末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

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第一章末っ子王女の婚姻

18/二人の竜姫一度きりの閨*シアンの場合

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※投稿ミスがありサブタイトル修正して一話「お茶会と二人の竜妃」と順番を入れ替えさせていただきました。
 ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
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 青竜姫シアンは五年前離宮ができ、最初に入宮してきた三人の姫の中の一人だった。
王妃の親戚筋という事もあって、幼い頃からレオナルドとは一緒に過ごすことが多かった。当然そこにはサミュエルも加わるのだが、シアンは自分は将来レオナルドのお嫁さんになると彼一筋に想いを寄せてきたのだった。

 二人の年差は六才。レオナルドが成人を迎えた十八才の時、王太子に妃を迎えるという話が出る。その妃に選ばれるのは、一番親しくしてきた自分だとシアンは思い、喜びに胸が躍った。
 しかし、「自分は【番】を見つけて妃に迎える」と言って、彼はその話を蹴ったのだ。

【番(つがい)】それは本能が見つける伴侶。
 お互いに引き寄せ合う者もいれば、雄だけに分かる時もあると言う。
 竜族は雄が雌の香りで番だと分かる。
「わたしがこれ程までレオお兄様の事を思っているのに、わたしの香りは届いていないの?」十二才の少女は必死に訴える。
「ごめん、シアンの事は好きだけど、私の番ではないんだ。可愛い妹として愛しているよ」
 レオナルドにそう言われ、シアンは泣いた。
「番は二十歳までに見つからないと、出逢える可能性は皆無に等しいと言われている。レオ殿下がそれまでに番を見つけることが出来なければ、陛下は竜族から妃を迎えるように仰るだろう。そうなればお前にもチャンスが出て来る」父親はそう言って彼女を慰めたのだった。
 シアンは父親の言葉を信じた。

 けれど、その年、第二王子のサミュエルが自分の番を見つけてしまう。
 サミュエルの番は竜族ではなく、猫族の姫だった。
 そう簡単に見つからないという番を十五才で見つけてしまったサミュエル。シアンの不安はどんどん大きくなっていくが、レオナルドの番は二十歳の誕生日を迎えても現れる事はなかったのだった。
 彼はそれでも妃を迎える事を拒む。周りはお世継ぎの事を踏まえ、妃候補のための離宮を作る事を決める。
 離宮への入宮条件は成人前後の生娘であること。十四才のシアンは父親に自分から離宮に入る事を申し出たのだった。

 離宮に入って来たのはシアンを含めた竜姫三人。
 そして一番最初に女官から言い渡されたのが、
「ここへ入ったら、必ず一度は殿下のお渡りがあります。殿下は番しか妃に迎えないと仰せですが、気に入って頂ければ通って頂けるでしょうし、懐妊すれば妃に迎えられるかもしれません」
 という言葉だった。
 閨の説明も受けた。その為の勉強もさせられた。奥手のシアンにとって閨の教育は驚くばかりだったが、レオナルドと結ばれ妃になるためだと思うと、それだけで幸せな気持ちになれた。

「私は妹のように思っているシアンを抱く事は出来ない」

 離宮に来て数か月後、初めてシアンの部屋に渡ったレオナルドは彼女に言った。
 この日を夢見ていたシアンの頭の中は真っ白になり……それでも諦めきれない彼女は、レオナルドに縋る。
「レオお兄様の事を幼い頃からずっとお慕いしてきました。番ではないと言われて、どれ程泣いたことか。二人の姫にもお慈悲を与えられたのですよね?どうか私にも……」
「あれは、慈悲という物ではない。離宮ここが出来た時に勝手に決められた決まりごとだ。不本意だが陛下が決めた以上従うしかない。二人の妃の元へ私は二度と行くつもりも無い。シアンはそのような決まりごとで、私に抱かれても良いというのか? 私は番を求めている。一夜を共にしたとしてもそれきりとなるのだぞ」
「だとしても、わたしはレオお兄様に抱いて欲しいのです。もしかしたらこの一度で身籠る事もあるかも知れないのですから……」
 シアンの意志は固かった。

 彼女は寝着を自ら脱ぎ、生まれたままの姿になる。レオナルドの服に手を掛けると、彼はその手を止め、彼女を見つめてまた溜息を一つ吐く。
 シアンはそのまま手を進め、下履きを下げた。女性の素肌を見れば、男性は生殖器部分が大きくなり固くなると教わった。初めて男性のそれを見た彼女は息を呑む。しかしレオナルドのそれは驚くほど大きく思えたが、力なく下を向き固くなっているようには見えなかった。彼女は閨教育で教わった通り、手で触り刺激を与えとようと頑張るが、変化はない。
 レオナルドを見上げると、困った顔をしている。
「無理だよシアン。私が竜の血が濃い事は知っているだろう?他の竜族の男とは違うのだよ。いくら君が頑張っても番でなければ私は欲情しない」
 挿入し出来ないと子を成すこともないと知っていたシアンの瞳からまた涙が零れ落ちる。
「……そこまでして私に?……」
 シアンは頷く。
「本当に二度と閨を共にすることが無くても良いのだな?」
 シアンは再度頷いた。
「分かった」

 レオナルドは立ち上ると用意されていた茶色の小瓶の液体を飲み干した。
 そして彼女を寝台に寝かせ、初めてなのだから解さなくてはいけないと言い、秘部を撫で指で解し始めた。初めての感覚にシアンは怖さと期待に襲われる。 
 彼女の気持ちが高ぶってきた頃合いを見て、何か冷やりとした液体を秘部に塗られる。
「破瓜の痛みを和らげる物だ」
 その時、太腿にレオナルドの硬く膨張したそれが当たり、シアンの気持ちはまた高揚していった。
 彼女の秘部を押し広げながら少しずつ奥へと進んでいくレオナルドの雄芯。
 液体のお陰か破瓜の痛みは思った程ではなかった。固くなったそれがみちみちとシアンの中に入って来る感覚に体が震え、何も考えられなくなっていったのだった。
「動くぞ」
 彼女に掛けられる言葉は短く、淡々としたものだけ。
 口づけも一度もない。
 どのくらいの時間、抽送が繰り返されたのかは覚えていないが、彼のそれがシアンの中で一段と膨張をして、熱いものが身体の中に放たれたのは分った。
 
「義務で抱くことほど辛いものはない」
 事が終わるとレオナルドは寝台から降り、小さく辛そうな声で呟いた。

「辛かっただろう。ゆっくりお休み」
 手早く服を着ると、彼女の頬を撫で、部屋から出て行ってしまったレオナルド。
 朝まで傍にいてはくれなかったけれど、最後に優しい言葉を掛けてもらえた。それだけでシアンは嬉しく思っていた。
『もしこれで懐妊できたなら。』
 シアンはほんの少しの希望を持って日々を過ごしてきたが、翌月には月のものが来てしまい、微かな希望も消え去る。
 レオナルドの言った通り、その後この部屋に彼が渡って来ることはなかった。



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※HOTランキング(女性)で50位にいると教えて下さったMさん、ありがとうございました。
 これからもよろしくお願い致します_(._.)_
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