まほカン

jukaito

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第118話 好事! プラモデルは少女に牙を剥く! (Bパート)

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「待ちなさい! 万引き男!!」
 差は一向に縮まらない。
 相手の男はかなり速い。
「逃してたまるかッ!」
 かなみは賢明に追いかける。
 もしも、逃してしまったらあのプラモを手に入れらなくて、みあになんて文句を言われるか、わかったものじゃない。
「うん、そうだね。代わるよ」
 マニィが携帯電話で誰かと通話していた。
「ほら、かなみ」
 マニィがかなみの耳に携帯電話を押し当てる。
『こら、かなみ!』
 耳を塞ぎたくなるみあの怒声が聞こえてくる。
『盗られたってどういうことよ!? あれ、最後の一個かもしれないのよ!? なんとしてでも取り戻しなさいよ!!』
「わかってる! わかってるから、そんなに怒鳴らないで!!」
 かなみは走っている真っ最中なのもあって、つい強く言い返してしまう。
 それが、みあの怒りを助長させてしまう。
『いいえ、わかってないわ! あのプラモを作ってたメーカーはもう潰れちゃってもう無いの! あれを逃したらもう二度と手に入らないのよ!?』
「もう! わかってるってば!!」
『かなみにだけ任せておけないわ、こうなったらあたしも!』
『あ、ダメです。ベッドで寝てなくては!』
 ベッドから飛び出そうとするみあを紫織が頑張って止めるのが目に浮かぶ。
「みあが無茶をする前に、捕まえないと」
 マニィが言う。
「ええ、そうね!」
「そこの角を右に曲がったよ」
 マニィが耳打ちして、かなみは即座に角を右に曲がる。
 正直、ヤケクソ気味になっていたので、見失いかけていた。
 いつの間にか人気が無い路地裏に入っていったことにも気づかずに。
「しつこいやつだな、お前!」
 大男は振り向いて、堂々と待ち構えていた。
「あんたが万引きするからよ! 犯罪よ犯罪!!」
「犯罪? 知らねえな、俺は欲しい物を必ず手に入れる!!」
 大男は盗んできたプラモを天に向かって掲げる。
「あんた、人間じゃないわね!」
 ここで、かなみは大男から常人ではありえない程の魔力を感じ取り、大男が怪人であることがわかる。
「だったら、どうした!? 尻尾をまいて、とっとと逃げるか!?」
「逃げるわけないでしょ!」
「逃げないんだったら、どうなるかわかってるだろうな!?」
「もちろん、あんたが地獄行きよ!」
 かなみはコインを取り出して、放り投げる。
「マジカルワーク!」
 コインから降り注ぐ光がカーテンとなって、その幕が上がる頃には黄色の魔法少女が姿を現した。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
 カナミの変身に、大男は一瞬たじろぐ。
 が、すぐに手のひらから紫の玉を生成する。
「このプラッターの自慢のダークマターをくらえ!」
 その玉をプラモの箱へ放り投げる。
 箱はみるみるうちに膨張していって、箱から怪人が飛び出す。
「そのダークマターは!?」
「怪人を作り出す魔法・ダークマター、久々に見たような気がするよ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! あのダークマターで出来る怪人って」
「さっき盗っていったプラモだね」
 マニィはまるで他人事のように言う。
「そうとも! 往年の名作ロボットアニメ『次元合金ディー・スペリオン』で主人公を救うべく開発しされた次元ロボ・アスリオン。敵の異次元帝国に奪取され、ライバルの異次元人に乗りこまれ、幾度ととなく名勝負を繰り広げ、最後には次元の嵐に巻き込まれ、消息を絶った悲劇の名機だ!!」
「聞いてないのに、勝手に説明しだした!?」
「説明したがりなんだね」

ドスン!

 ドッシリとした足で大地を揺るがす。
 赤と黒のメタリックボディが見る者に威圧感を与えている。
「本来は全長二十一メートルもあるスーパーロボットだが、このプラモは九十分の一スケールだから、三分の一スケールで怪人化してやったぜ!!」
 プラッターは得意げに言う。
「どういう理屈よ!? せめて九分の一スケールにしなさいよ!」
「その理屈もよくわからないけどね」
 マニィがツッコミを入れる。
「そんなことより、三分の一にしても大きすぎよ!?」
「大きさはロマンだろうが、都会の冷たい風に負けじと俺はやってやるぜ!」
「ロマンとかどうでもいいから、そんな大きいのが都会で歩き回ったら大混乱よ!」
「そうとも! 俺はその大混乱を引き起こして全世界に俺の悪名を轟かせてやるぜ!!」
「全世界って……やってることはプラモの万引きなのに!」
「文句を言うのはこいつの実力を見てからだ! いけ、アスリオン!!」
 プラッターの命令を受けて、アスリオンは動き出す。
 標的はカナミと見定めて、突撃してくる。
「はやッ!?」
 その大きさから鈍重な印象を受けたけど、普通に人、それ以上の俊敏に動いて迫りくる。

ブゥン!!

 腕に内蔵されているソードを抜き、即座に振るう。
 カナミは後方に飛んで、これをかわす。

バシャァァァァァァン!!

 空振りした斬撃は建物の壁をバッサリと斬り裂いた。
「こらー、なんてことすんのよ!?」
「思い知ったか!? アスリオン、七つの特殊能力の一つ、ジゲンソード! どんなもの硬い物でもバッサリだぜ!!」
「そんなことはどうだっていいわよ! 建物壊したら、私のボーナスで弁償しないといけないんだから!! え、べんしょう……?」
「しかも、今回はノーギャラだからね」
「あーそうだったーッ!?」
 マニィの一言で、これがいつもの仕事による怪人退治ではない。
 つまり、今この怪人やプラモを倒したところで、ボーナスがもらえない。
 むしろ、この怪人が建物とか壊したら弁償代がカナミに請求される。
「って、なんで私が弁償しないといけないのよ!?」
「君が戦えばそうなるんだよ、いわゆるお約束だよ」
「お約束で借金が増えたらたまったものじゃないわよ!」
「うん、貯金はたまらないね」
「そういうことじゃなくて、――うわッ!?」
 マニィと言い合いしているうちに、次の斬撃がやってくる。
「チィ、外したか!」
「外したか、じゃないってのよ!」
 カナミは魔法弾を撃つ。

バァン!

 魔法弾はアスリオンの装甲に弾かれる。
「ハハハ、次元合金ディメンタルがそんな攻撃で抜けるもんかよ!!」
「無駄に硬いわね! それだったら!」
 カナミはステッキから刃を抜いて、斬りかかる。

カキィィィィン!!

 カナミのステッキの刃とアスリオンのジゲンソードがぶつかり合う。
「だりゃああああああッ!!」
 アスリオンは声を発しない代わりに、プラッターが雄叫びを上げる。
 そのせいで力が増して、カナミは押し負ける。
「くッ!」
 カナミは後ろに飛んで退く。
「ここでアスリオン、七つの特殊能力の二つ目! ジゲンパンチ!!」
 アスリオンが拳を振るう。
 何もないところに、振るった拳は当然のごとく空を切る。――ことはなかった。

ゴツン!!

 その拳がカナミの頬に届いた。
「あいたッ!?」
 拳が伸びてきたわけじゃない。
 拳だけが切り取られたかのように、カナミの目の前にやってきた。
「なにこれ!? パンチが飛んできた!?」
「そうとも! 空間を飛び越えて、距離に関係なくパンチで敵を叩きのめす! これこそアスリオン、七つの特殊能力の二つ目! ジゲンパンチ!!」
「二度も言わなくてもいいわよ、あいたッ!?」
 ツッコミを入れている間に、拳がやってくる。
 今度は来るタイミングがなんとなくわかったおかげで、拳打の直撃だけは避けられた。
 続けて、三、四発目と次々にやってくる。

ゴツン! ゴツン!!

 続けて拳が飛んできたことで、拳が飛んで来るタイミングがわかった。
 アスリオンが拳を振るう。
 その直後に、拳がカナミの目の前に飛んでくる。
 それを見極めて、ステッキを出して防御する。
「ていッ!」
 五発目のジゲンパンチをステッキで防御して、直後に魔法弾で反撃する。

バァン!

 魔法弾は弾かれるものの、アスリオンは体勢を崩す。
「今よ!神殺砲!!」
 カナミはチャンスと思い、ステッキを砲台に変化させる。
「ボーナスキャノン」
 体勢を整わないうちに、砲弾を撃ち放つ。
「く、やるな! こうなったらアスリオン、七つの特殊能力の三つ目! ジゲンゲート!!」
 アスリオンの前方の空間が歪み始めて、砲弾がその空間に吸い込まれる。
「なッ!?」
 カナミは嫌な予感がする。
 砲弾が吸い込まれてどこかへと消えていった。
 では、そのどこかというのはどこなのか、と、思った時、カナミは身を固める。
 その判断は正しかった。
 カナミの前方の空間が歪み、消えていった砲弾がカナミへと向かってきた。

バァァァァァァァン!!

 路地裏に激しい爆音が轟く。
「ハハハハハ、見たか! アスリオン、七つの特殊能力の三つ目! ジゲンゲートはどんな攻撃だろうと異次元空間に飲み込んで、敵に跳ね返すんだぜ!! ハハハハ!!」
「く……厄介ね!」
 爆煙が晴れる。
 神殺砲の威力を身をもって受けて、かなりのダメージを受けたけど、身体はまだ動いてなんとか戦える。
「大丈夫、あの特殊能力はしばらく使えない」
 マニィが耳打ちする。
「一度使うと三十秒の充填時間を要するらしい」
「なんでそんなことがわかるの!?」
「みあにメールで事情を説明したら、アスリオンの説明が返信できたんだよ」
「みあちゃん、相当怒ってるわね……」
 これは解決した後に、相当みあに怒られるだろう。
 そう考えると気が重い、
「でも、三十秒しかないんだったら!」
 カナミは切り替えて、アスリオンへと魔法弾を撃つ。

バァン! バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!

 魔法弾の連射により、アスリオンは装甲が破られないもののその勢いに押されて後退する。
「ぬう! もう一度ジゲンゲートあと五秒!」
「あと五秒ね! それだったら、このまま押し切るわ! 神殺砲!!」
 カナミはステッキを砲台へと変化させる。
「ボーナスキャノン!!」
「ゼロ! 間に合った!! ジゲンゲート!!」
 プラッターの掛け声とともに、アスリオンの前方の空間が歪む。
 神殺砲の砲弾が再びその歪んだ空間に吸い寄せられ、――ることはなかった。
「なにィッ!?」
 そもそも、神殺砲の砲弾は発射されていなかった。
「ジゲンゲートの持続時間は五秒! 五秒すぎたら、フィールドは消滅する! って、設定資料に書いてあった、って、みあがメールしてきた」
「本当に、なんてメールのやりとりしてるのよ、みあちゃん……でも、おかげで助かった」
「うん、そうだね。あのプラモがダークマターによってアニメの描写や設定を忠実に再現されているのなら、それを利用できる」
「本当はそういうのは苦手なんだけど……――ボーナスキャノン!!」
 カナミは本当に発射する。
 直前の発射の掛け声は嘘だったけど、いつでも発射できる体勢でいた。
 五秒経って、ジゲンゲートは消滅している。今がそのチャンスだった。

バァァァァァァァン!!

 砲弾はアスリオンへ直撃した。
「お、お前!? なんてことをぉぉぉッ!? アスリオンのジゲン合金にキズがぁぁぁlッ!?」
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