5 / 9
5 「…うう、謝らないでよカイルさん。それに…一生って…そんなに重たい罪じゃないよ?」
sideブラウン
私は安堵した。
それは、この事件に嫡男殿下が一切関わって居なかったからだ。
それが発覚したのは、つい先日。
嫡男殿下が関わっていない事が発覚し、無事に犯人を捉えたのだから、アン殿下には王宮に戻って頂く他ない。
迎えの馬車に乗り込むとその小さな小屋へ入り込む。
そこはまるで葬式のような雰囲気だった。
丁度私が迎えに行ったのは、カイルがその罪悪感から真実を告白した瞬間だったらしい。
顔面を蒼白させるカイルと、困惑に慌てる殿下。
私は…陛下の騎士であり、不敬を承知で言えば嫡男様もアン様も我が子のように愛する男、チャールズ・ブラウン。
アン様への謀反…そして、その発端である嫡男様の未婚…問題は尽きる事は無い。
嫡男様は、王としての資質は満足なのだが…どうも皇后に対する理想を抱いている。
身分違いの恋をしているらしく、その者以外との結婚を頑なに拒んだ。
そして…嫡男様が結婚をされないせいで継承位第二位の、アン殿下はこうして狙われた。
カイルが身を呈して守った甲斐もなく、記憶を失い瀕死のカイルとの同居。
弟を愛する嫡男殿下は酷く混乱し、陛下は伏せってしまい…語弊を恐れず言えば、今王宮は王族としての機能を全く維持出来ていない。
だが、アン殿下を狙った者は身勝手な嫡男主義の従者だった事だけは不幸中の幸いだ。
アン殿下を溺愛していた嫡男殿下がアン殿下の暗殺を命ずる事など無いと分かりきってはいたが、犯人を見つけるまではアン殿下を王宮には戻せなかった。
だが犯人が捕らえられた今、アン殿下は記憶を失っていても王宮に戻す事が出来る。
アン殿下を心配して、使い物にならない嫡男殿下と陛下に元に戻ってもらわなければこの国はお終いである。
葬式状態の二人をなんとか王家の馬車に乗せ、数時間を掛け王宮へと向かった。
「…いきなり王家の次男だと言われて驚いたでしょう、アン殿下。今までの無礼をお許しください。あなたに謀反を働いた者を見つけるまでは、身分を隠して頂く必要がありましたので…」
カイルの横でぽつんと小さくなるアン殿下は、今までの気高く気品のある振る舞いからは考えらない。
「…驚いたなんてものじゃありません…だって、騎士様だと思ってたカイルさんも、僕に真実を告げてからは謝罪の言葉意外何も言ってくれなくなってしまって…」
大男のカイルは黙ったまま、大きな身体を縮こませ罪悪感からか表情を濁らせる。
「カイルは殿下が生まれる前からの騎士ですからね…殿下を平民同然に扱うひと月に申し訳なく思うのは当たり前でしょう」
「っ…でも!そんなの変です、命懸けで守ってくれたカイルさんが僕に申し訳なく思う事なんて何も……」
他の者たちなら、こんな殿下を見たら別人のようだと言うだろう。だが、私は知っていた、気高く高飛車な性格は王族としての振る舞いであって、元々の性格は優しくおおらかだ。
「アン殿下……食事作法のご記憶は?」
「……ブラウンさん、なんとなく……多分」
無いのは過去に関する記憶のようで、教育や良識に対してはちゃんと持ち合わせており、馬車の乗り降りも美しい所作を見せた。
今のアン殿下は、その麗しさと王家としての美しい所作を兼ね備えた……穏やかな両家の坊やのようだ。
「でしたら、従者に給仕させても大丈夫ですね、着いたらすぐに食事に致しましょう」
私としては、恋愛結婚を望む嫡男様でも、美貌と穏やかさを備えた今のアン殿下でも……どちらも王位には相応しいと思っている。
だが問題は……カイルという鉄壁の盾。
私は陛下に対し私生活の束縛をする事などまずなかった。だが…この男は昔からやたらと、殿下の意思を分かったように口を聞く。
「ブラウン殿……アン殿下は記憶を失って大変戸惑っておられますので、食事は私と二人で結構です」
罪悪感で灰のようになっていたかと思えば、従者に給仕をさせるという私の提案を一蹴した。
早く嫡男様には世継ぎをこさえて頂いて、アン殿下には貴族との縁談を進めたいというのが私の本音だ。
だが、殿下の事となるとすぐにカイルが割って入り…挙句こうして食事の相手ですら選ぼうとする。
「……殿下」
私がチラリと殿下に目をやると、カイルさんがそう言うなら二人の方がいいかな…と仰った。
これは昔からだ、カイルが言うと、殿下もそうしようと賛同する。無意識下で行われているのかもしれないが…私にとっても国の今後にとっても、この男の過保護さは鬱陶しい。
アン殿下には身の安全の為にも早く婚姻を結んで欲しいのに。
「殿下がそう仰るなら、食事はお二人で」
私は気に食わないのを悟られないように笑った。
「殿下、本当に…事情があるとは言え、あなたにした言葉遣いや態度…全てを謝罪致します。一生を掛けて償いますから、王宮では何でも私に申して下さいね」
「…うう、謝らないでよカイルさん。それに…一生って…そんなに重たい罪じゃないよ?」
「いえ、あなたに礼儀を欠くのは死罪も同然ですよ」
私からも護るように…カイルの身体は常に殿下の方へ向いている。
「カイル、それはお前にとって罰にならないでしょう。まぁ命じたのは私なのでもちろん、殿下がお許しになるのなら放免になるでしょうが」
一生殿下を、近くでお守りする……その言葉の重みを殿下は知らない。私はつい恐怖を覚える程の…強い執着。
「ブラウン殿……罰を与えられても私は構いませんよ。そうですね…無休で殿下の食事を作るとか…一生」
そう呟くカイルの口角が上がるのを私は見逃さなかった。
好きな人がいるからと結婚しない嫡男、結婚の意思はあれど鉄壁の騎士に守られた次男……。
王位の継承に当たる私の多難は終わりを見せることはない。
私は安堵した。
それは、この事件に嫡男殿下が一切関わって居なかったからだ。
それが発覚したのは、つい先日。
嫡男殿下が関わっていない事が発覚し、無事に犯人を捉えたのだから、アン殿下には王宮に戻って頂く他ない。
迎えの馬車に乗り込むとその小さな小屋へ入り込む。
そこはまるで葬式のような雰囲気だった。
丁度私が迎えに行ったのは、カイルがその罪悪感から真実を告白した瞬間だったらしい。
顔面を蒼白させるカイルと、困惑に慌てる殿下。
私は…陛下の騎士であり、不敬を承知で言えば嫡男様もアン様も我が子のように愛する男、チャールズ・ブラウン。
アン様への謀反…そして、その発端である嫡男様の未婚…問題は尽きる事は無い。
嫡男様は、王としての資質は満足なのだが…どうも皇后に対する理想を抱いている。
身分違いの恋をしているらしく、その者以外との結婚を頑なに拒んだ。
そして…嫡男様が結婚をされないせいで継承位第二位の、アン殿下はこうして狙われた。
カイルが身を呈して守った甲斐もなく、記憶を失い瀕死のカイルとの同居。
弟を愛する嫡男殿下は酷く混乱し、陛下は伏せってしまい…語弊を恐れず言えば、今王宮は王族としての機能を全く維持出来ていない。
だが、アン殿下を狙った者は身勝手な嫡男主義の従者だった事だけは不幸中の幸いだ。
アン殿下を溺愛していた嫡男殿下がアン殿下の暗殺を命ずる事など無いと分かりきってはいたが、犯人を見つけるまではアン殿下を王宮には戻せなかった。
だが犯人が捕らえられた今、アン殿下は記憶を失っていても王宮に戻す事が出来る。
アン殿下を心配して、使い物にならない嫡男殿下と陛下に元に戻ってもらわなければこの国はお終いである。
葬式状態の二人をなんとか王家の馬車に乗せ、数時間を掛け王宮へと向かった。
「…いきなり王家の次男だと言われて驚いたでしょう、アン殿下。今までの無礼をお許しください。あなたに謀反を働いた者を見つけるまでは、身分を隠して頂く必要がありましたので…」
カイルの横でぽつんと小さくなるアン殿下は、今までの気高く気品のある振る舞いからは考えらない。
「…驚いたなんてものじゃありません…だって、騎士様だと思ってたカイルさんも、僕に真実を告げてからは謝罪の言葉意外何も言ってくれなくなってしまって…」
大男のカイルは黙ったまま、大きな身体を縮こませ罪悪感からか表情を濁らせる。
「カイルは殿下が生まれる前からの騎士ですからね…殿下を平民同然に扱うひと月に申し訳なく思うのは当たり前でしょう」
「っ…でも!そんなの変です、命懸けで守ってくれたカイルさんが僕に申し訳なく思う事なんて何も……」
他の者たちなら、こんな殿下を見たら別人のようだと言うだろう。だが、私は知っていた、気高く高飛車な性格は王族としての振る舞いであって、元々の性格は優しくおおらかだ。
「アン殿下……食事作法のご記憶は?」
「……ブラウンさん、なんとなく……多分」
無いのは過去に関する記憶のようで、教育や良識に対してはちゃんと持ち合わせており、馬車の乗り降りも美しい所作を見せた。
今のアン殿下は、その麗しさと王家としての美しい所作を兼ね備えた……穏やかな両家の坊やのようだ。
「でしたら、従者に給仕させても大丈夫ですね、着いたらすぐに食事に致しましょう」
私としては、恋愛結婚を望む嫡男様でも、美貌と穏やかさを備えた今のアン殿下でも……どちらも王位には相応しいと思っている。
だが問題は……カイルという鉄壁の盾。
私は陛下に対し私生活の束縛をする事などまずなかった。だが…この男は昔からやたらと、殿下の意思を分かったように口を聞く。
「ブラウン殿……アン殿下は記憶を失って大変戸惑っておられますので、食事は私と二人で結構です」
罪悪感で灰のようになっていたかと思えば、従者に給仕をさせるという私の提案を一蹴した。
早く嫡男様には世継ぎをこさえて頂いて、アン殿下には貴族との縁談を進めたいというのが私の本音だ。
だが、殿下の事となるとすぐにカイルが割って入り…挙句こうして食事の相手ですら選ぼうとする。
「……殿下」
私がチラリと殿下に目をやると、カイルさんがそう言うなら二人の方がいいかな…と仰った。
これは昔からだ、カイルが言うと、殿下もそうしようと賛同する。無意識下で行われているのかもしれないが…私にとっても国の今後にとっても、この男の過保護さは鬱陶しい。
アン殿下には身の安全の為にも早く婚姻を結んで欲しいのに。
「殿下がそう仰るなら、食事はお二人で」
私は気に食わないのを悟られないように笑った。
「殿下、本当に…事情があるとは言え、あなたにした言葉遣いや態度…全てを謝罪致します。一生を掛けて償いますから、王宮では何でも私に申して下さいね」
「…うう、謝らないでよカイルさん。それに…一生って…そんなに重たい罪じゃないよ?」
「いえ、あなたに礼儀を欠くのは死罪も同然ですよ」
私からも護るように…カイルの身体は常に殿下の方へ向いている。
「カイル、それはお前にとって罰にならないでしょう。まぁ命じたのは私なのでもちろん、殿下がお許しになるのなら放免になるでしょうが」
一生殿下を、近くでお守りする……その言葉の重みを殿下は知らない。私はつい恐怖を覚える程の…強い執着。
「ブラウン殿……罰を与えられても私は構いませんよ。そうですね…無休で殿下の食事を作るとか…一生」
そう呟くカイルの口角が上がるのを私は見逃さなかった。
好きな人がいるからと結婚しない嫡男、結婚の意思はあれど鉄壁の騎士に守られた次男……。
王位の継承に当たる私の多難は終わりを見せることはない。
あなたにおすすめの小説
男同士で番だなんてあってたまるかよ
だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。
――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!!
※R描写がメインのお話となります。
この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。
毎日21時に更新されます。8話で完結します。
2019年12月18日追記
カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。
カテゴリを間違えてすみませんでした。
ご指摘ありがとうございました。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。
皆さまありがとうございます。
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
番外編。
リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。
――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。番外編をちょこちょこ追加しています。