【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ

文字の大きさ
43 / 58
本編 第4章

第2話

しおりを挟む
 そして、その日もゲオルグさまは王城にいらっしゃった。

 私が図書館に向かうために、廊下を歩いていたとき。彼は偶然を装ったように、私に声をかけてこられたのだ。

 初めはスルーしようとした。だけど、彼があまりにもしつこくて。

 しびれを切らしてしまい、彼のほうに視線を向けた。

「……もう、関わらないでくださいませ」

 じっと彼を見つめてそう言えば、ゲオルグさまはにっこりと笑われた。……不気味だ。

「そうだな。関わらないでほしいというのならば、条件がある」
「……条件?」

 どうしてこちらがゲオルグさまの出す条件とやらを呑まなければならないのだろうか。

 そう思ったけれど、やっぱりここ最近の彼のしつこさには参っていて。私は彼のほうに身体を向ける。瞬間、ゲオルグさまの唇の端が上がった。

「人気のない場所で話したい。人に聞かれたら、困るんでな」
「……そういうの、やめてください」

 婚約者同士だった頃ならばまだしも、私と彼の関係はただの知り合いとなっている。

 合わせ、二人とも未婚。そんな、未婚の子息子女が二人きりで人気のない場所なんて……。

「私とゲオルグさまは、もう無関係です。……二人きりになりたくないです」

 はっきりとそう告げれば、ゲオルグさまの眉間がぴくりと動く。

 その後、彼は周囲をぐるりと見渡して――私の手首を掴んで、近くの階段の陰に連れ込む。

「放してください!」

 どうして、こんなことをされなくちゃならないのか。

 彼が私の腰に腕を回す。……気持ち悪い。そう思って、彼を突き飛ばそうと、したのに。

「きゃぁあっ!」

 近くから、女性の悲鳴が聞こえて来た。驚いて、私はそちらに視線を向ける。

 そこには王城に仕えている侍女がいた。彼女の胸元には、王妃付きであるという証になるバッチ。

 そして、その侍女は私のほうを凝視していて、その指が私とゲオルグさまを指している。

 ……嫌な予感が、頭と心に浮かぶ。

(ま、って……)

 この状態は、見方によっては私とゲオルグさまが密会しているみたいだった。

 彼女はわなわなと唇を震わせる。それは、明らかに怒りからだった。

「テレジアさまが、そんなふしだらなお方だと、思いもしませんでしたわ!」

 侍女が大きな声で、そう叫ぶ。その所為で、周囲に人が集まってくる。

 私の背中に、嫌な汗が伝った。

「ラインヴァルト殿下に愛されていながらも、元婚約者の方と繋がっていたなんて……!」
「ち、がっ!」

 違う。そんなわけがない。だって、私はゲオルグさまに無理やりここに連れ込まれて……!

「違うわ! 私、そんなの……」
「言い訳は結構です! このことは、王妃さまに報告させていただきますわ!」

 カンカンに怒った侍女は、私の意見も聞かずにすたすたと歩きだす。

 その足取りはしっかりとしている。合わせ、彼女の態度を見るに間違いなく王妃殿下に報告するのだろう。

(これは、誤解なのにっ……!)

 私はゲオルグさまと密会していたわけじゃない。繋がっていたわけでもない。

 そう思うのに、周囲から向けられる視線が怖くて、口から言葉が出てこない。喉から小さな息が漏れるだけだ。

「あーあ、企みが全部台無しだな、テレジア」

 そんな私を嘲笑うかのように、ゲオルグさまが私の耳元で、私にだけ聞こえる声量でそう囁いた。

 ……彼は、確信犯だ。それを、察する。

(ゲオルグさまは、私のことを嵌めたのね……)

 もうどうすればいいかわからなくて。頭の中が真っ白で。私は、その場に崩れ落ちた。

「ラインヴァルトさま……!」

 せめて、彼にだけは信じてほしい。そう思って、ぎゅっと手のひらを握って、零れそうになる涙をこらえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

四人の令嬢と公爵と

オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」  ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。  人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが…… 「おはよう。よく眠れたかな」 「お前すごく可愛いな!!」 「花がよく似合うね」 「どうか今日も共に過ごしてほしい」  彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。  一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。 ※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

婚約破棄された王太子妃候補は第一王子に気に入られたようです。

永野水貴
恋愛
侯爵令嬢エヴェリーナは未来の王太子妃として育てられたが、突然に婚約破棄された。 王太子は真に愛する女性と結婚したいというのだった。 その女性はエヴェリーナとは正反対で、エヴェリーナは影で貶められるようになる。 そんなある日、王太子の兄といわれる第一王子ジルベルトが現れる。 ジルベルトは王太子を上回る素質を持つと噂される人物で、なぜかエヴェリーナに興味を示し…? ※「小説家になろう」にも載せています

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi
恋愛
 若様がお戻りになる……  イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。  王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。  リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。  次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。  婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。  再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……   * 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました  そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです

処理中です...