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2章:駆け出しの冒険者
23話:初討伐は暴れ馬
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目の前の馬とは違う鳴き声に、私は後方を確認する。少し離れているが、私に向かって一心不乱に走ってくる個体がいた。ランページ・スティードだ。
「乱入か!」
タークスさんの声が聞こえたと同時に、私は横へ転がる。私が立っていたところに馬が突っ込んできていたのだ。蹄の音がしなきゃ、ひかれてたな。
馬は私を横目に走り去ろうとした。しかし、ランページ・スティードの前を横切ろうとしたときに、暴れん坊が手負いの馬に向かって速度を上げて追い上げる。
ドゴォッ。
鈍い音を立てて馬とランページ・スティードがぶつかり合う。手負いの馬は衝突の衝撃で地面を転がり、しばらくもがいた後に力尽きた。
「なるほど、これが横取り」
「にゃあ!」
「ミケ、キャシー姉さんのところに!」
「ブモォオオオッ!」
次のターゲットは私らしい。ミケを肩から降ろし、短剣をかまえて向き合う。ミケがキャシー姉さんの方に走ったのを見送ったと同時に、見切りが発動して体が回避行動をとった。
余裕をもって回避する。馬と同じように短剣で切ろうとしたときに、異変が起きた。体がふわっと浮いたのだ。
「はぁ!?」
「ウラナ!」
青い空が一瞬見え、すぐに茶色い何かが見える。私は慌てて茶色い何かにしがみついた。茶色い何かは、ランページ・スティードのたくましい背中だった。何が起こったんだ。
「ちょっ、うわぁああ!?」
「どこ行くんだー!!?」
私を背中に乗せた暴れん坊はめちゃくちゃな方向に走り出す。ジグザグ走行だ。私は混乱しながら、振り下ろされないように必死に太い首にしがみついていた。落馬したらシャレにならないでしょ!
まるでロデオのように暴れまわるランページ・スティート。STR1の私は何度も腕が振りほどけそうになりながらも、しがみつき直すことで何とか落馬を逃れていた。
「ちょっとタークス! どうすんのよ、あれ!」
「いま釣ったらウラナもやべぇよな!?」
「俺が行く」
ヴィンセントさんが綺麗な短剣をかまえた時、私の短剣に異変が起きた。よくよく考えてほしいのだが、私はずーっと短剣をかまえていた。逆手持ちで、離さないようにぎゅっと握りこんでいたのだ。このリアルロデオ中も、ずっとである。何が起きたかというと、ランページ・スティートの首にしがみつき直した時に、太い首にはずみでぶっすりと短剣が突き刺さったのだ。
「オオオオオッ!?」
「わっ、ちょっ」
ロデオが激しさを増す。右腕が熱くなるのを感じながら、必死にしがみつく。しかし、抵抗もむなしく、私は空中に投げ出された。短剣はしっかりと手に握られている。慌てて受け身を取ろうとしたら、下にヴィンセントさんが待機してた。受け止める姿勢で待機してらっしゃる。私が着地しようとすると、怪我をしそうなので、大人しく受け止めてもらった。
「っと」
「お手数をおかけします」
「吹っ飛んだ第一声がそれか」
受け止めてもらったのにこれ以外の台詞あります? 短剣が刺さらないように両手で握っていたので、ぱっと見は祈るポーズをしていた。それをお姫様だっこで受け止めてもらっている。私って結構な高さに吹っ飛んだはずだから、受け止めるのも相当衝撃があったはずなのに、私的に衝撃ゼロでした。ヴィンセントさん、王子様適正あるのではなかろうか。知らんけど。
「あ、ランページ・スティード!」
降ろしてもらってからハッとした。私ってあの暴れ馬に打ち上げられたんですよ。アイツ、まだピンピンしてたはず。どうなったんだろう。
「おめでとう」
「はい?」
「ランページ・スティードの討伐完了だ」
ヴィンセントさんが指さす方には、ランページ・スティードが力なく横たわっていた。巨大な体躯の上にミケが乗り上げ、尻尾をピーンっと天に向け、ぷるぷる震わせている。めっちゃ喜んでますね。心なしか、顔つきが得意げでいらっしゃる。ところで、ミケの周りをもそもそ這ってるグリーンワームは、シャドーボクシングの相手になってた個体だよね。君は何してんの。
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「乱入か!」
タークスさんの声が聞こえたと同時に、私は横へ転がる。私が立っていたところに馬が突っ込んできていたのだ。蹄の音がしなきゃ、ひかれてたな。
馬は私を横目に走り去ろうとした。しかし、ランページ・スティードの前を横切ろうとしたときに、暴れん坊が手負いの馬に向かって速度を上げて追い上げる。
ドゴォッ。
鈍い音を立てて馬とランページ・スティードがぶつかり合う。手負いの馬は衝突の衝撃で地面を転がり、しばらくもがいた後に力尽きた。
「なるほど、これが横取り」
「にゃあ!」
「ミケ、キャシー姉さんのところに!」
「ブモォオオオッ!」
次のターゲットは私らしい。ミケを肩から降ろし、短剣をかまえて向き合う。ミケがキャシー姉さんの方に走ったのを見送ったと同時に、見切りが発動して体が回避行動をとった。
余裕をもって回避する。馬と同じように短剣で切ろうとしたときに、異変が起きた。体がふわっと浮いたのだ。
「はぁ!?」
「ウラナ!」
青い空が一瞬見え、すぐに茶色い何かが見える。私は慌てて茶色い何かにしがみついた。茶色い何かは、ランページ・スティードのたくましい背中だった。何が起こったんだ。
「ちょっ、うわぁああ!?」
「どこ行くんだー!!?」
私を背中に乗せた暴れん坊はめちゃくちゃな方向に走り出す。ジグザグ走行だ。私は混乱しながら、振り下ろされないように必死に太い首にしがみついていた。落馬したらシャレにならないでしょ!
まるでロデオのように暴れまわるランページ・スティート。STR1の私は何度も腕が振りほどけそうになりながらも、しがみつき直すことで何とか落馬を逃れていた。
「ちょっとタークス! どうすんのよ、あれ!」
「いま釣ったらウラナもやべぇよな!?」
「俺が行く」
ヴィンセントさんが綺麗な短剣をかまえた時、私の短剣に異変が起きた。よくよく考えてほしいのだが、私はずーっと短剣をかまえていた。逆手持ちで、離さないようにぎゅっと握りこんでいたのだ。このリアルロデオ中も、ずっとである。何が起きたかというと、ランページ・スティートの首にしがみつき直した時に、太い首にはずみでぶっすりと短剣が突き刺さったのだ。
「オオオオオッ!?」
「わっ、ちょっ」
ロデオが激しさを増す。右腕が熱くなるのを感じながら、必死にしがみつく。しかし、抵抗もむなしく、私は空中に投げ出された。短剣はしっかりと手に握られている。慌てて受け身を取ろうとしたら、下にヴィンセントさんが待機してた。受け止める姿勢で待機してらっしゃる。私が着地しようとすると、怪我をしそうなので、大人しく受け止めてもらった。
「っと」
「お手数をおかけします」
「吹っ飛んだ第一声がそれか」
受け止めてもらったのにこれ以外の台詞あります? 短剣が刺さらないように両手で握っていたので、ぱっと見は祈るポーズをしていた。それをお姫様だっこで受け止めてもらっている。私って結構な高さに吹っ飛んだはずだから、受け止めるのも相当衝撃があったはずなのに、私的に衝撃ゼロでした。ヴィンセントさん、王子様適正あるのではなかろうか。知らんけど。
「あ、ランページ・スティード!」
降ろしてもらってからハッとした。私ってあの暴れ馬に打ち上げられたんですよ。アイツ、まだピンピンしてたはず。どうなったんだろう。
「おめでとう」
「はい?」
「ランページ・スティードの討伐完了だ」
ヴィンセントさんが指さす方には、ランページ・スティードが力なく横たわっていた。巨大な体躯の上にミケが乗り上げ、尻尾をピーンっと天に向け、ぷるぷる震わせている。めっちゃ喜んでますね。心なしか、顔つきが得意げでいらっしゃる。ところで、ミケの周りをもそもそ這ってるグリーンワームは、シャドーボクシングの相手になってた個体だよね。君は何してんの。
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