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第35話 開戦! めぐりめく少女と怪人の円舞曲(Cパート)
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「なーんで、私が子守をしなくちゃならないのよ」
「こ、子守……」
萌実のぼやきに紫織は恐縮する。
「私からしてみればどっちも子供なんだけどね」
そんな二人を引き連れて、あるみはぼやく。
「なんだかあるみさんがお母さんみたいですね」
「……何気に辛辣なことを言うわね、紫織」
萌実は呆れた。
「お母さん……お母さん、か……」
あるみは感慨深そうに呟く。
「うそ? まさかショック受けてるわけ?」
「ああ、そういうわけじゃなくて、ちょっと思うところがあってね」
「思うところ……ああ、かなみのことね」
「かなみさんのこと?」
「察しがいいわね、萌実」
「ちょっと過保護なんじゃないの。あいつなんか谷底に落としてもケロッと帰ってきそうなものなのに」
「あなたなんだかんだ言ってかなみちゃんのこと、評価してるのね」
「別に……この私と引き分けたんだから、それぐらいの実力があって当然でしょ」
「そういうことにしておくわ」
「その澄ました顔が気に入らないわね、ここで裏切ったら冷や汗の一つでもかいてくれるかしら?」
「萌実、言ってて気がつかない? あなたはネガサイドの人間であって、私達の味方ではなかったはず。私達を裏切るという言葉は適切じゃないわよ」
「それは言葉の綾よ」
「それはどうだか……」
「――!」
萌実は銃をあるみの頭に向ける。
「あるみさんッ!?」
しかし、臆する紫織に対してあるみは顔色一つ変えず落ち着き払っていた。
「いつまでそうやって、澄まし顔でいられるのかしら?」
「そうね、少なくともあなたの前ではいかなることがあってもこの顔が崩れることはない」
「これでも、そんなことが言える?」
萌実は銃の撃鉄を起こす。
撃てるならいつでも撃ってあげる、そういった姿勢だ。
そして、いくらあるみでも至近距離で魔法の銃弾を受ければただではすまない。
「言ったでしょ。いかなることがあっても、この顔が崩れることはないって」
それでもあるみは笑みを絶やさない。
「だったら、崩してみせるわその顔!」
「やめてください!」
紫織が止めに入る。
「こんなところで味方同士で争って何になるんですか!? そういうの私、見たくありません!」
「あ~紫織……?」
必死に止める紫織に対して萌実は冷ややかな態度であった。
「私は別にあんた達の味方ってわけじゃないのよ」
「でも、私は大切な存在だと思ってるわ」
「たい、せつ……?」
紫織は首を傾げる。
「あ~そうどうとでも取れる発言はやめてもらえる?」
「色々考えて欲しいからよ」
そう言ってあるみは首都高を眺める。
ここは来葉の未来視によって敵の襲撃されるであろう四つのポイントのうちの一つであった。
「そういう言い方は好きじゃないわね。はっきり言ったらどうなの?私があんたの友達から生み出されたって」
「生み出された……?」
紫織はまた首をかしげる。
「百地芽一ももちめい」
その名前を出すとあるみは萌実の肩に手をかける。
「それ以上は話さないで」
その凄味のある一言を、萌実はフンと鼻で笑う。
「崩れたわね、結構簡単に」
「く……!」
「な~にが、いかなることがあっても、よ。見掛け倒しが」
「…………………」
萌実はせせら笑う。それに対してあるみは沈黙する。
「萌実さん、やめてください」
「紫織、あなたには関係ないでしょ」
「そ、それは……」
「まあ、私も喋りすぎちゃったって思うけどね。これ以上、あの化け物を挑発して痛い目をみたくないし」
「あるみさんが化け物ですか……?」
「あんたはそう思ったこと無いの?」
「………………」
そう問いかけられて紫織は思い返してみる。
みあはあるみに向かって「化け物」だって何度も言っているのを聞いたし、かなみや翠華でさえ一度や二度くらいは口にしたことがあったと思う。
紫織からしてみれば尊敬する先輩の魔法少女がこぞって畏怖する存在。当然、紫織もそうである。
だけど、ただ強くて怖いだけの「化け物」だということも知っている。
「あるみさんは尊敬する魔法少女です」
「ふうん、慕ってるってことなのね。私は怖いだけなのに」
「怖い……萌実さんがですか?」
紫織はとてもそうは思えないと言いたかった。
横暴で好き放題振る舞っていて、怖いもの知らずに見える萌実の口から怖いなんて。
「あんた、何気に酷いこと言うわね」
「え、あ、そ、そうですか?」
「自覚がないんだったら、そのままでいいわよ。その方が面白いし」
「面白い、何がですか?」
「あんたが無自覚に人を傷つけるところを見るのが」
「そ、そんな……私は……」
「そこまでよ、萌実。あなたが自覚して紫織ちゃんを傷つけるのはね」
あるみが釘を刺す。
「すっかり保護者づらね、もとの澄まし顔に戻ってるし」
「さあね……ただ、今度あの娘の名前を出した時には覚悟しなさいよ」
そのドスの利いた一言に萌実の身体がわずかに震えるのを紫織は確かに見た。
「そんな風に脅しても無駄よ」
「無駄かどうかはあなたが一番よく知っているはずだからなにも言わないわ」
萌実は歯噛みする。
一体この二人の間に何があったのか。
――百地芽一
それは誰なのだろうか、気にならずにはいられない紫織であった。
「そろそろ敵が出るわね」
敵がやってくるのをあるみは肌で感じた。その言葉のせいで紫織にも緊張が走る。
「マッハモーター!!」
四輪を唸らせて、他に拘束を走っている車をなぎ倒していく。
「とんでもない狼藉者ね」
その光景を見てあるみは変身する。
「白銀しろがねの女神、魔法少女アルミ降臨!」
アルミは即座にドライバーの回転させて倒された車を治していく。
「やっぱり化け物ね、あれだけの攻撃を被害ゼロにしちゃうんだから」
萌実は感心する。
「さ、私達も変身よ」
「は、はい……!」
萌実と紫織も変身する。
「平和と癒しの使者、魔法少女シオリ登場!」
「暴虐と命運の銃士、魔法少女モモミ降誕!」
紫と桃の魔法少女が姿を現し、車をなぎ倒した怪人の前に立つ。
「速い!?」
「捉えられません!」
怪人は目にも留まらぬ速さで駆け抜けていく。
「コークスクリュードライバー!」
そこへ飛び上がったアルミがドライバーの回転から発せられる竜巻を怪人に向かって放つ。
「ぐええええッ!!?」
怪人は竜巻に飲み込まれて跡形もなく消え去る。
「いっちょあがりね」
「だから、あんたは化け物だって言ってるのよ」
モモミはアルミに向かって銃を向ける。
それは、変身前にあったやり取り。そのとき、結局モモミは引き金を引くことができなかった。
今度も同じように銃を突きつけはするものの、モモミは撃てない。
そうなるはずだという安心感がシオリのどこかにあった。
バァン!!
しかし、それはあっさりと砕かれる。
「――!」
アルミは面食らったが、銃弾は額をかすめた。
「紙一重でかわしたのね。大げさによけるまでもないってことかしら?」
「見極めるためよ。あなたが私に向かって銃弾を撃つような馬鹿をする娘じゃないってことをね」
「残念ながら……
――そういう馬鹿なのよね、私は!」
モモミは銃弾は次々と放つ。
しかし、そのことごとくがアルミに当たること無くすり抜けていく。
「やっぱり当たらないわね」
「何十、何百、何千撃っても無駄よ」
「それはどうかしらッ!?」
モモミが吠えると同時に銃弾がアルミの額に命中する。
「アルミさんッ!?」
しかし、アルミは一歩退いただけで、額には傷一つついていなかった。
「言ったでしょ。無駄だって」
しかし、アルミは殺意に満ちた睨みをモモミに向ける。
「でも、こんな無駄なことをする馬鹿だとは思わなかったわ」
「だったら、殺す? 私も?」
「殺さないわ、誰も!」
アルミは強く言い放つ。
ここまで気持ちがこもったアルミの発言を聞くのをシオリは初めてであった。
「――!」
それに対して、モモミは気圧された。
「だ、だったら、あんたが殺されなさいよ!」
モモミは吠えて発砲する。
しかし、銃弾はことごとくアルミの身体をすり抜けていく。
「チィ!」
「何度でも言うわ。何十、何百、何千撃っても無駄よ」
アルミはそう言っても、モモミは撃つことを止めない。
「やめてください、モモミさん!」
シオリが止めに入ろうとする。
「シオリ! 死にたくなかったらどきなさい!」
「死にたくないです! でも、どきません!」
「じゃあ、死になさい!」
バァン!
その銃弾はシオリの足元に落ちた。
「――な!」
これにはモモミも驚いた。
「ああ、なるほどね」
それを見てアルミは納得する。
「あなたは私以外を攻撃するようには出来てないってことね」
「そ、そんな馬鹿なッ!」
「おそらく、私を殺せっていう命令しか受けていないのね。だから、シオリちゃんは攻撃できなかった」
「チィ」
モモミは舌打ちする。
「――見破られたか」
そして、モモミの口からモモミでない声が発せられる。
「あなたがモモミの身体を操って、私を攻撃しているのだけど無駄だったわね。それなら最初から私を操れば決着はついてたものを」
「それは不可能であったことを知っていてのことか。お前を操れるのなら最初からそうしている。
だが、無理だった。お前のあまりにも強靭な精神力は俺の洗脳魔法をものともしなかった」
モモミは、いや正確にはモモミを操っている主は、悔しさをにじませた声を上げる。
「そうね、仮にシオリちゃんを操ったとしても私を倒せるとは思えなかったしね。モモミなら突然裏切って私を殺そうとしてもおかしくなかった。そういった意味じゃ無難な人選ね」
「だが、その目論見も貴様が相手では何の意味も成さなかったか」
「そうね。ちゃんと見極めることが出来たらね」
「この娘がお前に向かって銃弾を撃つような馬鹿な真似をしないか、か……残念ながらこいつはそんな真似はできない臆病者だよ」
「臆病者、結構じゃない。長生きするわよ」
「それは俺に対する皮肉か?」
「ええ」
アルミはモモミの胸元にドライバーを突きつける。
「この娘を殺すつもりか?」
「あなたを倒すつもりよ」
「この娘を攻撃したところで、私にはダメージ一つないんだが……それに気づかぬわけでもあるまい?」
「当然知ってるわよ。ただ、あなたとモモミの繋がりははっきりと見えるわ。洗脳を施したことで出来てしまった確かな繋がりが」
「な、何、どういうことだ?」
「その繋がりがあれば断ち切ることができるということよ!」
アルミはドライバーを突き出す。
そのままだと、モモミの胸を貫くはずだった。しかし、そうはならなかった。
ドライバーはモモミの胸を突き刺し、即座に引き抜く。しかし、モモミには刺された跡も出血もなく、そのまま気を失って倒れ込む。
ブシュッ!!
高速を行き交う車の中の一台がクラッシュした。その窓ガラスの内側が真っ赤に染まっていた。
「あれがその怪人の末路ね」
「え、えぇっと、その……何が起きたんですか……?」
シオリはそのめまぐるしい状況の変化についていけず、アルミに訊いた。
「そうね。モモミちゃんは操られていたってことよ」
「そんな、いつの間に……」
「おそらく、ここに来たときからでしょうね。敵は離れた相手を自由に操る洗脳魔法の使い手だったみたい」
「それで、モモミさんは操られていたんですか。とても、そうは見えませんでしたが」
「それだけ普段から問題のある娘だったものね。私もはじめのうちは気づかなかったし」
「でも、どうして操られていたってわかったんですか?」
「うーん、なんとなくね」
そのあっさりとした返答にシオリは唖然とした。
「なんとなく、なんですか……」
「最初、銃を突きつけた時に明確な殺意を感じなかったし、撃たれた時もそうだった。なのに引き金を引くことに躊躇いは無かった。
おそらく、モモミが私に始末されても構わないと思っていたのでしょうね」
「そんな! モモミさんを捨て駒みたいに扱うなんて!」
「捨て駒なんでしょうね。ネガサイドの人材の扱い方なんてそんなものよ」
「酷いです……」
「そうね、酷いわね。だからこそ潰したいのだけれど」
アルミはそこまで言って笑う。自分の不甲斐なさに呆れるかのように。
「中々上手くいかないものなのよ」
「こ、子守……」
萌実のぼやきに紫織は恐縮する。
「私からしてみればどっちも子供なんだけどね」
そんな二人を引き連れて、あるみはぼやく。
「なんだかあるみさんがお母さんみたいですね」
「……何気に辛辣なことを言うわね、紫織」
萌実は呆れた。
「お母さん……お母さん、か……」
あるみは感慨深そうに呟く。
「うそ? まさかショック受けてるわけ?」
「ああ、そういうわけじゃなくて、ちょっと思うところがあってね」
「思うところ……ああ、かなみのことね」
「かなみさんのこと?」
「察しがいいわね、萌実」
「ちょっと過保護なんじゃないの。あいつなんか谷底に落としてもケロッと帰ってきそうなものなのに」
「あなたなんだかんだ言ってかなみちゃんのこと、評価してるのね」
「別に……この私と引き分けたんだから、それぐらいの実力があって当然でしょ」
「そういうことにしておくわ」
「その澄ました顔が気に入らないわね、ここで裏切ったら冷や汗の一つでもかいてくれるかしら?」
「萌実、言ってて気がつかない? あなたはネガサイドの人間であって、私達の味方ではなかったはず。私達を裏切るという言葉は適切じゃないわよ」
「それは言葉の綾よ」
「それはどうだか……」
「――!」
萌実は銃をあるみの頭に向ける。
「あるみさんッ!?」
しかし、臆する紫織に対してあるみは顔色一つ変えず落ち着き払っていた。
「いつまでそうやって、澄まし顔でいられるのかしら?」
「そうね、少なくともあなたの前ではいかなることがあってもこの顔が崩れることはない」
「これでも、そんなことが言える?」
萌実は銃の撃鉄を起こす。
撃てるならいつでも撃ってあげる、そういった姿勢だ。
そして、いくらあるみでも至近距離で魔法の銃弾を受ければただではすまない。
「言ったでしょ。いかなることがあっても、この顔が崩れることはないって」
それでもあるみは笑みを絶やさない。
「だったら、崩してみせるわその顔!」
「やめてください!」
紫織が止めに入る。
「こんなところで味方同士で争って何になるんですか!? そういうの私、見たくありません!」
「あ~紫織……?」
必死に止める紫織に対して萌実は冷ややかな態度であった。
「私は別にあんた達の味方ってわけじゃないのよ」
「でも、私は大切な存在だと思ってるわ」
「たい、せつ……?」
紫織は首を傾げる。
「あ~そうどうとでも取れる発言はやめてもらえる?」
「色々考えて欲しいからよ」
そう言ってあるみは首都高を眺める。
ここは来葉の未来視によって敵の襲撃されるであろう四つのポイントのうちの一つであった。
「そういう言い方は好きじゃないわね。はっきり言ったらどうなの?私があんたの友達から生み出されたって」
「生み出された……?」
紫織はまた首をかしげる。
「百地芽一ももちめい」
その名前を出すとあるみは萌実の肩に手をかける。
「それ以上は話さないで」
その凄味のある一言を、萌実はフンと鼻で笑う。
「崩れたわね、結構簡単に」
「く……!」
「な~にが、いかなることがあっても、よ。見掛け倒しが」
「…………………」
萌実はせせら笑う。それに対してあるみは沈黙する。
「萌実さん、やめてください」
「紫織、あなたには関係ないでしょ」
「そ、それは……」
「まあ、私も喋りすぎちゃったって思うけどね。これ以上、あの化け物を挑発して痛い目をみたくないし」
「あるみさんが化け物ですか……?」
「あんたはそう思ったこと無いの?」
「………………」
そう問いかけられて紫織は思い返してみる。
みあはあるみに向かって「化け物」だって何度も言っているのを聞いたし、かなみや翠華でさえ一度や二度くらいは口にしたことがあったと思う。
紫織からしてみれば尊敬する先輩の魔法少女がこぞって畏怖する存在。当然、紫織もそうである。
だけど、ただ強くて怖いだけの「化け物」だということも知っている。
「あるみさんは尊敬する魔法少女です」
「ふうん、慕ってるってことなのね。私は怖いだけなのに」
「怖い……萌実さんがですか?」
紫織はとてもそうは思えないと言いたかった。
横暴で好き放題振る舞っていて、怖いもの知らずに見える萌実の口から怖いなんて。
「あんた、何気に酷いこと言うわね」
「え、あ、そ、そうですか?」
「自覚がないんだったら、そのままでいいわよ。その方が面白いし」
「面白い、何がですか?」
「あんたが無自覚に人を傷つけるところを見るのが」
「そ、そんな……私は……」
「そこまでよ、萌実。あなたが自覚して紫織ちゃんを傷つけるのはね」
あるみが釘を刺す。
「すっかり保護者づらね、もとの澄まし顔に戻ってるし」
「さあね……ただ、今度あの娘の名前を出した時には覚悟しなさいよ」
そのドスの利いた一言に萌実の身体がわずかに震えるのを紫織は確かに見た。
「そんな風に脅しても無駄よ」
「無駄かどうかはあなたが一番よく知っているはずだからなにも言わないわ」
萌実は歯噛みする。
一体この二人の間に何があったのか。
――百地芽一
それは誰なのだろうか、気にならずにはいられない紫織であった。
「そろそろ敵が出るわね」
敵がやってくるのをあるみは肌で感じた。その言葉のせいで紫織にも緊張が走る。
「マッハモーター!!」
四輪を唸らせて、他に拘束を走っている車をなぎ倒していく。
「とんでもない狼藉者ね」
その光景を見てあるみは変身する。
「白銀しろがねの女神、魔法少女アルミ降臨!」
アルミは即座にドライバーの回転させて倒された車を治していく。
「やっぱり化け物ね、あれだけの攻撃を被害ゼロにしちゃうんだから」
萌実は感心する。
「さ、私達も変身よ」
「は、はい……!」
萌実と紫織も変身する。
「平和と癒しの使者、魔法少女シオリ登場!」
「暴虐と命運の銃士、魔法少女モモミ降誕!」
紫と桃の魔法少女が姿を現し、車をなぎ倒した怪人の前に立つ。
「速い!?」
「捉えられません!」
怪人は目にも留まらぬ速さで駆け抜けていく。
「コークスクリュードライバー!」
そこへ飛び上がったアルミがドライバーの回転から発せられる竜巻を怪人に向かって放つ。
「ぐええええッ!!?」
怪人は竜巻に飲み込まれて跡形もなく消え去る。
「いっちょあがりね」
「だから、あんたは化け物だって言ってるのよ」
モモミはアルミに向かって銃を向ける。
それは、変身前にあったやり取り。そのとき、結局モモミは引き金を引くことができなかった。
今度も同じように銃を突きつけはするものの、モモミは撃てない。
そうなるはずだという安心感がシオリのどこかにあった。
バァン!!
しかし、それはあっさりと砕かれる。
「――!」
アルミは面食らったが、銃弾は額をかすめた。
「紙一重でかわしたのね。大げさによけるまでもないってことかしら?」
「見極めるためよ。あなたが私に向かって銃弾を撃つような馬鹿をする娘じゃないってことをね」
「残念ながら……
――そういう馬鹿なのよね、私は!」
モモミは銃弾は次々と放つ。
しかし、そのことごとくがアルミに当たること無くすり抜けていく。
「やっぱり当たらないわね」
「何十、何百、何千撃っても無駄よ」
「それはどうかしらッ!?」
モモミが吠えると同時に銃弾がアルミの額に命中する。
「アルミさんッ!?」
しかし、アルミは一歩退いただけで、額には傷一つついていなかった。
「言ったでしょ。無駄だって」
しかし、アルミは殺意に満ちた睨みをモモミに向ける。
「でも、こんな無駄なことをする馬鹿だとは思わなかったわ」
「だったら、殺す? 私も?」
「殺さないわ、誰も!」
アルミは強く言い放つ。
ここまで気持ちがこもったアルミの発言を聞くのをシオリは初めてであった。
「――!」
それに対して、モモミは気圧された。
「だ、だったら、あんたが殺されなさいよ!」
モモミは吠えて発砲する。
しかし、銃弾はことごとくアルミの身体をすり抜けていく。
「チィ!」
「何度でも言うわ。何十、何百、何千撃っても無駄よ」
アルミはそう言っても、モモミは撃つことを止めない。
「やめてください、モモミさん!」
シオリが止めに入ろうとする。
「シオリ! 死にたくなかったらどきなさい!」
「死にたくないです! でも、どきません!」
「じゃあ、死になさい!」
バァン!
その銃弾はシオリの足元に落ちた。
「――な!」
これにはモモミも驚いた。
「ああ、なるほどね」
それを見てアルミは納得する。
「あなたは私以外を攻撃するようには出来てないってことね」
「そ、そんな馬鹿なッ!」
「おそらく、私を殺せっていう命令しか受けていないのね。だから、シオリちゃんは攻撃できなかった」
「チィ」
モモミは舌打ちする。
「――見破られたか」
そして、モモミの口からモモミでない声が発せられる。
「あなたがモモミの身体を操って、私を攻撃しているのだけど無駄だったわね。それなら最初から私を操れば決着はついてたものを」
「それは不可能であったことを知っていてのことか。お前を操れるのなら最初からそうしている。
だが、無理だった。お前のあまりにも強靭な精神力は俺の洗脳魔法をものともしなかった」
モモミは、いや正確にはモモミを操っている主は、悔しさをにじませた声を上げる。
「そうね、仮にシオリちゃんを操ったとしても私を倒せるとは思えなかったしね。モモミなら突然裏切って私を殺そうとしてもおかしくなかった。そういった意味じゃ無難な人選ね」
「だが、その目論見も貴様が相手では何の意味も成さなかったか」
「そうね。ちゃんと見極めることが出来たらね」
「この娘がお前に向かって銃弾を撃つような馬鹿な真似をしないか、か……残念ながらこいつはそんな真似はできない臆病者だよ」
「臆病者、結構じゃない。長生きするわよ」
「それは俺に対する皮肉か?」
「ええ」
アルミはモモミの胸元にドライバーを突きつける。
「この娘を殺すつもりか?」
「あなたを倒すつもりよ」
「この娘を攻撃したところで、私にはダメージ一つないんだが……それに気づかぬわけでもあるまい?」
「当然知ってるわよ。ただ、あなたとモモミの繋がりははっきりと見えるわ。洗脳を施したことで出来てしまった確かな繋がりが」
「な、何、どういうことだ?」
「その繋がりがあれば断ち切ることができるということよ!」
アルミはドライバーを突き出す。
そのままだと、モモミの胸を貫くはずだった。しかし、そうはならなかった。
ドライバーはモモミの胸を突き刺し、即座に引き抜く。しかし、モモミには刺された跡も出血もなく、そのまま気を失って倒れ込む。
ブシュッ!!
高速を行き交う車の中の一台がクラッシュした。その窓ガラスの内側が真っ赤に染まっていた。
「あれがその怪人の末路ね」
「え、えぇっと、その……何が起きたんですか……?」
シオリはそのめまぐるしい状況の変化についていけず、アルミに訊いた。
「そうね。モモミちゃんは操られていたってことよ」
「そんな、いつの間に……」
「おそらく、ここに来たときからでしょうね。敵は離れた相手を自由に操る洗脳魔法の使い手だったみたい」
「それで、モモミさんは操られていたんですか。とても、そうは見えませんでしたが」
「それだけ普段から問題のある娘だったものね。私もはじめのうちは気づかなかったし」
「でも、どうして操られていたってわかったんですか?」
「うーん、なんとなくね」
そのあっさりとした返答にシオリは唖然とした。
「なんとなく、なんですか……」
「最初、銃を突きつけた時に明確な殺意を感じなかったし、撃たれた時もそうだった。なのに引き金を引くことに躊躇いは無かった。
おそらく、モモミが私に始末されても構わないと思っていたのでしょうね」
「そんな! モモミさんを捨て駒みたいに扱うなんて!」
「捨て駒なんでしょうね。ネガサイドの人材の扱い方なんてそんなものよ」
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