19 / 60
第一章末っ子王女の婚姻
19/二人の竜姫一度きりの閨*マゼンダの場合
しおりを挟む赤竜姫マゼンダは今年十八になる赤竜の姫である。
赤竜の長は娘のマゼンダを王家である黒竜に嫁がせ、妃の座を得て三竜の中で優位に立ちたいと考えていた。そして、自由奔放な娘が純潔の内にと離宮に送り出したのだった。
入宮した時はやはり十五になる少し前だった。
レオナルドの事はただ憧れていると言うだけで、シアンのような思いは抱いてはいなかった。王太子妃になれば自分は竜族の女性の中で高位になれる。そんな単純な思考でしかなかった。
番はそう簡単に見つかるものでないと聞かされ、なんとしても他の姫よりも先に子を産み、妃の座を確保して置けと言われて来た。
幸い自分より前に離宮入りしていた姫たちは、まだ子に恵まれてはいない。それなら自分がと意気揚々と入宮したのだった。
女官は殿下の渡りについて説明をしますと言い、持っていた袋から茶色い小瓶と青い小瓶を取り出すと机の上にことんと置いた。
そして今現在レオナルドが妃を迎える気持ちが無いと、シアンにも告げた説明をした後に、次の言葉が加えられてた。
「これは、番以外には気持ちが高ぶらないという殿下が事を成すために必要な薬です。
姫君に女性として殿下のお気持ちが注がれれば、これは必要ありません。その後も殿下の寵愛を受ける事が出来れば側室として迎えられるでしょう。
ですが、今おられる姫君たち全員に、殿下は薬を使われております。そして、残念なことにその後のお渡りは一度もありませんでした。ただ一度きり、それも薬を殿下が飲まれてまでとお思いなら、今すぐ離宮から去られる事をお勧めいたします」
それを聞いてマゼンダは思った。
『先の姫たちは二年もここにいるのに、殿下のお渡りが一度だけってなに?よっぽど魅力がないのね。私にはこんな薬なんて必要ない。殿下は私が落として寵愛を受けてみせるわ』
彼女は自分の赤い髪と、十五才には似つかわしくない肉体美に自信を持っていた。
茶会ではシアンを押さえる役回りをしていたが、実際は気の強い姫であった。
しかし、現実は思惑通りにはならなかった。
「其方が赤竜姫マゼンダか。女官から説明は聞いておるか?」
「はい、聞いております」
「私は義務で赤竜姫と閨を共にすることになる。やめたいと思うなら今からでも遅くない。実家に帰ってはどうかな?」
レオナルドは渡る姫たち全員に問いかけていた。これにより辞退した姫も数人いたからだ。
出来ればこんなことはしたくない。
「いいえ、殿下。わたくしはここへ残ると決めております」
「……なぜ、姫たちは皆分からぬのだろうか。聞いている通り私は番を求めている。今宵一度、決め事により其方と媾うとしても、他の姫と同じく二度とこの部屋を訪れる事はないのだぞ。それでも構わぬと言うのか?」
「それは、殿下のお気持ち次第だと思います。情を交わした後にお気持ちが変わるかも知れませんわ」
「……」
レオナルドはマゼンダの寝着を脱がし、裸になった彼女の身体を暫し眺めていた。そして、諦めたかのように溜息を吐くと辺りを見回して何かを探す。
「薬の用意をして置くように言われなかったか?」
「渡されましたが、殿下とわたくしには必要ないかと」
「無理だな」
「そんな事はありませんわ」
マゼンダは処女ではあるが、自由奔放な性格故、それに至るまでの行為は何度も経験していた。
自分は他の姫と違うとばかりに、甘えるようにレオナルドに近づく。彼の胸のボタンを外し、逞しい胸板にすーっと指を這わせる。
そして、胸に口づけたあと、片方の手を彼のトラウザーズの中に忍ばせた。手を伸ばし軽く握ってみる。普通なら自分に迫られれば、欲情してすぐに男は勃ち上がる筈なのだが。
レオナルドのそれは一向に反応しない。跪き前を寛げた。これから自分の破瓜を散らすであろうそれを引き出し、唇を寄せようと顔を近づけた。
「余計な事はしなくて良い。薬が無いのなら私は帰る」
無表情のレオナルドに体を引き離されてしまう。
怒っているかのように突き放されたマゼンダは、慌てて枕の下から二つの小瓶を取り出し、レオナルドに手渡した。
茶色の瓶の薬を飲み干したレオナルドは、少しの間椅子に座り俯いていた。
暫くの間があり、レオナルドは立ち上るとマゼンダを押し倒す。両手で膝を押し開き、露わになった秘所を指で解し始めたのだった。
口づけも乳房への愛撫という前戯もなく、突然始まった行為に戸惑うマゼンダ。
そんな行為にすぐに秘所が潤う訳もなく、チリチリとした痛みが襲う。
「やはり無理があるな」
レオナルドはもう一つの青い小瓶を手に取ると、中の液体を指で陰部に塗りつけた。
塗られた途端にじわりと秘所が熱くなる。
「で、殿下?」
「もう少し待てば良くなる。破瓜の痛みも和らぐ」
「えっ?あっ、ぁぁ」
それはすぐに訪れた。膣の中がジンジンと痺れて呼吸が荒くなってくる。
「ほんの少し、催淫効果もある。弱いものだから事が終われば消えるだろう」
塗られた液体のせいか、指でまた解され刺激を受けると、身体の奥からとろりと露が出て来るのを感じた。
ヒクヒクと蜜口の奥が動き雄が入って来るのを待っている。
レオナルドはマゼンダの様子を確認し、薬により勃ち上がった己自身を掴むと彼女の蜜口に宛がい、そのまま一気に貫く。
「ああ……レオナルドさまぁ」
レオナルドは冷めた目で腰を動かしながらマゼンダを見下ろしていた。
シャツも脱がず、下はトラウザーズの前を寛げただけで、無表情なままズンズンと抽送を繰り返す。
蜜口から溢れる蜜でじゅぼじゅぼと音が響き、膣の中では雄を逃すまいと襞と肉壁が絡むようにうねる。
マゼンダが何度か絶頂を迎えた後、飛沫が膣奥に広がり雄のそれが脈を打った。
初めての経験に、放心状態になるマゼンダとは反対に、レオナルドはずるりと男根を蜜口から抜くと、用意されていた布で自身の汚れをきれいに拭い、トラウザーズの中に収め前を閉じた。
「後は頼む」
控えていた侍女に声を掛け、そのまま部屋を出て行くのだった。
まだ放心状態のマゼンダは、侍女に体を拭かれて寝着を着せられた。
侍女ラベンダーは殿下の子種を戴けて宜しゅうございましたと喜んでいる。体を起こすと股の間からは、レオナルドの白濁が流れ出てきた。
――いくら義務だからって、前戯もそこそこに事に及ぶって何よ。アレは媚薬? お陰で挿入されてからは気持ち良かったからいいけど。
子種は頂けたわ。結果は分からないけれど、目的は果たした――
とても十五になったばかりの少女は思えない。妃となり、王家の力を分けてもらうと言う父の意向の一歩は踏み出した。
マゼンダは口元を緩ませ笑みを浮かべる。
◇◆◇
あれから二年と少し経った。
殿下の番は見つかっていない。
シアンもマゼンダも懐妊する事もなく、殿下の渡りもないまま離宮での日々を過ごしていた。
そして、ついに番が見つかったとの知らせを聞く事となる。
竜王陛下が妖精妃と名付けた番は人族で六才の王女だった。
二人の並ぶ姿を見て、離宮を去って行く姫たち。
仲睦まじい姿を見せつけられ自分たちも引き際かと思うようになるが、
「妃が幼い故、身体を番うのはまだ先の事だ。それまでにまだお渡りの可能性はある。側室でも良いから何とか子を成して貰いたいものだ」
大臣たちが話しているのを聞き思い止まる二人であった。
_________________________________________________________
※本日は朝からお騒がせして申し訳ありませんでした。
本来なら
17/「離宮のお茶会と二人の竜妃」
18/「二人の竜妃一度きりの閨*シアンの場合」
19/「二人の竜妃一度きりの閨*マゼンダの場合」
となる予定でしたが、間違えて「二人の竜妃一度切りの閨*シアンの場合」を朝一投稿でしてしまいました。
午前中に入れ替えを終了しております。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。
自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。
彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。
そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。
大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう
おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。
本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。
初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。
翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス……
(※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)
最初で最後の我儘を
みん
恋愛
獣人国では、存在が無いように扱われている王女が居た。そして、自分の為、他人の為に頑張る1人の女の子が居た。この2人の関係は………?
この世界には、人間の国と獣人の国と龍の国がある。そして、それぞれの国には、扱い方の違う“聖女”が存在する。その聖女の絡む恋愛物語。
❋相変わらずの、(独自設定有りの)ゆるふわ設定です。メンタルも豆腐並なので、緩い気持ちで読んでいただければ幸いです。
❋他視点有り。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字がよくあります。すみません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる