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45 賢者?やめて下さい!最終話迄のその1
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都合により最終話までこれを含め3話。次回水曜日に完結迄の2話を投稿いたしますのでよろしくお願い致します。
***************
やっと落ち着いた友梨香に向かいシリウスが声を掛ける。
「ユリカ、君が黒髪であることはもう貴族の間に広がってしまったはずだ。今後の事を考えるともう隠す必要はないと思われる」
ソファからて立ち上がりテーブルの方にやって来た友梨香は、シリウスの言う意味が分からないとで言うように首を傾げた。
「私は別に黒髪を隠していた訳じゃないわ。前の世界で染めた色が気に入っていたからそれを維持していたかっただけもん。だって、ヘアカラーを持って来ている訳じゃないからもうこの色には染めることが出来ないでしょう?だから魔石の力で維持できるのが嬉しかっただけだし。まあ最初にメアリーアンが黒く伸びたところを見て黒髪に黒目は聖女と言われていると聞いて、私は聖女なんかじゃないから黒髪じゃない方が良いかなって思ったのも多少はあるけどね」
「うむ。確かにこの国では文献に残る聖女もおとぎ話に語り継がれる聖女も黒髪黒目であるからな」
そう言いながらシリウスは自分の前に立って話していた友梨香の手を取り、引き寄せると自分の膝の上に座らせた。
「ちょっと!」
「良いから座っておれ」
「……」
呆れたように溜息を吐く友梨香だったが、それを気にも止めずキャステルが向かいの席から言葉を発した。
「確かにこちらの意図で召喚された訳ではありませんからね、ユリカ嬢は」
「そうよ、神様の手違いらしいもの。だから聖女なんかじゃないわ」
「だがしかし、ユリカ殿が来られて異世界の知識で洪水対策に取り組めたし、その他にもいろいろと貢献してくれている事は確かですからね」
突然後方から聞こえて来た声に全員が振り向くと、疲れた表情の宰相ドミニクが扉のところに立っていた。
「ああ、ドミニク。大儀であったな。後始末を押し付け悪かった」
「はぁ、陛下。労ってくれるのは有り難いですが、その態勢で言われましてもねぇ」
膝の上に友梨香を乗せ首だけ後ろに回して礼を言う国王にドミニクが冷めた口調で言い返してきたが、シリウスは悪びれた様子もなく友梨香を愛でている。
「で、先ほどのお話ですが……」
「ええ、ユリカ殿は聖女ではなく賢者と紹介されて如何かと」
「賢者!?冗談でしょう?」
ドミニクの余りにも唐突な言葉に友梨香はシリウスの膝の上から飛び降り声をあげた。
「別にそこまでしなくても異世界の知恵を持つ者とかで良いのではないのですか?」
「キャステル、それを人は賢者と呼びます」
「そ、そうですね。あはは」
「いやですよ、私」
またシリウスに元の位置に戻された友梨香が、情けない声で否定して来ると、ドミニクはユリカの前に回り込み真剣な表情で膝を床に付ける。
「貴女の持つ異世界で知識は我が国、いえこの世界にとって計り知れない恩恵をもたらしてくれると私は思っています。これから王妃となり少しでも民が豊かに暮らせるようお知恵を貸していただきたいのです」
「そ、そんな事を言われても……私は結果を知っているだけで、どういう風にしたら良いかなんて分からないんですよ?」
「良いんですよ、それで。貴女の意見を聞きどうしたら良いかはわれわれが考えます。向こうの世界にあってこちらの世界でも役立ちそうな事や、物を教えてくださればいいのです」
「うーん、そういう事なら……協力は出来るけど」
友梨香の返事にドミニクは満足気に笑みを浮かべ、立ち上がるとシリウスに向き合う。
「賢者という言われるのがお嫌なら我々に異世界の知恵を授けてくれる者の方が堅苦しさは抜けますな。それで如何でしょう?」
周りを囲むキャステルや侍女ズも真剣な眼差しで友梨香とシリウスを見つめていた。
「確かに護岸工事にしても我々は自然任せであったし、教育に関しても貴族だけのものと決めつけていた。ユリカの意見で教育が民にも与えられれば彼らの生活も変わっていくだろう。そういう意味で『知恵を授けてくれる者』というのは正しい」
「陛下、私もそう思います」
キャステルが笑顔で友梨香を見て言った。
「では陛下、次回の議会においてユリカ殿はわれわれの思う浄化や癒やしを施す聖女ではなく『知恵を授けてくれる者』と正式に公表いたしましょう」
「うむ、黒髪を見られた以上そうするしかないな」
「ではこの件は私にお任せください」
「分かった。ユリカもそれでよいな?」
「他の選択肢がないなら従いますけど……」
「なにユリカは今のまま生活していればよいのだ。そう気に病む事はない」
不安気な友梨香にシリウスは優しく言いながらその頭を優しく撫でるのを見て、ドミニクは苦笑する。
「あの冷徹と言われた陛下が変われば変わるものですね」
「煩いわ、早く仕事に戻れ!」
追い払うように手を振られ、ドミニクは笑いを堪えながら一礼して退室していくのだった。
「じゃあ、ユリカ嬢はジュノが帰国するまでキャンちゃんで過ごしていただくとして。ジュノが帰ったら髪を黒に戻してもらってくださいね」
キャステルに言われ友梨香はミルクティー色の毛束を摘み名残惜しそうに渋々頷いたのだった。
都合により最終話までこれを含め3話。次回水曜日に完結迄の2話を投稿いたしますのでよろしくお願い致します。
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やっと落ち着いた友梨香に向かいシリウスが声を掛ける。
「ユリカ、君が黒髪であることはもう貴族の間に広がってしまったはずだ。今後の事を考えるともう隠す必要はないと思われる」
ソファからて立ち上がりテーブルの方にやって来た友梨香は、シリウスの言う意味が分からないとで言うように首を傾げた。
「私は別に黒髪を隠していた訳じゃないわ。前の世界で染めた色が気に入っていたからそれを維持していたかっただけもん。だって、ヘアカラーを持って来ている訳じゃないからもうこの色には染めることが出来ないでしょう?だから魔石の力で維持できるのが嬉しかっただけだし。まあ最初にメアリーアンが黒く伸びたところを見て黒髪に黒目は聖女と言われていると聞いて、私は聖女なんかじゃないから黒髪じゃない方が良いかなって思ったのも多少はあるけどね」
「うむ。確かにこの国では文献に残る聖女もおとぎ話に語り継がれる聖女も黒髪黒目であるからな」
そう言いながらシリウスは自分の前に立って話していた友梨香の手を取り、引き寄せると自分の膝の上に座らせた。
「ちょっと!」
「良いから座っておれ」
「……」
呆れたように溜息を吐く友梨香だったが、それを気にも止めずキャステルが向かいの席から言葉を発した。
「確かにこちらの意図で召喚された訳ではありませんからね、ユリカ嬢は」
「そうよ、神様の手違いらしいもの。だから聖女なんかじゃないわ」
「だがしかし、ユリカ殿が来られて異世界の知識で洪水対策に取り組めたし、その他にもいろいろと貢献してくれている事は確かですからね」
突然後方から聞こえて来た声に全員が振り向くと、疲れた表情の宰相ドミニクが扉のところに立っていた。
「ああ、ドミニク。大儀であったな。後始末を押し付け悪かった」
「はぁ、陛下。労ってくれるのは有り難いですが、その態勢で言われましてもねぇ」
膝の上に友梨香を乗せ首だけ後ろに回して礼を言う国王にドミニクが冷めた口調で言い返してきたが、シリウスは悪びれた様子もなく友梨香を愛でている。
「で、先ほどのお話ですが……」
「ええ、ユリカ殿は聖女ではなく賢者と紹介されて如何かと」
「賢者!?冗談でしょう?」
ドミニクの余りにも唐突な言葉に友梨香はシリウスの膝の上から飛び降り声をあげた。
「別にそこまでしなくても異世界の知恵を持つ者とかで良いのではないのですか?」
「キャステル、それを人は賢者と呼びます」
「そ、そうですね。あはは」
「いやですよ、私」
またシリウスに元の位置に戻された友梨香が、情けない声で否定して来ると、ドミニクはユリカの前に回り込み真剣な表情で膝を床に付ける。
「貴女の持つ異世界で知識は我が国、いえこの世界にとって計り知れない恩恵をもたらしてくれると私は思っています。これから王妃となり少しでも民が豊かに暮らせるようお知恵を貸していただきたいのです」
「そ、そんな事を言われても……私は結果を知っているだけで、どういう風にしたら良いかなんて分からないんですよ?」
「良いんですよ、それで。貴女の意見を聞きどうしたら良いかはわれわれが考えます。向こうの世界にあってこちらの世界でも役立ちそうな事や、物を教えてくださればいいのです」
「うーん、そういう事なら……協力は出来るけど」
友梨香の返事にドミニクは満足気に笑みを浮かべ、立ち上がるとシリウスに向き合う。
「賢者という言われるのがお嫌なら我々に異世界の知恵を授けてくれる者の方が堅苦しさは抜けますな。それで如何でしょう?」
周りを囲むキャステルや侍女ズも真剣な眼差しで友梨香とシリウスを見つめていた。
「確かに護岸工事にしても我々は自然任せであったし、教育に関しても貴族だけのものと決めつけていた。ユリカの意見で教育が民にも与えられれば彼らの生活も変わっていくだろう。そういう意味で『知恵を授けてくれる者』というのは正しい」
「陛下、私もそう思います」
キャステルが笑顔で友梨香を見て言った。
「では陛下、次回の議会においてユリカ殿はわれわれの思う浄化や癒やしを施す聖女ではなく『知恵を授けてくれる者』と正式に公表いたしましょう」
「うむ、黒髪を見られた以上そうするしかないな」
「ではこの件は私にお任せください」
「分かった。ユリカもそれでよいな?」
「他の選択肢がないなら従いますけど……」
「なにユリカは今のまま生活していればよいのだ。そう気に病む事はない」
不安気な友梨香にシリウスは優しく言いながらその頭を優しく撫でるのを見て、ドミニクは苦笑する。
「あの冷徹と言われた陛下が変われば変わるものですね」
「煩いわ、早く仕事に戻れ!」
追い払うように手を振られ、ドミニクは笑いを堪えながら一礼して退室していくのだった。
「じゃあ、ユリカ嬢はジュノが帰国するまでキャンちゃんで過ごしていただくとして。ジュノが帰ったら髪を黒に戻してもらってくださいね」
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