まほカン

jukaito

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第129話 近隣! 少女と灯台下暗しの精霊は一期一会! (Dパート)

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 ツカアカツは投げつけられたヨーヨーに対して、棒立ちのままだった。

ガシィ!!

 ヨーヨーがツカアカツの腹に当たる。
 それと同時に腹にあった口がヨーヨーへ噛みつく。

バリバリバリバリバリ! ゴクン!!

 そして、ヨーヨーを噛み砕いて、飲み込んでしまう。
「あたしのヨーヨー!」
 ミアはその光景に嫌悪を抱いて、動揺した。
(あたしのヨーヨー、食べた!? 攻撃したはずなのに!? 食べ物じゃないのに! 硬いのに噛んだ! 飲み込んだ!? 恵寿おじいちゃんもあれで食べるつもり!? たしかにあの口だったらバリバリいけるものね!? だったら、それをさせないためにどうしたらいいか!! ヨーヨーで攻撃しても食べられるんだったら、普通に攻撃しても食べられる! 食べられない攻撃を!!)
 ミアはヨーヨーに再生成して、ツカアカツへ投げ込む。
「バーニング・ウォーク」
 ヨーヨーが床を走らせると、ヨーヨーは燃え盛り、敵目掛けて飛び込んでいく。

ガシィ!

 燃えるヨーヨーがツカアカツに命中すると同時に、腕にある口の歯に掴まれた。
「あちー! あちー!」
 頭の口から声がする。どうやら、身体中に口はあれど喋るのは頭の口だけのようだ。

バリバリバリバリバリ!!

 そして、燃えるヨーヨーは噛み砕かれて飲み込んでしまう。
「アツアツで焼き焦げちまうところだったぜ!」
「まったく、気持ち悪いわね! あたしのヨーヨーは食べ物じゃないわよ!」
「確かに食えたもんじゃねえな!」
「だったら、食うな!!」
「だが、主菜メインディッシュの前の前菜オードブルとしては上出来だ」
「そんなこと言われても嬉しくないわよ!」
 ミアは反論して、右手に五本のヨーヨー、左手に五本のヨーヨーを生成して、一斉に投げ込む。
 合計十本のヨーヨーがツカアカツの頭、首、両手足、胸、腹、背中、お尻、と全身に投げつける。
「おお!? 十個も食えるのか!?」
 ツカアカツは嬉々として十個のヨーヨーを受け止める。いや、食らいつく。

バリバリバリバリバリ! バリバリバリバリバリ! バリバリバリバリバリ!!

 ツカアカツは全身の口で十個のヨーヨーへ食いついて、噛み砕いていく。
「気分悪いけど、想定内!」
 ミアはそう言って、天井に垂れ下がった巨大ヨーヨーをツカアカツへと落下させる。
「Gヨーヨー!!」
 渾身の一撃だった。
 この巨大ヨーヨーなら、ツカアカツの口では噛むことはできても、食べることまではできないはず。そう、ミアは考えていた。

ドスン!!

 Gヨーヨーはツカアカツへと落下し、その勢いのままに床へと落下させて陥没させる。はずだった。
「カカカカカ、こいつは食いでがあるぜ!!」
 ツカアカツは哄笑し、両腕と肩でそのGヨーヨーの重量を受け止めた。
 そして、その腕の口からヨーヨーにかぶりつく。

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!

 Gヨーヨーをその口で噛み砕いていき、ヨーヨーに亀裂が走る。
「なんて、化け物!」
 ミアはGヨーヨーの糸をきって、ツカアカツから距離を取る。

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!

 そこからツカアカツはものすごい勢いでGヨーヨーを噛み砕いていき、飲み込んでいく。
 自分の身体よりも大きいGヨーヨーを十秒とかからず、食べきってしまった。
「食いでがあってよかったぜ! もう一つくれ!!」
「どうして、あんたの要求を飲まなくちゃならないのよ!?」
 ミアは激昂し、魔力を高める。
「じゃあ、いいわ!」
 ツカアカツはニヤリと笑って、ミアへと突進する。
「はやッ!?」
 その思いも寄らない速度に、ツカアカツの間合いへの接近を許してしまう。
「こんにゃろ!」
 ミアはヨーヨーのワイヤーを使って飛び上がってかわす。

カチン!

 ツカアカツのかみつきをかわす。
 しかし、スカートのフリルを噛みちぎってしまう。
「ああ! なんてことを!?」

ムシャムシャ

 飛び降りて床に着地したときに、ミアが目にした光景は自分のスカートのフリルを草の葉のように咥えて、咀嚼し飲み込むものだった。
「うまかった!」
 ご満悦のツカアカツであった。
「絶対に許さない!!」
 ミアは怒る。
「ミアちゃん! 私も戦う!!」
 かなみはコインを取り出して構える。
「いい! こいつはあたしが倒す!!」
 ミアはそう返すと、かなみはコインを引っ込める。
「これは……ミアちゃんの戦い!」
 かなみはそう言って、加勢したい気持ちを抑える。
「あたしのヨーヨーは基本通じない! こうなったらやるしかないわね!!」
 ミアは両手にヨーヨーを構える。
 そうして魔力を高める。
「ほほう!」
 煌黄はその魔力に興味を示す。
「荒々しく力強い。そうか大怪獣の魔力か」
 かつて無人島の大自然に現れた大怪獣。その大怪獣の力を取り込んだミアはその力を引き出すことができる。
「でいや!!」
 ミアの裂帛を上げ、ヨーヨーをツカアカツへ投げ込む。
 ツカアカツはこれを右手の口で食べようと、差し出す。

バシュン!!

 投げ込まれたヨーヨーをツカアカツが食べた、と思った瞬間、ヨーヨーはツカアカツの腕を貫いた。貫かれた腕は肩から先が砕かれて、宙を舞う。
「ぐう!!」
 ツカアカツは苦悶の声を上げる。
「やった!」
 かなみは歓声を上げる。
「大怪獣の力、使いこなしてきおったな」
「おお……!」
 煌黄は感心し、恵寿は感嘆を漏らす。
「じゃが、あれだけの力。ヒトの身体には身に余る」
 煌黄は一転して険しい目つきで、ミアを見守る。
「もう一発!」
 ミアはヨーヨーを投げ込む。
 ツカアカツは、そのヨーヨーをかわす。
(あたしの攻撃をはじめてかわした! 怪獣の力を込めたヨーヨーがやばいってわかったのね! それにこの力、長く続かないからかわされると厄介ね!)
 ミアは自分の身体が重くなるのを感じる。
 力が続かなくなったときが食べられる時。
 その時が来る前に、ツカアカツを倒さなくてはならない。
「スチール・スピナー!」
 ヨーヨーは銀色の光を纏い、これまでとは比べ物にならないスピードとパワーで放たれる。
「うお、こりゃやばい!?」
 ツカアカツは飛び上がって、避けようとする。
「逃がすかぁぁぁッ!!」
 ミアは気合とともに、ヨーヨーを曲げて、ツカアカツを追撃する。

バシュン!!

 銀色に光るヨーヨーがツカアカツの左足を捉えて打ち砕く。
「いてええええええッ!?」
 ツカアカツは悲鳴を上げる。
「よし、足をとった! 片足ならもう避けられない!!」
「いてえええ! 右手がやられた! 左足もやられた!! だが、こんくらいじゃ俺は負けねえ!!」
「そう、こんくらいじゃ諦めないってわけね! 根比べね!」
 ミアはヨーヨーを構える。
「俺は精霊を食うために今日までやってきた! そうして五十年だ!」
「とにかくしつこいってことね! っていうか、しつこいってレベルじゃない!!」
 ミアは振りかぶって、ヨーヨーは投げ込む。
 狙いは残る左足。そこさえ砕いてしまえばもう立って歩くことができなくなる。
 ヨーヨーはツカアカツの左足目掛けて、一直線に向かう。
(――捉えた!)
 ヨーヨーの速度、ツカアカツとの距離と動きからもう避けようがない。ミアはそう確信した。

ガブリ!

 その次の瞬間、ヨーヨーがそれて床をバウンドして転がっていく。
「いた!? な、なに!?」
 突然、右足に痛みが走って、それでヨーヨーがそれてしまった。
 何かに噛まれた圧迫感だった。その何かというのを足元に視線を移して確認する。
「足!? 足が足に噛みついた!?」
 それは、ツカアカツの左足だった。
 砕いたはずの左足の口が、ミアの右足に噛みついていた。
「こいつ、足だけになっても動くの!?」
「手も同じようにな!!」
 ツカアカツがそう言うと、床に転がった右手が動き出す。
「ミアちゃん、手がおばけみたいに這いずり回って動いてるよ!!」
 かなみが大声を発する。
「うるさい、みりゃわかるわ!」
 ミアは右手も噛みつかせまいと動く。
 しかし、右足に噛みついた左足がしつこく食い下がるせいで、痛みで動きが鈍る。

ガブリ!

 すぐに右手に追いつかれて、ミアの左肩を噛みつかれる。
「こいつぅぅッ!!」
 ミアは歯を食いしばって耐える。
「スチール・スピナー!」
 耐えた上で、ミアはヨーヨーを投げつける。

バスン!

 ツカアカツの頭にヨーヨーをぶつけることに成功する。

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!

 しかし、ツカアカツはそのヨーヨーを噛み砕いて飲み込んでしまう。
「く……! 集中が乱れて、スピードも威力も落ちた……! あたたたたッ!?」
 ミアはさらに噛みつかれて、痛みで膝をつく。
「カカカカカ!! 手こずったが、これでようやく食えるぞ!!」
 ツカアカツは片足立ちして、迫ってくる。
「ミアちゃんは食べてもおいしくないわよ!!」
 かなみが叫ぶ。
「な!? それどういう意味よ!?」
 ミアは思わず立ち上がって反論する。
「自慢じゃないけど、あなたよりもいいもの食べてるんだからまずいわけないでしょ」
「本当に、自慢じゃない……」
 かなみは苦笑する。
「でも、そのおかげで痛みは忘れたみたいね」
 あるみは感心する。
「えい、それでもあんたに食べられるかってのよ!! スチール・スピナー!!」
 ミアは反論した勢いのままに、ヨーヨーを投げつける。
「また食ってやるぜ! こんなもん!!」
 ツカアカツは大口を開けてヨーヨーへ食いつく体勢に入る。

バァン!!

 ツカアカツの頭が粉々に砕け散る。
「やった……頭さえ倒せば、なんとかなったのね……」
 ミアに噛みついていたツカアカツの左足と右手が力をなくして、床を転がっていく。
 勝利を確信して、ミアは膝をつく。
「みあちゃん、大丈夫?」
 かなみは駆け寄って声を掛ける。
「えぇ、大したことなかったわよ……」
 膝をついた同時に変身が解けたみあは強がりで応える。
「もう魔力がほとんど残っておらんのにな。今の一撃を外したらアウトじゃった、ギリギリじゃったぞ」
 煌黄が言う。
「ハハハ、いやはや見事なものだったぞ」
 恵寿は笑って称賛する。
「おかげで心残り無く、この世界を発つことができる。礼を言おう」
「別に礼を言われるほどのことじゃないわよ。ただちょっと疲れたわ……」
「ふむ、それなら良い夢を見せよう」
 恵寿をそう言って微笑むと、コインのような形をした光をみあへ渡す。
 みあはそれを手に取ると、光は霧散する。
「何かわからないけど、受け取っておくわ」
「はーい、引っ越しソバが出来たわよ」
 みあがツカアカツと戦っているうちに、あるみは切った麺をカセットコンロで熱した鍋で茹でていた。
「あたしが戦ってる間に何やってたのよ……」
「まあまあせっかく社長が作ってくれたんだから食べようよ!」
 かなみに言われるまま、みあは温かいソバを受け取る。

スースースースースー

 一同がソバをすする音が寺内に響き渡る。
 本当に美味しいものを食べると言葉が出なくなる。誰が言ったか、そんな格言があった気がする。
 ひとしきり食べ終え、器を床に置く。
「美味であった」
 恵寿は称賛する。
 はっきりと口にしたわけではなく、なんとなく雰囲気でもう間もなくこの世界を発つであろうことが察せられた。
「ソバ食べたんだから長生きしなさいよ」
 みあは送別の言葉を送る。
「細く長く生きるというのは年越しソバの方じゃが……まあ良いじゃろ。もう千年くらい生きて神のくらいにつこうか」
「それは千年あっても、ちと足りんのではないか」
 煌黄がツッコミを入れる。
「それもそうじゃのう、ハハハ。それでは、一万年後にまた会おう」
 恵寿はスッと消える。
 その消え方は、以前見た幽霊が成仏をするかのように静かで自然なものだった。
「そんなに長生きできないわよ」
 みあはぼやく。



 その夜、みあは夢を見た。
 髪が長く温かな笑みを浮かべた女性に抱かれていた。
 懐かしくて、温かくて、この抱かれていたかった。
 もっと顔を見たい。顔を見させてほしい。
 みあがそう願うと、女性の顔が見える。
「ああ……」
 その顔に、みあは納得する。
 その次の瞬間には、みあは一歩退いた位置にいて、映像を視るように、場面が切り替わっていた。
 見せられている場面は、さきほどの女性と見慣れた男性が、会話しているところだった。
 会話の内容はよく聞き取れない。だけど、とても仲良く会話しているように見える。
 ただ恋人同士というにはまだ距離を感じられる。
「一つ、聞いていいかな?」
 急に声が聞こえてきた。何を言っているのか聞き取れる。
 男性がはにかんだ様子で、話を持ちかけた。
「君の、その……名前を、教えて欲しい……」
 そう言われて、女性はキョトンとする。
 そして、しばらくして笑い出す。
 男性は罰の悪い顔をして、問いかけたことを後悔しているようだった。
「いや、僕も今更だって、思うんだけど……」
「だって、こうしているのって、どのくらい経つの? 二ヶ月くらい? ずっと名前知らないまましてたの? あ、そういえば名前呼ばれたこと一度も無かったわ、ハハハ」
 女性は大いに笑う。
「そ、そんなに笑うことないじゃないか……」
「アハハハ、そうね」
 女性はようやく笑いを止めると、咳を一つしてから答える。
「私の名前はね、」



 その次の晩、みあの父・彼方は珍しくみあが起きている時間に帰ってきた。
 帰ってきてもみあは彼方と顔を合わせないようにした。一緒に顔を合わせて食事なんてもってのほかだった。
「どういう風の吹き回しかな?」
 彼方の声は弾んでいた。
「別に……」
 みあはそっぽ向く。
 今夜は二人で夕食の食卓を囲っている。
 あの精霊のせいで、妙な夢を見せられた。
 それにしても、父親が早い時間に帰ってこなければ一緒に食事くらいしてもいいか、なんて気まぐれたりなんてしなかった。なんて、後悔をしはじめてきた。
「あんたの顔が、ツマミになるかもって思って……」
「みあちゃん、私の顔はスルメじゃないよ」
「……スルメ、たしかに噛めば噛めば味が消えるっていうか……三日みれば飽きる顔っていうか……」
「あはははは、それだけイケメンってことかな」
「はあ?」
 そんな意味で言ったわけじゃないんだけど、の相槌だった。
「ほら、イケメンは三日みれば飽きるってよく言うでしょ」
「……言わないわよ」
「ははははははは」
「それに三日みて飽きるのは美人じゃないの。美人っていうと……」
「どうしたの?」
 みあの脳裏に昨日の夢に出てきた女性の顔が浮かぶ。
「お母さん……キレイな人だったのね」
「あぁ……」
 みあから思いもよらない人物を出されて、彼方は戸惑う。
「うん、キレイな人だった」
「どうやって口説いたの?」
 彼方はガクッと椅子から転げ落ちそうになった。
「く、口説いた?」
「美人があんたを相手にするなんてよっぽどうまく口説いたんでしょ?」
「あ、あのね……私だってそれなりなんだけどね……それに、どっちか、っていうと……そうだな、口説いてきたのは、彼女の方だった、かな」
 彼方は困りながら、思い出すように言う。
「……はあ?」
「いや、そんなに、信じられないって顔しなくても……」
「信じられない」
「口にしないで……傷つくから……」
「でも、向こうから口説いてきたってことは……」
 みあは何やら思案する。彼方はこの後、何を言われるかドギマギする。
「まさか、財産目当て?」
「みあちゃん、私そこまで魅力ない男かな??」
 彼方は苦笑する。
 夕食が終わってから、まさか父親とこんな風に談笑することがあるなんて、と、みあはどこか他人事のように思い返した。



 それから、数日経った。
 学校の休み時間に、みあは机で一人ボーと過ごしていた。
「ねえねえ、阿方さん?」
 グループの女子が声をかけてきた。
「ん?」
「この前、行った寺ね」
「寺?」
「壊されたんだって。お母さんにきいた」
「あぁ……」
 精霊がこの世界から旅立ってから、寺は数日経たないうちに取り壊された。
 みあはそのことについて知っていた。目と鼻の先の近所だったので、寺が取り壊されているのはすぐわかったから。
「阿方さん、知ってたの?」
「う、うん、まあ……」
「もしかして、近所に住んでる、とか?」
「うん、まあ……」
 女子の表情が明るくなる。
 推測が的中した時の得意顔だ。
「やっぱり! なんとなくそんな気がしてたの! それで、取り壊されてどうなったの?」
「さあ……」
 壊されたあとまでは確認していなかった。
 精霊はいなくなって、寺は取り壊されて、この話は終わりだと思っていたから。
「うーん、気になる……ねぇ、一緒に見に行かない?」
「えぇ!?」
 みあは女子の提案にのけぞるほど驚く。
「なんで、そんなもの、見に行かないといけないのよ?」
「え? 阿方さん、気にならないの?」
「気にならないし……どうせ何もないし……」
「何もない? 本当に?」
 女子は意外に好奇心旺盛だった。
「本当に、って言われてもわからないし……」
「だったら、見に行こう! 学校終わったら、見に行こう!」
「ん……」
 だんだん押しが強くなってみあは断れなくなった。
「はあ~」
 諦めのため息をつく。
「しょうがないわね。見るだけよ」
「やったー」
「はあ~」
 またため息をつく。
 かなみが押しを強い時に相手をしているような疲労感。どうして、学校でこんなものを味わなければならないのか。
(グループ学習が終われば、また一人になれると思ってたけど……)
 なんとなく、この分だとそうはならない気がする。
 ふと、夢に見た光景を思い出す。
『君の、その……名前を、教えて欲しい……』
 そういえば、まだ女子の名前がわかっていない。
(あいつ、ずっと名前が知らないまま付き合ってたのか……)
 そう思うと苛立ちを募る。
 父と同じようなマネはできない。
「あんた、名前は?」
「名前?」
 女子はキョトンとする。
「あ、え、あぁ……名前? 名前って、私の名前?」
 そのリアクションが、夢の中で見た女性と似ていないようでどこか似ていた。
「あ~、私の名前って、ずっと知らなかったの!?」
「え、えぇ……」
 みあはバツの悪い顔をする。
「アハ、アハハハハハハ!!」
 女子は笑い出す。
「そんなにおかしい?」
「ハハハハハハ、だ、だって、一度も名前呼んでもらってなくて、嫌われてるんかなって思ってたら、知らなかったなんて!! アハハハハハハ、おかしい!!」
「……そうね、おかしいわね」
 みあはふてくされる。
「アハハハ……ごめん、ごめん……」
 女子の名前はひとしきり笑った後、一呼吸置いてから名乗る。
佐藤さとうあかね
 それをきいたみあはこう答えた。
「フツー」
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