オービタルエリス

jukaito

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第3章 リッター・デア・ヴェーヌス

第38話 レーススタート!

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 競技場ギガントスタディオンにマイスターが作り上げたマシンノイドが十一機並ぶ。

「これだけ並ぶと壮観ね」

 エリスはハイスアウゲンのモニターから周囲の機体を見回す。大会規定によって取り付けられたマーカーのおかげで機体の名前がわかるようになっているが、とてもじゃないが覚えきれそうにない。

『私は金星技術省長官ガウス・ゲナム・オルトロン。
このフェストを取り仕切らせてもらっております。
本日はお集まりいただき、ありがとうございます。只今からテクニティス・フェストの開催を宣言致します』

 ガウスと名乗った長官が立体映像で映し出され、大会開催の宣言をする。

「いよいよ始まりね。ここまでやったんだから絶対優勝してやるわ」

 操縦席の中で一人エリスは拳を打ち鳴らす。

『なお、フェストは闘技と競走の部門によって優秀な機体を選抜致します。そして、只今から競走を行います』

 ガウス長官から競技内容を言い渡された。

「競走ね」
『アウゲンの機動力なら独壇場やな』

 通話ウインドウからナビゲーター役をかってでたイクミが自慢げに言う。

『いざとなったらブーストをかければ楽勝だな』

 そして、隣のラウゼンは得意げであった。

「闘技の方を先にやりたかったのにね」
『それじゃ先に機体の方が戦いでオシャカになってまうがな』
「あ、それもそうね。なるほど、だから先に競走をね」
『一足先にリタイアしなくてよかったじゃないの』

 通話に新しくウインドウが開き、ラルリスが割り込んでくる。

「ええ、私以外の全部がね」
『言うじゃない。競走だからって、負けるつもりはないから』
「それはこっちの台詞よ」

『それではこれよりコースの説明を致します。
コースはこのギガントスタディオンを出て、エアーズポールを一周し、再びギガントスタディオンへ戻ってくること。コースの詳細データは各自機体に転送したので、参照してください』

 機体のデータにコースの詳細マップが出る。

『エアーズポール……地球最大級の一枚岩エアーズロックを模した大石柱のようやな。凹凸の激しい地形になっているが、基本的にそこまで直線やから迷うことは無さそうやな』
「これで直線を進めって? メチャクチャじゃない!?」
『フェストに出場する機体ならば苦もなく進むだろうな。お前も進めることを信じている』
「ああ、信じてくれて嬉しいわ、涙が出てきちゃう」

 エリスは呆れ気味に返す。

「レーススタートは十分後。各機はスタート地点に着くように」

 モニターのマップにスタート地点が点滅される。

『レースはポールを一周してからスタディオンに戻る。
ルールはただこれだけ。ということは他はなんでもありって解釈やろな』
「ただのかけっこになりそうにないわね……じいさんみたいなマイスターが十一人もそろってるんだし」

 エリスはハイスアウゲンを動かしてスタート地点へ着く。
 両隣に並んでいる機体のマーカーを一応確認すると並んでいるのは、ラルリスが駆る金色の機体ノイヘリヤと銀色に輝く兜と甲冑を装甲につけた機体ブラシュオン。
 ディスプレイに表示されるスタートまでのカウントがどんどん減ってくる。

「さ、行きましょうか」
 エリスはハイスアウゲンへ妹に呼びかけるように言う。

3! 2! 1!

 カウントがどんどん減っていく。
 エリスは目を閉じてチカラを溜め込む。

0!
プゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

「アウゲン! スタンダァァァァァプッ!!」

 スタートのサイレンと同時にエリスは開眼し、機体へと気合を注ぎ込む。
 アウゲンはそれに呼応し、ブースターを噴射させて文字通りのロケットスタートをきる。
 競技場を出たところで、ナビが示す進行方向に従って街の外へ出る。
 狙い通りのロケットスタートで一気にトップに躍り出たとエリスは確信した。

『よっし、まずはええ出だしやったでエリス!』
「このまま、機動力を生かして走り続ければブーストを使わなくたって一番に!」
『ヒヤッハァァァァァァァァァッ!!』

 エリスがそう言った瞬間、スピーカーで音声をかっ飛ばして空へと舞い上がるシャトルと人型の中間のような機体の姿が見えた。

『このまま空へ飛び上がれば楽勝だぜ!』

 なるほど、空ならば思う存分ブースターを噴出して出力が許せる限り、全開に走れる。
 あれならばトップをとったまま、ゴールインも可能だと思った。
 多くの参加者がそうして真似をしようとした瞬間、ズドンというえげつない発砲音が後ろから響いた。

ガシャン!

 地上から放たれた一射が彼の機体の翼を貫いた。制御用の翼をもがれたため、安定を失い、地上へと落下していく。

『うわぁぁぁぁぁぁ、なんでぇぇぇぇぇぇぇッ!!』

 耳障りな悲鳴が響いたので、エリスはオープンスピーカーを切った。

「あれ、レース妨害じゃないの?」

『ルール違反やないみたいやで。ルールはあくまで『スタディオンを出て、ポールを一周してまたスタディオンに一番に戻る』だけやからな!』
「一番になるためなら何をしてもいいってわけね」
『そういうことだ。お前も邪魔な奴がいたらいくらでも撃ち落としてもいいぞ!』
「物騒なレースね。でもそれぐらい何でもありの方がやりやすいわね」
『その意気じゃ、しっかりトップを握れ! 後ろからの狙い撃ちを警戒しながらな』
「後ろから狙われるっていうのは、どうもやりづらいわね」
『だったら、トップから三番目あたりをつければええやろ。まずは現状維持や』
「了解」

 イクミのナビ通りに進んで、トップから三番目あたりにいるものと思いながら進む。



 レーススタートからしばらくして、凹凸が激しい地形のせいで他の機体が見えなくなってきた。

「これじゃ、今何位ぐらいかもわからないわね」
『最終的に一位になってればええんや。道順も間違えてへんし、ノープロブレムやで』
「だといいんだけど」

 エリスがそう答えると、機体を急停止させる。

『お、どうしたんや?』
「なんか、見られているような気がする」
『見られている? 誰かから狙われているのか?』
「そこまではわからない。ただなんとなくよ」
『エリスのこういうときのカンはよく当たるからな』
『レーダーに反応は無いみたいだが』

 ディスプレイに映るレーダーにマシンノイドの反応は出ていない。

「でも、なんとなくよ。レーダーに頼るよりも肌にまとわりつく感覚の方が確かよ」
『GFSで感覚が鋭敏になっているようだな。嬢ちゃんのそこんところは実戦派だな』
「――!」

 エリスははもう一度機体を走らせる。

『見つけたか!』

ズドン!

 聞き覚えのある発砲音が響く。
 エリスは手に備え付けられたガントレットでこれを受ける。
 爆煙が巻き上がり、それを突っ切った先に、――敵はいた。
 手持ち式カノン砲を持った機体・ゲヴァルツだ。飛び上がったバカを撃ち落としたのもきっとこいつだ。

「どけぇッ!」

 間合いを一気に詰める。この手のマシンノイドは中から遠距離戦を得意とし、反対に近距離が苦手というのがお約束だ。
 ふところにまで入り込めば、銃身の長いカノン砲は邪魔。一気に畳み掛けて潰す。
 エリスは朱色のレーザーブレード【ロートクリンゲ】を抜き、斬りかかる。

パァン!

「――!」

 ゲヴァルツは予想外の動きを見せる。
 飛び道具であるはずの手持ち式カノンで、ブレードを受け止めた。

「それ、剣じゃないでしょ!」

 エリスが言い放つと、ゲヴァルツはカノンを投げつけてくる。

ゴツン

 飛び道具を投げ道具にしてきた。
 ダメージこそ無かったが、その驚きで僅かばかり遅れを取った。――それでゲヴァルツは逃げられてしまった。

「な、なんなの、あいつ!?」
『武器を捨ててきたつくなんてな』
『逃げるために不意をつくには効果的だったな。一杯食わされた』
「でも、あいつそれで手ぶらになったわよ」
『あとで回収するつもりか、あるいは他に武器があるか』
『武器を捨てて身軽になったともとれでる』
「ああ、考えても仕方ないわ」

 ブレードを背中のパックにしまい、再び走り出す。



 ポールまでの道のりが半分に達しだした頃、遠くから爆音が鳴り出す。

「どこかで戦いが起きてるみたいね」
『さすがフェスト。妨害も競走のうちというやけやな』
「私もあっちに行きたいわね」

 それで思う存分、戦いたい。しかし、今はレースなのだと言い聞かせて、先を急ぐ。

『そろそろ、ポールが見えてくるはずだが』
「全然見えないわよ。見えるのは大きな山だけよ」

 エリスは丘の先にあるそびえ立つ山を見て言う。それが向かう先にあるのだが、ポールらしきものは見当たらない。

『ああ、その大きな山とやらがポールだ』

 ラウゼンはさらりと言う。

「はあッ!?」

 これにはエリスも驚く。

『言ってなかったか? エアーズポールは地球最大級の一枚岩と言われたエアーズロックをモデルにした石柱だと』
「石柱!? 冗談でしょ、石山よ、どうみたって!!」
『まあ、それだけでかかったってわけだ。地球のやつは』
「なんだってそんなものを作ろうとしたわけよ、金星人は」
『マイスター魂ってやつだろうな。ご先祖様のやったことだがな』
「じいさんのご先祖様がやったんならなんだか納得しちゃう」

 エリスは呆れながらポール……というより、そびえ立つ石山に近づく。
 センサーに機影が映る。どうやら、他の機体も同じように折り返し地点までやってきているようだ。
 爆音も同じようにだんだん大きくなっていく。

「向こうも簡単にトップを譲るつもりはないみたいね」
『出来る限り戦いは避けた方がええけどな。といっても無駄やろうけどな』
「ええ、避けても向こうからやってくるから!」

ドゴン!

 上の坂から機体が転がり落ちてくる。
 こいつには見覚えがある。確かスタートのときに隣に並んでいた白銀のマシンノイド・ブラシュオンといったか。

『ブラシュオン、ケオンのやつか!』
「どうだっていいわよ!」

 エリスは坂の上を見上げる。
 落ちてきたということは、落とした奴がいるということだからだ。
 そこに立っていたのは金色に輝くノイヘリヤ。ラウゼンのライバル・アライスタが作り、元聖騎士のラルリスが駆る。ようは敵だ。
『遅れずについてきたみたいだね!』
「ちょっとぬるくて退屈していたところよ!」
『だったら、ちょうどよかったわ』

 ラルリスが嬉々として言い放つ。
 機体は飛び上がり、得物はバスターアックス。まともに受けたら大抵のマシンノイドの装甲を打ち砕かれる。もちろん、ハイスアウゲンも。
 エリスは後方に飛んで、これをかわす。
 ラルリスはニヤリと笑った気がする。というか、エリスは笑っていた。
 何しろ、このハイスアウゲンの性能を存分に発揮して戦うべき相手が現れてくれたのだ。

「でりゃッ!」

 鉄拳を繰り出す。
 ノイヘリヤは盾でこれを受ける。

バシン!

 盾で受けたノイヘリヤが浮き上がる。衝撃を殺しきれずに飛んだということだ。

『チィ!』

 ノイヘリヤはブースターを更かして、姿勢を制御。反撃ざまに関節に内蔵されている機銃を撃ち込んでくる。

「あた!?」

 これを受けたエリスに豆鉄砲を頭に食らったかのような痛みが走る。
 しかし、ハイスアウゲンの装甲の前では所詮豆鉄砲。面を食らったのは一瞬。即座にブースターを噴出して、ノイヘリヤとの距離を詰める。
 するとノイヘリヤの手にあったバスターアックスが変形し、バスタードソードになる。

「なッ!?」

 エリスは咄嗟に朱色のレーザーブレード【ロートクリンゲ】を抜いて迎撃する。

「アックスがソードに変わった! なにそのおもしろウェポン!?」
『むむ、多変形機構型マルチウェポンか、小癪な!』
『アックスとソードの他に何があるんやろな? うちのみたところ、ランスとライフルあたりか』
「だったら、全部みせてもらいましょうか!」

 エリスは【ロートクリンゲ】で斬りかかる。すると、バスタードソードがビッグサイズへと変形する。

『大鎌!?』

 イクミとラウゼンが驚愕する。
 エリスはいちはやく反応し、ビッグサイズと打ち合う。

バシン! バシン! バシン!

 数合打ち合って「やりづらい」とエリスは実感した。
 ビッグサイズの曲線を描く斬撃は剣や斧の直線的な動きとはまた勝手が違っていた。
 たまらず距離をとる。

『それを待っていた!』

 ラルリスが言うと、ビッグサイズがブラスターキャノンへと変形する。

「おお、飛び道具!?」

バァン!!

 すんでのところで、ハイスアウゲンの姿勢を変えてビームの砲撃を回避する。

『こいつをかわすか!』

 ラルリスは間髪入れず、ブラスターキャノンからバスターアックスへと変形させ、追撃をかける。
 【ロートクリンゲ】でこれを受ける。

「器用ね!」
『そっちこそ! さっきまでの奴はアックス一つで楽勝だったが、あなたはそうもいかないみたいね!』
「もちろん! あんたのそれ、中々面白いじゃない!」
『嬢ちゃん、ブーストだ』

 ラウゼンが割り込んでくる。

「ブーストは……!」

 エリスはためらいつつ、【ロートクリンゲ】でバスタードソードで斬り合う。
 ブーストを使えばその大出力で勝てる。が一度だけ二百パーセント以上出したブーストを使った結果機体は爆散寸前で命拾いした。
 あんなもの使わないに越したことはない。というのがエリスの見解だ。
 それにまだブーストを使わなければ勝てない、と決まったわけじゃない。

「エクスブーメラン!」

 ハイスアウゲンのパックからブースターを噴出させるブーメランを放つ。
 ノイヘリヤはこれをバスタードソードではじく。

「スキあり!」

 【ロートクリンゲ】で一気に斬りかかる。

『くッ!』

 ノイヘリヤは受けた盾を捨てて、直撃を避ける。
 反撃ざまに、変形したバスターアックスにハイスアウゲンの横っ腹を叩きつけられる。

「のうわッ!?」
『直撃したんか!?』
『いや、わずかに軌道をそらしておる。それでも、右腹部の装甲板をもっていかれたか』
「まだよ! でいやぁぁぁぁッ!」

 エリスは怯まず、ハイスアウゲンを操作して、【ロートクリンゲ】をノイヘリヤの右腕に突き刺す。

『ふんッ!』

 右腕を失ったノイヘリヤはそれでも怯むこと無く、バスターアックスを左肩へと撃ち込んでくる。

ズゴン!

 まともにくらったハイスアウゲンは、大きく仰け反る。

「あぐうッ!?」
『エリス、四の五の言ってるヒマはないで! ブーストや!』
『アライスタごときに負けることだけは許さんからな!』
「うるさいわね、わかってるわよ!!」

 エリスは威勢よく応える。
 ブーストを発動させるために必要なのは、キーワードを発するだけですむ。
 状況は五分。いや、やや劣勢といってもいい。だけど、ここまできて負けるわけにはいかない。
 負ける。
 それは負けず嫌いのエリスにとって何よりも耐え難い屈辱だ。ましてや、優勝してやると啖呵を切った手間もある。

「ああ、やってやるわよ! ブーストオン!」

 キーワードを発する。
 すると、機体に内蔵された反応炉が出力を上げる。
 その際に出力を上げたことで機体全体が熱を帯びる。当然、コックピットも炎のように焼かれたかのように熱くなる。
 冷却機構を使えばそれを緩和することが出来るが、それだとブーストに使う出力分のエネルギーまで回してしまうため、限界いっぱいまで機体の性能を引き上げることが出来なくなる。
 これでブーストの出力制御に失敗したら、機体は爆散するのだからつくづく操縦者の安全が保証されていない、とんでもない機体に仕上がっている。
 しかし、エリスにとってこの熱さは逆に心地良かった。感覚としてヒートアップを使う時に近い。

「てぃやぁぁぁぁぁッ!!」

 エリスの掛け声とともにハイスアウゲンは飛び蹴りをぶちかます。
 ノイヘリヤは仰け反り、さらに間髪入れず掌底を叩き込む。

『格闘戦が本領か!』

 それを看破したノイヘリヤは距離をとる。
 しかし、オーバーブーストにより、向上した機体の速度は敵の離脱を許さないほどに速かった。
 拳により連打をノイヘリヤに叩き込む。

『こ、こいつ!』
「このまま一気に決めさせてもら……」

 エリスは声を途中で切る。
 背後から別の殺気を感じたからだ。

「――!」
『エリス、後方に新手や!』

 イクミの警告よりもいちはやくエリスは反応する。
 振り向きざまにエリスはビームの輝きを目にした。後ろから狙い撃たれたことを理解する。
 エリスはいいところに邪魔をされた、と舌打ちし、新手とノイヘリヤから距離を取る。

『邪魔者が!』

 ラルリスの吐き捨てるように言う。どうやら彼女の方も新手の襲撃を歓迎していないようだった。

『離脱しろだって……了解!』

 ノイヘリヤはすぐに背を向けて、ポールへと飛び立つ。

「逃げた!」
『アライスタの指示だな。これは競走だから戦いよりも出し抜くことの方が重要か!』
「だったら、今こいつを出し抜く指示をちょうだい!」

 エリスは文句を言いながら、新手の襲撃者ミッテルのビームライフルをかわす。
 近づこうとするとすぐビームを撃っては離脱する。そのせいで距離を常に一定に保っており、やりづらいことこの上ない。

『頑張れ』
「ちょっと投げやりすぎない!?」
『まあ、エリスが指示聞いて実行できるほど器用やないからな』
「それは、よくわかってることで!」

 エリスは文句言いながらもビームを交わす。

『あのライフル。改造されているな、バッテリーが拡張されていると見える』
「つまりどういうこと?」
『弾切れは望めない』
「ああ、それは厄介ね」

 エリスはパックからブーメランを引き抜く。

「エクスブーメラン!」

 ブースターを噴出し、目標まで飛んでいき、また手に戻ってくるマイスター手製のブーメランだ。
 ブーメランはミッテルの機影を捉え、追いかけていく。ミッテルはそれを食らうまいと後方へ飛ぶ。

「逃がすか!」

 先に投げたブーメランを追い抜く勢いで、飛び上がる。

『なに!?』

 ミッテルからの操縦者の声がスピーカーに響いた……わけではなかったが、きっとこう言ったはずだ。
 飛んでくるブーメラン、突撃してくるハイスアウゲン、どちらに対応すればいいのか、反応が遅れた。
 結果、ミッテルはブーメランと拳の両方を受けることになる。

ガシュ!

 ミッテルは吹き飛びそのまま崖へと真っ逆さまに落下していく。

「ざっとこんなものね」

 戻ってきたブーメランを掴んで、得意顔になる。

『のんびりしている場合か! アライスタに先を越されたぞ!』
「うるさいわね! わかってるわよ、さっさと追うっての!」

 ハイスアウゲンのブースターを噴かせて、目的地へと急ぐ。
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