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第123.5話 試合終了後の裏側
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「ゲームセット!」
審判が試合終了を告げる。
選手達が集合して、一礼する。
「あの、かなみさん……?」
紫織はすぐにかなみへ走り寄る。
「あの怪人は……」
「あの怪人だったら、私が退治しておいたから大丈夫よ」
「あ、はい……アリィから聞いていました。すみません、私も行けなくて……」
「いいのよ。紫織ちゃんは大事な試合中だったもの」
「でも、かなみさんはその試合中に抜け出して、怪人を倒して……」
それは以前、かなみが中学校のソフトボール部の助っ人として試合に参加したときのことだった。
あのとき、かなみは最終回の攻撃中に、試合を抜け出した。打順が回ってくる前に怪人を倒して戻ってきた。
「あ~、あのときは、ちょっと特殊だったから……」
「怪人が試合出てくるのも特殊ではないですか」
「それもそうだけど……まあ、いいじゃない! 私は怪人倒して、紫織ちゃんは試合で大活躍したんだから!」
「そ、そうですか……」
紫織は恐縮している。
「圧勝だったな、和子」
貴子は和子に言う。
「貴姐、あたしの活躍見てたか!?」
「ああ、しっかりヒットも打ったな。それにいいキャプテンぶりだったぞ!」
「フフン!」
和子は得意げに鼻を鳴らす。
「でも、凄かったのは紫織の方だったぞ」
「そりゃそうだ。なんてたって、私が見込んだ助っ人だからな!!」
和子はますます得意顔になる。
「あはは、貴子のいとこらしいね」
かなみが貴子に言う。
「そうだろ!」
和子は誇らしげに言う。
「さて、和子も勝ったことだし、あたしもはずみがついたな!」
「はずみがついたって?」
「午後からこのグラウンドで試合があるんだよ!」
「え? 中学校、今日試合あったの?」
「あ~、ソフト部の方じゃなくて、草ソフトボールなんだよ。近所のおばちゃんに誘われたんだよ」
「へえ、午後から貴子も試合あるんだ」
「なんだったら、かなみも出るか!?」
「え、私!?」
「メンバーはいつでも飛び入り歓迎だからな! かなみだったら四番になれるぜ!」
「え、いや、さすがに、それは!」
「遠慮するな! あたしも遠慮しないから!」
「貴子は、ちょっと遠慮して……」
でも、そういった貴子が遠慮のなさがちょっとありがたい気がした。
「あ、そうだ。和子と紫織も参加しよう!」
「え?」
紫織はキョトンとする。
「よっしゃ! もう一試合だ! いいの、貴姐!?」
「え、わ、私、もう試合やった後ですし!」
紫織はあたふたする。
「一試合やったくらいでバテるか! 体力有り余ってるんだ!!」
「わ、私はもうヘトヘトで……」
「それじゃ、うーん、代打だ!」
「えぇ!?」
「あははは」
紫織と和子のやり取りを見て、かなみは笑う。
「ちゃんと例の野球怪人は倒したわ」
一区切りついたあと、かなみは一人になって、オフィスへ電話を入れる。
『ごくろうさま、報告書はあとで提出してもらうとして、ボーナスは口座に入れておくよ』
「たっぷりお願いね」
「………………」
電話越しの鯖戸は無言だった。
それを聞いたかなみはため息ついた。
「でも、ソフトの試合に出てくるなんて思わなかったわ。しかも小学生の試合に紛れ込んで……」
『それは私にも想定外だった』
「第一、野球勝負してたのに、なんでソフトやってんのよ!?」
かなみは文句のように鯖戸にぶつける。
『私にも言われてもな……怪人の行動から察するに、ソフトボールで勝負してみたくなったとか……』
「そんな理由で……いや、ありそうなのよね」
怪人はそういう目的で、変な行動に出ることがある。
昨日、野球やっていた怪人が、今日はソフトボールをやってみたくなったから試合に強引に参加する。
そんなことを平気でしてきそうだから怪人は質が悪い。
「特に君の話だとこれからもう一試合あるそうじゃないか」
「ああ、あいつ、次の試合も出るつもりだったのね……」
十分有り得る話だった。
ひょっとしたら、あのまま退治しなかったら、この後の試合で同じチームで試合をすることになっていたかもしれない。
恐ろしい話だ。
退治してよかった、と、かなみは思った。
『まあ今日はもうオフだから楽しんでいきなさい』
「言われなくてもそうするわよ」
かなみはそう答えて、電話を切る。
怪人退治の報告もしたところで、まだ報告書の提出は残っているもののそれはマニィに任せているので、これで一区切りついた。
「お疲れ様。ジュースは何がいい?」
マニィが訊いてくる。
「オレンジ」
「そういうと思った」
カバンからオレンジジュースの缶を取り出して、かなみに手渡す。
「いつ買ってきたのよ?」
「企業秘密ということで」
「まあいいわ。ありがとう」
「どういたしまして」
「でも、どういう風の吹き回し?」
かなみは、いつもはこんなことしないのに、と言いたげに訊く。
「君が初めて仕事を選んだ記念だよ」
「そんなに記念にすることなの?」
「社長は赤飯炊くって言ってたよ」
「なんで?」
かなみは頭を掻く。
それになんだか絵面が想像できない。
「全部、紫織のためだったんでしょ? あの娘の様子を見れるようにこのあたりのグラウンドや学校の様子をみてきたわけだし」
「………………」
かなみは沈黙する。
「そういうことあはバレバレだから素直に口にするといいよ」
「うるさい。あんたがおしゃべりすぎなのよ」
「はいはい」
かなみはマニィを口を塞ぐように持ち上げてカバンにしまった。
審判が試合終了を告げる。
選手達が集合して、一礼する。
「あの、かなみさん……?」
紫織はすぐにかなみへ走り寄る。
「あの怪人は……」
「あの怪人だったら、私が退治しておいたから大丈夫よ」
「あ、はい……アリィから聞いていました。すみません、私も行けなくて……」
「いいのよ。紫織ちゃんは大事な試合中だったもの」
「でも、かなみさんはその試合中に抜け出して、怪人を倒して……」
それは以前、かなみが中学校のソフトボール部の助っ人として試合に参加したときのことだった。
あのとき、かなみは最終回の攻撃中に、試合を抜け出した。打順が回ってくる前に怪人を倒して戻ってきた。
「あ~、あのときは、ちょっと特殊だったから……」
「怪人が試合出てくるのも特殊ではないですか」
「それもそうだけど……まあ、いいじゃない! 私は怪人倒して、紫織ちゃんは試合で大活躍したんだから!」
「そ、そうですか……」
紫織は恐縮している。
「圧勝だったな、和子」
貴子は和子に言う。
「貴姐、あたしの活躍見てたか!?」
「ああ、しっかりヒットも打ったな。それにいいキャプテンぶりだったぞ!」
「フフン!」
和子は得意げに鼻を鳴らす。
「でも、凄かったのは紫織の方だったぞ」
「そりゃそうだ。なんてたって、私が見込んだ助っ人だからな!!」
和子はますます得意顔になる。
「あはは、貴子のいとこらしいね」
かなみが貴子に言う。
「そうだろ!」
和子は誇らしげに言う。
「さて、和子も勝ったことだし、あたしもはずみがついたな!」
「はずみがついたって?」
「午後からこのグラウンドで試合があるんだよ!」
「え? 中学校、今日試合あったの?」
「あ~、ソフト部の方じゃなくて、草ソフトボールなんだよ。近所のおばちゃんに誘われたんだよ」
「へえ、午後から貴子も試合あるんだ」
「なんだったら、かなみも出るか!?」
「え、私!?」
「メンバーはいつでも飛び入り歓迎だからな! かなみだったら四番になれるぜ!」
「え、いや、さすがに、それは!」
「遠慮するな! あたしも遠慮しないから!」
「貴子は、ちょっと遠慮して……」
でも、そういった貴子が遠慮のなさがちょっとありがたい気がした。
「あ、そうだ。和子と紫織も参加しよう!」
「え?」
紫織はキョトンとする。
「よっしゃ! もう一試合だ! いいの、貴姐!?」
「え、わ、私、もう試合やった後ですし!」
紫織はあたふたする。
「一試合やったくらいでバテるか! 体力有り余ってるんだ!!」
「わ、私はもうヘトヘトで……」
「それじゃ、うーん、代打だ!」
「えぇ!?」
「あははは」
紫織と和子のやり取りを見て、かなみは笑う。
「ちゃんと例の野球怪人は倒したわ」
一区切りついたあと、かなみは一人になって、オフィスへ電話を入れる。
『ごくろうさま、報告書はあとで提出してもらうとして、ボーナスは口座に入れておくよ』
「たっぷりお願いね」
「………………」
電話越しの鯖戸は無言だった。
それを聞いたかなみはため息ついた。
「でも、ソフトの試合に出てくるなんて思わなかったわ。しかも小学生の試合に紛れ込んで……」
『それは私にも想定外だった』
「第一、野球勝負してたのに、なんでソフトやってんのよ!?」
かなみは文句のように鯖戸にぶつける。
『私にも言われてもな……怪人の行動から察するに、ソフトボールで勝負してみたくなったとか……』
「そんな理由で……いや、ありそうなのよね」
怪人はそういう目的で、変な行動に出ることがある。
昨日、野球やっていた怪人が、今日はソフトボールをやってみたくなったから試合に強引に参加する。
そんなことを平気でしてきそうだから怪人は質が悪い。
「特に君の話だとこれからもう一試合あるそうじゃないか」
「ああ、あいつ、次の試合も出るつもりだったのね……」
十分有り得る話だった。
ひょっとしたら、あのまま退治しなかったら、この後の試合で同じチームで試合をすることになっていたかもしれない。
恐ろしい話だ。
退治してよかった、と、かなみは思った。
『まあ今日はもうオフだから楽しんでいきなさい』
「言われなくてもそうするわよ」
かなみはそう答えて、電話を切る。
怪人退治の報告もしたところで、まだ報告書の提出は残っているもののそれはマニィに任せているので、これで一区切りついた。
「お疲れ様。ジュースは何がいい?」
マニィが訊いてくる。
「オレンジ」
「そういうと思った」
カバンからオレンジジュースの缶を取り出して、かなみに手渡す。
「いつ買ってきたのよ?」
「企業秘密ということで」
「まあいいわ。ありがとう」
「どういたしまして」
「でも、どういう風の吹き回し?」
かなみは、いつもはこんなことしないのに、と言いたげに訊く。
「君が初めて仕事を選んだ記念だよ」
「そんなに記念にすることなの?」
「社長は赤飯炊くって言ってたよ」
「なんで?」
かなみは頭を掻く。
それになんだか絵面が想像できない。
「全部、紫織のためだったんでしょ? あの娘の様子を見れるようにこのあたりのグラウンドや学校の様子をみてきたわけだし」
「………………」
かなみは沈黙する。
「そういうことあはバレバレだから素直に口にするといいよ」
「うるさい。あんたがおしゃべりすぎなのよ」
「はいはい」
かなみはマニィを口を塞ぐように持ち上げてカバンにしまった。
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