異世界で王城生活~陛下の隣で~

文字の大きさ
27 / 57

20聖女?

しおりを挟む
※本日昼に続き2話目の投稿です
***************



「ユリカ、大丈夫か!」

 血相を変えるシリウス。

「陛下、大丈夫だよ。ちょっと魔力酔いをしちゃったみたいだね。彼女魔力は持っていない。決めつけることは出来ないけど、聖女の力も持ってはいないようだよ」

「そうか、良かった……」
 何故かホッとしたようにシリウスが言葉を吐いた。

「あれ?聖女じゃなくて良かったの?」

「ああ、こちらが召喚した訳ではなく来た娘だ。聖女として使命を持って来たのではないのにそんな苦労をさせたくはない」

「ふーんそうなんだ。彼女魔力も聖女の力も持ってはいないけど、神様の加護は付けられているみたい。言葉が通じるのもそう。でも、本当に普通の人だよ。
 で、何時までそうしてるの?ソファかベッドに寝かせてあげたら?」

 意識を失くした友梨香を抱えたままのシリウスも、オルトランの言葉に自分の腕の中の彼女を見る。

「陛下、こちらへ」
 メアリーアンがソファを素早く整えユリカを寝かせるように促すと、まるで宝物を下ろす様に友梨香をソファに寝かせるシリウス。
 そんな国王の姿をオルトランは珍しいものを見るように眺めながらニヤニヤと笑っていたのだった。

「でも、黒髪黒目だと周りは聖女と騒ぎ立てますよね?」
 キャステルが息を大きく吐きながら言う。
「確かに」
 シリウスも溜息を吐いた。
「数日後にお披露目でしょう?暫くは髪色を今のままにしておいた方が良いかもしれないよ」
「ふむ、オルトラン頼めるか?」
「出来るよ。魔石に今の茶色い色を覚え込ませ、術を掛けて置くよ。魔力が無いユリカちゃんでも使えるようにね。髪が伸びたら目立たない内に魔石を握れば黒いところは目立たなく隠すことが出来る」
「凄いですね!私もやりたい」
 クローディアはどうやら赤い髪が自分で気に入らないようだ。
「うーん、でもこれは髪を染める訳ではないんだ。ただ見た目、幻影的な。だから実際は伸びた部分は黒いのよ。それを誤魔化して見せてるだけね」
「そうなんですかー」
 自分も髪色が変えられると期待したクローディアが肩を落とすと、姉のメアリーアンがその肩を抱く。

「ディアの赤い髪は綺麗よ。わたしは好きだわ」
「お姉さま」
 微笑ましい義理の姉妹であった。

「で、どうする?」
「そうだな、ユリカが目を覚ましてから本人にも聞いてみるべきだな」
 オルトランの問いにシリウスはそう答えた。
「じゃ、僕は一度戻って魔石を持ってくるよ」
「ああ、頼む」
 来た時と同じようにオルトランはあっという間に白い煙とともに消えて行った。

「はぁ、何度言ってもアイツは……」
 シリウスは眠っている友梨香の顔を見ながら呆れた様に呟くのだった。


 一時間程して目を覚ました友梨香は、オルトランから説明を受ける。
 自分の髪を一本抜き、直径五センチほどの黑い魔石の上に黒く伸びた部分を切り取り乗せると、オルトランが呪文を唱える。
 魔石が徐々に染めていた茶髪色に染まっていくが目で見て分る。

「すごーい、石が私の髪色になったわ!」
「凄いですね」
 初めて見る光景に皆が驚く。
「前に陛下が仮面舞踏会に出る為に飲んだ薬も色を変えて見せることが出来るけど、一晩しか持たないからね。この魔石の方が強力だよ」

「えっ、仮面舞踏会なんて本当にあるんですね。陛下も出ていたんだ?」

 友梨香の問いに目を泳がすシリウス。
 どうもも触れて欲しくない話題だったようだ。

「ユリカ嬢、陛下は情報収集として変装して仮面舞踏会に出ていたんですよ。それとは別にその会で異国の貴族として浮名も流していたけどね」
「キャステル、余計な事を言うな」
「へぇ、陛下はモテモテで遊んでいたのね」
 ジト目で友梨香に見られシリウスはバツが悪そうに頭を掻く。
「それも仕事の一環だ!」
「ふーん」

「アハハ、どうやら魔石の色が安定したみたいだよ」
 オルトランに助け舟を出され、シリウスはホッとした。

「ユリカちゃん、この魔石を握って念を込めてみて」
「はい」
 友梨香は彼から魔石を受け取ると、一呼吸置いて握り閉めた。
「伸びてきた髪の色を変えて」
 そう言葉にしながら神経を集中し念を込める。
 魔石が手の中で光り、その後友梨香の頭が光に包まれ、暫らく光り続けた後にふわっと消えていった。

「どうなった?」
 恐る恐るシリウスに聞いてみると彼がユリカの頭頂部を確認するために覗き込んできた。
「ああ、茶色くなっているぞ」
「えっ、ホント!プリンが消えた?」
「プリン……ああ、そういう事か」
 友梨香の教えてくれたデザートのプリンを思い出したシリウス。
――確かに黄色い上に茶色いカラメルソースとかいうものが乗っていたな――

 シリウスの言葉を聞いて急いで鏡を見に行く友梨香。
「すごい、凄いです!本当に茶色く見えています。オルトランさん、ありがとうございます」

「あは、喜んでもらえて良かったよ。でも染まっている訳ではないからね。さっきも説明したようにそう見せているだけ」
「うん、それでも助かる。乙女としてはそこ大事ですから~」

「乙女ねぇ……」
 キャステルが呟くのが聞こえた。

「なんですか、キャステルさん!私は乙女ですよ!そんな事言ってると初めて会った時にトイレに駆け込んだ事をばらしますよ!」
「えっ!」
 キャステルには思い当たる節があったのだ。
 そう、友梨香と友人たちの水着姿を見て……。
 シリウスも思い出したのか口元を押さえ肩を震わせている。

「あわわ、失礼いたしました。ユリカ嬢はれっきとした乙女であります!」

 何も知らない者たちはキャステルの態度に驚き首を傾げているが、まあそれ以上は言わないで上げようと思った友梨香であった。

 取敢えず、聖女でないことも分かり髪色も気にすことがなくなりホッとする友梨香。
 もし聖女認定などされてしまったら、のんびり温泉に浸かっている事なんて出来なくなるかもしれないものね。



しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

処理中です...