57 / 58
本編 第6章
第2話
しおりを挟む
私は彼の顔をぽかんと見つめる。……冗談なんて言っている様子はない。
「それに、俺がルビーを好いているのは、テレジアの目みたいだからなんだよ」
彼はそうおっしゃって、私の頬に手を当てられる。そのままするりと撫でられて、もう意味が分からなくなる。
……私の目は、赤い。確かに見方によってはルビーみたいかもしれない。
「だから、俺にとってルビーはテレジアそのものみたいなものだった」
「……ラインヴァルト、さま」
もうどう返せばいいかがわからない。私は彼をぼうっと見つめて、彼は真剣な眼差しで私を見つめる。
沈黙が場を支配する。気まずくて視線を逸らすと、彼がふっと口元を緩めた。
「ずっと、ずっと好きだった。……留学したのだって、テレジアのためだ」
「……わ、たしの」
「あぁ。父上に留学すれば好きな令嬢を娶っていいと言われた。ま、一定の成績はキープするようにと念押しされたけどな」
彼が私の頬を撫で続ける。拒否することも出来なくて、私はやっぱり彼を見つめる。
「……テレジアがゲオルグの奴と婚約したことに関しては、本当に嫌だった。だって、あのゲオルグだぞ? 碌な目に遭わないのは容易に想像が出来たんだ」
「は、い」
「ラッキーだったのは、俺が手を出すよりも先に、テレジアとの婚約を解消してくれたことだ。……やっとテレジアを手に入れることが出来る。そう思ったんだ」
そのお言葉にごくりと息を呑む。彼に優しいまなざしに、心臓がとくとくと早足になる。
「あの、一つ、よろしいでしょうか?」
「……あぁ」
「その、いつから、私のことが好きだったのですか……?」
ずっと気になっていた。聞かなくちゃって思っていた。
勇気を振り絞ってそう問いかけると、彼が声を上げて笑われた。驚いて、目を見開く。
「――知りたいか?」
彼が妖しく笑って、そう問いかけてこられる。
……なんだか、聞いてはいけないような気もする。でも、聞きたい。
その気持ちがあるからこそ、私は頷いた。
「そっか。そうだなぁ。初めて見たとき、もう俺の心は奪われていたよ」
「は、じめて……」
「そう。テレジアのデビュタントのときだな」
……想像以上に、早いときだった。
「あのときのテレジアは可愛かった。何処か緊張した面持ちをしていて、それなのに必死に完璧に振る舞っていた。……あぁ、この子の不安を取り除いてあげたいなって、思ったんだ」
「そ、んなの」
「信じられない?」
問いかけにこくんと首を縦に振る。彼が少しショックを受けたような表情をされて、私の良心がずきずきと痛む。
「じゃあ、俺がずっとテレジアを見ていたのも、信じられない?」
彼がこちらに身を乗り出して、そう問いかけてこられる。……ずっと……とは、どういう。
「ずっと目で追ってたよ。何処か元気をなくしていくのを見て、早く助けたいって思った。……けど、俺は王太子だ。変な行動をすることは出来ないし、父上に逆らうことは得策じゃない」
「……はい」
「ほかの王子に立場を押し付けてもよかったが、それはそれで母上が面倒だった。だから、俺はどっちも手に入れて守る方法を考えていた」
なんだろうか。彼がここまで私のことを思っていてくださったことが、嬉しい。心の底から、嬉しい。
(ずっと、一人だって思ってた)
だけど、それは私の思い違いだったのだろう。私にはずっと、見守ってくださった人がいたのだ。
「ま、俺がテレジアの立場だったら気持ち悪いって思うかもだけど」
彼が苦笑を浮かべて、そうおっしゃる。遠のいていく彼の手を咄嗟に掴んだ。
「……気持ち悪いなんて、思いません」
確かにちょっと引いたのは認める。ただ、彼の気持ちが嬉しいのは確かだ。
「テレジア……」
「私も、ラインヴァルトさまが好き、ですから」
彼の手に自ら指を絡めて、そう告げる。彼が口元を緩めた。何処か艶めかしい雰囲気だ。
「それに、俺がルビーを好いているのは、テレジアの目みたいだからなんだよ」
彼はそうおっしゃって、私の頬に手を当てられる。そのままするりと撫でられて、もう意味が分からなくなる。
……私の目は、赤い。確かに見方によってはルビーみたいかもしれない。
「だから、俺にとってルビーはテレジアそのものみたいなものだった」
「……ラインヴァルト、さま」
もうどう返せばいいかがわからない。私は彼をぼうっと見つめて、彼は真剣な眼差しで私を見つめる。
沈黙が場を支配する。気まずくて視線を逸らすと、彼がふっと口元を緩めた。
「ずっと、ずっと好きだった。……留学したのだって、テレジアのためだ」
「……わ、たしの」
「あぁ。父上に留学すれば好きな令嬢を娶っていいと言われた。ま、一定の成績はキープするようにと念押しされたけどな」
彼が私の頬を撫で続ける。拒否することも出来なくて、私はやっぱり彼を見つめる。
「……テレジアがゲオルグの奴と婚約したことに関しては、本当に嫌だった。だって、あのゲオルグだぞ? 碌な目に遭わないのは容易に想像が出来たんだ」
「は、い」
「ラッキーだったのは、俺が手を出すよりも先に、テレジアとの婚約を解消してくれたことだ。……やっとテレジアを手に入れることが出来る。そう思ったんだ」
そのお言葉にごくりと息を呑む。彼に優しいまなざしに、心臓がとくとくと早足になる。
「あの、一つ、よろしいでしょうか?」
「……あぁ」
「その、いつから、私のことが好きだったのですか……?」
ずっと気になっていた。聞かなくちゃって思っていた。
勇気を振り絞ってそう問いかけると、彼が声を上げて笑われた。驚いて、目を見開く。
「――知りたいか?」
彼が妖しく笑って、そう問いかけてこられる。
……なんだか、聞いてはいけないような気もする。でも、聞きたい。
その気持ちがあるからこそ、私は頷いた。
「そっか。そうだなぁ。初めて見たとき、もう俺の心は奪われていたよ」
「は、じめて……」
「そう。テレジアのデビュタントのときだな」
……想像以上に、早いときだった。
「あのときのテレジアは可愛かった。何処か緊張した面持ちをしていて、それなのに必死に完璧に振る舞っていた。……あぁ、この子の不安を取り除いてあげたいなって、思ったんだ」
「そ、んなの」
「信じられない?」
問いかけにこくんと首を縦に振る。彼が少しショックを受けたような表情をされて、私の良心がずきずきと痛む。
「じゃあ、俺がずっとテレジアを見ていたのも、信じられない?」
彼がこちらに身を乗り出して、そう問いかけてこられる。……ずっと……とは、どういう。
「ずっと目で追ってたよ。何処か元気をなくしていくのを見て、早く助けたいって思った。……けど、俺は王太子だ。変な行動をすることは出来ないし、父上に逆らうことは得策じゃない」
「……はい」
「ほかの王子に立場を押し付けてもよかったが、それはそれで母上が面倒だった。だから、俺はどっちも手に入れて守る方法を考えていた」
なんだろうか。彼がここまで私のことを思っていてくださったことが、嬉しい。心の底から、嬉しい。
(ずっと、一人だって思ってた)
だけど、それは私の思い違いだったのだろう。私にはずっと、見守ってくださった人がいたのだ。
「ま、俺がテレジアの立場だったら気持ち悪いって思うかもだけど」
彼が苦笑を浮かべて、そうおっしゃる。遠のいていく彼の手を咄嗟に掴んだ。
「……気持ち悪いなんて、思いません」
確かにちょっと引いたのは認める。ただ、彼の気持ちが嬉しいのは確かだ。
「テレジア……」
「私も、ラインヴァルトさまが好き、ですから」
彼の手に自ら指を絡めて、そう告げる。彼が口元を緩めた。何処か艶めかしい雰囲気だ。
98
あなたにおすすめの小説
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます
みゅー
恋愛
ジェイドは幼いころ会った王太子殿下であるカーレルのことを忘れたことはなかった。だが魔法学校で再会したカーレルはジェイドのことを覚えていなかった。
それでもジェイドはカーレルを想っていた。
学校の卒業式の日、貴族令嬢と親しくしているカーレルを見て元々身分差もあり儚い恋だと潔く身を引いたジェイド。
赴任先でモンスターの襲撃に会い、療養で故郷にもどった先で驚きの事実を知る。自分はこの宇宙を作るための機械『ジェイド』のシステムの一つだった。
それからは『ジェイド』に従い動くことになるが、それは国を裏切ることにもなりジェイドは最終的に殺されてしまう。
ところがその後ジェイドの記憶を持ったまま翡翠として他の世界に転生し元の世界に召喚され……
ジェイドは王太子殿下のカーレルを愛していた。
だが、自分が裏切り者と思われてもやらなければならないことができ、それを果たした。
そして、死んで翡翠として他の世界で生まれ変わったが、ものと世界に呼び戻される。
そして、戻った世界ではカーレルは聖女と呼ばれる令嬢と恋人になっていた。
だが、裏切り者のジェイドの生まれ変わりと知っていて、恋人がいるはずのカーレルはなぜか翡翠に優しくしてきて……
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました
八代奏多
恋愛
クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。
両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。
おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。
でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!
そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる