【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ

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本編 第6章

第2話

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 私は彼の顔をぽかんと見つめる。……冗談なんて言っている様子はない。

「それに、俺がルビーを好いているのは、テレジアの目みたいだからなんだよ」

 彼はそうおっしゃって、私の頬に手を当てられる。そのままするりと撫でられて、もう意味が分からなくなる。

 ……私の目は、赤い。確かに見方によってはルビーみたいかもしれない。

「だから、俺にとってルビーはテレジアそのものみたいなものだった」
「……ラインヴァルト、さま」

 もうどう返せばいいかがわからない。私は彼をぼうっと見つめて、彼は真剣な眼差しで私を見つめる。

 沈黙が場を支配する。気まずくて視線を逸らすと、彼がふっと口元を緩めた。

「ずっと、ずっと好きだった。……留学したのだって、テレジアのためだ」
「……わ、たしの」
「あぁ。父上に留学すれば好きな令嬢を娶っていいと言われた。ま、一定の成績はキープするようにと念押しされたけどな」

 彼が私の頬を撫で続ける。拒否することも出来なくて、私はやっぱり彼を見つめる。

「……テレジアがゲオルグの奴と婚約したことに関しては、本当に嫌だった。だって、あのゲオルグだぞ? 碌な目に遭わないのは容易に想像が出来たんだ」
「は、い」
「ラッキーだったのは、俺が手を出すよりも先に、テレジアとの婚約を解消してくれたことだ。……やっとテレジアを手に入れることが出来る。そう思ったんだ」

 そのお言葉にごくりと息を呑む。彼に優しいまなざしに、心臓がとくとくと早足になる。

「あの、一つ、よろしいでしょうか?」
「……あぁ」
「その、いつから、私のことが好きだったのですか……?」

 ずっと気になっていた。聞かなくちゃって思っていた。

 勇気を振り絞ってそう問いかけると、彼が声を上げて笑われた。驚いて、目を見開く。

「――知りたいか?」

 彼が妖しく笑って、そう問いかけてこられる。

 ……なんだか、聞いてはいけないような気もする。でも、聞きたい。

 その気持ちがあるからこそ、私は頷いた。

「そっか。そうだなぁ。初めて見たとき、もう俺の心は奪われていたよ」
「は、じめて……」
「そう。テレジアのデビュタントのときだな」

 ……想像以上に、早いときだった。

「あのときのテレジアは可愛かった。何処か緊張した面持ちをしていて、それなのに必死に完璧に振る舞っていた。……あぁ、この子の不安を取り除いてあげたいなって、思ったんだ」
「そ、んなの」
「信じられない?」

 問いかけにこくんと首を縦に振る。彼が少しショックを受けたような表情をされて、私の良心がずきずきと痛む。

「じゃあ、俺がずっとテレジアを見ていたのも、信じられない?」

 彼がこちらに身を乗り出して、そう問いかけてこられる。……ずっと……とは、どういう。

「ずっと目で追ってたよ。何処か元気をなくしていくのを見て、早く助けたいって思った。……けど、俺は王太子だ。変な行動をすることは出来ないし、父上に逆らうことは得策じゃない」
「……はい」
「ほかの王子に立場を押し付けてもよかったが、それはそれで母上が面倒だった。だから、俺はどっちも手に入れて守る方法を考えていた」

 なんだろうか。彼がここまで私のことを思っていてくださったことが、嬉しい。心の底から、嬉しい。

(ずっと、一人だって思ってた)

 だけど、それは私の思い違いだったのだろう。私にはずっと、見守ってくださった人がいたのだ。

「ま、俺がテレジアの立場だったら気持ち悪いって思うかもだけど」

 彼が苦笑を浮かべて、そうおっしゃる。遠のいていく彼の手を咄嗟に掴んだ。

「……気持ち悪いなんて、思いません」

 確かにちょっと引いたのは認める。ただ、彼の気持ちが嬉しいのは確かだ。

「テレジア……」
「私も、ラインヴァルトさまが好き、ですから」

 彼の手に自ら指を絡めて、そう告げる。彼が口元を緩めた。何処か艶めかしい雰囲気だ。
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