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本編 第2章
呪いの効力
それから数時間後。ヴェルディアナはこの町で呪いを専門に扱っているという、優秀な魔法使いの元を訪れていた。
魔法使いたちは基本的に自分の専門の分野にて、個人の店舗を持っていることが多い。人々から様々な依頼を受け、生計を立てる。それが、魔法使いの主な働き方だ。もちろん、王国に認められた魔法使いは別である。
「……あー、これねぇ」
呪いを専門に扱っているという魔法使いは三十代手前の女性だった。彼女はヴェルディアナの手の甲に浮かび上がった不気味な模様を見つめると、頭を掻く。
……これは、そんなにもひどいものなのだろうか?
そう思い、ヴェルディアナはごくりと息を呑む。
(そういえば、今は全く痛くないわ……)
そして、ヴェルディアナはふとそんなことを思う。イザークに触れられたとき以外、あの激痛が走ることはない。
「……これ、どういう呪いでしょうか?」
恐る恐るヴェルディアナがそう問いかければ、女性は「……これ、よく言えば異性除け、みたいな?」と歯切れの悪い言い方をする。ヴェルディアナからすれば、それはわかったようでわからない説明だった。まぁ、大体見当はついたのだが。
「これね、異性に触れられたら様々なデメリットが発生する呪いだよ。この模様からするに、痛みが発生する形かなぁ……」
「……そう、なのですね」
だから、女性である魔法使いに触れられても痛みを感じなかったのか。
イザークに触れられた際に痛みを感じたのは、彼が男性だったから。そういうことで間違いない。
……しかし、この呪いは一体誰がかけたのだろうか。
「あの……これ、誰がかけたのか、わかりますか……?」
肩をすくめながらヴェルディアナがそう問いかければ、彼女は「わからないよ。ただ、相当強い魔法使いがかけているよね」と教えてくれる。
その後、「これ、あたしじゃ手に負えないわ」と続けていた。
……手に負えない。それは、つまり――……。
「悪いけれど、あたしはこの仕事を引き受けることは出来ない」
「……そう、ですか」
「うん。悪いけれど、この呪いは術者が強すぎるよ。これじゃあ、並大抵の魔法使いはお手上げだね」
魔法使いはそう言って言葉通り手を挙げる。
並大抵の魔法使いがお手上げ状態ということは、ほかの魔法使いの元に行ったところで無駄ということだろう。
(っていうか、この町で一番呪いの類に詳しいのはここだしなぁ……)
ここでダメならば、この町では無理だろう。さらには、町を出たからといって解けるとは限らない。
「……どうにか、なりませんか?」
ヴェルディアナが魔法使いに縋るように問いかければ、彼女は「う~ん」と考えたのち、「……あるには、あるかも」と答えてくれる。そのため、ヴェルディアナは慌てて「教えてください!」と言って魔法使いに詰め寄ってしまった。
「王国が認めた魔法使いならば、解けると思うよ。というか、そのレベルじゃないとこれはマジで無理」
王国が認めた、魔法使い。
確かにその人たちならば容易く呪いを解くことが出来るだろう。
それは、ヴェルディアナにも分かるのだ。が、まさかそのレベルまでいかないと解けないなど考えもしなかった。
(彼らにお願いをすることは、貴族ですら躊躇うレベルの金額がかかるのよね……。私ごときが、払えるわけがないわ)
もちろん、イザークに借りたお金でも全然足りない。そう思って、ヴェルディアナは露骨に項垂れる。それに、異性に触れられたら激痛が走るのならば、仕事もまともにできない。パン屋での仕事は接客業。客に触れてしまう機会があるのだ。その際に一々痛がってなどいられない。
「そんなに気を落とさないで。なんとかできる……かも、しれないからさ」
魔法使いはそう言ってヴェルディアナを励まそうとするが、それはヴェルディアナにとっては逆効果だった。
何とか出来る「かも」ということは、何とかできない可能性の方が高いということだからである。
「……これ、時間が経てば効力が薄くなるということは?」
「それもないと思うよ。だって、これ相当な執念でかけられているし。多分、術者が貴女に相当な感情を抱いているんだと思う」
真面目な表情でそう言われ、ヴェルディアナは悟るしかなかった。自分は、誰かに呪われるほど恨まれていると。
だが、どうしても恨まれる覚えがなかった。それだけの感情を抱かれているのならば、恨まれる出来事があったはずなのに。
「ごめんね、力になれなくて」
「……いえ、ありがとう、ございました」
ヴェルディアナはそれだけを告げ、相談料を払って店を出て行った。
店を出ると、空はきれいに晴れ渡っている。ヴェルディアナの気持ちとは、真逆だった。
(……本当に、どうしよう)
今は手袋をはめているため、誰かに手の甲を見られる心配はない。けれど、いつまでもこの調子と言うのはやはり無理だ。
「……はぁ」
そして、ヴェルディアナが路地の近くをぼんやりと歩いていたときだった。
突然手首を誰かに掴まれてしまう。それに驚きヴェルディアナが目を見開けば、その誰かはヴェルディアナの身体を路地裏に引っ張り込む。
そのまま後ろから抱きしめられ、口を手でふさがれる。必死にもがいて逃げようとするものの、その誰かの力には全く敵わない。この力は、女性ではない。男性だ。そう、悟った。だが――……。
(どうして、呪いが発動していないの……?)
どうして、この男性には呪いが発動していないのだろうか。
そう怪訝に思っていれば、ヴェルディアナの耳元で「やっと、捕まえた」と言う声がささやかれる。
その声は低く、やはり男性のもの。その男性は、ヴェルディアナの顎を掴むと無理やり自身の方に顔を向けさせる。しかし、男性はフードを目深にかぶっているため、顔が見えない。
「だ、誰っ⁉」
そう叫べば、その男性はヴェルディアナの唇に自身の唇を押し付けてきた。
それにヴェルディアナが驚き唇を薄く開けば、その隙を狙ったかのように男性の舌がヴェルディアナの口内に入ってくる。
「んんっ、んぅ……!」
必死にもがいて、逃げようとして。
なのに、力の差は歴然で全く敵わない。
どうして、自分は見ず知らずの男性に深く口づけされているのだろうか。そう考え、ヴェルディアナはとにかくもがく。それでも、全く敵わない。
(いや、気持ち悪い……!)
そう思い、ヴェルディアナは必死に暴れる。そうすれば、ヴェルディアナの手が当たり男性のかぶっていたフードがばさりと取れた。
その男性の髪色は――濃い、青色。見覚えが、あった。
「――あっ……」
その瞬間、男性の唇がヴェルディアナから離れていく。その際に見えた目の色も――青色。
「っていうか、十年会っていないだけで忘れるなんて、最低な人ですよね。……自分の元婚約者のこと、忘れちゃうなんて」
その男性は、ヴェルディアナの耳元でそう囁く。……元、婚約者。確かに、彼と髪色も目の色も一致していた。
「ヴェルディアナ、お久しぶりです」
その後、はっきりと見たその男性の顔を、ヴェルディアナは確かに覚えていた。
いや、違う。記憶の中の「彼」よりもずっと成長している。そんな彼は、ヴェルディアナの身体を逃がすまいと抱き込んでくる。その身体に、あの頃の線の細い少年の面影はない。がっしりとしていて、しっかりと男性の身体だった。
「……リベラトーレ、さ、ま」
そのため、ヴェルディアナはその名前を口にする。……十年前、ヴェルディアナが婚約の解消をお願いした七つ年下の少年の名前を。
魔法使いたちは基本的に自分の専門の分野にて、個人の店舗を持っていることが多い。人々から様々な依頼を受け、生計を立てる。それが、魔法使いの主な働き方だ。もちろん、王国に認められた魔法使いは別である。
「……あー、これねぇ」
呪いを専門に扱っているという魔法使いは三十代手前の女性だった。彼女はヴェルディアナの手の甲に浮かび上がった不気味な模様を見つめると、頭を掻く。
……これは、そんなにもひどいものなのだろうか?
そう思い、ヴェルディアナはごくりと息を呑む。
(そういえば、今は全く痛くないわ……)
そして、ヴェルディアナはふとそんなことを思う。イザークに触れられたとき以外、あの激痛が走ることはない。
「……これ、どういう呪いでしょうか?」
恐る恐るヴェルディアナがそう問いかければ、女性は「……これ、よく言えば異性除け、みたいな?」と歯切れの悪い言い方をする。ヴェルディアナからすれば、それはわかったようでわからない説明だった。まぁ、大体見当はついたのだが。
「これね、異性に触れられたら様々なデメリットが発生する呪いだよ。この模様からするに、痛みが発生する形かなぁ……」
「……そう、なのですね」
だから、女性である魔法使いに触れられても痛みを感じなかったのか。
イザークに触れられた際に痛みを感じたのは、彼が男性だったから。そういうことで間違いない。
……しかし、この呪いは一体誰がかけたのだろうか。
「あの……これ、誰がかけたのか、わかりますか……?」
肩をすくめながらヴェルディアナがそう問いかければ、彼女は「わからないよ。ただ、相当強い魔法使いがかけているよね」と教えてくれる。
その後、「これ、あたしじゃ手に負えないわ」と続けていた。
……手に負えない。それは、つまり――……。
「悪いけれど、あたしはこの仕事を引き受けることは出来ない」
「……そう、ですか」
「うん。悪いけれど、この呪いは術者が強すぎるよ。これじゃあ、並大抵の魔法使いはお手上げだね」
魔法使いはそう言って言葉通り手を挙げる。
並大抵の魔法使いがお手上げ状態ということは、ほかの魔法使いの元に行ったところで無駄ということだろう。
(っていうか、この町で一番呪いの類に詳しいのはここだしなぁ……)
ここでダメならば、この町では無理だろう。さらには、町を出たからといって解けるとは限らない。
「……どうにか、なりませんか?」
ヴェルディアナが魔法使いに縋るように問いかければ、彼女は「う~ん」と考えたのち、「……あるには、あるかも」と答えてくれる。そのため、ヴェルディアナは慌てて「教えてください!」と言って魔法使いに詰め寄ってしまった。
「王国が認めた魔法使いならば、解けると思うよ。というか、そのレベルじゃないとこれはマジで無理」
王国が認めた、魔法使い。
確かにその人たちならば容易く呪いを解くことが出来るだろう。
それは、ヴェルディアナにも分かるのだ。が、まさかそのレベルまでいかないと解けないなど考えもしなかった。
(彼らにお願いをすることは、貴族ですら躊躇うレベルの金額がかかるのよね……。私ごときが、払えるわけがないわ)
もちろん、イザークに借りたお金でも全然足りない。そう思って、ヴェルディアナは露骨に項垂れる。それに、異性に触れられたら激痛が走るのならば、仕事もまともにできない。パン屋での仕事は接客業。客に触れてしまう機会があるのだ。その際に一々痛がってなどいられない。
「そんなに気を落とさないで。なんとかできる……かも、しれないからさ」
魔法使いはそう言ってヴェルディアナを励まそうとするが、それはヴェルディアナにとっては逆効果だった。
何とか出来る「かも」ということは、何とかできない可能性の方が高いということだからである。
「……これ、時間が経てば効力が薄くなるということは?」
「それもないと思うよ。だって、これ相当な執念でかけられているし。多分、術者が貴女に相当な感情を抱いているんだと思う」
真面目な表情でそう言われ、ヴェルディアナは悟るしかなかった。自分は、誰かに呪われるほど恨まれていると。
だが、どうしても恨まれる覚えがなかった。それだけの感情を抱かれているのならば、恨まれる出来事があったはずなのに。
「ごめんね、力になれなくて」
「……いえ、ありがとう、ございました」
ヴェルディアナはそれだけを告げ、相談料を払って店を出て行った。
店を出ると、空はきれいに晴れ渡っている。ヴェルディアナの気持ちとは、真逆だった。
(……本当に、どうしよう)
今は手袋をはめているため、誰かに手の甲を見られる心配はない。けれど、いつまでもこの調子と言うのはやはり無理だ。
「……はぁ」
そして、ヴェルディアナが路地の近くをぼんやりと歩いていたときだった。
突然手首を誰かに掴まれてしまう。それに驚きヴェルディアナが目を見開けば、その誰かはヴェルディアナの身体を路地裏に引っ張り込む。
そのまま後ろから抱きしめられ、口を手でふさがれる。必死にもがいて逃げようとするものの、その誰かの力には全く敵わない。この力は、女性ではない。男性だ。そう、悟った。だが――……。
(どうして、呪いが発動していないの……?)
どうして、この男性には呪いが発動していないのだろうか。
そう怪訝に思っていれば、ヴェルディアナの耳元で「やっと、捕まえた」と言う声がささやかれる。
その声は低く、やはり男性のもの。その男性は、ヴェルディアナの顎を掴むと無理やり自身の方に顔を向けさせる。しかし、男性はフードを目深にかぶっているため、顔が見えない。
「だ、誰っ⁉」
そう叫べば、その男性はヴェルディアナの唇に自身の唇を押し付けてきた。
それにヴェルディアナが驚き唇を薄く開けば、その隙を狙ったかのように男性の舌がヴェルディアナの口内に入ってくる。
「んんっ、んぅ……!」
必死にもがいて、逃げようとして。
なのに、力の差は歴然で全く敵わない。
どうして、自分は見ず知らずの男性に深く口づけされているのだろうか。そう考え、ヴェルディアナはとにかくもがく。それでも、全く敵わない。
(いや、気持ち悪い……!)
そう思い、ヴェルディアナは必死に暴れる。そうすれば、ヴェルディアナの手が当たり男性のかぶっていたフードがばさりと取れた。
その男性の髪色は――濃い、青色。見覚えが、あった。
「――あっ……」
その瞬間、男性の唇がヴェルディアナから離れていく。その際に見えた目の色も――青色。
「っていうか、十年会っていないだけで忘れるなんて、最低な人ですよね。……自分の元婚約者のこと、忘れちゃうなんて」
その男性は、ヴェルディアナの耳元でそう囁く。……元、婚約者。確かに、彼と髪色も目の色も一致していた。
「ヴェルディアナ、お久しぶりです」
その後、はっきりと見たその男性の顔を、ヴェルディアナは確かに覚えていた。
いや、違う。記憶の中の「彼」よりもずっと成長している。そんな彼は、ヴェルディアナの身体を逃がすまいと抱き込んでくる。その身体に、あの頃の線の細い少年の面影はない。がっしりとしていて、しっかりと男性の身体だった。
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