オービタルエリス

jukaito

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第2章 マーズ・マン・ハンター

エピローグ~確実な一歩~

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「本当にいいのか?」
 地下室のただっ広いスペースでダイチはエリスに問いかける。

「何度も言ってるでしょ」
 エリスはうんざりした顔で答える。

「遠慮はいらないって、さっさとかかってきなさいよ」

 ダイチとエリスは相対する。
 ただし、エリスは義手が砕け散ってしまったため、両腕は使えない。足技だけでダイチとスパーしようというのだ。

「今なら負ける気しない。そういう顔してるわね」
「ちょっと前なら足だけでも全然勝てる気がしなかった。でも、今の足だけのエリスなら負けないぜ」
「言ってくれるわね。だったら能力使ってあげましょうか?」
「あ~前言撤回だ。やっぱ勝てねえわ」
「弱気なこと言わないでよ、蹴りがいが無くなるわ」
「弱気っていうか現実なんだよな……ま、それでもやれるだけやってやるさ」

 エリスは構えるのを見て、ダイチも同じように構える。

「ハッ!」

 エリスはダイチの顔面めがけてハイキックを放つ。
 頭を首から蹴り落とすほどの勢いをもった凄まじいものだ。

 だが、ダイチはこれをかわした。
「へッ!」
 ダイチは思わず笑みをこぼす。

「調子に乗るんじゃないわよ!」

 エリスは声を荒げる。しかし、その顔はどこか嬉しげであった。
 嬉しいからこそ、次の蹴りが即座に飛んでくる。

「うわっちッ!」

 これを紙一重でかわす。
 危なかった。少し前だったらかわすどころか防御することさえ出来ずに、天井を仰ぐことになっていただろう。
 しかし、今は違う。
 理屈は分からないが、ヴァーランスを操縦してレージュを倒してから身体のキレが以前とは桁外れに良い。
 まるで身体にブースターがついたみたいに素早く、スムーズに動かせる。
 それが負ける気がしないと感じた根拠だ。

「おりゃあッ!」

 反撃に拳を突き出す。
 両腕が使えない今のエリスはこれを防御することが出来ない。
 それをエリスは後ろに飛んでこれをかわした。
 負ける気はしない。でも、簡単に勝てる相手ではないことを改めて思い知らされる。

「やるじゃねえか」
「そっちこそね。確かにこりゃ調子に乗るのがわかるわ」
「調子に乗ってるんじゃなくて自信をつけたって言ってくれよ」
「それを調子に乗ってるって言うのよ!」

 エリスは飛び蹴りをかましてくる。

「うおッ!」

 ダイチは腕で防御する。

「ぐう……」

 骨にヒビが入ったんじゃないかって思うぐらい、腕がズキズキする。

「よ、容赦ねえな……」
「こっちは足しかないんだから、軽く倒してもらわなくちゃ困るのよ」
「よく言うぜ。軽く倒させるつもりなんてねえだろ」
「当然」

 エリスはニヤリと笑う。

「さあ、かかってきなさいよ」
「おう!」

 ダイチはまた一歩踏みしめた気がする。
 道は険しく遠いものの、それは確実な一歩であった。
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