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本編 第4章
第4話
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「こんな人だとは、思わなかったわ」
王妃殿下が蔑みを含んだような目で、私のことを見下ろす。
恐怖からか身体が震えて、唇もわなわなと震える。
彼女の顔を見つめることも出来なくて、俯いた。
「……わ、たしは」
それでも、反論しなくちゃ。
私はゲオルグさまとは関係ないのだと。
そう思うのに、喉が震えて声が出ない。ぎゅっと手のひらを握って、溢れそうになる涙をこらえる。
「あなたには、もう王城を出て行ってもらいます。今後、ラインヴァルトにも近づかないで頂戴」
まるで吐き捨てるようにそう告げる王妃殿下。
そのまま彼女が私に背中を向けようとされるので、私は「待ってください!」と咄嗟に呼び止めた。
「私、違います。ゲオルグさまと、関係があるわけじゃないのです。……私が、好きなのは」
そこまで口にして、言葉に迷う。
ラインヴァルトさまご本人に気持ちを伝えていない。それなのに、先に王妃殿下に伝えてもいいものだろうか?
一瞬の迷い。
それに気を悪くされたのか、王妃殿下は私のほうに身体を向けられた。
「……好きとか、そういうのはどうでもいいのよ」
「……あの」
「肝心なのは、あなたが男と会っていたということだけ。そんな尻軽に王太子妃になってもらったら、困るのよ」
「しっ……!」
そんなの、ひどすぎる。
だって、私は……。
「あなたは、ラインヴァルトの輝かしい未来の邪魔になるの」
「……じゃ、ま」
「えぇ、そうよ。あなたの所為でラインヴァルトが王太子の立場を失ったら、どう責任が取れるの?」
そのお言葉に、反論が出来なかった。
だって、そうなったら私には責任なんて取れないもの。
「だから、さっさと出て行って頂戴。もちろん、ラインヴァルトに会うのは禁止。あの子に余計なことを吹き込まれたら、困るもの」
肩をすくめて王妃殿下がそうおっしゃった。
……もう、なにも返せなかった。
「与えていたお部屋の片づけをなさい。五日を目途に、出て行ってもらうわ」
返事は出来ない。肯定の返事も、否定の返事も出来なかった。
ただ、その場で頭を下げて王妃殿下の執務室を飛び出すのが精いっぱいだった。
そして、執務室を出ると先ほどの女官がいて。彼女は眼鏡をくいっと上げて、私を見つめる。
「お部屋まで、お送りさせていただきます。また、王妃さまの指示で、あなたには監視をつけます」
「……監視」
「はい。王太子殿下に不用意に近づかないよう、監視させていただきます」
女官が抑揚のない声で、そう言う。
……なんだろうか。まるで、犯罪者みたいじゃないか。
「勝手にお部屋から出ることは、禁止させていただきます。では、行きましょうか」
彼女が歩き出す。ぼうっとその後ろ姿を見つめていれば、彼女が振り返った。
「ぼさっと立たないでください。……全く、手のかかる小娘ですね」
明らかにバカにしたような。蔑んだような言葉だった。
悔しさを覚える。けど、逆らうことも出来なくて。私は、慌てて彼女の後を追う。
俯いて、床を見つめ続ける。
どうしてこうなったのか。何処で間違えたのか。
頭の中でぐるぐると後悔だけが回っていく。
(そう、いえば)
そんなとき、ふとコルネリアさまのお言葉を思い出す。
『王妃殿下には、気をつけて』
その言葉の意味は、一体……?
(もしかして、これを仕組んだのは――王妃、殿下なのでは?)
彼女はとにかく私の心を揺さぶっていた。
それはまさしく。――ラインヴァルトさまから、離れるように誘導しようとなさっていたのではないのだろうか?
王妃殿下が蔑みを含んだような目で、私のことを見下ろす。
恐怖からか身体が震えて、唇もわなわなと震える。
彼女の顔を見つめることも出来なくて、俯いた。
「……わ、たしは」
それでも、反論しなくちゃ。
私はゲオルグさまとは関係ないのだと。
そう思うのに、喉が震えて声が出ない。ぎゅっと手のひらを握って、溢れそうになる涙をこらえる。
「あなたには、もう王城を出て行ってもらいます。今後、ラインヴァルトにも近づかないで頂戴」
まるで吐き捨てるようにそう告げる王妃殿下。
そのまま彼女が私に背中を向けようとされるので、私は「待ってください!」と咄嗟に呼び止めた。
「私、違います。ゲオルグさまと、関係があるわけじゃないのです。……私が、好きなのは」
そこまで口にして、言葉に迷う。
ラインヴァルトさまご本人に気持ちを伝えていない。それなのに、先に王妃殿下に伝えてもいいものだろうか?
一瞬の迷い。
それに気を悪くされたのか、王妃殿下は私のほうに身体を向けられた。
「……好きとか、そういうのはどうでもいいのよ」
「……あの」
「肝心なのは、あなたが男と会っていたということだけ。そんな尻軽に王太子妃になってもらったら、困るのよ」
「しっ……!」
そんなの、ひどすぎる。
だって、私は……。
「あなたは、ラインヴァルトの輝かしい未来の邪魔になるの」
「……じゃ、ま」
「えぇ、そうよ。あなたの所為でラインヴァルトが王太子の立場を失ったら、どう責任が取れるの?」
そのお言葉に、反論が出来なかった。
だって、そうなったら私には責任なんて取れないもの。
「だから、さっさと出て行って頂戴。もちろん、ラインヴァルトに会うのは禁止。あの子に余計なことを吹き込まれたら、困るもの」
肩をすくめて王妃殿下がそうおっしゃった。
……もう、なにも返せなかった。
「与えていたお部屋の片づけをなさい。五日を目途に、出て行ってもらうわ」
返事は出来ない。肯定の返事も、否定の返事も出来なかった。
ただ、その場で頭を下げて王妃殿下の執務室を飛び出すのが精いっぱいだった。
そして、執務室を出ると先ほどの女官がいて。彼女は眼鏡をくいっと上げて、私を見つめる。
「お部屋まで、お送りさせていただきます。また、王妃さまの指示で、あなたには監視をつけます」
「……監視」
「はい。王太子殿下に不用意に近づかないよう、監視させていただきます」
女官が抑揚のない声で、そう言う。
……なんだろうか。まるで、犯罪者みたいじゃないか。
「勝手にお部屋から出ることは、禁止させていただきます。では、行きましょうか」
彼女が歩き出す。ぼうっとその後ろ姿を見つめていれば、彼女が振り返った。
「ぼさっと立たないでください。……全く、手のかかる小娘ですね」
明らかにバカにしたような。蔑んだような言葉だった。
悔しさを覚える。けど、逆らうことも出来なくて。私は、慌てて彼女の後を追う。
俯いて、床を見つめ続ける。
どうしてこうなったのか。何処で間違えたのか。
頭の中でぐるぐると後悔だけが回っていく。
(そう、いえば)
そんなとき、ふとコルネリアさまのお言葉を思い出す。
『王妃殿下には、気をつけて』
その言葉の意味は、一体……?
(もしかして、これを仕組んだのは――王妃、殿下なのでは?)
彼女はとにかく私の心を揺さぶっていた。
それはまさしく。――ラインヴァルトさまから、離れるように誘導しようとなさっていたのではないのだろうか?
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