44 / 104
第3章 リッター・デア・ヴェーヌス
第39話 新しい戦女神
しおりを挟む
スタディオンの特設されたフェスト運営本部。
そこで中継カメラが映し出したいくつものレースの模様の映像を運営委員会の歴々は食い入るように見ている。というよりは、最早観客であった。
「今回も盛り上がってきたな」
ガウスはその様子を見て満足気に言う。
「盛り上がってますよね!」
ガウスの秘書を務めているアーリンは子供のようにはしゃぐ。
「君も楽しんでいるな」
「私、このフェストを間近で観戦するために技術省に入ったみたいなものですからね!」
「君は少々遠慮がなさすぎるな、まあ今日ぐらいは良いか」
ガウスは宙に舞ういくつものレースの映像から一つのものに目が行く。
「既にポールに辿り着いたか。今回は特に速いな」
それだけマイスター達の技術レベルがあがってきていることだが、それは果たして技術省としては喜ばしいことか悩ましいところであった。
マイスターはその高い技術レベルに反して扱いづらい厄介者揃いで、技術省の注文を取り入れるとはとても思えないからだ。
「私としては技術省傘下のマイスターを応援したいところだが……」
ガウスがぼやいたところで通話ウインドウが開く。
『コール・金星皇ヴィーナス』
その文字が目に入った時、ガウスに緊張が走った。
「ヴィーナス様ですか」
『フェストの調子はどうでしょうか、ガウス長官』
通話ウインドウを開くと、ヴィーナスが女神のごとき笑みとともに上等な楽器が奏でたかのような声を入れてくる。
「順調です。レースがまもなく後半戦にさしかかるところです」
『それはよかったです』
「ワルキューレ・グラールの天覧の合間にこちらを気にかけていただいて光栄です」
『テクニティス・フェストもワルキューレグラールと同様に伝統ある大会だと私は認識しています。
ただ残念なことに天覧の風習がワルキューレ・グラールの方にあるというだけで、どちらか上等かということなんてありません』
「ありがとうございます。参加しているマイスターが聞いていたのなら泣いて喜んでいたでしょう」
『それで、あなたの目から見てレースで優勝したのはどのマイスターでしょうか?』
「私めなどが予想をしてもよろしいのでしょうか?」
『構いません。我々もそうしてグラールを楽しんでいることですから』
ヴィーナスはどこか、子供のような無邪気さを帯びた笑顔で言う。
「そうですね……今のところ、マイスター・アライスタ作のノイヘリヤが一歩抜き出ていますね。
アライスタは大陸でも指折りのマイスターですし、操縦者は元聖騎士ラルリス・ハルファール卿ですからね」
『ラルリス卿ですか。彼女は優秀な騎士でしたからね、そうですか』
ヴィーナスは嬉しそうに笑みをこぼす。
『他にはどなたがいますか?』
「そうですね、他にはマイスター・マーファス作のミッテルとマイスター・ラウゼン作のハイスアウゲンがいますね」
『マイスター・ラウゼン……そうですか、彼はとうとう機体を完成させたのですね』
ヴィーナスは満足げに言う。
「そのマイスター・ラウゼンですが、操縦者に火星人を選出したようです」
『火星人?』
「エリスという火星人です」
『エリス……フフ、そうですか』
ヴィーナスはその名前を口にして、楽しそうに笑う。ガウスからしてみれば何故笑ったのか知る由もなく戸惑うばかりであったが。
『それはますますレースを観戦できないのが残念です』
「お気持ち、察しいります」
『引き続き、大会運営をよろしくお願いします』
「承りました」
ヴィーナスからの通話ウィンドウが閉じられる。
「ヴィーナス様もレースの動向に興味があるみたいですね」
「ああ、あの方は先代と同様に娯楽好きであるからな」
「気が合いそうです!」
「ふむ……それなら今度からお前が通話相手になってみるのも悪くないな」
「喜んで引き受けますよ」
アーリンはそう言って、別のウィンドウに目を移す。
「長官、只今参加者の半数がポールを通過しました」
そのウィンドウをガウスへと移動させる。
「なるほど……無事に最後までレースが終わるといいのだが、荒れるのもまたフェストであるからな」
ポールというより、そびえ立つ岩山。
どうみても人工物とは思えないその雄大にそびえ立つ岩山の周囲を、ハイスアウゲンで一周する。
『チェックポイント、通過完了』
ディスプレイにそのメッセージが流れる。
『よし、あとはスタディオンまで一直線や!』
『ブーストを使え。追い込みにうってつけだからな』
「わかってるわよ! ただ……」
エリスは機体の損傷状況を確認する。
ラルリスに右の肩と腹部をやられている。このまま、ブーストをしたら右半身がバラバラにならないだろうか。そうなっても、飛び続けることができるのだろうか。
「ああ!」
エリスは頭を振る。
込み上げてくる弱気を追い払う。
フェストで優勝する。そのためにやってきたし、ここまで来たら負けられない。
そうやってエリスは自分を奮いたたせる。
「ブーストオン!」
ブースターの出力を二百パーセントに引き上げる。
機体がバラバラになりかねない振動がコックピットまで伝わってくる。
『エリス、いけるか?』
「もちろん!」
『よっしゃ、その意気やで!』
『その調子で、先行したアライスタの機体を追い抜け!』
行きの数倍の速度で一気に駆け抜ける。
この調子ならスタディオンまであっという間にたどり着き、一番乗りできるはずだ。
最初からこれを使っていればもっと楽だったのかも。とためらったことを後悔しだしてきた。
『エリス、暑くないんか?』
「そうね……ちょっとしたサウナね、これ」
エリスは流れ落ちる汗を涼しい顔して拭った。
ブーストで機体のエネルギー稼働を限界まで引き上げているせいでコックピットにまで影響を及ぼしているのだ。
『まあ、エリスならそのくらいへっちゃらか』
「ええ、ただちょっと水が欲しいところね」
『そこに置いてたら熱湯にならんか?』
「かもしれないわね」
エリスはイクミとのやり取りで少し頭が冷え、緊張がほぐれる。ただ気は緩めない。
敵はどこからやってくるか。どこから狙い撃ってくるかわからない。
スタート直後に空へと舞い上がった機体をいきなり撃ち落とした時のように。今度は自分がそうなるかもしれない。
「センサーに未だ引っかからないわね」
『センサー外から狙い撃つか。ジャミングして隠れているのかもな』
「ジャミングってそんなに簡単に出来るものなの?」
『簡単やない。しかし、ここは戦争やないからな。広範囲ならともかく一機に狙いを絞ってジャミングするくらいだったら出来るかもな』
『マイスターならそのぐらいお手の物だな。最初に嬢ちゃんがやられたのもそれだ』
「あのセンサーに引っかからなかったやつね」
『まあ、嬢ちゃんの野性的カンのおかげで撃退できたがな。またそれでなんとか出来るだろ』
「簡単に言ってくれるわね……」
エリスはぼやきながらも、周囲に気を配る。
「――!」
そこにエリスは背筋がピンと張ってしまうような視線を感じる。
『来たか!』
「ええ!」
エリスは答えて、視線の元へと降下する。
ズドン!
途端に、砲弾が飛んでくる。
これはゲヴァルツの狙撃だった。
「あいつ、得物は捨てたはずなのに!」
『予備か、なんらかの方法で回収したんやろな』
ハイスアウゲンで接近するとゲヴァルツの機影が見える。
相変わらず、センサーには反応がない。ラウゼンとイクミが言うにはこちらのセンサーにジャミングをかけているらしいのだが、エリスにとっては見えるのだからもうジャミングなんて関係ない。
ゲヴァルツはエリスに捕捉されたのが、わかったのかその場から離脱する。
「逃がすかァァァッ!」
エリスはブーストして追いかける。
ここにきて、ブーストの出力制御もだんだんカンを掴めてきた。
まだいける、と機体の方から言ってくれているような気さえする。もしも、それが、もし無理だ、と言われたら……考えないようにした。
『スピードなら今のハイスアウゲンにかなうやつはいない、いけぇッ!』
ラウゼンは騒いでいるが、エリスは聞かないようにした。
今は目の前にいる獲物だ。砲弾をかいくぐりながら、確実に接近する。
――届く!
エリスはそう直感した時、備え付けられた機銃で撃つ。
乱射しているので何発かは当たったが、効果は豆鉄砲程度しかなかった。
チィ、と、ゲヴェルツの操縦者が舌打ちしたような声が聞こえた気がする。おそらく、それは今から離脱する、というモーションなのかもしれない。
「ブーストオン!」
エリスはブーストの出力を更に引き上げる。
三百パーセント……まだいける、というハイスアウゲンからの呼びかけに応えて、限界を超えた速度を要求する。
――大丈夫。さあ、いこう!
そう応えてくれたような気がする。
コックピットの中の温度はさらに上昇する。サウナどころか窯で焼かれているかのように熱い。
ますますもってエリスのヒートアップの適温になってくる。
もっと、もっといける、とエリスは想いを込めて、ブースターを噴かせる。
『ほお!』
これにはラウゼンは感嘆の声を上げる。
ガシャン!
ブーストによる更なる速度上昇によって、拳の届くまで一気に詰める。
「たりゃぁぁぁぁッ!」
一度捉えた獲物は逃さない。
右、左、右と絶え間なく連打を浴びせる。
クシャッ!?
一発打ち込む度にゲヴァルツの装甲が歪んでいく。
『そこまでだ!』
ラウゼンが止めの声が入ると、エリスは反射的に手を止める。
『もう奴に構うことはない。これはレースだ、時間をかけて倒すことではない!』
「ええ、そうね」
もう十分に殴ったし、と、エリスは心の中で付け加える。
ゲヴァルツの上半身は一応ヒトの形をしている程度には保たれているものの、戦闘できるだけのチカラは残っていないように見える。
仮に戦闘が出来たとしても、もうレース続行は不可能だろう。ブースターを噴かせただけで機体がバラバラになりかねないのだから。
『……負けた』
操縦者もわかっているのか、通話ウィンドウを開いてエリスに言う。
見る限り、エリスと同じくらい若い年頃の少女みたいだった。
『あそこから更にブーストをかけるなんて恐れ入ったわ……さあ、行きなさいよ』
少女は悔しそうに言う。
「ええ、遠慮なく!」
エリスはすぐに飛び立った。
『機体の状態はどうだ?』
「良好よ。ただ長くはやってられないわね」
『そうか……だが、三百パーセントでもなんとか動かせるということは証明できたか』
「四百までいけるっていってなかったけ?」
『それは計算と理論によるものだ。実証は今してみせろ』
エリスは頭を抱える。
なんでこんな危険なものに仕上げてしまうのだろうか。一歩間違えたら操縦者は生命を落としかねないというのに。
「とりあえず三百でもいけるけど、続けたらバラバラになるかもだから二百でいくわよ」
『ああ、そのあたりの判断は嬢ちゃんに任せる。だが、それでアライスタに追いつけるかどうかだな、問題は』
アライスタが作り上げたノイヘリヤにはもう先を越されている。
さっき一戦交えてみた限り、このハイスアウゲンほどの機動力と敏捷性は無いように思える。このままブースターを全開で噴かせていれば、必ず追いつけるはずだ。……既にゴールしていなければの話だが。
マップを見てみると、そういったメッセージは流れていない。つまり、まだ誰もまだゴールはしていないということになる。
『こっちの方にもまだ誰かゴールしたっていう情報は入ってないな』
「決着はまだついてないってわけね」
『三百はラストスパートまでとっておけよ』
「わかってるわ、ゴール手前で爆発なんてしたくないし」
『ゴールしたあとなら別に構わんが』
「………………」
エリスは閉口する。冗談じゃなく本気で言っているあたり、質が悪い。
「――見えたわ!」
モニター越しにノイヘリヤの機影を確認した。ゴールを目指しているようで後ろには目もくれない様子だ。
『よっしゃ! あとは追い越すだけだ』
ラウゼンは既に勝ち誇った調子で言ってくる。
『残り距離的にも、奴が暫定一位のようやのう』
「だったら、あいつを抜かして優勝よ!」
差はどんどん詰まっていく。やはり、速度はこちらの上のようだ。
スタディオンも目視で見えるようになってきた。
『追いついてきたか、大したものね!』
ラルリスが通話ウィンドウを開いて言ってくる。
「当然! 追い抜かせてもらうわよ!!」
『抜かせるかッ!』
ノイヘリヤは速度を上昇させる。
「それでマックス?
――だったら、私の勝ちね! ブーストオン!!」
エリスはブースト出力を三百パーセントまで引き上げる。
『なッ!?』
これにはラルリスも驚愕する。
『あなた、バラバラになる気!? そんな無茶したら機体が!』
「あいにく、うちのマスターはそんな無茶を無茶と思わないヒトなのよ。それに、私もバラバラになる気はないって!」
ノイヘリヤとの差がどんどん詰まっていく。
『くッ!』
そうさせじと、ノイヘリヤは振り向いてバスターキャノンを構える。
「――!」
エリスはそれにいち早く対応する。
バァン!
砲撃をエリスはかわす。
ノイヘリヤは足を止めて、バスターキャノンを連射させる。
しかし、三百パーセントというブーストの出力を引き出し、極限状態に至ったエリスには全ての砲撃が見えていた。
砲撃の隙間をかいくぐって、距離を詰める。
『やるな、ならばッ!』
ノイヘリヤのバスターキャノンが変形し、バスターアックスになる。
『私が最も得意とする得物だ!』
「勝負!」
エリスは【ロートクリンゲ】で斬りかかる。
「ブーストオン!」
ハイスアウゲンのブースト出力をブースターに百、【ロートクリンゲ】に二百にそれぞれ振り分ける。
バァァァァァン!!
バスターアックスと【ロートクリンゲ】がぶつかり、激しく火花を散らせる。
『こいつとまともに打ち合えるか!』
ラルリスは関心するが、アックスをもちかえて反撃する。
ガシャン!
そのパワーに圧されて、ハイスアウゲンは後退する。
「これが元聖騎士の実力ってわけね」
『認める、敗北を?』
「誰がぁぁぁぁッ!!」
エリスの返答とともに、ハイスアウゲンはまた前進する。その気持ちに応えるようにブースターを全開に噴かせて。
バァァァァァァァン!!
【ロートクリンゲ】の出力もブーストにより、向上している。
元聖騎士が振るう大振りのバスターアックスのパワーに負けていない。これが生身だったらまともに打ち合えたかどうかわからない。
ノイヘリヤのバスターアックスの衝撃が走る度に、地面がえぐれ、突風が巻き起こる。
ハイスアウゲンの【ロートクリンゲ】も負けじと、火柱のように燃え上がる。
炎と風がぶつかり、混ざり合う。
しかし、一方は限界を超えたブーストによる無茶のため、長くは保たない。ノイヘリヤの方もそのパワーと強引さに徐々に押され始めているが、それでもしのぎきられるかもしない。
『ここまでおいすがってくるなんて……素晴らしい機体! そして、その機体のチカラを十分に引き出すあなたもね!!』
「あんたもね、さすが元聖騎士ね!
――でも、あいつはもっと強いんでしょ!」
『あいつ?』
「ワルキューレ・リッターのアグライア!」
【ロートクリング】がバスターアックスを弾きとばす。
『チィ……』
グシャン!
とどめの一撃を放つ。まさにその瞬間に機体は限界を迎えた。
「……あ!」
ここに来て、先の一戦でもらった二撃が効いてきたのだ。
ブーストの恩恵であった速度上昇が消え、動きが鈍る。
「――!」
ラルリスはその隙を逃さず、離脱する。
「ああッ!」
エリスは、悔しさでディスプレイを叩く。
ラルリスの乗るノイヘリヤは、もうバスターアックスを回収すること無くゴールを目指す。
このまま追いかけてもブーストで機体の限界を迎えたハイスアウゲンでは追いつけない。事実上の敗北であった。
『エリス、早く追いかけるんや!』
イクミが呼びかけてくる。
『もう一位は無理や! せやけど、二位まで諦めたらあかん!』
「え、ええ……!」
イクミの「一位はもう無理」という言葉と事実を噛み締めながら、エリスはハイスアウゲンをスタディオンへと向かわせる。
あれだけチカラに満ちたブーストが消え、あとには疲労感とやり場のない悔しさだけが残った。
そこで中継カメラが映し出したいくつものレースの模様の映像を運営委員会の歴々は食い入るように見ている。というよりは、最早観客であった。
「今回も盛り上がってきたな」
ガウスはその様子を見て満足気に言う。
「盛り上がってますよね!」
ガウスの秘書を務めているアーリンは子供のようにはしゃぐ。
「君も楽しんでいるな」
「私、このフェストを間近で観戦するために技術省に入ったみたいなものですからね!」
「君は少々遠慮がなさすぎるな、まあ今日ぐらいは良いか」
ガウスは宙に舞ういくつものレースの映像から一つのものに目が行く。
「既にポールに辿り着いたか。今回は特に速いな」
それだけマイスター達の技術レベルがあがってきていることだが、それは果たして技術省としては喜ばしいことか悩ましいところであった。
マイスターはその高い技術レベルに反して扱いづらい厄介者揃いで、技術省の注文を取り入れるとはとても思えないからだ。
「私としては技術省傘下のマイスターを応援したいところだが……」
ガウスがぼやいたところで通話ウインドウが開く。
『コール・金星皇ヴィーナス』
その文字が目に入った時、ガウスに緊張が走った。
「ヴィーナス様ですか」
『フェストの調子はどうでしょうか、ガウス長官』
通話ウインドウを開くと、ヴィーナスが女神のごとき笑みとともに上等な楽器が奏でたかのような声を入れてくる。
「順調です。レースがまもなく後半戦にさしかかるところです」
『それはよかったです』
「ワルキューレ・グラールの天覧の合間にこちらを気にかけていただいて光栄です」
『テクニティス・フェストもワルキューレグラールと同様に伝統ある大会だと私は認識しています。
ただ残念なことに天覧の風習がワルキューレ・グラールの方にあるというだけで、どちらか上等かということなんてありません』
「ありがとうございます。参加しているマイスターが聞いていたのなら泣いて喜んでいたでしょう」
『それで、あなたの目から見てレースで優勝したのはどのマイスターでしょうか?』
「私めなどが予想をしてもよろしいのでしょうか?」
『構いません。我々もそうしてグラールを楽しんでいることですから』
ヴィーナスはどこか、子供のような無邪気さを帯びた笑顔で言う。
「そうですね……今のところ、マイスター・アライスタ作のノイヘリヤが一歩抜き出ていますね。
アライスタは大陸でも指折りのマイスターですし、操縦者は元聖騎士ラルリス・ハルファール卿ですからね」
『ラルリス卿ですか。彼女は優秀な騎士でしたからね、そうですか』
ヴィーナスは嬉しそうに笑みをこぼす。
『他にはどなたがいますか?』
「そうですね、他にはマイスター・マーファス作のミッテルとマイスター・ラウゼン作のハイスアウゲンがいますね」
『マイスター・ラウゼン……そうですか、彼はとうとう機体を完成させたのですね』
ヴィーナスは満足げに言う。
「そのマイスター・ラウゼンですが、操縦者に火星人を選出したようです」
『火星人?』
「エリスという火星人です」
『エリス……フフ、そうですか』
ヴィーナスはその名前を口にして、楽しそうに笑う。ガウスからしてみれば何故笑ったのか知る由もなく戸惑うばかりであったが。
『それはますますレースを観戦できないのが残念です』
「お気持ち、察しいります」
『引き続き、大会運営をよろしくお願いします』
「承りました」
ヴィーナスからの通話ウィンドウが閉じられる。
「ヴィーナス様もレースの動向に興味があるみたいですね」
「ああ、あの方は先代と同様に娯楽好きであるからな」
「気が合いそうです!」
「ふむ……それなら今度からお前が通話相手になってみるのも悪くないな」
「喜んで引き受けますよ」
アーリンはそう言って、別のウィンドウに目を移す。
「長官、只今参加者の半数がポールを通過しました」
そのウィンドウをガウスへと移動させる。
「なるほど……無事に最後までレースが終わるといいのだが、荒れるのもまたフェストであるからな」
ポールというより、そびえ立つ岩山。
どうみても人工物とは思えないその雄大にそびえ立つ岩山の周囲を、ハイスアウゲンで一周する。
『チェックポイント、通過完了』
ディスプレイにそのメッセージが流れる。
『よし、あとはスタディオンまで一直線や!』
『ブーストを使え。追い込みにうってつけだからな』
「わかってるわよ! ただ……」
エリスは機体の損傷状況を確認する。
ラルリスに右の肩と腹部をやられている。このまま、ブーストをしたら右半身がバラバラにならないだろうか。そうなっても、飛び続けることができるのだろうか。
「ああ!」
エリスは頭を振る。
込み上げてくる弱気を追い払う。
フェストで優勝する。そのためにやってきたし、ここまで来たら負けられない。
そうやってエリスは自分を奮いたたせる。
「ブーストオン!」
ブースターの出力を二百パーセントに引き上げる。
機体がバラバラになりかねない振動がコックピットまで伝わってくる。
『エリス、いけるか?』
「もちろん!」
『よっしゃ、その意気やで!』
『その調子で、先行したアライスタの機体を追い抜け!』
行きの数倍の速度で一気に駆け抜ける。
この調子ならスタディオンまであっという間にたどり着き、一番乗りできるはずだ。
最初からこれを使っていればもっと楽だったのかも。とためらったことを後悔しだしてきた。
『エリス、暑くないんか?』
「そうね……ちょっとしたサウナね、これ」
エリスは流れ落ちる汗を涼しい顔して拭った。
ブーストで機体のエネルギー稼働を限界まで引き上げているせいでコックピットにまで影響を及ぼしているのだ。
『まあ、エリスならそのくらいへっちゃらか』
「ええ、ただちょっと水が欲しいところね」
『そこに置いてたら熱湯にならんか?』
「かもしれないわね」
エリスはイクミとのやり取りで少し頭が冷え、緊張がほぐれる。ただ気は緩めない。
敵はどこからやってくるか。どこから狙い撃ってくるかわからない。
スタート直後に空へと舞い上がった機体をいきなり撃ち落とした時のように。今度は自分がそうなるかもしれない。
「センサーに未だ引っかからないわね」
『センサー外から狙い撃つか。ジャミングして隠れているのかもな』
「ジャミングってそんなに簡単に出来るものなの?」
『簡単やない。しかし、ここは戦争やないからな。広範囲ならともかく一機に狙いを絞ってジャミングするくらいだったら出来るかもな』
『マイスターならそのぐらいお手の物だな。最初に嬢ちゃんがやられたのもそれだ』
「あのセンサーに引っかからなかったやつね」
『まあ、嬢ちゃんの野性的カンのおかげで撃退できたがな。またそれでなんとか出来るだろ』
「簡単に言ってくれるわね……」
エリスはぼやきながらも、周囲に気を配る。
「――!」
そこにエリスは背筋がピンと張ってしまうような視線を感じる。
『来たか!』
「ええ!」
エリスは答えて、視線の元へと降下する。
ズドン!
途端に、砲弾が飛んでくる。
これはゲヴァルツの狙撃だった。
「あいつ、得物は捨てたはずなのに!」
『予備か、なんらかの方法で回収したんやろな』
ハイスアウゲンで接近するとゲヴァルツの機影が見える。
相変わらず、センサーには反応がない。ラウゼンとイクミが言うにはこちらのセンサーにジャミングをかけているらしいのだが、エリスにとっては見えるのだからもうジャミングなんて関係ない。
ゲヴァルツはエリスに捕捉されたのが、わかったのかその場から離脱する。
「逃がすかァァァッ!」
エリスはブーストして追いかける。
ここにきて、ブーストの出力制御もだんだんカンを掴めてきた。
まだいける、と機体の方から言ってくれているような気さえする。もしも、それが、もし無理だ、と言われたら……考えないようにした。
『スピードなら今のハイスアウゲンにかなうやつはいない、いけぇッ!』
ラウゼンは騒いでいるが、エリスは聞かないようにした。
今は目の前にいる獲物だ。砲弾をかいくぐりながら、確実に接近する。
――届く!
エリスはそう直感した時、備え付けられた機銃で撃つ。
乱射しているので何発かは当たったが、効果は豆鉄砲程度しかなかった。
チィ、と、ゲヴェルツの操縦者が舌打ちしたような声が聞こえた気がする。おそらく、それは今から離脱する、というモーションなのかもしれない。
「ブーストオン!」
エリスはブーストの出力を更に引き上げる。
三百パーセント……まだいける、というハイスアウゲンからの呼びかけに応えて、限界を超えた速度を要求する。
――大丈夫。さあ、いこう!
そう応えてくれたような気がする。
コックピットの中の温度はさらに上昇する。サウナどころか窯で焼かれているかのように熱い。
ますますもってエリスのヒートアップの適温になってくる。
もっと、もっといける、とエリスは想いを込めて、ブースターを噴かせる。
『ほお!』
これにはラウゼンは感嘆の声を上げる。
ガシャン!
ブーストによる更なる速度上昇によって、拳の届くまで一気に詰める。
「たりゃぁぁぁぁッ!」
一度捉えた獲物は逃さない。
右、左、右と絶え間なく連打を浴びせる。
クシャッ!?
一発打ち込む度にゲヴァルツの装甲が歪んでいく。
『そこまでだ!』
ラウゼンが止めの声が入ると、エリスは反射的に手を止める。
『もう奴に構うことはない。これはレースだ、時間をかけて倒すことではない!』
「ええ、そうね」
もう十分に殴ったし、と、エリスは心の中で付け加える。
ゲヴァルツの上半身は一応ヒトの形をしている程度には保たれているものの、戦闘できるだけのチカラは残っていないように見える。
仮に戦闘が出来たとしても、もうレース続行は不可能だろう。ブースターを噴かせただけで機体がバラバラになりかねないのだから。
『……負けた』
操縦者もわかっているのか、通話ウィンドウを開いてエリスに言う。
見る限り、エリスと同じくらい若い年頃の少女みたいだった。
『あそこから更にブーストをかけるなんて恐れ入ったわ……さあ、行きなさいよ』
少女は悔しそうに言う。
「ええ、遠慮なく!」
エリスはすぐに飛び立った。
『機体の状態はどうだ?』
「良好よ。ただ長くはやってられないわね」
『そうか……だが、三百パーセントでもなんとか動かせるということは証明できたか』
「四百までいけるっていってなかったけ?」
『それは計算と理論によるものだ。実証は今してみせろ』
エリスは頭を抱える。
なんでこんな危険なものに仕上げてしまうのだろうか。一歩間違えたら操縦者は生命を落としかねないというのに。
「とりあえず三百でもいけるけど、続けたらバラバラになるかもだから二百でいくわよ」
『ああ、そのあたりの判断は嬢ちゃんに任せる。だが、それでアライスタに追いつけるかどうかだな、問題は』
アライスタが作り上げたノイヘリヤにはもう先を越されている。
さっき一戦交えてみた限り、このハイスアウゲンほどの機動力と敏捷性は無いように思える。このままブースターを全開で噴かせていれば、必ず追いつけるはずだ。……既にゴールしていなければの話だが。
マップを見てみると、そういったメッセージは流れていない。つまり、まだ誰もまだゴールはしていないということになる。
『こっちの方にもまだ誰かゴールしたっていう情報は入ってないな』
「決着はまだついてないってわけね」
『三百はラストスパートまでとっておけよ』
「わかってるわ、ゴール手前で爆発なんてしたくないし」
『ゴールしたあとなら別に構わんが』
「………………」
エリスは閉口する。冗談じゃなく本気で言っているあたり、質が悪い。
「――見えたわ!」
モニター越しにノイヘリヤの機影を確認した。ゴールを目指しているようで後ろには目もくれない様子だ。
『よっしゃ! あとは追い越すだけだ』
ラウゼンは既に勝ち誇った調子で言ってくる。
『残り距離的にも、奴が暫定一位のようやのう』
「だったら、あいつを抜かして優勝よ!」
差はどんどん詰まっていく。やはり、速度はこちらの上のようだ。
スタディオンも目視で見えるようになってきた。
『追いついてきたか、大したものね!』
ラルリスが通話ウィンドウを開いて言ってくる。
「当然! 追い抜かせてもらうわよ!!」
『抜かせるかッ!』
ノイヘリヤは速度を上昇させる。
「それでマックス?
――だったら、私の勝ちね! ブーストオン!!」
エリスはブースト出力を三百パーセントまで引き上げる。
『なッ!?』
これにはラルリスも驚愕する。
『あなた、バラバラになる気!? そんな無茶したら機体が!』
「あいにく、うちのマスターはそんな無茶を無茶と思わないヒトなのよ。それに、私もバラバラになる気はないって!」
ノイヘリヤとの差がどんどん詰まっていく。
『くッ!』
そうさせじと、ノイヘリヤは振り向いてバスターキャノンを構える。
「――!」
エリスはそれにいち早く対応する。
バァン!
砲撃をエリスはかわす。
ノイヘリヤは足を止めて、バスターキャノンを連射させる。
しかし、三百パーセントというブーストの出力を引き出し、極限状態に至ったエリスには全ての砲撃が見えていた。
砲撃の隙間をかいくぐって、距離を詰める。
『やるな、ならばッ!』
ノイヘリヤのバスターキャノンが変形し、バスターアックスになる。
『私が最も得意とする得物だ!』
「勝負!」
エリスは【ロートクリンゲ】で斬りかかる。
「ブーストオン!」
ハイスアウゲンのブースト出力をブースターに百、【ロートクリンゲ】に二百にそれぞれ振り分ける。
バァァァァァン!!
バスターアックスと【ロートクリンゲ】がぶつかり、激しく火花を散らせる。
『こいつとまともに打ち合えるか!』
ラルリスは関心するが、アックスをもちかえて反撃する。
ガシャン!
そのパワーに圧されて、ハイスアウゲンは後退する。
「これが元聖騎士の実力ってわけね」
『認める、敗北を?』
「誰がぁぁぁぁッ!!」
エリスの返答とともに、ハイスアウゲンはまた前進する。その気持ちに応えるようにブースターを全開に噴かせて。
バァァァァァァァン!!
【ロートクリンゲ】の出力もブーストにより、向上している。
元聖騎士が振るう大振りのバスターアックスのパワーに負けていない。これが生身だったらまともに打ち合えたかどうかわからない。
ノイヘリヤのバスターアックスの衝撃が走る度に、地面がえぐれ、突風が巻き起こる。
ハイスアウゲンの【ロートクリンゲ】も負けじと、火柱のように燃え上がる。
炎と風がぶつかり、混ざり合う。
しかし、一方は限界を超えたブーストによる無茶のため、長くは保たない。ノイヘリヤの方もそのパワーと強引さに徐々に押され始めているが、それでもしのぎきられるかもしない。
『ここまでおいすがってくるなんて……素晴らしい機体! そして、その機体のチカラを十分に引き出すあなたもね!!』
「あんたもね、さすが元聖騎士ね!
――でも、あいつはもっと強いんでしょ!」
『あいつ?』
「ワルキューレ・リッターのアグライア!」
【ロートクリング】がバスターアックスを弾きとばす。
『チィ……』
グシャン!
とどめの一撃を放つ。まさにその瞬間に機体は限界を迎えた。
「……あ!」
ここに来て、先の一戦でもらった二撃が効いてきたのだ。
ブーストの恩恵であった速度上昇が消え、動きが鈍る。
「――!」
ラルリスはその隙を逃さず、離脱する。
「ああッ!」
エリスは、悔しさでディスプレイを叩く。
ラルリスの乗るノイヘリヤは、もうバスターアックスを回収すること無くゴールを目指す。
このまま追いかけてもブーストで機体の限界を迎えたハイスアウゲンでは追いつけない。事実上の敗北であった。
『エリス、早く追いかけるんや!』
イクミが呼びかけてくる。
『もう一位は無理や! せやけど、二位まで諦めたらあかん!』
「え、ええ……!」
イクミの「一位はもう無理」という言葉と事実を噛み締めながら、エリスはハイスアウゲンをスタディオンへと向かわせる。
あれだけチカラに満ちたブーストが消え、あとには疲労感とやり場のない悔しさだけが残った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
クロワッサン物語
コダーマ
歴史・時代
1683年、城塞都市ウィーンはオスマン帝国の大軍に包囲されていた。
第二次ウィーン包囲である。
戦況厳しいウィーンからは皇帝も逃げ出し、市壁の中には守備隊の兵士と市民軍、避難できなかった市民ら一万人弱が立て籠もった。
彼らをまとめ、指揮するウィーン防衛司令官、その名をシュターレンベルクという。
敵の数は三十万。
戦況は絶望的に想えるものの、シュターレンベルクには策があった。
ドナウ河の水運に恵まれたウィーンは、ドナウ艦隊を蔵している。
内陸に位置するオーストリア唯一の海軍だ。
彼らをウィーンの切り札とするのだ。
戦闘には参加させず、外界との唯一の道として、連絡も補給も彼等に依る。
そのうち、ウィーンには厳しい冬が訪れる。
オスマン帝国軍は野営には耐えられまい。
そんなシュターレンベルクの元に届いた報は『ドナウ艦隊の全滅』であった。
もはや、市壁の中にこもって救援を待つしかないウィーンだが、敵軍のシャーヒー砲は、連日、市に降り注いだ。
戦闘、策略、裏切り、絶望──。
シュターレンベルクはウィーンを守り抜けるのか。
第二次ウィーン包囲の二か月間を描いた歴史小説です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる