僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

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1 「…私には絶対に指一本触れるな」

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僕は、僕を助けてくれた騎士にとことん嫌われている。

「…私には絶対に指一本触れるな」

この男は、同居生活が続いた今でも…繰り返し唱えているこの言葉だけは断固として譲らない。

せめて出来る事を、と炊事をしようとした僕に向けた冷たい視線と拒絶。

「……物にも触れるな」

こんな最悪のスタートを切った生活。

だが、何もするなと言うのはこの生活の中では多少無理があった。

何故なら、この男はほとんどベッドから立ち上がる事すらままならないからだ。

最初は僕が何をするにも心底嫌そうだったが、僕が何もしなければ二人とも飢え死だと気づいたのだろう、今では嫌そうに僕の食事を食べてくれていた。


何も出来なかった僕も…寝起きを繰り返し、男の小言に耳を傾けながら実践していたら、どうにか井戸も使える様になったし洗濯も出来るようになった。

そして……今日はようやく、男の添え木を取る事になり、湯浴みをさせてあげたくて、どうにか井戸水を湧かせるように火を焚いていた。


知らない大男との共同生活、何も知らない…何も出来ない僕と二人の暮らし。

この男はカイル。
全く知らない男だが、その風貌は凛々しく雄々しく…端正だが少し怖い。

何故こんな同居生活をしているかというと……カイルは…馬車から落ちる所だった僕を助けたらしい。

らしい…というのは、僕にはその時の記憶が全く無いからだ。気づけば、この可愛らしい家でボロボロのカイルと並んで、カイルの親戚の方に看病されていた。

僕の方は擦り傷があるくらいで…全身の骨を折っていたカイルに比べれば無傷に近い。

親戚の方は仕事が忙しいらしく、最初に看病してくれていた数日以来見ていないが…僕が平民の産まれで天涯孤独、奴隷同然に雇われていた屋敷から逃げ出した途中の馬車から落下し、それをカイルが助けてくれた事を教えてくれた。

馬車の名簿から調べてくれたそうだ。

そう言われても、僕は何も思い出す事は無かったけど。

読んだ本や…知識は恐らくあるものの、本来知っていてもおかしくなさそうな事を知らなかったりする。

親戚の方が言うには、恐らく屋敷の侍従時代のストレスと落下の影響らしい。

僕には帰る所も無いようだが、カイルが住んでいたこの小さな家に、カイルの世話という名目で住まわせて貰っているのだから、何とも幸運な男だ。

カイルは一ヶ月にも及ぶ身体の自由を失い、
記憶を失った。カイルが助けてくれなかったら、僕は死んでいたのかもしれない。

そう思うと、この偏屈で毎日怖い顔で嫌な奴のカイルに…色々世話を焼きたくなるのも頷けるだろう。



「……リン」

「カイルさん、腕は痛くない?今日添え木を取るんでしょう?」

家の裏で一生懸命に火を吹く僕の元によたよたとカイルが近寄る。

「っ、リン…こんな所に居たのか…杖があれば何とか歩けるとは言っても…こんな家の裏で作業をするのは止めろと、あれ程……」

カイルは、僕を忌々しい様な目で見下ろした。

僕が少しでも家の外に出ると、すぐにこうして小言を垂れ、料理はするな、火は使うな…と偏屈な事を言う神経質な男、カイル。

もう、このルーティンのような生活がひと月も続いている。

「カイルさんの足の寄木がやっと取れるから、風呂を焚いてあげたんだよ。今まで怪我が濡れない様に髪の毛を洗ってあげたのは誰?」

当たり前だが、カイルは全身の骨がバラバラの人間。指一本触れるなという約束は果たされてはいない。

だが、僕が触れる度にカイルはその顔を顰めるのだから、彼は本当に触れられるのが嫌なのだろう。

「…リン、頼むから外には出ないでくれ」

カイルは偏屈で神経質だが…それは僕を心配する気持ちも含んでいる事はこの一ヶ月で分かった事だ。

カイルが何故触れられる事を極端に嫌うのかという点と、僕に何もするなと頑なに言う理由はよく分からない。

命を助けて貰って、家に住まわせて貰ってご飯だって貰っているのだから、本来なら家事の全てをしろと言われても当たり前。

むしろ、何もするなというカイルの命令の方がずっと息苦しかった。


「カイルさん、…ごめん。でも、湯船に浸かりたいでしょ?まだ、足は杖がないと不安だし僕が一緒に入れば…」

「っ、駄目だ!」

同居当初のような強い拒絶。
その大きな声に僕は肩をビクリと揺らす。

一ヶ月で勝ち得た信頼が僕の中で散っていくようで…少しだけ切ない。

「…ごめん、せめて、添え木を取る手伝いくらいはさせて…ね?」

僕が寂しそうにそう言っても、カイルはその頭を横に振る。

「っ、なんで…そこまで…僕を拒絶するの…」

それでも食い下がる僕を、苦虫を噛み潰したように見た。

「リン、拒絶してるわけじゃない、何もしなくていい、あなたは部屋の中で好きな事をしていてくれ」

最近は、カイルが動けるようになって…僕は本格的に何もさせてもらえなくなっていた。

ベッドから動けなかった時は、仕方なくでも僕の作った物を食べてくれたり、処置をさせてくれたのに……動けるようになってからはずっとこうだ。

何もするな、部屋にいろ、触るなの三連コンボはもはや耳にタコが出来そうである。

カイルは料理も掃除も、まだ上がりきらない腕で行い…僕が手伝おうとしても出るのは拒否の言葉。

そもそも、僕はいつまでここに居ていいのだろう。

カイルの身体が動かなかった時は、僕は少なからず役に立っていた。だが…骨折した腕も足も寛解に近づくにつれ、つい僕の存在価値やカイルの受難を考えてしまう。

ずっとここに居るわけにはいかない。

記憶も、家族もない僕が一人で生きていくには何をしたらいいのだろう。

カイルの強い拒絶を思い出すと、出来るだけその決断は早い方がいいのだろうと感じる。

僕は部屋に戻ると、カイルが自分で血や膿で固まった包帯を外す嫌な音と小さな呻きに耳を傾ける事しか出来なかった。



「……カイルさん」

それから数日が経ち、出来るだけカイルの言う通り何もせず暮らしている。

随分動けるようになったカイルが、慌ただしく家事をする音が部屋の外から響く。

僕は、部屋からひょこりと顔を出した。

「……リン」

「ごめん、部屋から出ちゃった」

カイルは、まだぎこちなさそうな左腕と無事だった右腕で、夕飯の準備をしているらしい。

痛々しい傷は癒えていないのに、何も出来ない事は苦しかった。

「…いや、別に部屋から出るなとは言っていない、家の中に居て欲しい、出来れば目の届く所に…」

「カイルさん……」

何か手伝おうと保冷箱を開け、魚を取り出すとひったくられる。

「リン、手を切ったらどうする、魚はたくさんの棘がある…座っていてくれ」

流石に…少し変だ。

僕を助ける為に全身に大怪我を追ったこの男が、僕の手が切れる心配をしてここまで何もさせてはくれないなんて…おかしい。

単純に部外者に部屋の物を触られたくない、強い潔癖のよう質がそうさせるのか…。

なら早く、僕を追い出せばいいのに。

何をしてもカイルに怪訝な顔をされるのが嫌で黙って食卓に座り込むと、じきに温かい湯気の上がるスープと焼いた魚が並べられた。

「リン、腹が減っているのだろう?…こんな物しかなくてすまないが…リンの好物ばかり……だといいのだが」

そして……何故この人はこんなにも僕に優しいのだろう。息苦しさと、この優しさを交互に与えられる二律背反は…どうにもさらに僕を追い込んだ。

今日の食事は、いつもただぶち込まれた野菜達とは違い、ミルクで煮込まれていてチキンとの相性がいい。それを口に運ぶと、僕の味覚を確かに震えさせた。

「…美味しい」

「ああ、そうだろう。いつも片手では肉が切れないから、細かい調理工程の物は作れなかったが…両腕が多少は使える様になったから、これを一番に作ってやりたかった」

カイルのその顔は、珍しく目尻が下がっていて…嬉しそうで…そんなカイルが、僕も嬉しい。

嬉しくて…苦しい。

「言ってくれたら、手伝うのに」

「…ダメだ」

もう一口…スープを口に運ぶ。
美味しい甘い味付けのミルク味のスープに一筋の水滴がぽたりと落ちた。

「……カイルさん、両腕と足…使える様になったなら僕いらないよね。そもそも、ほとんど何もさせて貰えなかったけどさ」

まだカイルが寝たきりの時は良かった。
自分の居場所は存在意義なんて考える暇も無かったから。

「…リン、いらない…とは?」

「あ、いや…お世話ももう必要無いし、僕も家と仕事をそろそろ探そうと思ってるって話」

無理に笑顔を作ると、自然な流れを装いずっと考えていた事を切り出した。

「…は?」

だが、カイルは想像以上に僕の言葉に愕然としているようだ。

「だから……」

「リン、駄目に決まっている。外に出るのも…ましてや仕事など。頼むから、ここで大人しくしていてくれ。私もようやく身体が動く様になって、君に今よりもいい生活をさせてやれるんだ」

カイルの言っている事は辻褄が合わない事ばかりだ。他人の僕を身を呈して守り…何もさせず、仕事にも行かせようとはしないなんて、どう考えてもおかしい。

記憶の無い僕にでも、僕たちの関係がおかしい事くらいは分かる。

そして、このおかしさの正体を物語る事実は一つだ。

「……カイルさんは、本当に僕を知らなかったの?落下した馬車にたまたま乗り合わせていただけ…?カイルさんは……僕を知ってたんじゃないの?」

僕の胸にずっとつっかえていた違和感と、この男に対する信頼感、好意。

今日の会話からそのわだかまりは確信に変わる。

僕はきっと、この人を知っていて…カイルも僕を知っている。

僕たちはどんな関係だったのだろう。
家族……なら関係を内緒にするはずがない。

そう、一つ一つロジックを組み立てていくと自ずと見えてくる答えがあった。


「カイルさん、僕は……もしかしてあなたの恋人……だったとか?」

「……は?恋人?」

カイルは驚いたように笑う。

「恋人…そんなはずがない。恋人…?はは……ありえない」

だが、そのカイルの口ぶりに僕の希望的な予想は砕け散った。

失笑を漏らしながら否定するカイルの姿は、本気で僕達が恋人関係なんかじゃないという事を示していた。

しかし…確定したのは、やはりこの男は僕の事を知っているという事。

「…カイルさん、やっぱり僕を知っているんだ、恋人でも…家族でもない?じゃあ、あなたは僕の何?」

「………」

カイルは、僕を拒絶するのに優しくする…仕事に行くと言えばそれを止める、家族でも恋人でもない僕たちの関係。

カイルの何も言ってくれない態度は、妙に僕を苛立たせる。

「カイルさん、何も言わずに…何もさせずに、このまま僕をここに縛り付けておくの?」

「…リン、落ち着いてくれ…頼む」

「なら、教えてよ。僕とカイルさんのこと」

「………」

僕はスプーンを置くと、立ち上がる。
僕を渦巻く不安と悲しみが怒りのように湧き上がった。

「よく考えたら、赤の他人のあなたの家にずっと住んでいる方がおかしいんだから、急だけど、僕はすぐに出ていくよ。王都にいけば…住み込みで出来る仕事だって……」

この人は恩人だ。
感謝される覚えはあっても叱咤される謂れは無いのは僕だって分かる。

だが、僕の口は止まってくれる事はなく…そのドアノブに手をかけた。

だが、その直後に僕を襲ったのは…カイルの体温だった。

後ろから抱きすくめられ、カイルの身体が僕の背中に密着すると、その筋肉質な身体付きや高い身長がよく分かる。

カイルにこんな風に触れられるのは初めてで…それだけで心臓が高鳴った。

「……カイル、さん」

そのまま振り返り首に腕を回し、カイルの香りを鼻腔に吸い込むと心の底から安堵する。

「……リン、私は嘘が苦手だ。元々…無理だったのだ、こんなのは。でも…あなたと私の関係の話はどうしても出来ない……そして、私はあなたを引き止める為には、閉じ込める事しか知らない。そんな私を許さなくていい…お願いだ、側にいて欲しい」

眉毛は目尻とくっつきそうな程に垂れ下がり、眉間に寄った皺はさらに濃く刻み込まれている。

僕を抱いたまま、寝室に向かうとそっとベッドに下ろした。ベッドに座る僕の足元で、カイルはへたりこむ。

「カイルさん…、何があなたをそんなに苦しめるの」

「あなたの側にいるには、どうしたらいいのか…それを考えると…いつも、酷く苦しい」

恐らく、それは記憶を失くす前の僕に捧げられた言葉だ。

絶対に僕は、カイルの大事な人だったはずなのに…カイルの目には今の僕が写っていないみたいだった。

カイルは誰よりも優しい、そして…そんなカイルが僕も愛おしい。なのに、カイルは僕の奥にいる何かを見ている。

「カイルさん……僕、カイルさんの恋人じゃダメかな、ここに居る理由。何もさせても貰えない、家族でもない、そんなの辛いよ」

カイルは、その美しい黒色の瞳からぽたり、と涙を流す。苦しそうに両腕を握り、僕の膝におでこを擦り付けた。

「っ、リン……無理なんだ…」

震える声で絞り出されるそれは……またしても拒絶。これ程までに狂おしく、カイルの心が動いているのにも関わらず、僕達の心は酷く遠い。

「リン、調子のいい事を言ってすまない、あなたを恋人とは呼べないし、関係も言えない、だが…お願いだ、側にいてくれないか…」

底知れぬ事情と、カイルの懇願。

「カイルさん…僕に記憶、戻って欲しい?」

戻って欲しいに決まっている、僕の奥の僕をこんなにも思っているのだから。

だがカイルの唇は、僕の思った通りには動かなかった。

「ずっと……戻らなければいい」

きっとそれは僕に伝える気は無かったのだろう、ほとんど声にはなっていなかったが、確かにそう…唇が動いた。
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