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29話
バターたっぷりのフィナンシェ。
香ばしい匂いで、おいしさを主張してくるリンゴのタルト。
甘く煮込んだナッツが、大量に詰まったパイ。
果物の砂糖漬けが、贅沢に乗せられたサブレー。
そして、僕の大好きな、はちみつケーキ。
丸いテーブルに並べられたそれらに、すっきりとした味わいの紅茶を合わせれば、完璧としか言いようがなかった。
「兄上……この館の料理人の方々は素晴らしいですね……。僕の願いを、全て叶えてくれました」
「まだ食べてないのに、もう表情がとろけてるね」
最高なお菓子たちを前に感動していると、隣に座っている兄が笑う。
僕のリクエストした甘味が、勢ぞろいしているのだ。
表情なんて、ふにゃふにゃと柔らかくなるに決まっている。
「このような極上の甘味を口にする機会は、稀にしかございませんので、目にしているだけで、胸がいっぱいになりますね」
僕の正面に座っている二十代後半の男性が、優しく微笑みながら言葉をつむぐ。
緩く波打つ黒髪に、黒い瞳。
柔和で紳士的な雰囲気は、誰からも好かれそうだ。
そう。彼こそがマリウスのお兄さんで、ソレル家の長男であるリヴィオ・ソレル氏だ。
本日、エヴァンに手配をお願いしていたお茶会が、無事に開催された。
ソレル商会に招待状を送ったら、こちらがびっくりするほど素早く返事があり、是非とも僕に会いたいとのことだったので、喜び勇んでのご対面となった。
僕たちへの沢山の贈り物を持って領主館にやってきた彼は、さすがソレル商会の跡取り息子なだけあって、隙のない挨拶と、第三王子へのお見舞いの言葉を口にした。
もちろん、それらは早々に切りあげてもらったけど。
堅苦しい挨拶は、僕の前では厳禁だからね!
「リヴィオさんっ。今日は沢山食べて、お腹もいっぱいにしましょうね! もちろん、兄上とフレデリクもっ!」
今日は、皆で楽しく甘いものを食べようと思って、フレデリクにも、侯爵令息として参加してもらっている。
僕は満面の笑みを周りに向けながら、フォークを手にとった。
「では、さっそく僕から……!」
焦げ目までしっとりと輝くリンゴのタルトにフォークを乗せて、そっと一口大に切る。
かぐわしいリンゴの香りに誘われるがままに口内へタルトを運ぶと、僕はうっとりと頬をゆるめた。
んんんんんんんんんっ!!!!!
最高っ! 最高だよ!!
甘酸っぱいリンゴと、さくさくのタルト生地の相性が抜群っっ!!!
「ううっ……おいしすぎて、フォークが止まらなくなりますねっ」
僕はごきげんな食欲にまかせて、目の前の甘味を胃の中へとおさめていく。
「あっ……ナッツが香ばしいっ。ああっ、一口で濃厚なバターの風味が! 杏とさくらんぼが、たっぷりとサブレーに乗って……ふふっ、贅沢だなぁ」
おいしい甘味にすっかり没頭してしまい、しばらくしてハッと顔をあげると、三対の目が静かに僕を見つめていた。
皆、一口も食べずに僕を見守っている。
一人で爆食していたのが猛烈に恥ずかしくなって、僕はフォークを置いて縮こまった。
「何で食べてるの僕だけなんですかっ」
「ごめん、ごめん。テオがあまりにもおいしそうに食べるから、可愛くてつい見入ってた」
「恥ずかしいのでやめてくださいよっ。ほら、兄上たちも食べてください!」
皆が甘味を口にするのを確認して、僕も大好物のはちみつケーキを口内に迎え入れた。
はぁぁぁぁ……相変わらず、はちみつケーキはなんておいしいんだ……!!!!!
王都で作ってもらったのは生地がふわふわしてたけど、これはもっちりしてて食べごたえがあるなぁ~!
「テオの好物がはちみつケーキだなんて知らなかったよ。昔から、よく食べてた?」
「いやぁ~……謹慎中に好きになりまして……。突然、はちみつの魅力に気づきました」
「当商会では、様々な産地のはちみつを取り扱っておりますので、殿下に是非ご賞味いただきたいですね」
「わっ。いいんですか!? 僕、前からはちみつの食べ比べをしてみたいって思ってたんですよ~!」
はちみつや甘味の話でひとしきり盛りあがると、話題は自然にリヴィオの弟、マリウスのことに移っていった。
「そういえば、昨日もマリウスから書簡が届いたんですよ。過酷な日々で疲れてるだろうに、マメに送ってくれるから申し訳なくて。僕からの書簡には、返事をしなくてもいいよって言ってるんですけど……」
「私のもとに届いた弟からの便りには、殿下からの書簡が、とても励みになっているとありました。きっと、殿下へ文をしたためることも、マリウスの心の灯になっているのだと思います。どうか、これからも宜しくお願いいたします」
「マリウスの負担でなければいいのですが……。もちろん、僕もマリウスとの文通は、とても楽しいんですよ!」
「殿下からそのようなお言葉をいただけて、マリウスの兄として無上の喜びでございます」
そう言って、リヴィオは穏やかに微笑んだ。
その柔和な表情を見て、僕は前から気になっていることをぶつけてみることにした。
「あの……リヴィオさんは、マリウスがボネリーへ行ったことを、どう思っていますか?」
言葉の意味をはかりかねているリヴィオに、僕は話を続ける。
「ボネリーでの修業は、地上の地獄と呼ばれるぐらい辛いと有名で、マリウスも毎日大変な思いをしています。彼は僕の騎士になりたい、人生の高みを目指したいと言って出発しました。僕はそれがとても嬉しくて、心から応援しています。でも……ご家族の方は心配でしょうし、もしかしたら、ボネリー行きを反対しておられたのかもしれないと……」
以前から、ソレル家の人に聞いてみようかと迷っていたことだ。
家族からすれば、大事な四男坊が、僕の専属護衛になったかと思えば、地上の地獄へと出発して。
ボネリーでの修業は、マリウスが望んだことではあるにしろ、僕と関わったばかりに……なんて、嫌な気持ちになっているのではと不安を感じていた。
「私たちソレル家の者も、マリウスのボネリーでの修業は嬉しく思っていますよ。そして、殿下には深く感謝しております」
「僕に?」
リヴィオは、変わらぬ優しい表情で頷いた。
「殿下は、マリウスの人生に、太陽のような揺るぎない情熱をくださいました」
「そんな……僕は何もしていませんよ。僕の方こそ、いつも楽しい気持ちにしてもらってばかりで。痩せられたのも、マリウスのおかげですし」
「ありがとうございます。マリウスは、殿下にお仕えできることに、とても喜びを感じているようでした」
弟を思う兄の漆黒の目が、穏やかに細められる。
「実は……弟が兵士になると言いだした時に、私は反対したのです。身内のひいき目抜きに、マリウスには商いの才を感じていましたから。このまま商人になればいいのに、どうして剣の道に進むのかと」
「そうだったんですね……」
「弟は、剣で身を立てていきたいと夢を語ってくれましたが、自分が家を出て、弟妹たちに残してやるものを少しでも多くしたいという思いもあったようです」
ソレル家は大家族で、マリウスの下にも数人の弟妹がいるのだという。
以前に、四男は継げるものがないからとマリウスは言っていたが、それは優しい彼の建前だったようだ。
「しばらく話し合ったのですが、マリウスは兵士になると強く決心していましたので、それならばと快く送り出しました。しかし、厳しい訓練を乗り越えて、マリウスに与えられた仕事は、囲壁での見張り……。兵士の方には失礼ですが、商人として国内を渡り歩く方が、弟に向いているのではと考えていました」
けれど、そんな心配は杞憂に終わったという。
「殿下の専属護衛にしていただいてからは、マリウスの顔つきが変わりました。たまに本店へ顔を見せにくる度に、殿下がどれだけ素晴らしい御方かと嬉しそうに話して、剣術の鍛錬にも、より一層身が入っているようでした。しばらくしてボネリー行きを相談された時は驚きましたが、私たち家族は、殿下の専属騎士になりたいという思いを、喜んで後押ししました」
「えっ! マリウスったら、僕のことをご家族に話してたんですか?」
素晴らしい御方だなんて、大げさで恥ずかしいと言うと、リヴィオは、耳にしていた以上の素敵な王子殿下だと持ちあげてくるので、僕はしどろもどろに否定の言葉をつむいだ。
「殿下のことを語るマリウスは、誇りと喜びに満ちていました。私は、弟が人生をかけて追い求めることのできる情熱に出会えたことを、とても嬉しく思っています。マリウスが選んだのは厳しく険しい剣の道ですが、殿下という輝かしい道しるべがあれば、どんな困難も乗り越えて、必ずや騎士になって戻って来てくれると信じて、私たちは待っています」
リヴィオの熱量の高い言葉に、僕は戸惑ってしまう。
「僕のような未熟な王子が道しるべなんて、逆にマリウスが迷ってしまいますよ。僕は強く導くような立派な人間ではありません。なので、遠く離れていても、一緒に成長していければと思っています。彼にとって、誇れる主君となれるように」
「……とるにたらぬ商家の人間を、これほどまでに大切にしていただけて、マリウスは国一番の果報者でございます」
感極まった様子のリヴィオを前に、大いに慌てる僕を見て、兄は柔らかく微笑んだ。
香ばしい匂いで、おいしさを主張してくるリンゴのタルト。
甘く煮込んだナッツが、大量に詰まったパイ。
果物の砂糖漬けが、贅沢に乗せられたサブレー。
そして、僕の大好きな、はちみつケーキ。
丸いテーブルに並べられたそれらに、すっきりとした味わいの紅茶を合わせれば、完璧としか言いようがなかった。
「兄上……この館の料理人の方々は素晴らしいですね……。僕の願いを、全て叶えてくれました」
「まだ食べてないのに、もう表情がとろけてるね」
最高なお菓子たちを前に感動していると、隣に座っている兄が笑う。
僕のリクエストした甘味が、勢ぞろいしているのだ。
表情なんて、ふにゃふにゃと柔らかくなるに決まっている。
「このような極上の甘味を口にする機会は、稀にしかございませんので、目にしているだけで、胸がいっぱいになりますね」
僕の正面に座っている二十代後半の男性が、優しく微笑みながら言葉をつむぐ。
緩く波打つ黒髪に、黒い瞳。
柔和で紳士的な雰囲気は、誰からも好かれそうだ。
そう。彼こそがマリウスのお兄さんで、ソレル家の長男であるリヴィオ・ソレル氏だ。
本日、エヴァンに手配をお願いしていたお茶会が、無事に開催された。
ソレル商会に招待状を送ったら、こちらがびっくりするほど素早く返事があり、是非とも僕に会いたいとのことだったので、喜び勇んでのご対面となった。
僕たちへの沢山の贈り物を持って領主館にやってきた彼は、さすがソレル商会の跡取り息子なだけあって、隙のない挨拶と、第三王子へのお見舞いの言葉を口にした。
もちろん、それらは早々に切りあげてもらったけど。
堅苦しい挨拶は、僕の前では厳禁だからね!
「リヴィオさんっ。今日は沢山食べて、お腹もいっぱいにしましょうね! もちろん、兄上とフレデリクもっ!」
今日は、皆で楽しく甘いものを食べようと思って、フレデリクにも、侯爵令息として参加してもらっている。
僕は満面の笑みを周りに向けながら、フォークを手にとった。
「では、さっそく僕から……!」
焦げ目までしっとりと輝くリンゴのタルトにフォークを乗せて、そっと一口大に切る。
かぐわしいリンゴの香りに誘われるがままに口内へタルトを運ぶと、僕はうっとりと頬をゆるめた。
んんんんんんんんんっ!!!!!
最高っ! 最高だよ!!
甘酸っぱいリンゴと、さくさくのタルト生地の相性が抜群っっ!!!
「ううっ……おいしすぎて、フォークが止まらなくなりますねっ」
僕はごきげんな食欲にまかせて、目の前の甘味を胃の中へとおさめていく。
「あっ……ナッツが香ばしいっ。ああっ、一口で濃厚なバターの風味が! 杏とさくらんぼが、たっぷりとサブレーに乗って……ふふっ、贅沢だなぁ」
おいしい甘味にすっかり没頭してしまい、しばらくしてハッと顔をあげると、三対の目が静かに僕を見つめていた。
皆、一口も食べずに僕を見守っている。
一人で爆食していたのが猛烈に恥ずかしくなって、僕はフォークを置いて縮こまった。
「何で食べてるの僕だけなんですかっ」
「ごめん、ごめん。テオがあまりにもおいしそうに食べるから、可愛くてつい見入ってた」
「恥ずかしいのでやめてくださいよっ。ほら、兄上たちも食べてください!」
皆が甘味を口にするのを確認して、僕も大好物のはちみつケーキを口内に迎え入れた。
はぁぁぁぁ……相変わらず、はちみつケーキはなんておいしいんだ……!!!!!
王都で作ってもらったのは生地がふわふわしてたけど、これはもっちりしてて食べごたえがあるなぁ~!
「テオの好物がはちみつケーキだなんて知らなかったよ。昔から、よく食べてた?」
「いやぁ~……謹慎中に好きになりまして……。突然、はちみつの魅力に気づきました」
「当商会では、様々な産地のはちみつを取り扱っておりますので、殿下に是非ご賞味いただきたいですね」
「わっ。いいんですか!? 僕、前からはちみつの食べ比べをしてみたいって思ってたんですよ~!」
はちみつや甘味の話でひとしきり盛りあがると、話題は自然にリヴィオの弟、マリウスのことに移っていった。
「そういえば、昨日もマリウスから書簡が届いたんですよ。過酷な日々で疲れてるだろうに、マメに送ってくれるから申し訳なくて。僕からの書簡には、返事をしなくてもいいよって言ってるんですけど……」
「私のもとに届いた弟からの便りには、殿下からの書簡が、とても励みになっているとありました。きっと、殿下へ文をしたためることも、マリウスの心の灯になっているのだと思います。どうか、これからも宜しくお願いいたします」
「マリウスの負担でなければいいのですが……。もちろん、僕もマリウスとの文通は、とても楽しいんですよ!」
「殿下からそのようなお言葉をいただけて、マリウスの兄として無上の喜びでございます」
そう言って、リヴィオは穏やかに微笑んだ。
その柔和な表情を見て、僕は前から気になっていることをぶつけてみることにした。
「あの……リヴィオさんは、マリウスがボネリーへ行ったことを、どう思っていますか?」
言葉の意味をはかりかねているリヴィオに、僕は話を続ける。
「ボネリーでの修業は、地上の地獄と呼ばれるぐらい辛いと有名で、マリウスも毎日大変な思いをしています。彼は僕の騎士になりたい、人生の高みを目指したいと言って出発しました。僕はそれがとても嬉しくて、心から応援しています。でも……ご家族の方は心配でしょうし、もしかしたら、ボネリー行きを反対しておられたのかもしれないと……」
以前から、ソレル家の人に聞いてみようかと迷っていたことだ。
家族からすれば、大事な四男坊が、僕の専属護衛になったかと思えば、地上の地獄へと出発して。
ボネリーでの修業は、マリウスが望んだことではあるにしろ、僕と関わったばかりに……なんて、嫌な気持ちになっているのではと不安を感じていた。
「私たちソレル家の者も、マリウスのボネリーでの修業は嬉しく思っていますよ。そして、殿下には深く感謝しております」
「僕に?」
リヴィオは、変わらぬ優しい表情で頷いた。
「殿下は、マリウスの人生に、太陽のような揺るぎない情熱をくださいました」
「そんな……僕は何もしていませんよ。僕の方こそ、いつも楽しい気持ちにしてもらってばかりで。痩せられたのも、マリウスのおかげですし」
「ありがとうございます。マリウスは、殿下にお仕えできることに、とても喜びを感じているようでした」
弟を思う兄の漆黒の目が、穏やかに細められる。
「実は……弟が兵士になると言いだした時に、私は反対したのです。身内のひいき目抜きに、マリウスには商いの才を感じていましたから。このまま商人になればいいのに、どうして剣の道に進むのかと」
「そうだったんですね……」
「弟は、剣で身を立てていきたいと夢を語ってくれましたが、自分が家を出て、弟妹たちに残してやるものを少しでも多くしたいという思いもあったようです」
ソレル家は大家族で、マリウスの下にも数人の弟妹がいるのだという。
以前に、四男は継げるものがないからとマリウスは言っていたが、それは優しい彼の建前だったようだ。
「しばらく話し合ったのですが、マリウスは兵士になると強く決心していましたので、それならばと快く送り出しました。しかし、厳しい訓練を乗り越えて、マリウスに与えられた仕事は、囲壁での見張り……。兵士の方には失礼ですが、商人として国内を渡り歩く方が、弟に向いているのではと考えていました」
けれど、そんな心配は杞憂に終わったという。
「殿下の専属護衛にしていただいてからは、マリウスの顔つきが変わりました。たまに本店へ顔を見せにくる度に、殿下がどれだけ素晴らしい御方かと嬉しそうに話して、剣術の鍛錬にも、より一層身が入っているようでした。しばらくしてボネリー行きを相談された時は驚きましたが、私たち家族は、殿下の専属騎士になりたいという思いを、喜んで後押ししました」
「えっ! マリウスったら、僕のことをご家族に話してたんですか?」
素晴らしい御方だなんて、大げさで恥ずかしいと言うと、リヴィオは、耳にしていた以上の素敵な王子殿下だと持ちあげてくるので、僕はしどろもどろに否定の言葉をつむいだ。
「殿下のことを語るマリウスは、誇りと喜びに満ちていました。私は、弟が人生をかけて追い求めることのできる情熱に出会えたことを、とても嬉しく思っています。マリウスが選んだのは厳しく険しい剣の道ですが、殿下という輝かしい道しるべがあれば、どんな困難も乗り越えて、必ずや騎士になって戻って来てくれると信じて、私たちは待っています」
リヴィオの熱量の高い言葉に、僕は戸惑ってしまう。
「僕のような未熟な王子が道しるべなんて、逆にマリウスが迷ってしまいますよ。僕は強く導くような立派な人間ではありません。なので、遠く離れていても、一緒に成長していければと思っています。彼にとって、誇れる主君となれるように」
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