まほカン

jukaito

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第121話 埋没! 眠りし財宝を少女は起こす! (Cパート)

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キリキリキリキリ

 そして、怪人の黄金色の身体は輝き、四本の足をこすって、文字通りの金切り音を出してくる。
「そう思って、ずっと山中探してたが、見つからなかった。だが土砂で埋まっていたとはな。どうりで匂いが薄かったわけだ、キンキンキンキン」
 怪人は笑い声とともに、財宝への穴へ金色の双眸を向ける。
「マジカルワーク!」
 みあはコインを放り投げて、変身する。
「勇気と遊戯の勇士、魔法少女ミア登場!」
 赤色の魔法少女が黄色の魔法少女に並ぶ。
「それでは、私も! そーれ!!」
 千歳は掛け声一つで緑色の魔法少女に変身して、地上に降り立つ。
「鋼の絆の紡ぎ手、魔法少女チトセ参戦!」
「キンキンキン、魔法少女? よくわからないものだ、この金食きんくいキリキンマの敵ではない!」
 キリキンマは勝利を宣言するように高らかに告げる。
「それはどうかしらね! サイドワインダー!!」
 ミアはさっそくヨーヨーを投げつける。

キィィィィン!!

 しかし、キリキンマの身体に当たって、あっさり弾かれる。
「硬いわね!」
「私の魔法弾でも弾かれちゃいそうね」
「それだったら、大砲撃っちゃいなさいよ!」
 ミアはそんな提案をしてくる。
「そうね、一気に倒してやるわ! 神殺砲!!」
 カナミはそれに応じて、ステッキを砲台へ変化させる。
「ボーナスキャノン!!」
 即座に砲弾をキリキンマに撃ち放つ。

バァァァァァン!!

 キリキンマは逃げたり避けたりする素振りも見せず、直撃を受ける。
「なんという威力だ!」
 宮子はその砲弾の直撃を目の当たりにして、感嘆する。
「でも、効果は無さそうね」
 チトセは言う。
 そのとおりに、爆煙が晴れると同時に平然と立っているキリキンマの姿があった。
「ちょっとビックリした、キンキン」
「嘘でしょ、神殺砲の直撃でしょ!?」
 ミアが一番驚いていた。
 それこそ砲弾を撃ったカナミよりも。
「あんた、もしかして手を抜いた!?」
「そ、そんなことないけど!」
「じゃあ、あれはどういうことなの!?」
 ミアはキリキンマを指差して問う。
「――相手がそれだけ硬いということなのでしょうね」
 チトセが言い放つ。
「そう俺の身体はきん! 金の硬さと重みは誰にも負けねえんだ!」
 キリキンマはジャンプして、四本の足がスキー板のようになって降ってくる。
「おりゃ! きんパンチ!!」
 カナミとミアはとっさに後ろに飛んで避ける。
 その拳は大木に打ち当たって、幹をへし折って、大木はガラガラと崩れ落ちる。
「やば……!」
 ミアはその威力に青ざめる。
「当たらなければ良いんでしょ!」
 カナミは魔法弾を撃つ。

キィン! キィン! キィン! キィン!

 魔法弾があっさり弾かれる。甲高い金属音を立てて。
「今何かしたか?」
 キリキンマが蚊に刺されたように、魔法弾が当たったところを手でさする。
「やっぱり効かない!」
「もっと腰入れて撃ちなさいよ!」
「腰って……うどんじゃないんだから!」
「金パンチ!!」
 キリキンマが再び拳を振るう。

ヒュゥゥゥゥゥン!!

 今度の拳はどこにも当たらず空を切る。
 しかし、それによって巻き起こった風がカナミやミアの髪をなびかせる。
「バーニング・ウォーク!」
 ミアは火がついたヨーヨーを地面を走らせて、キリキンマへと向かう。
「あちぃッ!?」
 キリキンマは顔をしかめる。
 魔法弾や神殺砲が直撃してもビクともしなかったけど、火を熱いとは感じるようだ。
「あちぃじゃねえか!」
 キリキンマはその炎のヨーヨーをかじりつく。
「はあぁぁぁッ!?」
 ミアは驚愕しつつも、嫌々ながら自分でヨーヨーの糸を断つ。

パリパリパリ!!

 キリキンマはそんなこと気にせずにヨーヨーを咀嚼して食べていく。
「あたしのヨーヨーを食べちゃった!?」
「おいしいのかしら?」
 カナミは疑問を口にする。
「んなわけないでしょ!? あんたもお腹すいたから食べないでよ!?」
「た、食べないわよ!!」
「どうかしら……あんただったら」
「ミアちゃん、私のことなんだと思ってるの!?」
「……雑食」
「限度があると思うんだけど!?」
 ミアの無茶苦茶な人物評に、カナミは物申せずにはいられなくなる。」
「あんたなら金くらい喜んで食べそうじゃない。金箔と大して変わらないんじゃない?」
「金と金箔じゃ、全然違うと思うけど」
「おうとも!!」
 ミアとカナミの口論にキリキンマが割って入ってくる。
「俺の身体は今まで食ってきた金で出来上がっている。金箔とはワケが違うぜ!!」
 さらに両手を広げて、身体を自慢気に見せてくる。
「身体が金で出来ているなんて……ちょっとその身体が欲しいわね」
 カナミは神妙な面持ちで、キリキンマの身体を見つめる。
「なにときめいてんのよ!? どうせ金メッキなんだから大した価値にならないわよ!」
「そ、そうね!? そうに決まってるわ!」
「おのれ、言いたい放題いいやがって! 俺をバカにしたやつは絶対に許さねえ!」
 キリキンマは真っ赤に拳を振り上げる。
「金パァァァァァァンチッ!!」
 いっそう気合のこもった正拳突きが放たれた。

ズドォン!!

 その拳は空を切った。と思った瞬間、突きから生じた衝撃波でカナミとミアは吹き飛ばされる。
「どうだ!?」
「あいたたた……金って衝撃波を出せるのね……!」
「そんなわけないでしょ! 衝撃波が出るあの金メッキが異常なのよ!!」
 ミアがカナミへ言い返す。
「また、俺をバカにしやがったな!? 絶対に許さねえ!! 金パァァァァァァンチッ!!」

ズドォン!!

 再びキリキンマは正拳突きによる衝撃波を飛ばしてくる。
 その矛先は、ミアに向けられていた。
「わあッ!?」
 ミアはそれをまともに当たって、吹っ飛ばされる。
「ミアちゃん!」
「よし、次はお前だ!!」
 キリキンマは二本の腕に加えて四本の足のうち二本をカナミへ向ける。

ザシュゥゥゥッ!!

 そのうちの一本の足が側面から飛んできた斬撃で斬られて舞い飛ぶ。
「ぎゃあああぁぁぁぁッ!?」
 キリキンマの金切り音に似た悲鳴が響く渡る。
「宮子さん!?」
 キリキンマの足を斬り落としたのは、宮子だった。
 消えたはずの刀をその手に構えて、宮子はカナミの元へやってくる。
「足の一本くらいはいけるかもしれないと思ったが、なんとかなったか」
「すごいです! 魔法弾や神殺砲でもビクともしなかったのに」
「意地の一念といってもいい。あんなやつに財宝を渡してなるものかと思ったら、再び力が湧いてきた」
 そう言った宮子が持つ刀の刃が綺羅びやかに輝いて見えた。
「すごい……きれいです……!」
「とはいえ、これが最後の火かもしれない」
 宮子がそう言うと、宮子の身体が一瞬透けて見えた。
「お前らぁぁぁぁ、よくもやってくれたな!! 時代錯誤な侍め、俺が成仏させてやる!!」
 キリキンマは激怒して、宮子へ指差して標的を見定める。
「成仏する前にお前を打ち倒してやる!」
 宮子はキリキンマは刃を向ける。
「できないことをほざくな!!」
 キリキンマは突撃する。
 宮子に一本斬られて足が三本になっても、器用に足を動かして迅速にやってくる。
「くッ!」
 宮子はすかさず刃を振るって迎撃する。

キィン!

 宮子の刃とキリキンマの金の足がぶつかり合う。
「折れない!」
「さっきのは不意打ちでやられたが、そうはいかない! 正面きって戦わなければお前など大したことがないのだ!!」
「黙れ! お前のような化け物に正面きって戦う必要などない!!」
「それはそうだ! 俺は怪人! 存在自体が卑怯だからな!!」
「ぬうッ!?」
 キリキンマの力に、宮子は押し負ける。
「宮子さん!!」

バァン! バァン! バァン!

 カナミは宮子を助けるべく魔法弾を放つ。
 しかし、キリキンマのもう一本の足に弾かれてしまう。
「豆鉄砲が!」
「本命はこっち!!」
 カナミは魔法弾を撃っているうちに、接近してステッキの刃を抜く。

ザシュゥゥゥッ!!

 見事、キリキンマの足を一本斬り裂いた。
「ギャアァァァァァッ!!?」
 カナミと宮子は体勢を立て直すために距離を取る。
「今の一撃見事だったぞ!」
「宮子さんのようにやってみようと思っただけです」
「やってみようと思っただけで、できるか……大したものだ」
「そ、そんな褒められても……」
 カナミは照れる。
「お、お前ら……!」
 キリキンマは怒りで震える。
 それにしても、怒りで顔を真っ赤にしても両腕と両足の輝く金色の部分は金色のままであった。
「よくも俺の自慢の足を二本も斬りやがったな! こうなったら!!」
 キリキンマが足に力を込めると、斬り落とした二本の足から新しい足が生えてきた。
「その足、生えるの!?」
「なんと面妖な!」
 カナミと宮子は驚愕する。
「あ、でも、生えてきた足は金じゃないわ!」
 カナミは生えてきた足が金ではなく黄土色であったことを指摘する。
「今まで食べてきた金で作った足だったからな! こっちが本当の俺の足だ!!」
「偉そうに言ってるけど、ようは金の力頼りじゃないの!? そんなのに負けるわけにはいかないわ!!」
「そんなの、とは、なめられたもんだ!!」
 キリキンマは四本の足を地面に刺して、跳躍する。
「跳んだ!?」
 飛び上がったキリキンマがカナミの頭上へと舞い降りてくる。

ドゴォォォォォォォォォォォン!!!

 キリキンマが地上に落下して衝突する。



 ドゴゴゴ、と地上が揺れている。
「揺れてる、戦ってるわね」
 フラフラと浮かんでいるチトセは、どこか呑気そうに呟く。
「ミアちゃん? どこまで飛ばされたの?」
 チトセはキリキンマにやられて山中に吹っ飛ばされたミアを探していた。
「あ、いた!」
 そして、チトセは林の中に倒れていたミアの姿を見つける。
 ミアは当たりどころが悪かったのか、気を失っていた。
「見つかったわ。私とミアちゃんは赤い糸で結ばれているからすぐ見つかるわ、フフ」
 チトセは人差し指を立てて微笑む。
 その人差し指には魔法の赤い糸が巻いてあって、その赤い糸はミアの赤いフリルについていた。
 そのおかげでミアをすぐに見つけられたのだけど、ミアがもし気がついてたら「気持ち悪いこと言わないで」と嫌がるだろう。
「う、うぅ……」
「ミアちゃん、大丈夫?」
「あ……チトセ……」
「よかった、気がついたのね!」
「あたしのことはいいから、さっさとあの怪人を倒してよ」
「そうはいかないわよ。ミアちゃんも力を貸して」
「貸すって……まさか!?」
 ミアの顔が青ざめる。
「そう、――合体よ!!」
 以前、チトセがミアに憑依したことがあった。
 その際に、意識まで混ざり合って容姿や衣装まで変化した。
「私とミアちゃんが合体すれば勝てるわよ!」
「そ、それは……」
 ミアとしてはあまり気持ちの良い体験ではなかった。
 自分の身体であり、自分の身体ではない奇妙な経験としかいいようがない。
「さあ、怪人を倒すのでしょ! このままじゃいいところ無しで終わってしまうわよ!?」
「それはイヤね……」
「そうでしょう! それだったら、いくわよ!!」
 チトセの幽体はミアの身体に重なる。
 それだけでミアの容姿と衣装が変化する。
赤緑せきりょくの魔法少女・ミアチトセッ!」
 ミアの赤髪にチトセの緑髪のメッシュが加わり、衣装に緑のラインが入る。
「やっぱり、お互い波長が合うみたいね」
 ミアチトセは自分の身体を動かして、感触を確かめて上機嫌になる。
「さて、グズグズしてたらカナミと宮子ちゃんが危ないわね!」



ドゴォォォォォォォォォォォン!!!

 キリキンマは跳躍しては隕石のように地上へ落下して衝突してくる。
 そのたびに、クレーターができる衝撃が迸り、カナミと宮子は吹っ飛ばされそうになる。
「宮子さん、大丈夫ですか!?」
 なんとか衝撃波から耐えきったカナミは、宮子の無事を確認する。
「問題ない。それよりも奴は!?」
「あぁッ!?」
 カナミは空を見上げる。
 すると、キリキンマはもう空へと跳躍していた。
「こうなったら、撃ち落としてやるわ! 神殺砲!!」
 カナミはステッキを砲台へ変化させて、狙いを空中にいるキリキンマに定める。
「ボーナスキャノン!!」
 そして、砲弾を撃ち放つ。

バァァァァァァァァァァン!!

 砲弾がキリキンマに命中し、大爆発を起こす。
「打ち上げ花火のようだな……!」
 宮子はその威力に感嘆する。
「――まだです!」
 カナミがそう言うと、空の爆煙が晴れて、キリキンマが姿を現す。
 キラリ、と、金で出来た足が地上にいるカナミ達へ憎たらしく輝いている。
 あの金の足を盾にして神殺砲の一撃を受けきったのだろう。
「ハハハハハハハハハハァッ!!」
 キリキンマは文字通りの高笑いとともに落下してくる。

ドゴォォォォォォォォォォォン!!!

 神殺砲を撃った直後の硬直でカナミはよく動けなかった。
 落下の衝撃波をまともに受けて、吹っ飛ばされる。
「どうだ、金の力思い知ったか!?」
「金じゃなくて借金の恐ろしさは身にしみて知ってるのよ!?」
「ほう!? だったら、こいつをくらえ!?」
「――!?」
 キリキンマは吹っ飛ばしたカナミに急接近する。
「金パァァァァンチッ!!」
 キリキンマの金でできた拳がカナミへ放たれる。

ゴキィン!!

 顔面にまともに受けて、再び吹っ飛ばされる。
「きゃあぁぁぁッ!?」
 その悲鳴を聞きとった、赤緑せきりょくの魔法少女が飛び上がって抱きとめる。
「大丈夫だった、カナミ?」
「ミアちゃん? チトセさん?」
「――ミアチトセよ」
 カナミを抱いたミアチトセは無事着地する。
「無事であったか、カナミ?」
 宮子が問いかける。
「ええ、ミアチトセちゃん? さん? のおかげで」
「そうであったか……えっと……」
 宮子は突如として現れたミアチトセに戸惑う。
「チトセのようであり、チトセとはまた違う……奇怪なことだが、君は一体……?」
「チトセとミアが合体してミアチトセになったってことよ」
「が、合体……? 二人の人間が一人になったということなのか?」
「正確に言うと二人の魔法少女が一人の魔法少女になった、ということね」
「それはまた、奇妙奇天烈というか摩訶不思議というか……」
「魔法少女だもの、不思議なことあっても、不思議ではないわ」
「うむ、不思議であって不思議でないか」
「なんだか哲学的ね」
 カナミは微笑む。
「あ、おっと……」
 しかし、身体がフラつく。
「大丈夫、カナミ?」
「あいつのパンチが思ったよりききまして……」
「金でできた拳だものね。それはきくでしょう」
「金がこんなに聞くなんて思わなかったのよ、あいたたた」
 カナミは頭を手で抑える。
「ハハハハ、これが金の力だッ!!」
 キリキンマは調子に乗って大笑いする。
「くうう!」
 その憎たらしさに、カナミは歯噛みする。
「こうなったらカナミも借金の力を思い知らせてやりましょう」
「ええ!!」
「それじゃ、力を貸すわね!」
 ミアチトセは勢いよく腕を振り上げる。
 すると、周囲の木や岩が浮き上がってくる。
 ミアチトセの魔法糸で浮かせている。そして、ミアチトセ自身も浮く。
「そぉれ!!」
 木や岩を飛ばして、キリキンマにぶつける。
「こ、こんなもの!?」
「第二弾!!」

ドドドドドドン!!

 ミアチトセはさらに木や岩を浮かせて、キリキンマにぶつけていく。
 ぶつけていく、というより、どんどん埋まっていく。
「お、おのれぇぇぇぇッ!? 生き埋めにするつもりか!?」
「金は金らしく、埋まっておきなさいよ!!」
「こ、こいつぅぅぅぅッ!?」
 キリキンマは木や岩に埋まりながらも怨嗟の声を上げる。
「本当に埋蔵金になっちゃのね。掘り出したくないわね」
「そんな必要はないぜぇぇぇッ!!」
 キリキンマは裂帛の気合をもって、岩や木を吹っ飛ばす。
「さすがにあのくらいじゃ倒せないわね」
「おうとも! このくらいで俺は倒せないぜ!!」
「でも、抜け出すだけで精一杯だったようね」
「何ィッ!?」
 キリキンマの右にカナミ、左に宮子が接近していた。

ザシュゥゥゥッ!!

 二人の同時抜刀により、二本の金の足が斬られる。
「ギャァァァァァッ!?」
 キリキンマは悲鳴を上げて、のたうち回る。
「これで金の足は無くなったわ!」
「くそおッ! だが、まだ金の拳が残ってるぜ!!」
「まあ、それでも私が切ってあげるのだけどね」
 ミアチトセはそう言って、地上に降り立つ。
「う、腕が……動かない……!?」
 キリキンマはミアチトセに向かって、拳を振るおうとするが、震わせるだけで動かせない。
「私の糸は振りほどけ無いわ! そして、切れないモノもね! 糸切羅刹いときりらせつ!!」
 細くも鋭い魔法の糸が金の拳を寒天のようにあっさりと切り割かれる。
「お、俺の腕までえええッ!? ぶえええッ!?」
 悲鳴を上げたキリキンマの顔面に、ヨーヨーがぶつけられて吹っ飛ぶ。
「やっぱり合体すると糸とヨーヨーの威力が上がるわね。強い強い」
「お、おのれぇぇぇぇぇぇッ!?」
 キリキンマは立ち上がって怒りの咆哮を上げる。
 両手足を切り落とされても、戦意は失っていないようだ。
 斬られた金の腕と足の代わりに、黄土色の本来の腕と足を再生させている。
「でも、これであなたの金は無くなったわね。カナミちゃん!!」
「神殺砲!!」
 カナミは三度みたび、ステッキを砲身へ変化させる。
「ボーナスキャノン!!」
 そして、砲弾を発射する。
 二度は完全に防がれたけど、もうその防御に使った金が無い。

バァァァァァァァァァァン!!

 神殺砲は直撃し、キリキンマの胸部から上が吹っ飛ぶ。
 それでカラカラと身体は音を立てて崩れ落ちる。
「あ~もう終わり。まだ全然力を出し切れていないのに」
 ミアチトセはぼやきながら、合体を解く。
 まばたきもしないうちにミアチトセの姿が消え、ミアとチトセの二人が並んでいる。
「あ~気持ち悪かった……」
「私は気持ちよかったけどね。思い通りになる身体は気持ちいいわね!」
 合体後の反応が対照的な二人であった。
「あんたも気持ち悪いわよ! っていうか、あたしの身体乗っ取るつもりじゃないでしょうね!?」
「そんなことしないわよ。ただたまには借りさせてくれてもいいかな~って……」
「イヤよ! 今度合体するときはカナミにしなさいよ」
「わ、私!?」
「そうね、カナミちゃんもいいんだけど、やっぱりミアちゃんの身体の方が使いやすいのよね。身体と心の相性の問題なのよね」
 チトセにそう言われて、カナミはホッとする。対して、ミアは心底嫌そうな顔をする。
「ともあれ、これで宝が奪われることはなくなった。感謝する」
 宮子は一礼する。
「いえいえ、あの怪人を倒すのが魔法少女の仕事ですから。宮子さんも協力してくれてありがとうございます」
「そうか、あんな怪物を倒すのが君達の仕事か」
 宮子は感嘆する。
「あ、そんなことより宮子ちゃん。成仏するのではなかったの?」
「あぁッ!?」
 カナミは思わず心配そうに宮子の姿を見る。
 脳裏に自然と身体が透けて今にも消えそうだった宮子の姿が浮かぶ。
「……え?」
 今の宮子とその姿が重ならなかった。
 透けているように浮かんでいるのは相変わらずだけど、さっきよりもはっきりと存在感を感じられる。
「そういえば、成仏するのを……忘れていた」
 宮子は自分の異変に気づいて、あっけらかんとした態度でそう言った。
「ええぇぇぇぇぇぇッ!?」



 それから宮子は成仏する気配がまったく無かった。
 チトセが言うには、宝を狙う怪人が現れたことで、宝を守る使命に燃えたことが要因なのかもしれない、とのこと。
 そうなると、宝を守り続けていれば宮子は成仏せずにすむとのことだけど、宮子自身は「カナミに宝を受け取ってほしい」と言う。
「受け取る主人のいない宝を守っていても意味が無い。それに私は君に完全に負けた。君にこそ受け取ってほしい」
 そこまで宮子に言われて、かなみも受け取らないわけにはいかない。
 再び穴に戻って、宮子は宝が眠る奥へ案内してくれる。
 その奥には小さな蔵があった。
 幽霊で触れられない宮子に代わって、カナミ自ら開ける。
「わあぁ~ッ!?」
 そこに安置されていたのは小判の山だった。
 その小判は黄金でできており、暗い穴の中でも眩く輝いて見えた。



「まさか本当にきんが出てくるなんてね」
 一日経ってから思い返しても信じがたいことだった。
 みあのそんな心境からくるぼやきだった。
「それで、その金の小判はどうしたんですか?」
 紫織はみあに訊く。
「かなみが運んで、今鯖戸がみているところよ」
「鯖戸さんが?」
「一応、鑑定士の資格もってるらしいのよ」
「へえ」
 それは初耳だった。
「ソワソワ……」
 かなみはデスクでパソコンにデータを打ち込みながら、わかりやすくソワソワしていた。
「それでカナミさんはソワソワしてるんですね」
「そうね、鑑定結果待ちよ」
「ソワソワソワソワ……」
「ええい!」
 みあはちゃぶ台をひっくり返しそうな勢いで立ち上がって、かなみへ言い放つ。
「どうせ一銭の値打ちもなかったオチなんだから、そんなにソワソワすることないじゃない!? うっとおしい!!」
「みあちゃん、なんてこというの!?」
「あんただって、うすうす思ってるんでしょ? いつものパターンだとここであんたにボーナスが入ってこないって」
「そ、それは……パターンはそうだけど、と、とと、時々はボーナスが入るパターンだって、ああ、ああるのよ!?」
 かなみは身体をワナワナと震わせる。
「今回はそのパターンなんでしょうか?」
「さあ。期待せずに大人しく待ってなさいよ。あと貧乏ゆすりはやめなさい」
 みあは冷淡に言う。
「貧乏ゆすりなんてしてないから!!」
「じゃあ、借金ゆすり」
「人聞きが悪い!」
「なんでもいいから、大人しく仕事してなさいよ」
「もー! もし、すごいお金になっても、みあちゃんにわけてあげないからね!」
「はいはい。あたしは元から億万長者だから」
 みあはさらりと受け流してしまう。
「もー!」
 しかし、かなみはこのやりとりのおかげで、幾分か落ち着くことができたのか、データの打ち込みはスムーズにできていった。

ガタ

 そうこうしているうちに、鯖戸が戻ってきて部長のデスクに座る。
「部長!」
 かなみは即座に鯖戸に迫る。
「鑑定、どうだったの!? 私の借金、いくら減りそう!?」
 これまでソワソワしていた分をぶつけるように一気にまくしたてる。
「まあまあ、落ち着いて。深呼吸したらどうかな?」
「すううううう、はあああああああ」
 わりと長い深呼吸だった。
 まあそのおかげで落ち着くことができたようだ。
「それで、鑑定の結果だけど……」
 鯖戸は一呼吸置く。
 その一呼吸でいやがおうにも緊張感が高まる。
「全部で三億になったからこれを売却すれば、君の借金は八億から五億に減る」
「「「……え?」」」
 鯖戸から放たれた一言に、かなみをはじめ少女達は時が止まったように呆然とする。
「減る!?」
「三億!?」
「五億!?」
 かなみ、紫織、みあはそれぞれ三者三様に驚く。
「「「それ本当なの!?」」」
 三人は揃って、鯖戸を問い詰める。
「私の借金って減るものだっったの!?」
「かなみさん達が見つけてきた金って三億もしたんですか!?」
「かなみの借金って八億から五億になるって本当!?」
「……本当だよ」
 鯖戸は冷静に簡潔に答える。
「本当!? 本当に本当なの!?」
「本当に本当だよ。なんだったら嘘だって言って欲しいのかい?」
「言わないで!!」
「じゃあ、本当だよ」
「ちょっと待て! 今から深呼吸するから! すぅーーーはぁーーー」
 かなみは大きく深呼吸する。
「それで、借金が減るって本当なの!?」
「振り出しに戻った……」
 さすがに鯖戸も呆れる。
「君は誤解していると思うんだけど、借金は増えることがあるけど、減ることだってあるんだよ」
「本当なの!?」
「君はそれしか言えなくなったのかな」
「無理よ、借金が減るなんて大珍事のせいで、それだけのショックを受けたんだから」
 みあが補足説明する。
「それもそうか」
 鯖戸もそれで納得する。
「でも、かなみほどじゃないけど、あたしだって驚いてるのよ。あの小判ってそんなに価値があったの?」
「ああ、全ての小判は間違いなく金で出来ていて、値打ちがあるものだった」
「……一枚くらい貰っておいたほうがよかったかしら」
「君にしてはセコいことを考えるね」
 鯖戸の指摘に、みあは苦い顔をする。
「借金が減った……借金が減った……借金が減った……借金が減った……借金が減った……」
 一方のかなみは、うわ言のように現実にあったことを確かめるように反芻する。
「――借金が減った!!」
 ようやくその言葉を飲み込み事ができた。
「本当に借金が減ったのね!?」
「ああ、本当だよ」
「私を騙してるんじゃなくて?」
「君も疑い深いな。なんだったら証文を見せてもいいけど」
「そこまで言うんだったら……」
 かなみは一呼吸おいてからバンザイする。
「やったーやったー借金が減った―!!」
「おめでとうございます、かなみさん!」
「まあ、今回ばかりはめでたいわね」
 紫織とみあは拍手して祝福する。
「ありがとう! ありがとう!!」
 かなみは感動のあまり、落涙までする。
 よっぽど嬉しかったのだろう。
「かなみちゃん~?」
 そこへ千歳が天井をすり抜けて、舞い降りてくる。
「千歳さん、ありがとうございます!」
「あら~? 今日は怖がられないの」
「今日はすごくいいことがあったから機にしていないの!!」
「なるほどね。あ、それで、かなみちゃんにおしらせがあるの」
「……おしらせ?」
 かなみの身体が硬直する。
 このパターンでおしらせというのは嫌なニュースと同じ意味に感じる。
 金で借金を半分近く返せた。
 しかし、千歳からのおしらせで台無しになってぬかよろこびに終わる。そんな予感がする。
「お、おしらせって何ですか?」
 恐る恐る訊く。
「宮子ちゃんの山のことなのだけど」
「あの山がどうかしたんですか?」
「あの山の土地をかなみちゃんに譲ることになったのよ」
「「「……え??」」」
 これには、かなみ、みあ、紫織三人揃って驚く。
「土地を譲るってどういうことですか!?」
「あの土地は元々ふもとの村の地主のものだったみたいなのだけど、それをかなみちゃんに譲るように宮子ちゃんが夢枕にたったの」
「ゆ、夢枕!? メチャクチャ怖いですね……!」
 それを想像して、かなみはガクガク震える。
 宮子のことだから、甲冑をつけていて戦衣装だから、戦国時代の亡者の祟のように感じられてもおかしくない。
「それで、すっかりご先祖様のお告げかと信じ切ってしまった地主さんが言われるがままに、山の土地をかなみちゃんに譲った、というわけなのよ」
「待ってください!? どうして私に山の土地を!?」
「宮子ちゃんがすっかりかなみさんのことを気に入ってしまって、土地を守って欲しいといってね」
「なんで私が!?」
「まあ、これも人徳というものでしょうね」
「人徳……?」
 かなみはピンとこなかった。
「まあ、妙な人に気に入られるのはあんたの人徳かもね」
「み、みあちゃん……」
「ああ、それともう一つ」
「まだ何かあるんですか!?」
「宮子ちゃんがかなみちゃんに、近いうちに挨拶したい、と言っていてね」
「え、それって……」
「……夢枕」
 みあがボソリと呟く。
 かなみはその一言だけで、背筋が凍る。
「キャァァァー!? やめてください!!」
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