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本編 第3章
第2話
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鈍い痛みが、背中を襲った。
しばらくして、耳に届くのは慌ただしい声と、甲高い悲鳴。
「テレジアさま!」
近くにいたメイドが私のほうに駆け寄ってきて、身体を起こしてくれる。
幸いにも頭は打っていないと思うので、そこまで心配するようなことはない……と、思う。
(足首は、痛いけれど……)
でも、抵抗するときに少し踏ん張った所為だろうか。足首に確かな痛みがある。
顔を上げれば、階段の上でコルネリアさまが口元を押さえ、震えていた。
(コルネリア、さま……)
彼女を見つめていると、遠くから「テレジア!」という声が聞こえてくる。
この声は、間違えるはずがない。ラインヴァルトさまのものだ。
「テレジア! 大丈夫か!?」
ラインヴァルトさまが、私の側に跪いてそう問いかけてこられる。
その目には、確かな不安の色が宿っている。だから、私はこくんと首を縦に振った。
「大したことではありません。……なので、大丈夫です」
「……大したことだろう」
彼が私の背中に手を添えて、そうおっしゃる。
「何処か痛むか?」
ラインヴァルトさまにそう問いかけられて、私は困ったような表情を浮かべることしか出来ない。
足首は痛む。けれど、この状態のラインヴァルトさまは周囲が見えていない。……コルネリアさまを責めるのは、間違いない。
「その、大した、ことは」
私の言葉を聞かれたラインヴァルトさまが、顔を上げる。その視線を追えば、そこには床にへたり込むコルネリアさまがいらっしゃった。
「あいつ……!」
その声には、色々な感情がこもっている。ただの怒りだけじゃない。憎しみとか、嫌悪感とか。そういうものの一種にも、聞こえる。
「そ、その、ラインヴァルトさま……!」
立ち上がって、コルネリアさまに近づこうとされるラインヴァルトさまを止めようとする。
だけど、どう止めればいいかわからなくて。私は咄嗟に、彼の手を掴んだ。
「……テレジア?」
「その、コルネリアさまは、悪くないのです……!」
そうだ。私が彼女を不快にしてしまったから、こんなことになってしまった。
……もっとうまく、振る舞えばよかった。
「だが、テレジア」
「本当に、悪いのは私なのです……!」
必死にそう訴える。そうしていれば、メイドに連れられてコルネリアさまが私たちのほうにいらっしゃる。
彼女は目の奥を揺らしながら、唇をぎゅっとかみしめていた。
「コルネリア嬢、お前、なにをした」
地を這うような低い声で、ラインヴァルトさまが問いかける。いや、問いかけなんて優しいものじゃない。
これは一種の、尋問だろう。
「私は、なにもしておりませんわ。彼女が、勝手に落ちただけ、ですからっ……!」
ラインヴァルトさまから必死に視線を逸らして、コルネリアさまがそう言葉を紡ぐ。
「そ、そもそも、私が突き飛ばしたとして、なんの問題がありますの? だって、彼女は私と殿下の間を引き裂いたのですよ!?」
彼女が自らの身体を抱きしめて、そう言葉を発する。……ラインヴァルトさまのお顔は、怖くて私でも見れなかった。
「大体、私が殿下の妃になるはずでしたのに。……こんな、突然現れたような女に――」
「――コルネリア嬢。言い訳は、必要ない」
そのお声は、何処までも低い。怒りを隠しもせずに、ふんだんに散りばめたようなお声。
彼は、近くにいた従者に目配せを送る。
「この女を連行しろ。しばらくの間、自宅謹慎にしておけ」
そのままそう指示を出された彼を見て、私は咄嗟に「あ、あの!」と口を挟む。
お二人の視線が、私に集中する。
「その、コルネリアさまだけが悪いのでは、ありません、から……」
震える声で、言葉を紡いだ。ラインヴァルトさまが、怪訝そうな表情を浮かべられている。
彼の視線が、私を射貫く。心臓が、大きく音を鳴らした。
しばらくして、耳に届くのは慌ただしい声と、甲高い悲鳴。
「テレジアさま!」
近くにいたメイドが私のほうに駆け寄ってきて、身体を起こしてくれる。
幸いにも頭は打っていないと思うので、そこまで心配するようなことはない……と、思う。
(足首は、痛いけれど……)
でも、抵抗するときに少し踏ん張った所為だろうか。足首に確かな痛みがある。
顔を上げれば、階段の上でコルネリアさまが口元を押さえ、震えていた。
(コルネリア、さま……)
彼女を見つめていると、遠くから「テレジア!」という声が聞こえてくる。
この声は、間違えるはずがない。ラインヴァルトさまのものだ。
「テレジア! 大丈夫か!?」
ラインヴァルトさまが、私の側に跪いてそう問いかけてこられる。
その目には、確かな不安の色が宿っている。だから、私はこくんと首を縦に振った。
「大したことではありません。……なので、大丈夫です」
「……大したことだろう」
彼が私の背中に手を添えて、そうおっしゃる。
「何処か痛むか?」
ラインヴァルトさまにそう問いかけられて、私は困ったような表情を浮かべることしか出来ない。
足首は痛む。けれど、この状態のラインヴァルトさまは周囲が見えていない。……コルネリアさまを責めるのは、間違いない。
「その、大した、ことは」
私の言葉を聞かれたラインヴァルトさまが、顔を上げる。その視線を追えば、そこには床にへたり込むコルネリアさまがいらっしゃった。
「あいつ……!」
その声には、色々な感情がこもっている。ただの怒りだけじゃない。憎しみとか、嫌悪感とか。そういうものの一種にも、聞こえる。
「そ、その、ラインヴァルトさま……!」
立ち上がって、コルネリアさまに近づこうとされるラインヴァルトさまを止めようとする。
だけど、どう止めればいいかわからなくて。私は咄嗟に、彼の手を掴んだ。
「……テレジア?」
「その、コルネリアさまは、悪くないのです……!」
そうだ。私が彼女を不快にしてしまったから、こんなことになってしまった。
……もっとうまく、振る舞えばよかった。
「だが、テレジア」
「本当に、悪いのは私なのです……!」
必死にそう訴える。そうしていれば、メイドに連れられてコルネリアさまが私たちのほうにいらっしゃる。
彼女は目の奥を揺らしながら、唇をぎゅっとかみしめていた。
「コルネリア嬢、お前、なにをした」
地を這うような低い声で、ラインヴァルトさまが問いかける。いや、問いかけなんて優しいものじゃない。
これは一種の、尋問だろう。
「私は、なにもしておりませんわ。彼女が、勝手に落ちただけ、ですからっ……!」
ラインヴァルトさまから必死に視線を逸らして、コルネリアさまがそう言葉を紡ぐ。
「そ、そもそも、私が突き飛ばしたとして、なんの問題がありますの? だって、彼女は私と殿下の間を引き裂いたのですよ!?」
彼女が自らの身体を抱きしめて、そう言葉を発する。……ラインヴァルトさまのお顔は、怖くて私でも見れなかった。
「大体、私が殿下の妃になるはずでしたのに。……こんな、突然現れたような女に――」
「――コルネリア嬢。言い訳は、必要ない」
そのお声は、何処までも低い。怒りを隠しもせずに、ふんだんに散りばめたようなお声。
彼は、近くにいた従者に目配せを送る。
「この女を連行しろ。しばらくの間、自宅謹慎にしておけ」
そのままそう指示を出された彼を見て、私は咄嗟に「あ、あの!」と口を挟む。
お二人の視線が、私に集中する。
「その、コルネリアさまだけが悪いのでは、ありません、から……」
震える声で、言葉を紡いだ。ラインヴァルトさまが、怪訝そうな表情を浮かべられている。
彼の視線が、私を射貫く。心臓が、大きく音を鳴らした。
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