まほカン

jukaito

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第128話 薫陶! 超える壁はあの日の最強の魔法少女! (Aパート)

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「かなみちゃん、ちょっといいかしら?」
「嫌です」
 オフィスにて、不意にあるみに問いかけられて、かなみは即座に拒否する。あと距離を取る。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない」
「嫌です。社長の『ちょっといいかしら?』は絶対にちょっとどころじゃないですから! 命に関わります!」
「そんなこと無いわよ。ほら、かなみちゃんだって生きてるじゃない」
「そういう問題じゃありません! 奇跡的ですから!」
「仕方ないわね。それじゃ、腕づくで話をきいてもらいましょうか」
「暴力反対!」
 かなみは断固拒否する。
「あ、あの、社長。かなみさんもあれほど拒否してるので……」
 翠華が進言する。
 かなみは、翠華さん頑張れ! と心の中でエールを送る。
「そう、仕方ないわね。それじゃ翠華さんに頼もうか」
「え?」
 翠華の顔が青ざめる。
 そして、かなみの方へトコトコと歩く。
「かなみさん、社長の発言は絶対よ」
「えぇ、翠華さん!? 裏切り者!?」
「ごめんなさい、かなみさん……会社の上下関係は絶対なのよ」
「それは。社会の奴隷です! 社会に自由を! 奴隷に解放を!」
「はいはい。借金の奴隷は静かにしてなさい」
 みあは気だるげに言う。
「みあちゃん! みあちゃんはどっちの味方!?」
「あたしは強い方の味方。つまり、あるみの方ね」
「権力主義者!」
「というわけで、孤立無援になったかなみちゃん、話を聞いてもらうわよ」
「……その前に、生命保険入っていいですか?」
 かなみは観念した。


単語ルビ
 そうして、かなみはあるみに連れ出されて、だだ広い草原にやってきた。
「本当にやるんですか?」
 かなみは、あるみに出来れば「ノー」と答えてくれますように、とわずかばかりの希望を込めて確認した。
「やるわ」
 希望は虚しく砕け散った。
 あるみが要求してきたのは、かなみとの一対一の魔法勝負。
 街中で戦ってしまうと、被害がとんでもないことになってしまうので、ただ広く、誰もいない草原にやってきたというわけだ。
 移動は、鯖戸運転によるワゴン車。
 そこにみあ、翠華、紫織、梢恵も乗り込んで、ついていった。
 着いた草原には、来葉くるは涼美すずみ千歳ちとせ煌黄こうこうも既に着いていて待っていた。
 なんというか、見世物ショーの様相を呈していた。
 かなみにとっては、逃げ場がなくなって追い詰められているような気がしてきた。
「やるって、本当に、本当に、ですか?」
 それでも、しつこく食い下がる。
「本当に本当よ」
 それでも、あるみは引き下がらない。
「あんまりしつこいとボーナスの件、無しにするわよ。――もっとも、私に勝てたらの話だけど」
 あるみのその警告に、かなみは身震いする。
「って、どうせ勝てないだから、どっちにしろ無しってことじゃないですか!」
「諦めるのはよくないわよ。簡単に勝たせるつもりはないけど」
「社長が諦めさせてくるんじゃないですか!?」
「そうそう、その勢いをぶつけてきなさい」
 あるみは楽しそうに言う。
「しかし、お主ら、また戦うのはいいが程々にするんじゃぞ」
 煌黄が忠告する。
「前もあるみと涼美の戦いで後処理が大変じゃったんじゃぞ……」
 ブツブツ言い始めた。
「あのときはぁ、ありがとうねぇ、コウちゃん」
 涼美はお礼を言う。
「それで~また今度もぉお願いねぇ」
「まあ、かなみと涼美の頼みであれば聞いてやらんこともないがの」
「あの仙人、あの母娘に甘くない?」
 涼美と煌黄のやり取りを見て、みあが指摘する。
「胃袋掴まれてるようなものだからね」
 来葉が言う。
「あの娘、かなみちゃんも気に入ってるみたいだしね」
「気に入ってる……」
 翠華はその一言に引っかかりを覚える。
「それでどっちが勝つと思う?」
 千歳が問う。
 これは、みんな口を揃えて「あるみ」と答える。
「かなみぃ、可哀想ぉ」
「かなみさんも強くなってると思いますけど」
 翠華は苦笑する。
「相手が悪すぎるわよ」
 みあがもっともなことを言う。
「そ、そんなに凄いの、あの社長?」
 この中で唯一あるみの魔法少女の戦いぶりを知らない梢恵が訊く。
「社長は……格が違いすぎますよ」
 紫織が言う。
「ホホホ、それは見てみればすぐにわかるぞ」
「かなみちゃん、頑張って」
 煌黄は笑い、来葉は祈るように、二人を見守る。
「あの、来葉さん? 未来はどう視えました?」
 翠華が来葉に問う。
「こういうことの未来は視ないことにしてるの」
「どうしてですか?」
「視る必要がないからよ」
 笑顔で答える来葉に、翠華はその意味がわからず疑問符を浮かべる。
「それはどういうことですか?」
「見ていればわかるわ」
 そう言われて、翠華は二人を見守る。
「「マジカルワーク」」
 かなみとあるみは同時に変身する。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
白銀しろがねの女神、魔法少女アルミ降臨!」
 黄色と銀色の魔法少女が草原に降り立つ。
「………………」
 かなみはステッキを構える。
 しかし、攻撃を仕掛けられない。
 迂闊に仕掛けても返り討ちにあいそうで、怖くて仕掛けられない。
 以前、アルミと戦ったときは、スイカとミアと一緒だった。それでも勝てる気が全くしなかった。にも関わらず、今回は一人きりでこの最強の魔法少女と戦わなければならない。
 逃げてもいいのだったら、全力で逃げたい。
 以前に比べて、自分も強くなっている。
 しかし、それで、アルミとの強さの差が埋まっているとは到底思えない。むしろ、差は広がっているのではないか、とさえ思えてならない。
 そのくらいまで、高くそびえたつ山のような存在だった。
「いつまでもこうしていても仕方ないわ。どーんと大胆にかかってきなさい」
「そう言われても……」
 カナミは自分から仕掛けることに躊躇ってしまう。
「それじゃ、私の方から仕掛けられる」
「ひ!?」
 アルミの一言に、カナミは身構える。
「それ」
 軽く放った一言から、ドライバーを一振りし、風が巻き上がる。
(あれをまともに、くらったら……!?)
 アルミのマジカルドライバーによって、怪人がバラバラにされたイメージがカナミの脳裏に浮かぶ。
「次はこれ!」
 アルミはマジカルドライバーをもう一振りすると、衝撃波が発生し、カナミへ襲いかかる。
「ムチャクチャです!?」
「まだ序の口よ」
「どの口が言ってるんですか!?」
「この口よ、それ!」
 間髪入れずに二撃目が襲いかかってくる。
「く!」
 カナミはこの衝撃波をステッキで受け止める。
「わわッ!?」
 しかし、殺しきれず、後ろに倒れ込む。
「それじゃ、次はこれね!」
 アルミはマジカルドライバーを空に向かって掲げる。するとマジカルドライバーの穂先を中心につむじ風が発生する。
「イージーツイスター」
 つむじ風はアルミの手元から離れて、カナミへと襲いかかる。
「ですから、ムチャクチャですって!! ああ、もう!!」
 カナミはやけくそになって、つむじ風へ向かって魔法弾を撃つ。

バァァァァァァン!!

 魔法弾とつむじ風が衝突し、爆発を起こして、ともに消える。
「よし!」
 カナミは、アルミの攻撃を防いだという事実に、なんとかなるかもしれないと、とにかく魔法弾を撃ってみる。

バァン! バァン! バァン! バァン!

「調子出てきたじゃない。そうでないとね!」
 アルミは魔法弾を避けたり、ドライバーで弾いたりして、やり過ごす。
「それじゃ、今度は強めで!」
 アルミは強めのつむじ風を巻き起こして、カナミへ向かわせる。
 カナミは魔法弾で反撃する。
 しかし、今度は強めだったために、魔法弾は相殺できずに弾かれてしまう。
「それだったら、プラマイゼロ・イレイザー!」
 その魔法の名前を唱えて発射した魔法弾がつむじ風と衝突する。
 つむじ風が綺麗さっぱり消滅する。
「それを私にぶつけてみたら勝てるかもね」
 そう言いながら、アルミは突進してくる。
「やってみます! プラマイゼロ・イレイザー!」
 カナミはすかさず魔法弾を放つ。
「それ!」
 アルミはドライバーを盾代わりにして、魔法弾を受ける。
 ドライバーは消滅することなく、無傷で形を保っている。
「あ、あれ?」
 カナミはドライバーが分解されるか、アルミに何らかのダメージを与えることくらいできると期待してた。
 それが外れてあっけにとられてしまう。
「呆けてないで、次善策を考えなさいな!」
 アルミは再度突進してくる。
 かなみがあっけにとられている内に、距離を詰められる。
「む、ムチャクチャですよ!?」
「無茶でもやりなさい! 怪人は待っちゃくれないんだから!」
「怪人は待ってくれます! 社長に比べたら!」
「私だってこれでも待ってあげてる方なんだよ! 一秒くらい」
みじかッ!? せめて十秒くらい待ってください!!」
 カナミは、繰り出されたドライバーをステッキで受ける。

カキン!

 甲高い金属音が鳴り響く。
(――あ、これ本気ね!?)
 受け止めたカナミは直感する。
 この突きは、アルミにとっては全然本気ではないものの、本気で倒すために繰り出されたものだということ。
 それも、アルミは二回、三回と突き続ける。
 カナミはそれを必死にステッキで合わせて受ける。
 一撃でもまともに受けたらまずい。
「どうしたの? 防戦一方じゃない?」
「防戦にもなりますってば!」
「そう、それじゃ!」
 アルミは一歩退いて、ドライバーを一振りする。

ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!

 ドライバーの一振りによって生じた突風がカナミを吹っ飛ばす。
「キャッ!?」
 カナミは草原を転がっていく。

バァン!

 しかし、カナミは転がりながらも、反撃に魔法弾を撃つ。
「やるじゃないの」
 アルミはそれを即座に素手で弾き飛ばす。
「準備運動はできてきたみたいだし、そろそろ本気出していこうかしら」
「できればずっと準備運動で終わってくれればよかったんですけど」
「何言ってるの、さあ本気を出しなさい! 私を倒すつもりで!」
「それでは、神殺砲!!」
 カナミはステッキを砲身へ変化させる。
「ボーナスキャノン!!」
 そして、砲弾をアルミへ撃ち放つ。
「前はこれに手を焼かされたのよね。今度はそれどころじゃすみそうにない威力だけど!」
 アルミはマジカルドライバーを砲弾へ向けて突き出す。

バァァァァァァン!!

 砲弾とマジカルドライバーが衝突する。
「まあ、こんなものね」
 アルミは爆風に髪をなびかせて、涼しい顔をして言ってのける。
「こんなもの、ね……」
 簡単に防がれるとは思っていたけど、いざ本当に簡単に防がれるところを目の当たりにすると、手詰まりに陥りそうだった。
「これだけじゃないでしょ、カナミちゃんの魔法」
「これだけじゃないですけど、社長に通じる魔法となると……ええい、こうなったら、ジャンバリックファミリア!!」
 カナミは、やぶれかぶれになって、鈴を飛ばす。
「今度は数で攻めてきたわけね」

バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!

 鈴がアルミの周囲を取り囲み、全方位から放たれる魔法弾が雨あられのように降り注ぐ。
「これは避けきれないわね」
 それでも、アルミはマントを振るって、魔法弾はマントに当たるやいなや、弾き飛ばされていく。
「そんなのありッ!?」
 カナミは抗議したくなる気持ちを一言に抑えて、次の一手を撃つ。
「ボーナスキャノン!!」
 砲弾を撃ち放つ。

バァァァァァァン!!

 砲弾がアルミへ直撃する。
「まあ、ちょっとは工夫してるみたいね」
 爆煙の中からアルミが姿を現す。
 マントが焦げついているものの、ダメージを受けている様子は無い。
「ちょっと、って、精一杯のつもりなんですけどね」
 カナミはステッキを構える。
 何かしらの決定打を与えないと、アルミは止まらない。
「全力でやるしかないわ!」
 カナミは魔力の充填を始める。
 しかし、全力で撃つためには、時間がかかる。
「その思い切りの良さはいいけど、それじゃスキだらけになるわよ!」
 アルミが突撃してくる。
「それ!」
 カナミは鈴へ念じて魔法弾をアルミへと飛ばす。
「鈴の操作と魔力充填を同時にやるのは中々ね。スクワットしながらダンベルカールするくらい」
「社長はプラス腹筋とかできそうですよね」
「あとおしゃべり」
 アルミは余裕綽々で鈴をさばきながら、カナミの話に応じる。

バァン! バァン! バァン! バァン!

 それと同時に、鈴から放たれる魔法弾を弾き飛ばしていく。
 アルミの実力なら鈴の魔法弾をものともせずに一気に間合いを詰めて、神殺砲の充填を阻止することができるはずなのにそれをしない。
(社長は待っててくれてる!)
 カナミは直感で察する。
 それだったら、全力で遠慮なく撃つだけだとカナミは
「ボーナスキャノン・アディション!!!」
 全力の砲弾を撃ち放つ。
「これはさすがにやばいわね!」
 アルミはマジカルドライバーを構える。
「ディストーションドライバー!」
 そして、砲弾へと突き刺す勢いで突く。

ギュォォォォォォォン!!

 砲弾はマジカルドライバーによって発生する空間の歪みによって、バラバラに分解されていく。
 一秒もしないうちに、莫大な魔力による奔流のような砲弾は跡形もなく消滅していた。
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