末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

文字の大きさ
39 / 60
第三章

1/ 竜の血

しおりを挟む

「ごちそうさまでした」

 ミルミルが食器を下げに来るのを見計らって、レオナルドがソファの方へとリディアを誘う。

「少し話をしたいのだが良いか?」
「ええ、何?」
「君がこの体になって半年近くなるがもう違和感はないか?」
「うん」
「三月前から月のモノも来ているとリールーから聞いた。だからその……もう少しリディに触れても良いだろうか?」

「えっ……」

――お風呂も一緒だし、今もこうして膝の上にいるのに、今以上というと……

「いきなりはしない。少しずつ肌を合わせたい」

――は、は、は、肌を合わせる……?

 レオナルドの言葉に心臓が破裂しそうなほど驚き戸惑う。

「怖いか?」
「そ、そんな事はないけど……」

「そうか」

 レオナルドが触れるだけのキスをしてきた。

「前に話しただろう?リディの中に器を作るためには、魔力酔いを起こさないようにするため秘薬を飲むと」
「ええ」

「実はまだリディに話していないことがある」

「どんなこと?」

「我々が長寿だという話はしたな」
「ええ、百五十歳近く生きるって」
「ああ、そうだ。でもそれは普通の竜人であって、祖父や私のような先祖返りの黒竜は違う」

「えっ?」

「私たち神竜の化身と呼ばれる者は、普通の竜人の倍は生きると言われている」

「倍って……三百歳!!!」
「そんなところだな。本当のところは分からいが……」

「私はそんなに生きられないわ!私が死んだら二百年以上もレニーは一人ぼっちになっちゃうじゃない」
「うむ。しかしリディの寿命を私に合わせる事が出来るのだ」
「な、何を言ってるの?そんなこと無理よ」
「無理ではないのだよ」
「嘘だ……」

「竜族に伝わる秘薬を飲むと、魔力への耐性と器が出来る」
「うん、それは分かった」

「だがそれとは別に、番の寿命を延ばす力が神竜の化身と言われる先祖返りだけに与えられた」
「なら、それを飲むと私もレニーと一緒に長く生きられるの?」
「そうだよ。寿命を全うして死ぬときは一緒に命を終えることが出来る」

「番と一緒に人生を終えることが出来るのなら、レニーのお婆様も秘薬を飲まれたの?」

「婆様は元々魔力の器も魔力も持っていた。だからその為に飲む必要はなかった。でも、爺様の願いを聞き入れ父上を産んでから飲んだと聞いている」

「……だとしたら、お二人ともまだ生きていなくてはおかしいわ」

「そうだな。先祖返りは三百近くまで生きるからな」
「ええ、さっきレニーはそう言ったわ。お爺様だってまだ百五十になっていないのでしょう?」

「……実はな、死んだことになっているが本当はまだ生きている」

「えっ、どういうことなの……本当に?」

「爺様が王位を譲ったのは三十年前。私が生まれる前だ。そして私が成人した年に二人で竜の山へ行き崩御した事になっている。実際は竜の山で野生の竜たちと二人仲良く隠居生活をしているのだよ」

「えーーー! でもなぜ、死んだことになっているの?」

「それは、先祖返りは長命だ。そのままだと私の代まで竜王を務めることになる。先に息子である私の父が逝ってしまうからな。それと、いきなり神竜の化身が死んだら世が乱れるからだ。まず王位を譲り次の世代が何事も無く国を治めるのを見守る。そして次世代の王の子供が成人したら自ら命を終えるとされている。それが神竜の化身に課せられた最後の役目だ。それ故竜の山へ行った時点で死んだと見做されるのだよ。まあ、隠居していても人知れず竜王国を守ってはいるのだけれどな」

「そうなんだ……」

「リディア、私は例え二人の間に黒竜が生まれなくとも、私の長い生が終わる隠居後までリディに一緒にいてもらいたい。その為に私の血を飲んで欲しいと思っている」

――えっ、今『血』って言った?秘薬って レニーの血を飲むの?

「……」

「血を飲むと聞いて驚いたか?」
「えっ、ああ、うん。信じられないというか」

――血を飲んで寿命が延びるなんて、それが神竜の力なの?

「でも、私がそんなに生きたら魔法使いのお婆さんみたいになっちゃうわ!」

「あはは、大丈夫だ。竜族は元々長寿のため老化が遅い。私の血を飲めばリディも遅くなる。因みに母上は元から器も持っていたし、父上の番ではないから血は飲んでいない。だが、幾つだと思う?」

「お義母様?レニーが二十五だからまだ四十半ば?」

「クククッ、母上が聞いたら喜ぶぞ。二十一で父上に見初められて私を産んだのは三十二だ」

「えっ、という事は……五十七???」

――あの美しいお義母様がもうすぐ六十才?信じられない。

 リディアの腕に鳥肌が立った。

「父上は今年七十だな」

――竜族って何なの?!その年齢であの若さを保っているなんて。

「まずはそれを飲み始めて君の体に馴染んでからだが、その準備としてリディの体に今以上に触れたいのだ」

「……」

「器を作るためとは言ったが、こんなに美しくなったリディを早く抱きたいというのが本音だ」

 耳を少し赤くして照れながら言うレオナルドに、また心臓の鼓動が早くなってしまうリディア。

「少しずつなら」
「そ、そうか、よかった」

 少年のような笑顔で嬉しそうに微笑んだレオナルドがリディアに口づける。

「んっん」
「リディ、今日から少しずつだ。まずは大人のキスからだな」
「?」

 レオナルドはリディアの唇を食むようにして遊ぶ。何度もそれが繰り返されたあと、いつもより長く唇を押し当てられる。

「リディ、少し口を開けてごらん」

 訳も分からず言われるままにほんの少し唇を開くと、僅かな隙間からレオナルドの舌がねじ込まれてきた。

「んっ?」

 薄く長い舌はリディアの口内を貪り上顎をなぞる。

「はぅ……」

 小さな息が隙間から洩れる。
 リディアの舌先をチョロチョロと刺激してきてくるので、くすぐったくて逃げるように動かすと、待っていたかのように絡めとられてしまった。

 お腹の奥の方からじんわりと何かが広がってゆく。
 息ができず頭の中が真っ白くなる寸前に唇が離れた。

「はぁーーー」
「大丈夫か?苦しいから次は鼻で息をしてごらん」

 訳が分からず朦朧としているリディアにレオナルドは優しく言葉をかけくる。

「こんな、キス……」
「慣れると気持ち良くなる」


 初めて大人の口づけを経験したリディアであったが、これから先の事を思うと……。

 秘薬と言われる血は器を作るだけではなく、飲む事で自分も長く生きるようになるなんて考えもしない事だった。



**********
※第三章突入です。
 宜しくお願い致します_(._.)_


しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています

柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。 領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。 しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。 幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。 「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」 「お、畏れ多いので結構です!」 「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」 「もっと重い提案がきた?!」 果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。 さくっとお読みいただけますと嬉しいです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

処理中です...