まほカン

jukaito

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第98話 父母! 少女は家族会議に参戦する!! (Cパート)

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「私もここまでとは思わなかったわ」
 来葉からも匙を投げる発言をする。
「でも、かなみちゃんがなんとかしないといけない問題よ」
「そんな……父さんがこんなにいい加減とは思わなくて……せめて母さんがいてくれたら……」
 かなみはつい弱音を漏らす。
「頼むから、母さんは勘弁してくれ」
 父は言う。
「いっそのこと、母さんが鉄拳制裁してくれれば目が覚めるかも」
「それはやめてほしいな、ちゃんと起きてるよ」
「だったら、性根を叩き直してもらわないと。っていうか私が叩き直した方がいいみたいね」
「……え?」
 父は絶句する。
「それくらいならやった方がいいわね」
 来葉も同意する
「あんまり人を殴ったことないんだけどね」
 かなみは握り拳を固める。
「か、かなみ……本気……?」
「冗談で父さんにこんなことしないわよ」
「そう、本気なんだ……だったら、せめて優しく」
「ええ、優しくするわよ。優しく思いっきりやるから!」
「えぇ!?」
 かなみは思いっきり振りかぶって拳を振るう。
「うわ!?」
「はい、ストップ!」
 来葉が宣言する。
 それと同時にかなみの身体が止まる。
「えぇ!?」
「お父さんと同じ魔法をかなみちゃんにもやったのよ」
 かなみは足元を見る。
 銀色の杭が足に突き刺さっている。痛みはない。
「動けない……!」
「さすがに本当に殴るところまでは見過ごすことは出来ないからね。お節介だけどね」
「私、殴らない方がよかったですか?」
「うーん、難しいところね。殴る資格はあると思うけど、本当に殴っていいかは別ってことね」
「そうですか……なんだか来葉さんにそう言われるとホッとします」
 かなみは肩の荷が降りたように一息つく。
「やっぱり母さんに任せた」
「ん、そうかもね」
「え、いや、母さんはさすがにやめてほしいけど……」
「父さんにそんなこと言える権利はないわ」
 かなみはバッサリ切り捨てる。
「――うーん、まあごもっともですね」
 突然、横槍を入れるようにおどけた声がする。
「あんたは!?」
 白い装束を纏った、山奥の村に相応しくない派手な男が現れる。
「どうも、白道化師です! 魔法少女の方々、ご機嫌麗しいようで何よりです!」
 最高役員十二席の一人・白道化師だった。
「どうしてあなたがここに!?」
「いやあ、私は随伴してきただけですよ」
「随伴?」
「あなたに会いたかったんです」
 金髪の女性が白道化師の背後から現れる。
「どうも、お久しぶりです。結城さん」
「「え!?」」
 金髪の女性がそう呼んだことで、かなみと父が反応する。
「ああ、男性の方ですよ。娘の方には用がありませんから」
 かなみにそっけなく言う。
「うちの父にどんな用件なんですか?」
 なので、かなみはつっかかる。
「娘には用はないと言ったはずですが」
「それを決めるのは私よ!」
「はあ、面倒な娘さんですね。あなたの苦労が伺えます」
「あ、あなた!?」
 あなたとは父のことを指して言っているようで、その物言いは完全にただ事ならない関係を表しているようだった。
「おとうさん……」
 かなみは父に呼びかける。
「い、いや、かなみ、これは……」
 言い訳がどうしようもなく見苦しく聞こえた。
「……この人が浮気相手なのね」
 直感でわかった。
「はい」
 父は正直に白状した。
「浮気相手とは人聞きが悪いですね。私はそこの方と幸せな家庭を築くことを誓い合ったものなのですよ」
「し、幸せな家庭!?」
 それは紛うことなき浮気相手の図々しい発言だった。
 何故か泥棒猫という単語が、かなみの脳裏をよぎった。
「父はうちの母と結婚してるんですよ」
「結婚してるのであれば別れていただければよいだけの話でしょう。そんなこともわからないのですか。そのうちの母の教育がなっていない娘ですね」
「――む!」
 女性の物言いに腹が立った。
「おっしゃるとおり、うちの母は教育できるような人じゃないわ。――でも、それを他人が言うのは腹が立つわ」
 かなみは、あえて他人を強調して言う。
「では、ますますもってあの人に相応しくないですね。私と違って」
「いえいえ、お似合いの夫婦よ。あなたと違って」
 バチバチと視線がぶつかり合って火花が飛び散ったような錯覚さえ起こる。
 どうしてかはわからないけど、なんとなく感じる。

――この女性はどうしようもなく私の敵なのだ、と。

 それは向こうも感じているようだ。
「だいたいあんた何者よ!?」
「ああ、お父さんから聞いてなかったのですか。信頼されてないから」
「いちいち一言多いわね!」
「仕方ありませんね。私の名前はサフィア、ネガサイド・アメリカ局の怪人です」
「あ、アメリカ局の怪人!? 怪人がなんで父さんの愛人なんか!?」
「いや、俺も驚いたんだよ。そりゃ普通の子にはない魅力があるなとは思っていたんだけど」
「父さんは黙ってて」
 この父は口を開かない方がいい。
「どうしてアメリカ局の怪人が日本にいるのよ? だって、怪人は他の国に簡単に来れないんじゃないの?」
 ネガサイドは基本的に外国には渡れない。
 国の局長同士が互いに許可を出さなければならない上に、その許可は簡単には降りない。そう聞いたことがある。
「ええ、ですから簡単ではありませんでしたよ。お目付け役にまでついてこられましたから」
 サフィアは白道化師を指して言う。
「お目付け役兼見物客ですがね」
 白道化師は補足する。
「面白い見世物があるとのことなので、この白道化師自ら買ってこの役目を担いました! サフィア様の監視役を、です!!」
 白道化師は相変わらず大仰な仕草と声で言う。
「いやはや、とても面白い見世物ですね!」
「見世物のつもりはないのですがね」
「いえいえ、痴情のもつれは得てして最高の喜劇になりますよ!」
「人の家の問題を喜劇呼ばわりするな!」
 かなみは猛烈に否定する。
「人ですし、他人ですからね。ですから楽しいのですよ」
「最低ね、あんた!」
「お褒めに預かり光栄です」
「褒めてないわよ!」
「白道化師のことはどうでもいいでしょ。大事なのは私とあの人のこれからのことですよ」
 サフィアは慇懃に言う。
「それだったら、話すことは何もないわ! アメリカに帰って!」
「そうもいきませんよ。わざわざアメリカからやってきたんですよ。この苦労が人間のあなたにわかりますか?」
「わかりたくないわね。他人の家庭をぶち壊すための苦労なんて!」
「ぶち壊すためなんてとんでもない。――築くためですよ、私とあの人の幸せな家庭のために」
「それをぶち壊すっていうのよ!」
 かなみとサフィアの舌戦は続く。
 二人の意見は平行線で決して交わることがない。
 かなみはそれを理解する。
 そして、怒鳴った程度では決して退くことはないことも。
 不本意ながらも彼女がこのくらいのことで退かないこと、その意志の強さは自分と同じであることを感じ取ってしまった。
「どうやら、あなたは私の障害物のようですね」
 それはサフィアの方も同じのようだ。
「ええ、私にとってはあんたが障害なんだけどね」
 かなみはコインを取り出す。
 サフィアはその仕草から、かなみの戦意を感じ取ってニヤリと笑う。
「気が合わないかと思いましたが、意見は一致しているということですか。――障害は取り除くに限ります」
「そうね! 取り除いてやるわ!!」
 かなみはコインを放り投げる。
「マジカルワーク!」
 コインから降り注ぐ
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
 黄色の衣装を纏った魔法少女が降り立つ。
「なるほど、それなりに気品があるみたいですね」
 サフィアはカナミをそう評する。
「ですが、私ほどではありませんね」
 サフィアも衣装を変える。。
 ドレスを羽織り、色変を振りまく娼婦の姿に。
「これに父さんは騙されたのね」
 カナミは父に軽蔑の視線を向ける。
「……男性として魅力的な女性は放っておけないんだけどな」
 父は小声でぼやく。
 これがカナミに聞こえたら、条件反射で魔法弾を撃っていたかもしれない。
「さて始めましょうか!」
 サフィアは白道化師に視線を送って合図する。
「空間魔法、発動!」
 白道化師を指をパチンと鳴らす。
 すると、周囲の人間が消えてカナミ達だけになる。
「人が消えた!?」
「いいえ、人が消えたわけではなく私達が村から消えたんですよ」
 白道化師が説明する。
「一瞬で私達を異空間に放り込むなんて、凄まじい魔法ね」
 来葉は周囲を見回しながら言う。
「ええ、舞台を整えるのが私の約目ですからね。これでカナミは思う存分戦えるでしょう」
「異空間ならいくら魔法を使っても人を傷つけたり物を壊したりすることはないってことね」
「はい、そうです!」
「だったら、好都合よ!」
 カナミはステッキを構える。
「戦える場所を提供されたからといって、その気になるのは思い上がりが過ぎますね。私が正してあげましょう」
「それはこっちのセリフよ!」
 カナミは魔法弾を撃つ。

パチン!

 サフィアが指を鳴らすと、カナミが撃った魔法弾が爆散します。
「え?」
「これはゴングの代わりですか? でしたら、お粗末過ぎますね!」
「今、爆発した?」
「爆発は芸術ですよ」
 サフィアは指をパチンと鳴らす。

バァァァァァン!!

 爆発が起こり、粉塵が巻き上がります。
「これぐらいはやってもらわないと地味で仕方がありませんわね」
「く……! こんな砂ぼこりまるけになって、何が芸術よ」
「私が芸術といったのは爆発であって、あなたのことではありませんよ。砂ぼこりまるけの魔法少女さん」
 サフィアの手に魔力が集中するのがわかる。
 それはこれから攻撃を仕掛けてくる予備動作であった。
「それでは奏でましょうか! 爆音と悲鳴のシンフォニーを!」
 サフィアの指先から魔法弾が放たれる。
「この!」
 カナミは魔法弾を撃って応戦する。

バァァァァァン!!

 魔法弾は派手な爆発が起きる。
「これがあんたの言う芸術!?」
「そうですね、これはまだ前奏に過ぎませんが」
「だったら、そのまま終わらせてやるわ!」
 カナミはサフィアが撃った魔法弾よりも多く魔法弾を撃つ。
「ですが、この程度で終わってしまっては興冷めですね」

バァァァァァン!!

 花火のような派手な爆発が起きて、カナミの撃った魔法弾がかき消されてしまう。
「花火というのは派手で美しいものですね」
「だからどうだっていうのよ!?」
「魔法少女の花火、というのは綺麗なものでしょうか?」
「見たくはないわね!」
「私もですよ」
 サフィアは魔法弾を撃つ。
 指先から放たれたそれは尾を引いて、花火の開花前を連想させた。
 カナミはそれに危機感を覚えた。
 すぐさま撃ち落とさんと魔法弾を撃つ。
 しかし、サフィアの弾はクネクネと曲線を描いて飛んでくるため、撃ち落とせずにカナミの目の前で飛び込んでくる。
「バン!」
 サフィアの合図とともに魔法弾の花火は開花する。
 カナミはとっさに後ろに飛んで直撃を避ける。
 しかし、飛んだことで格好の的になった事実に飛んだ後に気づく。
「ファイア!」
 サフィアが楽しげな合図とともに、魔法弾は一斉にカナミへ飛んでいく。

バァァァァァン!!

 けたたましい爆音と派手な七色の爆煙を起こる。
「跡形もなく消えたほうが華々しかったのですがね」
 サフィアはぼやく。
 爆煙の中からカナミが姿を現す。
「見た目ほど大したこと無いじゃない!」
「普通の人間だったらこれで灰も残さず綺麗さっぱり消滅するんですけどね。あなた、相当生き汚いのですね」
「汚いのはどっちよ!?」
「無論、あなたですよ」
 サフィアは指をパチンと鳴らす。
「砂の次は泥がいいでしょうか?」
「ごめんよ!」
「ではリクエストに応えましょうか」
 サフィアがそう言うと、カナミに炎が襲いかかる。
「キャアアアアア、アツイアヅゥゥゥゥ!?」
 火だるまになって、転げ回る。
「カナミちゃん!」
 来葉はいてもたってもいられず、加勢に入ろうとする。
「お待ち下さい」
 それを白道化師が止める。
「この戦いにあなたが参加することは許しません」
「どうしてもというのなら、あなたが邪魔をするというわけね」
「ええ、そうなるとこの戦いを見届けることができなくなるでしょうから、御免被りたいところですね。私達はあくまで傍観者、あるいは観客でいませんか?」
 白道化師がそう提案してくる。
 それは来葉が戦いに加わるのであれば、自分が相手になる。戦わないのであればお互いこのまま観客でいよう、というものだった。
「そうね。できれば十二席とは戦いは避けたいわね」
 それは来葉の半分建前で半分本心だった。
 もし、来葉が白道化師と戦ったら……。そんな未来を視てみたけど、自分が負けて死ぬ未来ばかりが視える。それもどうやって負けて死ぬのかわからないのだ。
 未来視ではあくまで自分の目で視た未来しか視ることができない。つまり、白道化師と戦ったらどうやって負けて死ぬのかわからないような戦いになるということだ。
――それは無駄死にでしかない。
 来葉は冷静な判断がそう告げる。
 無駄死にはなんとしても避けなければならなかった。
 本心では戦いたい。カナミを助けたくて仕方がない。その気持ちを建前とともに抑え込む。
 傍目からは冷静に下しているように見えても、内心は到底穏やかではなかった。
「さすがです。ご理解が早くて助かります」
 白道化師は皮肉を口にする。
「あなたこそ理解してないわ。カナミちゃんの強さを」
「ほほう、それは楽しみです」
 白道化師は愉快げに言う。
「神殺砲!」
 炎を振り払ったカナミはステッキを砲台へ変化させる。
「へえ、私好みの派手な武器ですね。それでどうするんですか?」
 サフィアはカナミの砲台へ興味を向ける。
「こうするのよ! ボーナスキャノン!!」
 砲台から砲弾を発射させる。

バァァァァァァァァァァァァン!!

 砲弾は見事サフィアに命中し、爆発する。
「ど、どうよ!?」
 爆煙の中からサフィアが姿を現す。
「素晴らしかったですね。この私がダメージを受けたのは久しぶりです」
「ダメージを受けた、ね」
 カナミはサフィアのダメージを確認する。
 ドレスが焼け焦げててそこから視える肌色には傷さえ見える。確かに言葉通りダメージを受けているように見える。しかし、あくまで受けているように見える程度だ。
「それじゃ、もっとダメージを受けてもらうわ!」
 カナミはもう一発撃つために砲台へ魔力を注ぐ。
「それでは素晴らしい魔法を見せて返礼をいたしましょう」
 サフィアもまた砲台を出現させる。
「私と同じ!?」
「私もやってみせましょう」
 サフィアはさも得意げに言う。
「負けないわ!」
 カナミはそれに対して負けん気を叩きつけるつもりで言う。
 最も得意な魔法の撃ち合い。どうしても父親のこと以上にこの相手には負けられない戦いになりつつあった。
「神殺し……大仰な名前ですね。ではこの魔法はヘリオスと名付けましょうか」
「へりおす?」
 カナミは知らなかった。
 それはローマ神話の太陽神の名前であり、まさにカナミが魔法によって殺すべき神そのものだと告げる宣戦布告だった。
「なんだかわからないけど負けられないってことだけは伝わったわ」
「結構ですよ。その程度の教養でしかないのですから」
 その物言いでますますもって負けられなくなった
「ボーナスキャノン!!」
「ヘリオス!!」
 砲弾が同時に発射される。

バァァァァァァァァァァァァン!!

 砲弾が激しくぶつかり合う。
 パワーで押し負けたのは、カナミの砲弾だった。
「キャァァァァァァッ!!?」
 ヘリオスと名付けられた砲弾がカナミを襲った。
「これで私の勝ちですね。それではあの人をもらっていきます」
 サフィアは勝利を確信して、父の元へ向かう。
「あなた、二人で幸せな家庭を築きましょう」
「サフィア、俺は……」
「この期に及んで何をためらうのですか? 罪悪感に苦しむような御方ではないことは知ってますよ」
「いや、そうなんだけど……」
 父は少し躊躇ったあとに、引きつった笑顔で言う。
「こんな状況でまた追いかけてこられるとまずいかな、って……」
「フフ、安心してください。追いかけてくる人がいたら、私がなんとかします。あなたは何も心配しないで私と一緒にいればいいのですよ」
 サフィアは父に向けて手を差し出す。
「そうか……それなら心配いらないな」
 父はその手に向かって手を伸ばそうとする。
「……待ちなさい!」
 カナミが立ち上がってそれを止める。
「しつこいですね」
 サフィアはカナミの方を向く。
「そんなにあの人がとられたくないのですか? 今さっきの対応見ましたか? あなたのことなど愛想をつかして私の手をとろうとしたのですよ」
「とられたくないに決まってるでしょ、だってその人は私の父さんだから!」
 カナミは歯を食いしばって、傷の痛みに耐えながら啖呵を切る。
「愛想つかされたのに、ですか?」
「関係ないわよ!!」
「そうですか」
 カナミが言い返して、サフィアは納得する。
「どうやら、あなたを排除しなければ連れていけないようですね」
 サフィアは父に向けて言う。
「少々お待ち下さい。ただちに排除いたしますから」
「………………」
 父は黙ったままだった。
 しかし、カナミの方をチラリと気まずそうに見ただけで。
「さて、それでは終わらせましょうか! ヘリオス!!」
 サフィアは指をパチンと鳴らして、大砲を出現させる。
「神殺砲!!」
 カナミもステッキを大砲へと変化させる。
「その大砲では私に勝てないとまだ理解できないのですか?」
 サフィアは嘲笑する。
「そうですか、理解できないのですか。可哀想に……母親譲りなのでしょうかね、その単細胞ぶりは」
「……バカにするな」
「え、なんですか?」
「母さんをバカにするな! って言ってるのよ! そりゃ母さんは呑気で天然で何考えてるのかさっぱりわからない人だけど、それでも強くて優しくて凄い人なんだから!!」
 カナミはサフィアに、そして父にも向けて叫ぶ。
「では、それを娘のあなたが証明してみせてください」
 サフィアは砲弾を発射する。
「ボーナスキャノン!!」
 カナミもそれに応じて砲弾を発射する。

バァァァァァァァァァァァァン!!

 二つの砲弾はせめぎあって大爆発が起きる。
「今度は互角ですか」
 サフィアは意外な結果に目を見開く。
 二つの砲弾の威力はまったくの互角でその場で大爆発だった。
「手心を加えたつもりはまったくありません。なのに互角とは……威力が上がってるのですね」
「まだよ!」
 カナミは鈴を飛ばす。
「ジャンバリック・ファミリア!!」
 鈴はサフィアの周囲を飛び交い、魔法弾を放つ。
「ほほう、これは中々面白いですね!」
 サフィアは嬉々として、その魔法弾をかわす。
 それはもう軽やかで優雅に。まるでダンスをしているかのようだった。
「素晴らしい調べです。少しは見直しましたよ」
「だったら!」
 カナミはステッキをサフィアに向ける。
 鈴の撃つ弾の軌道、それをかわすサフィアのステップ。それらを観察して、サフィアの動きを予測する。
 来葉のように未来を視ることはできないけど、予測はできる。
「そこ!」
 魔法弾が一筋の閃光となって、サフィアの胸を貫く。
「ガハッ!?」
 そこでサフィアの動きが止まる。
 これをまたとない好機とみたカナミは畳み掛ける。
 鈴の魔法弾が一斉にサフィアへ向けて発射される。

バァァァァァァァァァァァァン!!

 爆煙が巻き上がる。
「――改めましょう」
 サフィアの声がする。
 それは今までの慇懃無礼な口調にさらに凄みが加わって、カナミは身体の芯から震える。
「あなたは全力をもって排除しなければならない敵と認識します。魔法少女カナミ!」
 サフィアがそう言うと、破けたドレスから見える傷が消えていき、ドレスは元に戻っていく。
――本気になった。
 カナミはそう直感する。
 場に流れる空気が変わり、重しのようにのしかかってくる。
 それはサフィアの持つ魔力が溢れ出て圧力となったかのようだった。
(十二席のヘヴル……いいえ、ヘヴルほどじゃないけど……けど、――私より強い!)
 カナミのこれまでの戦闘経験によって培われた直感が告げてくる。
 薄々感づいていた。
 これまでの戦いでサフィアは本気になっていなかったにも関わらず、これほど苦戦させられた。それが本気になったのなら自分よりも強いということになるのは自明の理。
(でも、だからって父さんを渡すわけにいかない!)
 カナミはステッキを握りしめる。
「それでは排除させてもらいますよ」
 サフィアは腕を振るう。
 すると光の玉が浮かんでいき、鈴へ飛んでいき爆発する。
「光栄に思いなさい、あなたを花と認めることにしたのですから。――花は散り際が最も美しいのですよ」
 サフィアはそう言って、光の玉をカナミへ飛ばしていく。

バァァァァァン!

 光の玉は爆発する。
「ぐ!?」
 カナミは痛みを堪える。
 飛んでくる光の玉が早くて避けきれない。それに数も多い。
 撃ち落とすための鈴も逆に撃ち落とされてしまった。

バァァァァァン! バァァァァァン! バァァァァァン!!

 爆発が激しくなっていき、たまらず転がりまわる。
「く、うぅ……!」
 爆発による焼け付く痛みを抑えて立ち上がる。
 じっとしていたら的になってしまう。
(とはいっても、このままじゃやられちゃう……反撃しようにも光の玉をなんとかしないと……)
 しかし、その光の玉がどうにもらない。
 数が多い上に、目にも止まらない速さで飛んでくる。おまけに爆発までする。
 この光の玉に対応しようとして、神殺砲ほどの魔力をステッキへ充填することが出来ない。
(光の玉をなんとかしたい、反撃がしたい……でも、どっちもできない……あ、そうか!)
 そこでカナミは閃いた。
「神殺砲!」
 カナミはステッキを砲台へと変化させる。
 砲台に魔力を充填させる。
 しかし、これには時間がかかる。
 光の玉が容赦なく降ってくる。
「く、ぐ、ぐぐ……!!」
 カナミはこれを歯を食いしばって耐える。
 耐え抜いている間に、砲台へ魔力を充填する。
 魔力の充填が完了するには十数秒。それが何十分のように長く感じた。
「フフ、いい的ですね。面白いことを実行しますね」
(今に見てなさいよ……!)
 カナミは心の声で言い返す。

バァァァァァン!

 光の玉の爆発をまともに受けつつも、カナミは充填し続けた。
 耐え抜くこと十数秒。
 ボロボロになりながらも最大級の威力に高まった神を殺す砲弾を撃つ準備がようやく整う。
「ボーナスキャノン・アディション!!!」
 整うやいなや即座に撃ち放つ。
「それではこちらもヘリオスで応じましょうか!」
 サフィアは光の玉を集めていき、大玉となる。
「太陽神の威光にひれ伏しなさい」
「あんたが太陽神だなんてこの世の終わりね!」
「この世なんて終わってるようなものじゃありませんか」
「終わってないわよ!」
「それでは終わってもらいましょうか」
 サフィアはそう言って、光の大玉を撃ち出す。

バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

 神殺砲の砲弾と光の大玉が激しくぶつかり合う。
「あ……!」
 しかし、カナミは悟ってしまう。
 神殺砲の方が撃ち負ける、と。

バリン!!

 神殺砲の砲弾が弾けて、光の大玉がカナミへ押し寄せる。
(やられる!!)
 これは今の状態では耐えられないと直感する。
「ホーリーライトベル!」
 そこへ黄金の鈴が目の前へ飛び込んでくる。

バァァァァァン!!

 黄金の鈴が砲撃を受け止めてくれた。
 こんな芸当ができるのはカナミが知っている限り、ただ一人だ。
「母さん!」
「カナミ、危ないところだったねぇ!」
 スズミはカナミを抱きしめる。
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