まほカン

jukaito

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第130話 部活! 鈴の報せがつなぐ少女の絆 (Bパート)

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 そうして、応接室に案内された。
 かなみが入ってすぐ後に、ヨロズとテンホーがやってくる。
「久しぶりね」
 テンホーは友好的に手を振る。
「最近会わなかった?」
「さてね」
「かなみは会うたびに、一年くらい成長している気がする」
 ヨロズは言う。
「え、成長? 背とか伸びてる?」
 かなみは頭に手を当てて確認する。
「いや、あなた会った時から一センチも変わってないわよ」
「え……」
 テンホーの指摘に、かなみはショックを受ける。
「なるほど会うたびに大きくなっているように見えたのは錯覚か」
 ヨロズは一人で勝手に納得する。
「ヨロズ、いい加減なこと言わないで!」
「フフフ」
 テンホーは愉快そうに笑う。
「笑わないで! っていうか、あんたどういう教育してんのよ!?」
「うちは放任主義よ。自由にやってれば育つわよ」
「うーん、結城家うちもそんな感じだったわ」
 変なところで共感してしまった。
 ヨロズってもしかして同じように育てられた同類なんじゃないかって、少しだけ思った。
「それで、音速ジェンナについて聞きたいのよね」
「教えてくれるの?」
「知ってる情報だけね。彼女が今どこにいるのかは私達もわからない」
「わからない……」
 テンホーが嘘をついているように感じなかった。
「ヨロズ、あんたもわからないの? 関東支部長のあんたでも?」
「音速ジェンナは最高役員十二席。俺よりも立場が上で、独自の権限をもって動いている」
「独自の権限……それで母さんをさらったの?」
「それはわからない。権限といっても彼らは自由に動いている。カリウスの話では、招集をかけても半分も集まらないらしい」
「自由すぎるわね」
「彼らの行動を把握している存在がいるとしたら、それは十二席を束ねる席長の判真ばんしんか、さらに上の日本局長にほんきょくちょう六天王りくてんおうだろうな」
「じゃあ、その判真や六天王はどこにいるの?」
「それは十二席よりも機密情報だ」
「大体、その二人から音速ジェンナ様の居場所を聞き出すことなんて出来るのかしら?」
「あ……」
 かなみは、浅はかな勢いまかせで発言していたことに気づく。
「それじゃ、私はどうやって母さんの居場所を……」
 困り果ててしまう。
 ネガサイド関東支部。ここが危険でありながらももっとも手がかりが得られる可能性が高い場所だった。だから、かなみも危険を覚悟してやってきた。それがまったくの空振りとなると、どうしたらいいのか。

ピピピピピ

 ここで携帯電話が鳴り出す。
 相手は誰かわかっているので、すぐに出た。
「社長!? 母さん、見つかりました!?」
『そう簡単に見つからないわよ。私もひとまずネガサイドの拠点一つ潰しても何も情報を得られなかったわ』
「それを私に言わないでください。今支部にいるんですから」
 敵の拠点の真っ只中で敵の拠点を潰したなんて連絡がきたら、その場で取り囲まれて袋叩きにあいかねない。
「そうか……」
 電話から漏れた声をヨロズはちゃんと聞き取った。
 猛禽類の聴力をもって生まれたヨロズの前で会話したことは、失敗だったと、かなみは思った。
「ヨロズ、あんたこれを聞いてどうするの?」
 基地を潰されて、仇を取るなんていい出したら、この場で戦いになってしまう。そうなってしまうのは避けたい。
 ヨロズとテンホー、揃って戦うのは身が持たないから避けたい。
「俺はどうもしない。ただ音速ジェンナには興味がある」
「それは……十二席になりたいからって意味?」
「そこまでは考えていない。ただ強い存在だから、戦ってみたい、と思っている」
「ああ、あんたはそういうやつよね」
「俺もかなみについていく」
「ついていく?」
 急にそんなことを言われて、かなみはキョトンとする。
「なんでそうなるのよ?」
「かなみについていけば音速ジェンナに会える」
「会える? 私、居場所がわからないし、手がかりもないのよ」
「だが、お前なら会える。と、俺は確信している」
「何なのよ、その確信……」
 でも、なんだかヨロズの発言に元気づけられた気がした。根拠はないものの、本当に会えるような気さえした。
『それじゃ、次行ってもらう場所はマニィに送っておくわね』
「社長……社長は心配じゃないんですか?」
 かなみは不安げに問いかける。
『心配よ、だからこそこうして探してるんじゃない』
 あるみの頼りになる返答で、かなみは元気を貰える。
『それに、涼美が簡単に負けるとは思えないのよね。敵が十二席であっても』
「というと?」
『戦いになれば私達が気づくくらいの魔力を発散するわね。それができないってことは、どこかに監禁されているか、とにかく無事なはずってことよ』
「無事……」
 あるみの考えを聞いて、かなみはいくらか安心した。
「でも、まだ安心はできないんですよ」
『ええ、できれば戦いになる前に見つけたいわ。また何かわかったら連絡するわね』
 そう言って、あるみは電話を切った。
「それじゃ、マニィ。案内して」
「それはいいけど」
 かなみはマニィの視線の先を追った。
 テンホーがいる。
「タダで帰してくれるかな?」
 ヨロズはついていくといったのだけど、テンホーもヨロズも本当なら母をさらった音速ジェンナと同じ敵対関係にある怪人。そして、ここはその怪人の本拠地で、怪人の巣窟。簡単に帰らせてもらえるかどうかわからない危険な場所だった。
 かなみは忘れかけていたその事実を思い出して、臨戦態勢に入る。
「もちろん、タダで帰すわけにはいかないわね」
 テンホーはニヤリと笑う。
 かなみはこれを宣戦布告と受け取り、コインを取り出す。
「――はい」
「え?」
 テンホーから小包を渡される。
「何これ?」
「手土産よ。手ぶらで帰すわけにはいかないからね」
「手土産? 手ぶら?」
 かなみは理解が追いつかない。
 しかし、悪の秘密結社ネガサイドから渡される手土産といえば、
「もしかして、爆弾?」
「羊羹(ようかん)よ」
「毒入り?」
「栗入りよ」
「どこの悪の秘密結社が栗入り羊羹を手土産に渡してくれるっていうのよ!?」
「ここよ」
「………………」
 かなみは頭を抱える。
「マニィ?」
 かなみは手包みを受け取って、マニィに呼びかける。
 貰えるものはきっちり貰う。それが、かなみの信条だ。
 それはともかく毒が入っていないか、は警戒してマニィに毒見させる。マニィは人間が食べる物でも食べられるし、毒が入っているかもわかる。それにマスコットなので、毒が入っていても浄化できる身体として作られている。というわけで、かなみや涼美の作る料理の毒見役もとい味見役になってもらったりしている。
 かなみはテンホーに敵意が無いことがわかり、すぐに応接室を出ていこうとする。
「また来てね」
 テンホーは友好的に手を振って見送る。
 一体、彼らは何を考えているのやら……。
 ヨロズはごく当然のように、かなみについてきて一緒のエレベーターに乗り合わせる。
 本気でついてくるつもりのようだ。
 目的は、もう応接室で話している。
 音速ジェンナに会ってみたい。かなみについていけば音速ジェンナに会える。
 なんとも単純な行動理由だった。
 こっちは、音速ジェンナを見つけ出したらどうしたらいいのかわからない。
 攫われた母親を助け出そうにも、そんなことができるか。母親なら一人でもなんとかできるかもしれない。
 でも、何か動かずにはいられない、何か出来ることがないか、とこうして動いている。
 何か出来ること、そんなことがわからないまま、心配と不安に駆られている。
(母さん……)
 下へ降りるエレベーターの重苦しい雰囲気の中、心まで重苦しくなってくる。
 かなみは攫われた母親に想いを馳せる。
 どうか、無事でいてくれてほしい。



「ふうあぁぁ~~~~」
 それは、天使のラッパのように大浴場に響き渡った。
 涼美は湯船に浸かって、思いっきり身体を伸ばす。
 表沙汰にできないおシゴトのせいで、凝り固まった身体がほぐれていく。
「お湯加減はいかがかしら?」
 音速ジェンナがやってくる。
 一糸まとわぬ姿で。
 大浴場は涼美と音速ジェンナの二人だけの貸し切り状態だった。
「さいこうねぇ。一時間くらいぃ入ってぇいたいかしらねぇ」
「そう言ってもう一時間も入ってるじゃないの」
「いつもはぁ二時間くらいぃ入ってるのよぉ」
「そうなの。長風呂が強い身体づくりの秘訣か」
「それほどでもぉ」
「それでは、私も」
 音速ジェンナは足から浴槽につかって、全身を湯船に浸からせる。
「いわゆるぅ、裸の付き合い、ってやつねぇ」
「うむ、悪くない」
 音速ジェンナはしたり顔でそう言った。
「こうして、貴様の身体をじっくり見るのも楽しい」
「いやあぁ、あんまりみないでぇ」
 涼美はわざとらしく胸を腕で覆い隠す。
「ここでは、他に見るものがない」
「湯けむりがぁ、あるものねぇ」
「それに私は貴様の身体に釘付けだ」
「愛の告白かしらねぇ」
「それで間違いない」
 音速ジェンナは、堂々と言ってのける。
(さて、どうしたものかしらね)
 涼美の張り付いた完璧な笑顔の裏で、思考を張り巡らす。
 この状況をどうやって切り抜けるか。
 音速ジェンナは自分に釘付けになっていて、抜け出す隙がまったくない。
 あれは昨日の昼下がりのことだった。
 朝食で、かなみと一悶着あったことを、あるみに相談して(呆れられて)の帰りだった。
 夕食の準備をしようかと考えて、お金が無いことを思い出して、何かいい金策が無いものかと思案していると、音速ジェンナと遭遇した。
 それは何気なく街を歩いていて、知り合いに出くわしたくらいの軽い雰囲気のまま、彼女と目が合った。
――これは、逃げられないわね。
 涼美は直感した。
 音速ジェンナは「運命を感じた」といい、涼美は「場所をぉ変えましょうかぁ」と提案した。
 涼美としては、街中で十二席と戦ったら、途方もない被害が出そうだったから変えたのだけど、音速ジェンナは別の意味で捉えたようだった。
 そこで、音速ジェンナは自分の根城に招待すると言い出した。
「それだったらぁ、かなみにぃ、伝えないとぉ」
 断れないと悟った涼美は、せめてかなみやあるみに連絡だけでも、と手を打とうとした。
「それなら部下が手配している」
 音速ジェンナはそれを読んだのか先手を打たれた。
 どんな手配をしたのか、知る由もないのだけど。
「もし、かなみに危害を加えたらどうなるかわかってるでしょうね?」
 涼美は射抜くような鋭い視線と氷のような冷たさを感じる低い声で言う。
 並の人間だったらこれだけで卒倒するであろう凄みだった。
 音速ジェンナはこれを受けて悦に浸る。
「案ずるな。私の目的はあくまで貴様だけだ。貴様の娘に興味はないことはないが、貴様さえ来ればいい」
「わかったわぁ」
 涼美はにこやかに答える。
「邪魔の入らない場所で心ゆくまで戦おう」
「心ゆくまでぇ? そのためにはねぇ、体調をぉ整えるぅ必要があるわねぇ」
「体調を整える? 貴様、ベストコンディションではないのか?」
「そうねぇ。昨日の夜から何も食べてないわねぇ、お腹がぁ空いて~、フラフラするわぁ。それに、身体のガチガチでねぇ、温泉にでもぉ入って~リフレッシュしたいわぁ」
「なるほど理解した」
 音速ジェンナはそう言うと、涼美は自分の話に乗ってくれるかと思った。
「というわけで~、戦いは後日ぅということで~」
「私の屋敷に招待しよう」
「屋敷ぃ? 招待ぃ?」
 ネガサイドの怪人からはとても思えない提案だった。
 そうして、音速ジェンナの屋敷に案内された。
 その屋敷は、かなみや涼美が住んでいるアパートより大きく、外装は綺羅びやかで内装もそれと同じくらいの輝きを放つものだった。
 その大浴場に案内されて、涼美はじっくり温泉が入った湯船に浸かっていた。
 もちろん、警戒は怠っていない。
 いつ音速ジェンナが仕掛けても迎撃できる心の準備はしていたものの、その気配がまったくない。
 涼美は宣言した通り、二時間たっぷり湯に浸かって出る。
 その間、音速ジェンナは一度もここを抜け出せる隙を見せなかった。
 それでも、湯船に浸かった身体は適度にほぐれて、疲労が取れていた。
「食事を用意した」
 ドレスに着替えた音速ジェンナが食堂へ案内された。
 そこに用意されていたのは、フランス料理のフルコースだった。
「美味しいわねぇ。これはあなたがぁ?」
「シェフを呼び寄せた。入浴中に作らせた。今はもう帰っている」
 ちなみに配膳は黒子の怪人にやらせていた。
「とてもぉ、おいしいわねぇ」
 涼美は素直な感想を漏らした。
「気に入ってもらえたのなら用意した甲斐がある」
「でもぉ、なんでわざわざぁ、こんなことをぉ?」
「それは、貴様と万全の状態で戦いたいからだ」
 音速ジェンナは獲物を見る女豹のごとき視線を涼美へ送る。
「熱烈ねえ……期待にぃ答えられるかぁどうかぁわからないわよぉ」
「その時はその時だ。私をガッカリさせたなら、その罪は重い」
「ご期待にぃ添えられるようにぃ善処はするわぁ」
「うむ、期待している。決闘は正午でいいだろうか。それまでに睡眠をしっかりとって、体調を整えるといい」
「これはこれはぁどうもぉ、ご丁寧にぃ」
 涼美は笑顔で返す。
 しかし、頭の中では冷静にこの状況を打開する手段を模索していた。
 本格的に決闘したら、間違いなく負けるのは涼美。
 それだけ、最高役員十二席の一人・音速ジェンナとの戦力差は決定的にある。
(できれば、あるみちゃんに助けを呼びたいところなんだけど)
 この屋敷の中では携帯電話は外部に繋がらないようになっている。特殊な電波が妨害しているようだ。
 外に連絡できないとなると、あるみがここまで駆けつけてくれることを期待するしかない。
(こうして時間を稼いでいれば、いずれ来てくれるわ)
 そう信じるしかなかった。
 問題はいつになるか。
 朝までに来てくれるといいな。
 そう期待して、涼美は用意された寝室のベッドで寝ることにした。
 睡眠時間は約八時間。
 そして覚醒して二時間で頭は冴えて、体調はベストコンディションで迎えられる。
「せめて~、悪あがきできるくらいにはねぇ」



「音速ジェンナ? 知らねえな」
 廃屋の入口に座り込んでいたボロ布を纏った怪人がぶっきらぼうに答える。
「最高役員十二席の一人よ? 知らないわけ無いんじゃないの?」
「おいおい、最高役員十二席っていうのは、俺達下っ端にとっちゃ、雲の上どころか成層圏突き抜けた天上の星だぜ。あんた空に輝いている星がどこにあるかわかるか? ってきいてるようなもんだぞ」
 かなみはそっとヨロズを尻目に見る。
 最高役員十二席が「天上の星」なら、関東支部長は何と評されるのか。またその距離感はどのくらいのものなのか。
 聞いてみたい気持ちはあるものの、そもそも目の前の怪人は隣にいる関東支部長の存在に気づいているのか。
「その言葉、信じられるの?」
 しかし、今はにもかくにも、音速のジェンナの、ひいては母の居場所を知ることが先決だった。
「そりゃ、俺達は悪の怪人だ。信じられねえのは無理もねえが、こんなところに乗り込んでくるようなお嬢ちゃん相手に嘘を付く度胸はねえよ。――黙って帰すつもりもねえけどな」
「は?」
 かなみはそう言われて気がつく。
 周囲の物陰からこちらを睨む目があることに。
 そして、察する。
 それらの目は、この怪人の一声があれば襲いかかってくるであることを。
「あ、あの、私、い、急いでいるので、戦ってる場合じゃないんです。この、黙って帰してもらえませんか?」
「そいつは聞けねえ相談だな。ノコノコやってきた人間をノコノコ帰すようなマネをしたら、ネガサイドの名折れだぜ!」
 怪人は威勢よく言う。
「そ、そこをなんとか……ヨロズ、あんたからもなんとか言ってよ!」
「どうして俺が?」
「あんた、関東支部長でしょ。ここの怪人はみんなあんたの部下になるんでしょ?」
「そうか。そういうことになるのか」
 ヨロズは納得する。
(これで本当に関東支部長なのかしら?)
 何よりも本人にその自覚が無いように見える。
「何をごちゃごちゃ言ってるんだ?」
 怪人が訝しむと、ヨロズが一歩前に出る。
「お嬢ちゃんがやるっていうのか?」
「やるつもりはない。俺は関東支部長だ」
「な、何……? お嬢ちゃんが関東支部長だと?」
 怪人が一瞬固まる。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
 そして、腹を抱えて大笑いする。
「ハハハハハ、こんなお嬢ちゃんが関東支部長だと!? バカも休み休み言えってんだ!!」
「笑い事ではなく、俺は本物の関東支部長だ」
「ハハハハハ、腹がいてえ! ヒヒヒ、じゃあ証拠をみせてみろよ!! お嬢ちゃんが関東支部長だっていう証拠をよ!?」
 ヨロズは袖の下から一枚の紙を差し出す。
 怪人は腹を抱えてこれを受け取り、その紙の内容を確認する。
「は……?」
 怪人の顔が凍りつき、目元だけ動かしてヨロズを確認する。
「……お嬢ちゃん、本当に?」
「ああ、関東支部長ヨロズだ」
 ヨロズは答える。
 堂々としたことはなく、気負った様子もなく、あくまで当然のことのように。
「ヒィィィィィィッ!!??」
 怪人は悲鳴を上げて、椅子から転げ落ちる。
「まさか、まさかまさかまさか本物だなんて!? あなた様が何故こんなところにィィィッ!?」
「さっきから、かなみが言っている。音速ジェンナの居場所を教えろ、と」
「そ、そんな!? 最高役員十二席の一人の居場所など、私(わたくし)めが知っていようはずがありません!? あなたの存在にさえ気づかなかったんですよ!!」
 怪人は地べたに額をこすりつけて、許しを乞うように答えた。



 結局、あの怪人から情報は何も得られず、かなみとヨロズはノコノコと後にした。
「あんなに態度が変わるものなのね」
 かなみはあの怪人の変わりようを思い出してぼやく。
「俺が関東支部長としてそこまで知れ渡っていないせいだ」
「別にあんたが悪いわけじゃないわよ」
「だが、事実として俺は弱い。怪人としても支部長としても」
「……あんたは十分に強いと思うけど」
 かなみはかつてヨロズと戦ったときのことを思い出す。
 あの時のヨロズは今の少女の姿と違い、大型動物の身体をしていて、迫力も凄みも今よりも段違いにあった。そのヨロズに負ける寸前まで追い込まれた。そこからなんとか勝てたものの、もう一度戦っても勝てる気がしない。
 それは姿が変わった今でも変わっていない。
 むしろ今の方がますます戦って勝てる気がしなくなっている。
 それは以前よりも内に秘めている凄みが増しているように感じるから。
(もう二度と戦いたくない)
 かなみはそう思っている。
 何よりも今の少女の姿は戦いにくい。以前の大型動物でまさに怪人といった姿とは比べ物にならないくらい。
 ただ、同時にヨロズは、かなみとの再戦を強く望んでいる。戦いはもう避けられないと諦めそうになるくらい。
 そして、そんなヨロズと今こうして並んで歩いているというのは、奇妙な光景に思えてきた。
 もし、今の状況が連れ去られた母の捜索でなかったら。もし、何でもない学校帰りの道を一緒に歩いているだけだったら。
――ヨロズと敵ではなく、友達になれたのかもしれない。
(いやいや)
 そんなことまで考えて、かなみは首を振って否定する。
 今は母を捜し当てることが何よりも先決。ヨロズは利害が一致しているからついてきているだけ。そう割り切った。
「次の基地はあとどのくらいで着くの?」
「もう少しだ」
 ヨロズは基地へ案内する。
 今度こそは穏便に済みますように。できれば母の居場所がわかりますように、と、祈る気持ちで。
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