう言えばさっきさ」
「ん?」
「なんであんな不機嫌そうな声出したの?」
「……めっちゃ眠くね?」
低血圧でしたか……。






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