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9 「凶悪なのはリーシャ様だろ……ああ、今日はしないって決めてたのに」
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「リーシャ様」
いつもなら部屋の中で待つリーシャ。
待ち合わせよりはずっと早い時間だが、待ち伏せするように、側室宮の陰にその男は居た。
「アルベルト」
「あ~かわいい」
リーシャは、シルエットの分かるシャツに薄手のパンツを吐くと、その上には厳かなカーディガンを纏っていた。
王宮を闊歩するにはあまりに軽装だ。
令嬢でも、騎士でも好まない…側室の彼だから許される麗しい装い。
肌寒そうに手を擦る手を掴むと、自らの胸に押し当てる。
「久々に会えるから、楽しみで…俺、緊張してる」
そのまま、アルベルトに抱き上げられ彼らの愛の巣へと歩みを進めた。
「リーシャ様、どんな風の吹き回しですか?今日は朝までなんて」
「アルベルト、お前の頼みをたまには聞いてあげようと思ったのです」
部屋の扉を開けながら、流れる静かな空気にそのアルベルトの声だけが響く。
「……リーシャ様、俺の事好きですか?」
リーシャは少しだけ意外だった。
もう少し彼が愚な傀儡だと思っていたから。
その声色は、いつもの軽薄さが無く…答えを知っているクイズの答えを待っているようだ。
「……アルベルト、可愛いのですね」
「リーシャ様、いいよ…俺、二番目でも。ていうか事実上の二番だし。もう色々諦めつくっていうか…。でも俺がこうやってイイコにしてたらリーシャ様の二番目で居られるって考え方もあるっていうか」
リーシャはもう少し、うまく転がせていると思っていた。いや、結果的には転がせてはいるのだろう。
だが、勘違いしたままの欲深い男相手の交渉の方がずっと楽だ。
こうして達観し、溺れた男は言いなりにはなれど覚悟もある。
いつか、フェルディナンドとの三角関係が回らなくなった時にフェルディナンドを殺す覚悟。
もしくはリーシャを殺し聖女のもとで二人きりになるという覚悟だろうか。
何にせよ、リーシャの目先の望みは叶いそうでかる。
アルベルトは、ベッドにリーシャを降ろすと隣に座り込んだ。
いつもなら、このままベッドになだれセックスをすれば解散。だが今日はまだあと半日以上、アルベルトに用意された時間がある。
普段の欲に塗れた目では無い、焦がれる男の目。リーシャは思った、むしろこの国が王政で良かったのだと。
これが、立場に優劣のつかない男二人だったのならきっとリーシャの手には負えなかった。
「……しないのですか?」
アルベルトは、リーシャの手を握って見つめるだけでそれ以上に距離を詰めようとはしない。
「リーシャ様、これは俺への何らかのご褒美なんだろ。リーシャ様のお願いを聞く為の餌、なら今日は俺の好きなようにしていい?」
「え………なんですか?くだらない事だったら容赦しませんよ」
いつも性に貪欲なアルベルトの打診が怖い。
どんな変態的な事を要求されるのか……。
だが、アルベルトはただ抱き締める。
「あ、いや…今日はそういう事しないでこうやってその綺麗な瞳を見ながらリーシャ様の話を聞きたいんだ。なんで陛下と知り合いだったのか…とか、色々。リーシャ様の事を知りたい」
リーシャは、罪悪感が生まれる。
口に出してないとはいえ、アルベルトがどうしようもない色狂いだと決めつけ警戒した。
アルベルトとはまだ知り合って数ヶ月。
まだ何もアルベルトの事を知らないのもリーシャも同じだ。
十年ほど暮らした側室宮。
慣れたその部屋のベッドでアルベルトに抱き竦められている事に急に違和感を覚える。
「今更ですが、この部屋でまた男に抱かれるなんてね」
「……あなたは、以前から陛下とも関係があったのですか?即位したらすぐにあなたを囲ったんでしょ、何故第五王子だった陛下と父上の側室のあなたが何故知り合いに?」
「私は、まだ一度もフェルディナンドに抱かれていません。あの子が九つで、私がまだ召し上げられたばかりの頃…あの隠し通路から現れたのです」
「っえ!!」
アルベルトは口に手を当て、嘘だろ?この可愛い男と寝ていて抱かない?陛下は不能か?と小声で漏らすがリーシャの耳にももちろん届いている。
「不敬は目を瞑ります、私の前では貴方のままでいてください。あの子は、それから十年も…私の部屋に通っていました。あの日…謀反のあったあの日、フェルディナンドと会う最後の日になるはずだったのです」
アルベルトの中で点は線になり、その線は今のリーシャを編んでゆく。
「だから、あの日陛下はキョロキョロしてたんだ。十年か~長ぇ、なんかぽっと出でリーシャ様独り占めしたい俺が馬鹿らしく思えてきた」
リーシャはそれ以上、アルベルトの嫉妬心を煽る事を言うつもりはなかった。
今自らの身体を抱くのはアルベルト、優しい抱擁もその熱い視線も全部リーシャに注がれているのだから。
「……第一王子の話は本当?」
それは、件の令嬢からも言われたその噂。
「第一王子?何なら陛下の目の上のたん瘤の貴族も騎士も、うまく使えそうな者はとことん手玉に取っていましたよ」
「……ええ、父上が命じたのですか?」
怪訝そうなアルベルトに向き直ると腰にリーシャも手を回す。
「…陛下は命じませんよ、そんな事。むしろやめて欲しいと言わんばかりでしたが…」
同じ王族、血の繋がりがあるにも関わらずアルベルトもフェルディナンドもその内情までは知る由もない。
「でも…俺が物心ついた時にはこの側室宮には誰も寄り付かないって……」
そう、忘れられた側室のリーシャ。
たくさんの男を誘惑し、王の寵愛を手放した悪辣の側室。
だが、箱を開ければ王はこの側室を手放したとは思えない。
「アルベルト……キスもしないつもり?」
リーシャがアルベルトの青い瞳見つめれば、ごくりと唾液を飲み込んだ。
アルベルトは知っていた、こんな風に甘えられれば聞きたかった事を聞けずにリーシャの魅惑に溺れていく。
これはリーシャの常套手段であり、このまま彼を抱けばまた、その誘いが来るまで焦がれる事しか出来ない。
そして、リーシャにとって都合のいい働きをした時に褒美と言わんばかりにまた逢瀬を取り付ける。
パブロフの犬、彼にとって都合よく動くように躾られた犬だ。
「リーシャ様にとっては陛下も犬?陛下を敬わないあなたにとって行動原理は何ですか?父上が聖女の元で笑えるように、亡き父の為に王族を動かしたい?」
そう問えば降ってくるリーシャの唇。
ああ、そのまま有耶無耶にされたまま、リーシャに溺れさせられるとアルベルトは思った時だ。
「…そうですね。陛下は私にとって最大の恩人。もちろん聖女の末裔である王族を争わせないという使命もありますが、陛下には聖女の元で安らかにいて欲しい、そして陛下のお子である貴方たちを守りたいというのもあります」
その言葉に恋慕は感じ取れない。
「フェルディナンドは…私がそう思って居なくても自分から犬を自認していますから」
「………わん」
リーシャは、アルベルトの硬くなったそれに身体を擦り付けた。
今日はしないと口で言っても、リーシャと密着すれば簡単に屈する程の戯言である。
リーシャの腰がすりすりと擦れるだけのもどかしい快楽。
まだほんの少し、今日こそ大切に抱くという…なけなしの理性のまま強く抱き締め、リーシャの身体に自ら性器を擦った。
「…凶悪」
その細い身体の柔らかさ、お腹にズボン越しに性器を押し当てただけでアルベルトは荒い息を吐いた。
「凶悪なのはリーシャ様だろ……ああ、今日はしないって決めてたのに」
リーシャはほんの少し安心した。
やはりフェルディナンドの鉄壁の理性がおかしいのだと。自分の美貌も立ち振る舞いも完璧で、アルベルトのように欲に浮かされるのが普通だなのだと。
「すきにして」
そう言えば、獣のように首元に吸い付いてくるのも…口付けを落とし舌を絡めてくるのも、これが当たり前。
「っぁ」
衣服を剥がれ、その白い肌が顕になっていく。
白い中で浮かび上がる赤色を弾かれればリーシャの身体が揺れる。
「リーシャ様……好きすぎ」
下肢広げられ、後孔に舌を這わせ…何度も行った一連の前戯。ふた月しか空いてないのに、数年ぶりみたいに心は昂った。
スーツの白さにも負けない程に白く、細い。
裸にするとベッドに咲く花のよう、乳首と性器だけが朱色で黒と白とほんのり咲いた赤。
同じ男の裸とは思えない程に美しかった。
後孔ですら、美しい蕾のようで指を挿入すれば、リーシャの艶かしい声が上がる。
アルベルトはそれが毎回酷く好ましくて…早く、早く、そこを自らの性器で擦り付けたい。
「っ、ぅあ…」
控えめに漏れる金楽器のような嬌声。
「リーシャ様……」
ぽっこりと腫れた前立腺に触れれば、身体をしならせアルベルトの身体にまとわりついた。
リーシャはその強い快楽を恐怖するみたいにアルベルトにしがみつくのも、大層気に入っている。
この、男を魅了する為だけに生まれたような男を手にしている時だけが、アルベルトの至高だった。
くぷ、という小さな音を立てながらリーシャの下肢を折り入り込んでいく。
「っ~~う、あ!」
唇を吸いながら、自分の形を覚えさせるように中で留まった。
そして根元まで引き抜くと、そのまま一気に奥まで入り込む。
「っ~~ぁああ!ぁ、」
リーシャの両腕を引っ張り、ばちゅばちゅと腰を打ち付ける度にリーシャの性器からさらさらの液体が漏れ出す。
だが最奥を突いた時、アルベルトはそのままリーシャを抱き締め覆いかぶさった。
「…すぐ出ちゃうから動きたくない」
夜は長い。いくらまだ成人を迎えたばかりのアルベルトとはいえ、一晩で抱ける時間は限られている。
また数ヶ月放置されるかもしれないリーシャをすぐには手放したくない。
だが、挿入したまま前立腺を仄かに刺激され雑談が出来る程、行為に慣れきっているわけではない。
腕の中から履いでると、アルベルトをベッドに倒した。
立ち上がったそれを後孔へ擦り付ける。
そして、体重を落としていくと性器と化した狭い所へ吸い込まれていく。
そして、自重で根元まで入り込んだにも関わらずリーシャはアルベルトの上で項垂れたままだった。
「…リーシャさま?」
「うう、こういうのは慣れていません…っ」
アルベルトは、悪戯心のままに腰を跳ね上げた。自分の上でふるふると快楽に悶える最奥を突き上げる。
「っあ!!」
目には涙を溜めながら、恨めしそうに見下げるリーシャは酷く扇情的で、そのまま下から最奥を刺激すれば、力なくアルベルトに縋るリーシャは甘い嬌声を吐き出した。
「ぁう…アルベルト、あんまり…意地悪を……んぁ!」
「あ~やば、可愛い。もう込み上げてきて止めらんねぇ。何回でも出せそう」
リーシャの腕をアルベルトの頭に回させ、腰を抱くと抱き合ったまま唇を貪った。
迫り上がる精液の欲のまま、リーシャのナカを掻き回す。
「っあ、あ、ぁあっ、~~っ」
そして、アルベルトの性器がリーシャの最奥部を擦り、前立腺を潰すと暖かい精液がリーシャのナカで広がった。
「……あ、すみません…リーシャ様…」
リーシャ自身もアルベルトの腹に、逢瀬で初めて白い精液を吐き出していて、中出しを叱る元気も無いのか、力なくぐったりと倒れた。
「あ、あ、リーシャ様?!」
「アルベルト……やりすぎ」
身体に力が入らないのか、リーシャは寝転がったまま手を仰ぎ水を欲しがった。
リーシャの中に植え付けた種子、もちろん子は宿さないが少し垂れるそれがアルベルトには酷く愛おしい。
水を欲しがっているのも無視して、腕の中に押し入れる。
「……アルベルト、私が動けないからって調子に乗ったら許しません」
「でも、こんな機会なかなか無いし、あと五分だけ……抱き締めさせて」
汗でベタついたリーシャの身体を密着させ、裸同士の二人が口付けを落とす。
リーシャは小さなデジャブを覚えていた。
それは、フェルディナンドと先程まで抱き合っていた時間はもちろん……敬愛する王との時間を少しだけ思い出したのだ。
「……今だけですよ」
リーシャは何とか身体を起こし、水に手を伸ばす。アルベルトに自らを運ばせ、初めて一緒の湯船を揺らした。
アルベルトは自身の身体に体重を預けるリーシャに、心臓を鳴らす。
「陛下はこんな事毎日してるのかよ」
「…そんな事もありませんよ。フェルディナンドはすぐに私の機嫌を損ねますからね、部屋に戻れと激高した事も何度あった事か」
アルベルトはほんの少し眉を下げ、リーシャの首筋を噛んだ。
「リーシャ様、またこうしてくれる?約束してくれますか…?」
リーシャの犬に成り下がった現第一王子、切なさを瞳に宿してそう呟いた。
「ええ。私が死ぬか、あなたが死ぬ日まで。あなたは第一王子、なくてはならない存在。いい子にしていてくれたら、ずっと」
アルベルトは、リーシャの望みが何なのかも聞こうとはしない。それは断るという選択肢を閉ざされた哀れな犬だからだろうか。
リーシャの望みを聞けば、必ずこの身体をその身に抱ける。
それはアルベルトにとって希望なのか、絶望なのかは本人にしか分からない。
いつもなら部屋の中で待つリーシャ。
待ち合わせよりはずっと早い時間だが、待ち伏せするように、側室宮の陰にその男は居た。
「アルベルト」
「あ~かわいい」
リーシャは、シルエットの分かるシャツに薄手のパンツを吐くと、その上には厳かなカーディガンを纏っていた。
王宮を闊歩するにはあまりに軽装だ。
令嬢でも、騎士でも好まない…側室の彼だから許される麗しい装い。
肌寒そうに手を擦る手を掴むと、自らの胸に押し当てる。
「久々に会えるから、楽しみで…俺、緊張してる」
そのまま、アルベルトに抱き上げられ彼らの愛の巣へと歩みを進めた。
「リーシャ様、どんな風の吹き回しですか?今日は朝までなんて」
「アルベルト、お前の頼みをたまには聞いてあげようと思ったのです」
部屋の扉を開けながら、流れる静かな空気にそのアルベルトの声だけが響く。
「……リーシャ様、俺の事好きですか?」
リーシャは少しだけ意外だった。
もう少し彼が愚な傀儡だと思っていたから。
その声色は、いつもの軽薄さが無く…答えを知っているクイズの答えを待っているようだ。
「……アルベルト、可愛いのですね」
「リーシャ様、いいよ…俺、二番目でも。ていうか事実上の二番だし。もう色々諦めつくっていうか…。でも俺がこうやってイイコにしてたらリーシャ様の二番目で居られるって考え方もあるっていうか」
リーシャはもう少し、うまく転がせていると思っていた。いや、結果的には転がせてはいるのだろう。
だが、勘違いしたままの欲深い男相手の交渉の方がずっと楽だ。
こうして達観し、溺れた男は言いなりにはなれど覚悟もある。
いつか、フェルディナンドとの三角関係が回らなくなった時にフェルディナンドを殺す覚悟。
もしくはリーシャを殺し聖女のもとで二人きりになるという覚悟だろうか。
何にせよ、リーシャの目先の望みは叶いそうでかる。
アルベルトは、ベッドにリーシャを降ろすと隣に座り込んだ。
いつもなら、このままベッドになだれセックスをすれば解散。だが今日はまだあと半日以上、アルベルトに用意された時間がある。
普段の欲に塗れた目では無い、焦がれる男の目。リーシャは思った、むしろこの国が王政で良かったのだと。
これが、立場に優劣のつかない男二人だったのならきっとリーシャの手には負えなかった。
「……しないのですか?」
アルベルトは、リーシャの手を握って見つめるだけでそれ以上に距離を詰めようとはしない。
「リーシャ様、これは俺への何らかのご褒美なんだろ。リーシャ様のお願いを聞く為の餌、なら今日は俺の好きなようにしていい?」
「え………なんですか?くだらない事だったら容赦しませんよ」
いつも性に貪欲なアルベルトの打診が怖い。
どんな変態的な事を要求されるのか……。
だが、アルベルトはただ抱き締める。
「あ、いや…今日はそういう事しないでこうやってその綺麗な瞳を見ながらリーシャ様の話を聞きたいんだ。なんで陛下と知り合いだったのか…とか、色々。リーシャ様の事を知りたい」
リーシャは、罪悪感が生まれる。
口に出してないとはいえ、アルベルトがどうしようもない色狂いだと決めつけ警戒した。
アルベルトとはまだ知り合って数ヶ月。
まだ何もアルベルトの事を知らないのもリーシャも同じだ。
十年ほど暮らした側室宮。
慣れたその部屋のベッドでアルベルトに抱き竦められている事に急に違和感を覚える。
「今更ですが、この部屋でまた男に抱かれるなんてね」
「……あなたは、以前から陛下とも関係があったのですか?即位したらすぐにあなたを囲ったんでしょ、何故第五王子だった陛下と父上の側室のあなたが何故知り合いに?」
「私は、まだ一度もフェルディナンドに抱かれていません。あの子が九つで、私がまだ召し上げられたばかりの頃…あの隠し通路から現れたのです」
「っえ!!」
アルベルトは口に手を当て、嘘だろ?この可愛い男と寝ていて抱かない?陛下は不能か?と小声で漏らすがリーシャの耳にももちろん届いている。
「不敬は目を瞑ります、私の前では貴方のままでいてください。あの子は、それから十年も…私の部屋に通っていました。あの日…謀反のあったあの日、フェルディナンドと会う最後の日になるはずだったのです」
アルベルトの中で点は線になり、その線は今のリーシャを編んでゆく。
「だから、あの日陛下はキョロキョロしてたんだ。十年か~長ぇ、なんかぽっと出でリーシャ様独り占めしたい俺が馬鹿らしく思えてきた」
リーシャはそれ以上、アルベルトの嫉妬心を煽る事を言うつもりはなかった。
今自らの身体を抱くのはアルベルト、優しい抱擁もその熱い視線も全部リーシャに注がれているのだから。
「……第一王子の話は本当?」
それは、件の令嬢からも言われたその噂。
「第一王子?何なら陛下の目の上のたん瘤の貴族も騎士も、うまく使えそうな者はとことん手玉に取っていましたよ」
「……ええ、父上が命じたのですか?」
怪訝そうなアルベルトに向き直ると腰にリーシャも手を回す。
「…陛下は命じませんよ、そんな事。むしろやめて欲しいと言わんばかりでしたが…」
同じ王族、血の繋がりがあるにも関わらずアルベルトもフェルディナンドもその内情までは知る由もない。
「でも…俺が物心ついた時にはこの側室宮には誰も寄り付かないって……」
そう、忘れられた側室のリーシャ。
たくさんの男を誘惑し、王の寵愛を手放した悪辣の側室。
だが、箱を開ければ王はこの側室を手放したとは思えない。
「アルベルト……キスもしないつもり?」
リーシャがアルベルトの青い瞳見つめれば、ごくりと唾液を飲み込んだ。
アルベルトは知っていた、こんな風に甘えられれば聞きたかった事を聞けずにリーシャの魅惑に溺れていく。
これはリーシャの常套手段であり、このまま彼を抱けばまた、その誘いが来るまで焦がれる事しか出来ない。
そして、リーシャにとって都合のいい働きをした時に褒美と言わんばかりにまた逢瀬を取り付ける。
パブロフの犬、彼にとって都合よく動くように躾られた犬だ。
「リーシャ様にとっては陛下も犬?陛下を敬わないあなたにとって行動原理は何ですか?父上が聖女の元で笑えるように、亡き父の為に王族を動かしたい?」
そう問えば降ってくるリーシャの唇。
ああ、そのまま有耶無耶にされたまま、リーシャに溺れさせられるとアルベルトは思った時だ。
「…そうですね。陛下は私にとって最大の恩人。もちろん聖女の末裔である王族を争わせないという使命もありますが、陛下には聖女の元で安らかにいて欲しい、そして陛下のお子である貴方たちを守りたいというのもあります」
その言葉に恋慕は感じ取れない。
「フェルディナンドは…私がそう思って居なくても自分から犬を自認していますから」
「………わん」
リーシャは、アルベルトの硬くなったそれに身体を擦り付けた。
今日はしないと口で言っても、リーシャと密着すれば簡単に屈する程の戯言である。
リーシャの腰がすりすりと擦れるだけのもどかしい快楽。
まだほんの少し、今日こそ大切に抱くという…なけなしの理性のまま強く抱き締め、リーシャの身体に自ら性器を擦った。
「…凶悪」
その細い身体の柔らかさ、お腹にズボン越しに性器を押し当てただけでアルベルトは荒い息を吐いた。
「凶悪なのはリーシャ様だろ……ああ、今日はしないって決めてたのに」
リーシャはほんの少し安心した。
やはりフェルディナンドの鉄壁の理性がおかしいのだと。自分の美貌も立ち振る舞いも完璧で、アルベルトのように欲に浮かされるのが普通だなのだと。
「すきにして」
そう言えば、獣のように首元に吸い付いてくるのも…口付けを落とし舌を絡めてくるのも、これが当たり前。
「っぁ」
衣服を剥がれ、その白い肌が顕になっていく。
白い中で浮かび上がる赤色を弾かれればリーシャの身体が揺れる。
「リーシャ様……好きすぎ」
下肢広げられ、後孔に舌を這わせ…何度も行った一連の前戯。ふた月しか空いてないのに、数年ぶりみたいに心は昂った。
スーツの白さにも負けない程に白く、細い。
裸にするとベッドに咲く花のよう、乳首と性器だけが朱色で黒と白とほんのり咲いた赤。
同じ男の裸とは思えない程に美しかった。
後孔ですら、美しい蕾のようで指を挿入すれば、リーシャの艶かしい声が上がる。
アルベルトはそれが毎回酷く好ましくて…早く、早く、そこを自らの性器で擦り付けたい。
「っ、ぅあ…」
控えめに漏れる金楽器のような嬌声。
「リーシャ様……」
ぽっこりと腫れた前立腺に触れれば、身体をしならせアルベルトの身体にまとわりついた。
リーシャはその強い快楽を恐怖するみたいにアルベルトにしがみつくのも、大層気に入っている。
この、男を魅了する為だけに生まれたような男を手にしている時だけが、アルベルトの至高だった。
くぷ、という小さな音を立てながらリーシャの下肢を折り入り込んでいく。
「っ~~う、あ!」
唇を吸いながら、自分の形を覚えさせるように中で留まった。
そして根元まで引き抜くと、そのまま一気に奥まで入り込む。
「っ~~ぁああ!ぁ、」
リーシャの両腕を引っ張り、ばちゅばちゅと腰を打ち付ける度にリーシャの性器からさらさらの液体が漏れ出す。
だが最奥を突いた時、アルベルトはそのままリーシャを抱き締め覆いかぶさった。
「…すぐ出ちゃうから動きたくない」
夜は長い。いくらまだ成人を迎えたばかりのアルベルトとはいえ、一晩で抱ける時間は限られている。
また数ヶ月放置されるかもしれないリーシャをすぐには手放したくない。
だが、挿入したまま前立腺を仄かに刺激され雑談が出来る程、行為に慣れきっているわけではない。
腕の中から履いでると、アルベルトをベッドに倒した。
立ち上がったそれを後孔へ擦り付ける。
そして、体重を落としていくと性器と化した狭い所へ吸い込まれていく。
そして、自重で根元まで入り込んだにも関わらずリーシャはアルベルトの上で項垂れたままだった。
「…リーシャさま?」
「うう、こういうのは慣れていません…っ」
アルベルトは、悪戯心のままに腰を跳ね上げた。自分の上でふるふると快楽に悶える最奥を突き上げる。
「っあ!!」
目には涙を溜めながら、恨めしそうに見下げるリーシャは酷く扇情的で、そのまま下から最奥を刺激すれば、力なくアルベルトに縋るリーシャは甘い嬌声を吐き出した。
「ぁう…アルベルト、あんまり…意地悪を……んぁ!」
「あ~やば、可愛い。もう込み上げてきて止めらんねぇ。何回でも出せそう」
リーシャの腕をアルベルトの頭に回させ、腰を抱くと抱き合ったまま唇を貪った。
迫り上がる精液の欲のまま、リーシャのナカを掻き回す。
「っあ、あ、ぁあっ、~~っ」
そして、アルベルトの性器がリーシャの最奥部を擦り、前立腺を潰すと暖かい精液がリーシャのナカで広がった。
「……あ、すみません…リーシャ様…」
リーシャ自身もアルベルトの腹に、逢瀬で初めて白い精液を吐き出していて、中出しを叱る元気も無いのか、力なくぐったりと倒れた。
「あ、あ、リーシャ様?!」
「アルベルト……やりすぎ」
身体に力が入らないのか、リーシャは寝転がったまま手を仰ぎ水を欲しがった。
リーシャの中に植え付けた種子、もちろん子は宿さないが少し垂れるそれがアルベルトには酷く愛おしい。
水を欲しがっているのも無視して、腕の中に押し入れる。
「……アルベルト、私が動けないからって調子に乗ったら許しません」
「でも、こんな機会なかなか無いし、あと五分だけ……抱き締めさせて」
汗でベタついたリーシャの身体を密着させ、裸同士の二人が口付けを落とす。
リーシャは小さなデジャブを覚えていた。
それは、フェルディナンドと先程まで抱き合っていた時間はもちろん……敬愛する王との時間を少しだけ思い出したのだ。
「……今だけですよ」
リーシャは何とか身体を起こし、水に手を伸ばす。アルベルトに自らを運ばせ、初めて一緒の湯船を揺らした。
アルベルトは自身の身体に体重を預けるリーシャに、心臓を鳴らす。
「陛下はこんな事毎日してるのかよ」
「…そんな事もありませんよ。フェルディナンドはすぐに私の機嫌を損ねますからね、部屋に戻れと激高した事も何度あった事か」
アルベルトはほんの少し眉を下げ、リーシャの首筋を噛んだ。
「リーシャ様、またこうしてくれる?約束してくれますか…?」
リーシャの犬に成り下がった現第一王子、切なさを瞳に宿してそう呟いた。
「ええ。私が死ぬか、あなたが死ぬ日まで。あなたは第一王子、なくてはならない存在。いい子にしていてくれたら、ずっと」
アルベルトは、リーシャの望みが何なのかも聞こうとはしない。それは断るという選択肢を閉ざされた哀れな犬だからだろうか。
リーシャの望みを聞けば、必ずこの身体をその身に抱ける。
それはアルベルトにとって希望なのか、絶望なのかは本人にしか分からない。
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