末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

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第一章末っ子王女の婚姻

3/ 王子様がやって来た(リディア視線)

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 数日前から他国より友好関係を結ぶために来訪されているサザーランド王国の王子様お二人の話題で城内は騒めき立っています。
 でも私には全く関係のないこと。
 今日もお気に入りの場所である池に遊びに来ているところでした。
 ワンピースを脱いでから池で遊ぶつもりが、水の妖精と魚たちに急かされてそのまま池に入って行く羽目に。
 みんなに遅いよと言われ水を掛けられびしょびしょになってしまいました。
 あっ、みんなとは妖精と魚たちのことです。

「あーあ、リールーに怒られちゃうわ」
 ひとりごとを言いながら濡れてしまったワンピースを脱いで、大きな石の上に広げて置きます。
 シュミーズ一枚になったら、もうお構いなしで池の中の入り、みんなと楽しく遊ぶだけ。

 私は六才だけど泳げます。
 長い時間水に潜っている事も出来ます。
 何故って、それは水の妖精の加護があるから。

 楽しくみんなと水に潜り遊んでいると、突然誰かが池の中に飛び込んできました。

  水中に現れたのは身体の大きな男の人。
 一瞬パニックになったみたいだけど、直ぐに体制を整えて立ち泳ぎをしている。
 回り込んでその人の前へ出ると、すごく驚いた顔をして空気をいっぱい吐き出しました。
 溺れちゃうかも……
 そう思ったのでその人の大きな手を掴み水面へと引っ張っていきました。

「ぷっはーーー!」

 水面に顔を出し、大きく息を吐く。
 その人も同じように息を吐いたあと、大きく息を吸いゆっくりと吐いて呼吸を整えています。

「ちょっとあなた、そんな服を着たまま池に入るなんて、頭がおかしいの?」
 思わず怒鳴ってしまいました。

「えっ!げほっ」

 そう言いながら浅瀬の一枚岩の方へと引っ張っていきます。

「とにかくすわろ」
 
 私が先に岩に上がり座ったので、その人もそれに習って腰かけます。
 黒い髪に紫の瞳をしていて、ずぶ濡れだけどとても素敵な男の人でした。
 この人は竜国の人に違いない。
 直管的にそう思いました。

「君は・・・」
「わたしはリディアよ。あなたは?」
「ああ、私はレオナルドだ」
「レオナルド……様?は、今この国に来ている竜王国の人?」

 会話をしたらわかる。この人、凄い魔力をいっぱい持ってる。

「レオナルドだけでよい。竜王国・・・ああ、君の言う通り竜王国といわれてるサザーランド王国から来たんだ。良く分かったね」
「うん、ここでは見ない目の色をしているし、おっきな魔力も感じるから。じゃぁ、竜になれる?」

「ああ、時々なるよ」
「すごーい!」
 
 すごいわ、すごい!竜になれるなんて。
 ワクワクドキドキしたけど、あんまりはしたなく騒いではいけない。
 私は自分がシュミーズ姿であることを忘れていたのですけど、そこはまあ。

「あっ、でもなんで池に?急に泳ぎたくなっちゃったのかしら?」
「い、いや、君・・・リディアが溺れたのかと思って、助けに入ったんだが」
「ぷっ。私が溺れる訳なんてないわ」
 
「ああ、そのようだな。慌てて損をしたよ」
 
 溺れたと思って助けに来てくれたなんて悪いことをしてしまったわ。

「リディアは一人でここへ?」
「うん、でもうすぐリールーが迎えに来るわ」
「リールー?」
「リディの侍女さん」
「リディ、君の愛称かな?私もそう呼んで良いかい?」
「うん、いいわよ。じゃぁ、レオナルド様の事はレオって呼ぶわね」
「嬉しいよ、リディ。私の事は・・・レニーと」
 そう言うと、彼、レニーは私の手を取り軽く口づけてきました。

――紳士なのね。

「で、リールーというのはリディの侍女なんだね」
「うん、怖くて優しいの」
「そうか、君とって良い侍女なんだ」
「もちろんよ、あのね、リディがよその国にお嫁に行っても、一緒に付いて来てくれるって」
「そうか、それならどこへ行っても安心だな」
「ええ、そうなの。心強いわ」

――そう、リールーは侍女であり、私の恩人でもあるの。

「リディはいくつなのかな?」
「レディに年を聞くなんて失礼だけど、レニーはお友達になったから教えてあげる。六才よ」
「そうか、まだ六才なのに池で一人で水遊びは危険ではないか」
「心配しないで、池の水もお魚たちもお友達ですもの」
 私の言葉にレニーは少し首を傾げて何か考えている風だった。

――もしかしてまたやっちゃったのかな……。
 
「リディア様ー」

 林の方からリールーの呼ぶ声が聞こえて来た。

「リールー、ここよー」
 
「王女様に何を!」
「王女?」
 彼女は太腿のガーターベルトに仕込んでいた、ナイフを取り出して構えます。
 レニーはリールーが私のことを王女だと言ったので驚いているようです。

「いや、待ってくれ。私は怪しいものではない」
「信じられません、貴男の周りには魔力を感じます」
「おや、君には分かるんだね?」
 
 さすが膨大な魔力持ち。落ち着いていらっしゃますね。

「レニー、あのね。リールーはエルフの血が混ざってるから分かるの。
 リールー、レニーは悪い人ではないわ。私が池で溺れたんだと思って、助けに入ってくれたの」

「えっ!?」
 
 いきさつを説明してリールーも分かってくれたようです。
 レニーは先ほどの疑問をリールーに聞いてきます。

「いや、いいよ。それよりこのような姿で、水遊びをしていたリディが王女というのは本当かい?」
「……はい、リディア様は、オーレア王国の第三王女様にございます」

――そう、私はこの国の末っ子第三王女。
 今は六才だけど秘密があるの。

 レニーは隣に立つ小さな私を見下ろしています。
 そんな彼を見上げ、私はにっこりと王女スマイルを浮かべて少しだけ離れ、シュミーズの端を掴み腰を落とす。

「オーレア王国第三王女、リディア・クロス・オーレアにございます。以後お見知りおきを」

 ずぶ濡れのシュミーズ以外は、完璧な挨拶だったことにレニーは驚いているようにみえましたが、その後に声を立てて笑い出したのでした。

――どういう事?何で笑ったのかしら。

「これは失礼いたしました。私はサザーランド王国、レオナルド・ドラゴ・サザーランドにございます。このような場にて、リディア王女にお会いできるとは思ってもおりませんでした故、失礼がありました事をお詫びいたします」

――レニーも胸に手を当て頭を垂れて……えっ!レニーって王太子殿下なの?

 レニーが王太子であると分かり慌てるリールーでしたが(もちろん私も)、私達は各々が濡れ鼠の様な姿である事に気付き、顔を見合わせて笑ってしまいました。

「可愛いリディ王女が風邪をひいては大変だ。戻りましょう」

「あっ、リディア様、最初にドレスのままで水に入られましたね?」
 脱いで岩の上に置いてあったワンピースドレスを手に取ったリールーが、私の方を振り返ります。
 ちゃんと先に脱いでおかなったのがバレてしまいしました。

 そんな私にレニーは自分が脱いでいた上着を掛けてくれたのです。
「濡れた服を着るわけにもいかないだろう。ならこれを羽織って」
 レニーの上着はとても大きくて、包まれた私はまるで蓑虫みたいで可笑しくて燥いでしまい、またリールーに窘められてしまいました。


「寒くはないか?リディ」
 リールーが乗って来た馬で、レニーと一緒に先にお城に戻る事になったのですが、彼はとても優しく私のことを気遣ってくれます。
 抱えられ布越しに伝わって来るレニーの体温が、なんだかとても心地良くてついウトウトしてまいます。

 多分庭園の出口に着いてアロンに引き渡された私は完全に寝ていましたが目が覚めました。
 
 池の中で出会った素敵な王子様。
 私の小さな胸の中は、竜人の王子様の事で一杯になっていたのでした。



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